すったもんだありましたが、やっぱり帰ってきました。もうご存知の方も多いでしょう。昨年、〈ミュート〉と契約を締結したニュー・オーダーが、10年ぶりの新作『ミュージック・コンプリート』のリリースをアナウンス! 日本先行で9月23日に発売されます。うわ~、えらいこっちゃ!
まずは簡単におさらい。このマンチェスターの愛すべき親父たちは、ノーザン・ソウルやグラム・ロック、勿論パンクにも大いに感化されながら、クラフトワークのリニアなマシーン・ビートにもやられたバンド=ジョイ・ディヴィジョンとして出発。このグループがポストパンク最大のアイコンになったのは言うまでもありません。そして、イアン・カーティスが23歳の若さで急逝し、ニュー・オーダーとして生まれ変わってからは、よりダンス・フィールを取り入れたサウンドへと接近。ハイ・エナジーやアシッド・ハウスなど、その時々のトレンドをしっかり取り入れつつ、80年代半ばには唯一無二のクロスオーヴァー・サウンドを確立しました。ライヴ・ヴェニューとダンスフロアの境界を無効化するような音楽性を打ち出したという点では、間違いなくオリジネーターです。それゆえか、出世作“ブルー・マンデー”を筆頭に、何度も再評価の波が訪れていますね。
とりあえず、その“ブルー・マンデー”を聴いておきましょう。何度聴いても最高ですから。下の映像は1983年の〈トップ・オブ・ザ・ポップス〉出演時のもの。みんな若過ぎ!
その後、『リパブリック』(1993年)を最後に沈黙が続いたものの、2000年代に入って再始動。8年ぶりの復帰作『ゲット・レディー』はまさかのロック回帰で、往年のファンには複雑な思いを抱いた人も多かった様子。しかし、それもなんのその。今度はなかなか快調なペースで新作『ウェイティング・フォー・ザ・サイレンズ・コール』(2005年)を発表します。しかも、その時点で次回作用の曲は7割できているという話だったので、ニュー・オーダー完全復活! と誰もが思っていました。
ところがですよ。2007年にピーター・フック脱退騒動が巻き起こり、すべてが棚上げに。というか、実質的に解散状態だったのですが、2012年にフッキー抜きで復活。フッキーがちゃっかりジョイ・ディヴィジョンのアルバム完全再現ライヴとかをやっている間に、ニュー・オーダー本体は育児休暇を取っていたジリアン・ギルバート(スティーヴン・モリスの奥さん)がひさしぶりに復帰し、新ベーシストにトム・チップマンを迎えた新体制で動き出しました。
こちらがその新体制でのライヴ映像。この日のパフォーマンスはライヴ・アルバム『ライヴ・アット・ベスティヴァル2012』として発売され、かなり好評でした。
2013年には、おそらく上述の“次回作用の曲”をまとめた『ロスト・サイレンズ』をリリース。お蔵入りとなっていた曲にも整理をつけました。そこで晴れて〈ミュート〉と契約し、遂に10年ぶりのニュー・アルバム『ミュージック・コンプリート』を発表することとなったわけです。しかも、バーニー曰く、新作はダンス・レコード! ギター・ロック中心だった2000年代の作品に物足りなさを感じていたリスナーは期待せざるを得ません。
ということで、ここからは現在までに公開されている3つのトレイラーから新作の方向性を占ってみたいと思います。まずはこちらから。
って、短いな! わずか34秒。でも、8ビートのハーフ・リズムから4つ打ちに雪崩れ込んでいく展開は、“ダンス・レコード”の期待を煽るには十分でしょう。
こちらは29秒。キラキラと輝くシンセと切ないフィーリングが、まさにニュー・オーダー節。しかしながら、ハイフレットでメロディアスなフレーズを弾くフッキー風ベース・ラインは微妙に回避しているのが窺えます。
そして、最後にもうひとつ。
これはたったの15秒! 出し惜しみし過ぎだろ! というのはさておき、このスネア・ロールの雰囲気とか、EDMのブレイクを想起させるところがなくもない。新作が“ダンス・レコード”となれば、時流のEDMや新世代ハウス・ミュージックに対してどのようなスタンスを取っているのか? というのは、ひとつのポイントになりそうです。
アルバムのゲストもまとめておきましょう。ケミカル・ブラザーズのトム・ローランズやスチュアート・プライスといった近年のコラボレーターに加え、ニュー・オーダーのメンバーが敬愛するイギー・ポップ、そしてニュー・オーダーにリスペクトを寄せる新世代代表としてキラーズのブランドン・フラワーズとラ・ルーのエリー・ジャクソンが参加。豪華です。特にブランドンはニュー・オーダー“クリスタル”のMVに出てくる架空のバンドからキラーズという名前を拝借したくらい熱烈なファンなので、今回の共演には嬉し泣きしているに違いありません。
さあ、『ミュージック・コンプリート』は、往年のファンを唸らせ、最新のダンス・ミュージックに夢中のキッズを熱狂させる、起死回生の大復活作となっているのか? 9月23日を心して待ちましょう!
*追記(2015/09/17):『ミュージック・コンプリート』から公開された新曲のMV/音源を以下にまとめてあります。