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  • カモンカモン(2021) directed by Mike Mills by MARI HAGIHARA April 12, 2022 1
  • 私ときどきレッサーパンダ(2022) directed by Domee Shi by MARI HAGIHARA April 12, 2022 2
  • フレッシュ(2022) directed by Mimi Cave by MARI HAGIHARA April 12, 2022 3
  • パリ13区(2021) directed by Jacques Audiard by MARI HAGIHARA April 12, 2022 4
  • スパークス・ブラザーズ(2021) directed by Edgar Wright by MARI HAGIHARA April 12, 2022 5
  • ほっこりするというより、とても切実な映画。それは子どもと向き合う時に大人が抱くポジティヴな思いだけでなく、責任感や自省といった思いも描かれているから。ごくパーソナルで親密な映画でありながら、マイク・ミルズの目は若い世代に自分たちが残す世界、その惨状や未来にも遠く向けられています。ラジオ・ジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)は、甥のジェシー(ウディ・ノーマン)をしばらくあずかることになり、同時にラジオ番組のため、全米各地で子どもたちに取材をしている。そこではさまざまなダイアローグが交わされつつ、ジョニーの役割は主に「耳を傾けること」。エキセントリックにも見えるジェシーを理解し、子どもたちが語る未来への希望と不安を聞くことなのです。と同時に、妹でジョニーの母ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)には、ずっと黙っていた気持ちを口にしなくてはならない。ちゃんと聞いてから、話すことの重要性。声や音が中心ですが、繊細なモノクロ映像がアメリカ各都市の風景を新たに切り取っていきます。感情的なテキスチャーが多層的なので、観る人によって違うものが見えるかも。静かで、豊かで、誠実な一作です。

  • いまのところ今年いちばんのガール・ムーヴィ。ファンガール最強! と嬉しくなってしまいます。トロントに住む中国系の主人公、メイは13歳で心と体の大きな変化を迎えます。気になる男の子のことを考えると、なんと巨大レッサーパンダに変身! 彼女はそれが女系家族に伝わる「呪い」のようなもの、一生抑えつけるべきものであることを知ります。メイと彼女の仲間はそれにどう対処するのか? レッサーパンダ(英語ではレッドパンダ)は明らかに生理や発毛といった二次性徴のアナロジーでもあるし、自分でも知らなかった心理でもある。それだけでもコントロールが難しいのに、家族や学校での抑圧もキツくなって、しっちゃかめっちゃか——そんな「思春期」の暴走っぷりがコミカルに、シリアスに描かれる。しかも、そこでメイたちの突破口となるのがポップ・ミュージック。大好きなボーイ・グループ、4★TOWNのファンとして彼女たちは行動し、新たな視点を持つのです。短編アニメ『Bao』も秀逸だったドミー・シー監督のオタク描写が鋭すぎて、突き刺さってしまう人もいるかも。音楽はルドウィグ・ゴランソンが初めてアニメを手がけ、4★TOWNの曲はビリー・アイリッシュとフィネアス・オコンネルがノリノリで作曲。豪華です。

  • 女性への性加害をホラーとして表現する、という点で、『プロミシング・ヤング・ウーマン』や『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』の流れにある映画。ただあの2作ではプロットが前提を裏切るところがあり、モヤったのに比べ、『フレッシュ』は最後まで納得の展開でした。といっても予想通りに話が進むわけもなく。オンラインで知り合う男たちに幻滅したノア(『ノーマル・ピープル』のデイジー・エドガー・ジョーンズ)は、スーパーでスティーヴ(セバスチャン・スタン)と出会います。急速に近づくふたり。そこから明かされる彼の秘密や、荒唐無稽でゴアな物語に、ロマンティック・コメディの要素が不思議なほど繊細に配合される。エドガー・ジョーンズの「隣の女の子」の風情や、傲慢だからこそロマンティックなスタンの魅力もそれに寄与しています。友人など、ふたり以外の男女のキャラクターの役割も恐怖を生む構造にマッチしている。悪いのは一部の男だけではないのです。女性にとっては知らない男性とのデートが命懸けにもなる、という話こそがリアル。ミミ・ケイヴ監督の長編デビュー作は、元ダンサーの彼女だけに、ダンス・シーンがユニークです。

  • こちらは70歳になるジャック・オディアール監督が描く、いまの30代の恋愛とセックス。原作は日系アメリカ人エイドリアン・トミネによるグラフィック・ノベルで、セリーヌ・シアマとレア・ミシウスとの共同脚本。そんな多様な視点が細やかさを、また成熟した視点が明晰さをもたらしています。舞台はアジア系の人々が大勢暮らすパリの再開発地区。3人の男女にとって、出会ってすぐに寝るのはイージーでも、リレーションシップや仕事となると持続性がない。自由なようでいて、それぞれ抱える心の傷や不安が本当の欲求を見えなくしているのです。もちろん、ソーシャル・メディアが生む「孤独」も描かれているけれど、映画でもっとも親密な瞬間もオンラインにあり、ステレオタイプな現代社会にはなっていない。セックス・シーンは大胆というより、ぎごちなさが官能的に見えるところがいまっぽいと思います。サヴェージズのジェニー・ベスがセクシーに出演。というか、これはセクシーな「私たち」の話。『君と歩く世界』(2012)以来の、オーディアールらしい野性的なエロティシズムも満喫できます。

  • 『アネット』の冒頭に登場したふたりは誰? という人のためのドキュメンタリー。でも、お手軽な紹介ではない決定版。なにせ半世紀にわたって活動するスパークスというバンドを描くのに、どのアルバムもどの出来事も省かれていない。膨大なインタビューやツアー同行だけでなく、この「どこも切れなかった」ところにエドガー・ライト監督のファンボーイぶりがうかがえます(長さは141分)。おかげで、次々音楽スタイルを変え、謎に包まれたバンドの全貌も、メイル兄弟のバックグラウンドもよくわかる。「よく知られている曲しか知らない」程度の私も、アーティスティックな面だけでなく、70年代以降のショービズ的側面も含むクロニクルを楽しみました。謎を紐解きつつ、見終わったあとまだ謎が残っているのもいい。ニール・ゲイマンなど意外なファンの証言が多数あるのも興味のひとつ。レオス・カラックス監督、スパークスによるミュージカル『アネット』に関しては、あれが実現するまでにティム・バートン監督作などさまざまな企画がつぶれ、まさに悲願だったことがわかります。日本ツアーの模様も収録。

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