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  • 20センチュリー・ウーマン(2016) directed by Mike Mills by MARI HAGIHARA May 12, 2017 1
  • LOGAN/ローガン(2017) directed by James Mangold by MARI HAGIHARA May 12, 2017 2
  • 皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(2015) Directed by Gabriele Mainetti by MARI HAGIHARA May 12, 2017 3
  • 親愛なる白人様(2017-) created by Justin Simien by MARI HAGIHARA May 12, 2017 4
  • アメリカン・ゴッズ(2017-) created by Bryan Fuller, Michael Green by MARI HAGIHARA May 12, 2017 5
  • 堂々の映画監督となったマイク・ミルズ。自分の父親を振り返る前作『人生はビギナーズ』(2010)に続き、本作では母親と79年のサンタバーバラ、そして20世紀カルチャーに讃歌を捧げています。50代のシングルマザー(アネット・ベニング)、20代のニューウェイヴな同居人(グレタ・ガーウィグ)、早熟な幼なじみ(エル・ファニング)。この三世代の女性に囲まれた15歳の少年はその夏トーキング・ヘッズにハマり、フェミニズムを知り、セックスに悩み……その思春期の風景に、母の声でこんなナレーションが入ります。「彼らはそれがパンクの終わりだとは知らなかった。レーガンが現れるのも知らなかった」。どうしてもノスタルジックになってしまうあの時代の理想と楽観をマイク・ミルズはポラロイドのような映像で切り取り、でも女性はあくまで美化されないからこそ美しい。何より圧巻なのはアネット・ベニングの存在。大恐慌を生きた彼女のたくましさがただの70年代映画にならない視点を与えています。レインコーツ、避妊ピル、ディーヴォのTシャツ、白黒猫――感傷というより、脈絡をなくした時代に、自分を育てたものへの愛を確認するスクラップブック。

  • このところ他シリーズに押されていた『X-メン』シリーズ最新作は、ヒュー・ジャックマンによる最後のウルヴァリン。そもそもこのキャラが一番人気になったことも『X-メン』の勢いを削いでしまったと言えるのですが、これは「最終回」を逆手に取った、一度かぎりの傑作となりました。老いて戦闘能力も不死身の肉体も衰えたウルヴァリン=ローガン。彼はやはり老いて頭脳をコントロールできなくなったエグゼビアとともに、ヒスパニックの女性から託された謎の少女を逃がす旅に出ます。メキシコ国境からカナダ国境まで、滅びゆくミュータントの三人がアメリカを縦断するロード・ムーヴィ。海外では過激な暴力表現が話題になっていますが、ジェームズ・マンゴールド監督が意識的に西部劇を参照しているのでそれも当然。むしろそのなかで、「マイノリティ」「ファミリー」といったこのシリーズのテーマを研ぎ澄ませたことに感心します。とはいえ一話完結なので、『X-メン』の全体像を知らない人もソウルのある物語とアクションを楽しめるはず。このキャラクターを演じてきた17年間の思いを込めたヒュー・ジャックマンの熱演に引き込まれます。

  • インディで、CGなしで、地元ヒーロー映画を作ったら――という発見。スーパー・ヒーローがフォークロアとなったいま、その「型」を叩き込まれている観客にとってこんな映画はうれしいコロンブスの卵。しかも物語はむしろ正統派なのです。主人公エンツォはローマ郊外で核廃棄物を浴びてしまったチンピラの男。最初は新たに獲得した身体能力をしょぼい悪事に使っていたものの、やがて愛する女のために立ち上がります。ヴィランはエンツォのネット人気を羨むギャングスタの優男で、ちょっとヒース・レジャーのジョーカーに似ていたりも。作品内モチーフは70年代のアニメ『鋼鉄ジーグ』ですが、他にもいろんな作品を引用しているのです。そこに現代イタリアの荒れた風景、ローマ人とナポリ人の対立、スタディオ・オリンピコで開催されるローマ・ダービーなどローカルネタを重ねていて、イタリア人男女が肉体的でセクシーなのもいい。CGで作られたキャラや空間が主流となったこのジャンルに、新鮮な実感と手触りを取り戻しています。このアイデアをそのままパクって、日本でも川崎とかで低予算インディ・ヒーロー映画を作ってほしいくらい。

  • Netflixで公開された全10話は、クリエイターのジャスティン・シミエンによる2014年の同名映画のリメイク。彼は自分の体験をもとにしたこのストーリーを2006年から構想していたらしく、つまりは最近の人種をめぐる情勢の反映というより、アメリカで延々と続くアイデンティティ・ポリティクスの議論をアップデートしているのです。舞台は架空のアイビー・リーグ大学、白人学生が多数を占めるキャンパス。そこでさまざまな立場の黒人男女が権利を主張し、闘い、同時にそれが個人的な友情や恋愛、セックスと矛盾するのに直面します。日本にいるとわかりにくい日常的なニュアンスが、大学という狭い場所に違う人種やジェンダー、階級が集まるプレッシャー・クッカーによってわかりやすく腑に落ちる。やや人物設定が説明的なのはしょうがないでしょう。むしろ「いかにもな白人男」を挙げるセリフでライアン・レイノルズとジェイムス・ブレイクの名前が出たり、音楽やポップ・カルチャーの引用が勉強になります。『ムーンライト』(2016)のバリー・ジェンキンス監督が演出した第5章は、一触即発の政治的な回でありながら、「片思い」の回でもあるという彼らしい内容。

  • いや、これほど一見さんにとって意味不明なシリーズはないかも。『ツイン・ピークス』(90-91)でさえもっととっつきやすかったはず。ニール・ゲイマンによる同名小説のドラマ化は冒頭、北米大陸に渡ってきた古代バイキングの殺戮で始まるのです。そしていきなり現代に移ると、本筋となるのは囚人シャドウが釈放後、異様な世界に引き込まれていくストーリー。他にもやたら血まみれな逸話が多く、混乱して原作を読みはじめてしまいました。でも、そうさせるだけの並々ならぬ気合いがすべてのシーンにみなぎっているのも確か。熱狂的ファン層を持つニール・ゲイマンの世界観がそうさせるのでしょう。彼が描くアメリカは移民が連れてきた「古の神々」が落ちぶれ、「新たな神々」がのさばり、誰もがルーツを失った土地。そこで起きる大きな争いにシャドウは否応なく巻き込まれていきます。神の不在ではなく、過多。ただ現段階では北欧神らのジジイキャラが濃すぎて、テクノロジー系の若い神の影が薄い。彼らが「言語はウィルス、宗教はOS、祈りはスパム」になったとうそぶく現実をもっと生々しく見せてほしいところです。海外同時ペースで、アマゾンプライムにて配信中。

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