『こおったゆめをとかすように』は本当に素晴らしいアルバムだった。それから約2年、昆虫キッズの4作目となるアルバム『BLUE GHOST』がまもなくリリースされる。高橋翔の詩世界はなんて支離滅裂なんだろう、と“アラン・ドロン”と名付けられたこの軽快なリード・トラックを聞いて思う。しかしバラバラな言葉は複層的に折り重なって乾いた詩情を立ち上げる。昆虫キッズのセンチメントに湿っぽいところはほとんどない。イメージがあちらこちらに飛び散っていて、湿度が付け入る隙がない。だから都会的だ、とも思う。狂騒の夜が去って、遊びつかれた早朝の薄汚れた街、のような。僕の求めるオルタナティヴはここに。
LAのD/P/I＝アレックス・グレイは、エクスペリメンタルなエレクトロニック・ミュージックの世界における新しいアイコンに……なりかかっている。とにかく彼の音楽は非常におもしろい。マシューデイヴィッドのレーベルである〈リーヴィング・レコーズ〉から今年彼がリリースした『08.DD.15』と『RICO EP』の2作のカセットは、昨年の『FRESH ROSES』よりもずっと素晴らしい、D/P/Iの現時点での最高傑作である。先月末にリリースされた『RICO EP』からのこのリード・トラックはワンオートリックス・ポイント・ネヴァーの『R・プラス・セヴン』へのアンサーなのだろうか？ しかしあの恐るべき耽美と官能とを横目にD/P/Iは軽薄にせわしなく遊んでいる。
昨年の素晴らしいミックステープ『アシッド・ラップ』で一躍脚光を浴びたシカゴのチャンス・ザ・ラッパーの最新曲。『アシッド・ラップ』のヒットでひっぱりだことなった彼は数多くの客演とツアーをこなし、『サイン・マガジン』でも紹介されたとおりジェイムス・ブレイクと寝食を共にして曲を作っていたりしたのだが、この曲は『アシッド・ラップ』を共に制作したピーター・コットンテイルとネイト・フォックス、そしてダニー・トランペット（昨年のフリーEPは素晴らしかった！）によるソーシャル・エクスペリメントというグループとの連名による名義となっている。“パラノイア”を想起させるメロウで内省的な楽曲。新作制作中？
謎のサウンドクラウド・アカウント「important_man464」をサーチせよ、とツイッターでけしかけたアール・スウェットシャツ。そこにはなんと2曲の新曲が……というわけではなく、この2曲は（おそらく）2012年に録られたもの（つまり監獄のような更生学校から“釈放”されたあと）。この“*NEBRASKA MM VS ES* 9/6/12”ではマック・ミラー（アールも参加した最新ミクステ『フェイセズ』が先日リリース）と（“ハイヴ”でもマイクを握っていた）ヴィンス・ステイプルズをフィーチャー。ダークでダーティで隙間の空いた不穏なトラックは、仄暗い内省に沈む見事なデビュー作『ドリス』に非常に近いテイスト。ドープ。
ラストはジャポニカソングサンバンチの曲で爽快に〆てもらおう。先日リリースされたファースト・アルバム『JAPONICA SONG SUN BUNCH』よりリード・ナンバー、“かわいいベイビー”。舞い散るホーンたちとスティールパン、色っぽくかすれた千秋藤田の歌声、飛び跳ねるリズム――〈音楽前夜社〉が鳴らすスウィンギン泰安洋行2014。スカッといこうぜ。ヴィデオは新宿LOFTで毎月催され、彼らが“余興”を務める「ロフト飲み会」の模様をパッキング、ハッピーな雰囲気が存分に伝わってくる。
June 08, 2020
December 22, 2022
September 05, 2014
