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  • メッセージ (2016) directed by Denis Villeneuve by MARI HAGIHARA December 12, 2016 1
  • コンタクト (1997) Directed by Robert Zemeckis by MARI HAGIHARA December 12, 2016 2
  • ドント・ブリーズ (2016) directed by Fede Alvarez by MARI HAGIHARA December 12, 2016 3
  • ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た (2016) directed by Maurice Dekkers by MARI HAGIHARA December 12, 2016 4
  • After 10 Years (2016) directed by Takashi Homma by MARI HAGIHARA December 12, 2016 5
  • 日本では「SF映画」と呼ぶと興業的に当たらないと言われますが、それってほんと? でもはっきりしておきたいのは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作『メッセージ』はSF映画の傑作である、ということ。このジャンルでしか開くことが出来ない頭と心のドアを開き、解放する――その意味では『ゼロ・グラヴィティ』(2013)や『オデッセイ』(2015)より格段にシリアスなSFなのです。とはいえ原作のテッド・チャン短編『あなたの人生の物語』をわかりやすく、ある女性の人生の分岐点としてヒューマンに描いているので難解さはゼロ。ストーリーは異星人が地球に到着した時、エイミー・アダムス演じる言語学者が体験すること、とだけ知っておけばいいでしょう。分断された世界における対話という現状へのコメントも含みつつ、私が感動したのはSFの命題でもある「時間」への視線です。容赦なくリニアに流れる時間も、(物語の中だけでなく)自分の中では複雑に循環し、過去は現在と同化している。そしてそれは祝福なのだ――と実感させてくれるのです。今必要なフィール・グッド・ムーヴィ。日本は来春公開なので、SFファンはカート・ヴォネガットを読み返しておくのもいいかも。

  • 『メッセージ』を見たことで思わず1997年のロバート・ゼメキス監督作『コンタクト』を思い出したのは、勿論、女性主人公と異星人の邂逅というモチーフのせい。ただ『メッセージ』の製作会社がドラマ『ストレンジャー・シングス』(2016)の〈21Laps〉なのを知ると、実際ちょっとゼメキスを参照したのかもしれないと思うようになりました。『ストレンジャー・シングス』がスピルバーグを参照していたように、ダークでディストピア一辺倒になったこのジャンルにおおらかさや理想を取り戻し、娯楽作としてモダナイズしようとしてるんじゃないか、と。『コンタクト』の原作はリンクレーター新作でも80年代アイテムとして登場したカール・セーガン。今観ると電子機器の古さより、「神vs.科学」というテーマ設定に時代を感じます。でも何度も引用されているワームホールの場面はいまだトリッピーだし、『インターステラー』(2014)への影響を見るのも一興。このへんの映画って、無条件の愛や信頼に帰結するから親子の物語になるんだなあ、と思いました。『コンタクト』ではジョディ・フォスターの子ども時代を演じたジェナ・マローンが超キュートです。

  • SFより巨大マーケットを持つジャンル、ホラー。ここからも定期的に新しい才能が出てきます。2013年に公開された『死霊のはらわた』(1981)のリメイクはイマイチでしたが、そこで組まれたコンビ、製作のサム・ライミと監督のフェデ・アルバレスが今回はちょっとすごいのを作ってきました。『ドント・ブリーズ』はシンプルかつソリッド、それにずっと怖い。しかもこっちの方がサム・ライミの「笑っちゃうホラー」感があります(厳密に言えば生身の人間しか出てきませんが)。デトロイトを舞台に、強盗を繰り返す10代の若者たちが狙うのは盲目の老人の家に隠された大金。でもこの老人、元軍人でハンパなく強いだけでなく、聴覚が異様に鋭く人の気配を聞き取ってしまうのです。狭い廊下ですれちがう時に若者が必死で息を止めるシーンなんて、ほとんどギャグなのに恐ろしく緊張させられる。考えると、希望を失ったティーンエイジャーと利己的な老人というのは究極に今っぽい世代闘争かも。闇の使い方など映像的にも工夫のある一作です。ジャンル・ムーヴィ最高!

  • 『ノーマ、世界を変えるレストラン』(2015)のヒットを受け、『ノーマ東京 世界一のレストランが日本にやって来た』が公開されます。私がこの二作を好きなポイントは、クリエイティヴな集団のあり方が生々しく見えてくるから。『ファッションが教えてくれること』(2009)の〈ヴォーグ〉編集部や、スティーヴ・ジョブズのアップルと比べてもいいかもしれません。新しいもの、優れたものを作るところには多くの場合求心的人物がいて、周りがその要求に苦しみながら、それゆえに才能を発揮するんですよね。中にいると地獄、でも外から見るとめちゃくちゃ面白い。デンマークのレストラン、ノーマの中心にいるのは北欧料理というコンセプトで料理界を揺るがしたシェフのレネ・レゼピ。この人のキャラが強烈で、周りのスタッフも個性的、しかもみんな俳優並みにカッコいい。そんな男女がギリギリまで自分を追い込み、斬新なメニューを生み出していくところがドラマチックなのです。今作はノーマが期間限定でマンダリン・オリエンタルに乗り込んできた日々を映しているので、日本人にとっては各地の食材探しや日常的な齟齬など興味深い部分も多々あり、見どころたくさん。

  • 先日たまたま『ヒア アフター』(2010)と『インポッシブル』(2012)を見返していたので、スマトラ沖地震と津波のイメージが強く残っていました。そのあとで写真家ホンマタカシによる『After 10 Years』を見ると、意表を突かれるほど美しく穏やか。スリランカの建築家ジェフリー・バワが手がけたホテルは2004年に津波の被害を受け、改修されて10年後に追悼式が開かれました。映されているのはその前後のホテルの日常と、時折挟まれる滞在客による津波の映像、そしてそれを体験した人々のインタヴュー。でも映像の連なりが物語を紡ぐというよりは、偶然の重なりがさまざまな思いを呼ぶ一作で、しかも映像そのもののシンプルな喜びのほうがずっと大きい。ホンマさん自身はフレデリック・ワイズマンに影響されているとか。個人的には撮影のきっかけになったという、ホテル・スタッフの掃除の所作を延々撮る映像が印象的でした。東京では12月10日からシアター・イメージフォーラムにて、『ホンマタカシ ニュードキュメンタリー映画 特集上映』として限定上映、以後全国順次公開。そのほか3作品も同時公開されます。

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