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  • Believe Benjamin Booker by MASAAKI KOBAYASHI November 24, 2017 1
  • Hot Caramel (Soulwax Remix) The Peppers by MASAAKI KOBAYASHI November 24, 2017 2
  • Euphoria Sarasara by MASAAKI KOBAYASHI November 24, 2017 3
  • Dolly.Zero Antoine Debarge by MASAAKI KOBAYASHI November 24, 2017 4
  • Stranded feat. Broods, Reggie Watts & Saro Flight Facilities by MASAAKI KOBAYASHI November 24, 2017 5
  • 「とにかく何かを信じたいだけ。それが正しくても、間違っていても、かまわない」ベンジャミン・ブッカーは、こう歌い出し、その後、このラインは何度も繰り返される。このMVでは、どこかに帰属したいとか、何かにすがりたいとか、そんな主人公の若者の強い想いが軍隊に託されている。だが、従軍したらしたで、例えば、軍事演習中にふと心に迷いがよぎる。そんな時、どこからともなく現れるちびっ子ダンサー。彼のダンスに導かれる先には、戦争ごっこのように、誰も殺すことがなければ、決して誰も死なない――この迷える若者が、本当にすがるべき場所、信じるべき相手が(軍隊以外にも)存在することが示唆される。一見、夢のような展開だけれども、踊るちびっ子の体形が、いかにもダンサー然とした整ったものではないおかげで、逆に妙に説得力が生まれている。ラスト・シーンで一人踊る若者の清々しい笑顔がたまらない。

  • 原曲にあたるザ・ペッパーズによる1974年の“ホット・キャラメル”を、念のために、聴いてみると、ソウルワックスめ、これをリミックスして、よくもこんなかたちにしたな……もはや「ショウ」「ショウ」と繰り返す部分しか残ってないじゃないの、というのが所感だ。で、その「ショウ」「ショウ」というのを、カラテか何かの稽古や型をする時の掛け声か何かと勝手に思い込んだところから、こんなMVができてしまったのか。だが、それが結局、護身術をテーマにした教育用ヴィデオみたいなものになっていて、しかも、それが「アナーキストになりたいけど、絶対無理そうな人たち向け」にしか見えないのが可笑しい。また、全体に通じる広告写真のような色使いやモデルやカット割り、そして、映し出される人たちのそれぞれの所作には、どこか振付のようなところもあり、最後のまとめ方などからも、ひとつの「ショー」のようにも見える。そんなこのMVに、本当に教育的な効果があるのだろうか。謎な(バカすぎる)描写も混ざり込んでいるけれど、映像本編が始まる前には「このヴィデオの映像には、護身術向上の意欲を高める危険性があるのであらかじめ注意しておきます」との警告文が映し出される。

  • このMV、最初から35秒あたりまで見続けると、もしかしたら、これって「あの写真」に写されているものが、もしも動き出したら? みたいなアイデアだけで制作に着手したのでは? と考える方も結構な数いるのではないだろうか。試しに、この曲を歌うサラサラ(なんという名前!)の顔を、オードリー・ヘプパーンのそれに差し替えてみると「あの写真」、つまり、写真家のリチャード・アヴェドンが、1967年に彼女をモデルに撮ったものに、かなり近いのだ。だからといって、その段階で満足してしまうのではなく、カメラをぐっとひくことで、「あの写真」のフレームには入りきらなかった、意外(で、かなりユニーク)な実像を見せてくれるのも楽しい。

  • チャンネル4制作のTVシリーズとしてスタートし、Netflixのおかげで昨年から全世界に配信されている『ブラック・ミラー』。そこでは、毎回、一話完結で、テクノロジーの進歩を背景に、もしかしたら、今現在と地続きのかなり近い未来社会、もしくは、下手したら、確実にそっち側に進んでいた(進んでいる?)かもしれない「もう一つの現実社会」が、おぞましいものとして描かれれば描かれるほど、異様な説得力と現実味を帯びてしまう。例えば、以前、この欄で取り上げたMV作品以外にもファーザー・ジョン・ミスティが今年発表したMVでは、『ブラック・ミラー』の映し出す社会が、実写以外の手法により捉えられていた。ユーゴ・ビヤンヴニュというBD(バンデシネ)作家によるア二メ作品となる、このアントワーヌ・ドゥバルジュのMVも、そこに連なるだろうか。ここでは、レトロフューチャー色濃厚な音色が響く中、クローンが自分のクローンに殺され、それが永続的に続くようにプログラムされた世界の一端が垣間見れる。それにしても、それは、誰のための、どんな世界なのか?

  • どうにも立ち往かない(タイトルとなっている、Stranded)とき、人は何をしようとするのか。何ができるのか。このMVで描かれること、行われていることを目にして、そんなの物理的に無理だろうとする考え方もあるだろう。ただ、ここで、レジー・ワッツたちは「障壁に耐え……」と歌っているので、ここに出てくる彼女は、想像を絶する愛の力の持ち主なのかもしれない。と同時に、服役中の彼を、刑務所の外には出せないけれども、彼が抱える罪のはかりしれない重みを、身体全体で受け止められる、心の大きな女性であるに違いない。

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