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  • 少女バーディ(2022) directed by Lena Dunham by MARI HAGIHARA November 18, 2022 1
  • Never Goin' Back ネバー・ゴーイン・バック(2018) directed by Augustine Frizzell by MARI HAGIHARA November 18, 2022 2
  • あのこと(2021) directed by Audrey Diwan by MARI HAGIHARA November 18, 2022 3
  • MEN 同じ顔の男たち(2022) directed by Alex Garland by MARI HAGIHARA November 18, 2022 4
  • グリーン・ナイト(2021) directed by David Lowery by MARI HAGIHARA November 18, 2022 5
  • ガーリーな時代物、好きなんです。ヤングアダルト小説の人気ジャンルで、よく映像化されるんですよね。最近ではロミオ&ジュリエットをロミオの元カノ視線で語る『ロザライン』や、Netflix『エノーラ・ホームズの事件簿』シリーズもそう。この『少女バーディ』も同様、愛されてきた小説の映画化で、レナ・ダナムが監督をつとめています。そのせいもあり主人公バーディのぶっちゃけた愛らしさ、とっぴで笑える場面と、彼女が直面する封建社会の地獄みがうまく混ざっている。舞台は13世紀イギリス。領主の娘バーディは父親(アンドリュー・スコット)の借金を解消するために結婚させられようとしています。生理がきたばかりで「処女」が何かも知らず、幼なじみの少年と泥まみれで遊んでいる女の子が! 金持ちの髭老人と! まずはとにかく、バーディの賢いアナーキーぶりを体現するベラ・ラムジーが絶品(『ゲーム・オブ・スローンズ』のリアナ・モーモント公です)。糞や汚れ、生理、そして出産といった現象がカジュアルに、生々しく表現されるのもいまっぽい。その一方でバーディのナイーヴな心の動きは細やかに描かれ、最終的にはバーディだけでなく、周りの人々にとっての「選択」の物語になっているのが興味深い。やはり中世に限らず、結婚とは経済の問題なのです。

  • 2018年のSXSWでゲームチェンジャー賞候補になった本作。本当はその時に見ないとインパクトが実感できないとはいえ、2018年作品『サポート・ザ・ガールズ』と一緒に見ると、ある感覚がつかめてきます。どちらもテキサス州で暮らす女性の話。彼女たちのクソな日常と、それでもパワフルに生きる姿が明るく、ユーモラスに描かれているのです。『ネバー・ゴーイン・バック』なんて、まるでビル&テッドの女性版! アホに突き抜けたバディものです。マイア・ミッチェルとカミラ・モローネが演じる17歳のアンジェラとジェシーは親友でルームメイトで、時にはいちゃついたりも。高校を退学になり、親にも頼れないふたりは極貧生活をともにするストーナー仲間、運命共同体なのです。夢は近場のビーチに出かけてイルカにキスすること。なんとかその金を作ろうとする過程で、次々災難が降りかかります。これがデビュー作のオーガスティン・フリッゼル監督は、親に見捨てられた自分の悲惨な若い頃をコメディにしたとか。実際、ドラッグや窃盗、排泄ネタに至るまで切実なリアルさがあり、可愛くシュガーコートしていないのが新鮮。手触りはまるで『フロリダ・プロジェクト』(2017)なのです。女の子の快楽的なバディというだけでも新しいのに、このエッジが効いています。

  • どんなホラーより恐ろしく、どんなサスペンスより緊張する。しかも想像上の話なんかじゃなく、これまで無数の女性が通過したことで、いまもどこかで誰かがこれを体験している――そう思うと、その痛みと恐怖に震えます。『あのこと』はノーベル文学賞を受賞したアニー・エルノーの原作を、オードレイ・ディヴァン監督が「没入体験」として映画化したもの。1960年代、中絶が違法だったフランスで大学生アンヌ(アナマリア・ヴァルトロメイ)が妊娠しますが、彼女にとって他の選択肢はありません。中絶を禁じてもその数は減らず、「危険な中絶」が増えるだけ、というのがよくわかる。アンヌがひとり悩み、決断し、行動するさまは本当に見ていられないほど。『17歳の瞳に映る世界』(2020)よりずっと過酷です。ただアニー・エルノーはその体験に、人生への強い意志と情熱を込めている。フランス映画らしい官能性も伝わる作品です。

  • ちょっと共通点を感じたA24作品をふたつ。アレックス・ガーランド監督の新作『MEN』は、田舎町の館にひとり滞在する女性が奇妙な出来事に遭遇し……という、古典的ホラーの設定。主人公のハーパー(ジェシー・バックリー)は夫を亡くし、トラウマを抱えた女性で、町のバーや教会、森の中で会う男たちに意味不明な悪意を向けられます。日々遭遇するミソジニーが女性視点で不条理なホラーになるのはまあわかるのですが、別にその男性心理に超自然なところはないんじゃない? というのが正直な感想。自然や再生の象徴ともされる「グリーン・マン」まで登場させて、その悪循環を神話的に仕立てなくても、粘着質な敵意だけで十分怖いんだけど……と思いました。ただそんな男性の姿を、前作『アナイアレイション』(2018)を超えるほど衝撃的な映像にした最後のシークエンスは、一度見たらもう忘れられない。変な映画を見たい人は、迷わずこれ一択です。

  • こちらはグリーン・マンと同様の象徴とされる「緑の騎士」を取り上げたフォークロア・ホラー。『ア・ゴースト・ストーリー』(2017)のデヴィッド・ロウリー監督らしい曖昧さ、哲学的な思索に満ちています。元々はアーサー王伝説の一部で、14世紀の作者不詳の物語。王の甥ガウェイン(デヴ・パテル)はクリスマスの宴に現れた不思議な騎士の挑戦を受けます。それはガウェインが騎士の首を切り落とす代わりに、1年後のクリスマスには騎士を探し出して自ら首を切られると約束する、というもの。旅に出たガウェインは途中、謎めいた人物や出来事に出くわし、危機に見舞われます。彼がつねに疑心暗鬼で、何もかも不確かなところが現代的。「英雄譚」の裏側、死への道行なのです。それが『ロード・オブ・ザ・リング』的に暗く、ファンタジックな映像でつづられるので退屈しない。さまよう巨人の群れには見入りました。本作では「緑」の意味について、ふたつの役で登場するアリシア・ヴィキャンデル(他にも二重の暗喩が多数出てきます)が解釈を披露するので、お見逃しなく。ちなみに、デヴィッド・ロウリー監督とオーガスティン・フリッゼル監督はカップルです。

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