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  • IT'S A SIN 哀しみの天使たち(2021) created by Russell T Davies by TSUYOSHI KIZU September 28, 2021 1
  • Summer of 85(2020) directed by François Ozon by TSUYOSHI KIZU September 28, 2021 2
  • モンタナの目撃者(2021) directed by Taylor Sheridan by TSUYOSHI KIZU September 28, 2021 3
  • リル・バック ストリートから世界へ(2019) directed by Louis Wllecan by TSUYOSHI KIZU September 28, 2021 4
  • ドライブ・マイ・カー(2021) directed by Ryusuke Hamaguchi by TSUYOSHI KIZU September 28, 2021 5
  • 「自分の人生を振り返れば、いつだってそこには恥の感覚がある」―—ペット・ショップ・ボーイズの1987年のシングル“イッツ・ア・シン”は、そんな言葉で始まる。「それは罪である」。当時を生きたゲイたちにって、エイズ・クライシスが到来した80年代を振り返ることは「恥」や「罪」を感じることなのだろうか? ……いや、違う、そうじゃないんだ、それだけじゃないとこのドラマは言う。そこにはめくるめくセックスや恋、自由の感覚、未来への渇望、煌びやかなポップ・カルチャーや仲間たちの支え合いがあったのだと。イギリスではもはや伝説的な扱いとなっているゲイ・ドラマ『Queer as Folk』のクリエイター、ラッセル・T・デイヴィスが自伝的な要素をふんだんに入れつつ、80年代ロンドンのクィア・コミュニティを生き生きと、エイズ危機をシリアスに描いた青春劇。あの時代に命を落としたゲイの若者たちの性と生の輝きが、80年代のブリティッシュ・ポップスの輝きと重ねられる。主演はイヤーズ&イヤーズのシンガーであり、アクティヴィストのオリー・アレクサンダー。

  • ザ・キュアーの“イン・ビトウィーン・デイズ”で幕を開け、フィルム撮影のざらついた映像で綴られる、少年同士のひと夏の恋についての映画。でありつつ、「死」という概念に惹かれていた少年が現実の死にはじめて直面する物語でもある。エイダン・チェンバーズによる小説『おれの墓で踊れ』(1982)を17歳のときに読み、強く影響を受けたフランソワ・オゾンが長年の念願を叶えて映画化したということもあり、これまでの彼の作品にあったアイロニカルな感覚よりも、甘美なノスタルジーが漂っている。誰かに惹かれてその情熱に突き動かされることは、しかし、自分が抱えていた幻想を追い求めることではないか――そのような問いが、少年を創作に向かわせもする。いまやフランス映画界の重鎮になったオゾンにとって自らの出自を確かめるものでありつつ、作家としてのスタートを切り直すようなフレッシュな一本。

  • 『ボーダーライン』(2015)の骨太な脚本で名を成したテイラー・シェリダンの監督作。アンジェリーナ・ジョリー扮する森林消防隊員が、ある隠蔽工作を行おうとする組織の殺し屋から追われる少年を守りつつ、モンタナの森林火災から逃れる――という、かなりダイナミックな設定を持ったアクション・スリラー映画だ。『最後の追跡』(2016)や『ウィンド・リバー』(2017)といったシェリダン脚本作群と同様、アメリカの広大な自然がこのサヴァイヴァル劇の舞台となっていて、そこで政治的陰謀に奔走する人間たちの矮小さが際立つ作りになっている。昔ながらのアメリカ娯楽作を踏襲しつつ、ずっしりとした風合いが基調のはこの監督らしさだろう。権力への強い不信感がその根底にあるのだ。アクション・スターとしてのアンジーの成熟をたっぷり味わえる一本でもある。

  • テネシー州メンフィス出身のダンサー、リル・バックことチャールズ・ライリーの軌跡を追ったドキュメンタリー。メンフィス発祥のストリート・ダンス・スタイル「ジューキン」(シカゴのジューク/フットワークとは異なる)とモダン・バレエを融合したことで注目を集め、ヨーヨー・マとの共演やスパイク・ジョーンズによる撮影が実現したのは、なるほど「ストリートから世界へ」至る成功譚なのかもしれない。けれども少なくない黒人少年たちがギャングになるような街で育ったことをリル・バックは忘れておらず、路上と劇場の舞台を彼はいまも行き来する。異なるカルチャーが混じり合うことで、人びとの新たな交流や新しいアートフォームが生まれることを浮かび上がらせる気持ちのいい作品だ。そして何より、リル・バックの鮮烈なダンスに目が釘づけになる。

  • 日常のすぐそばに亀裂が存在することを奇妙な不穏さとともに示したのが『寝ても覚めても』(2018)ならば、その亀裂にのまれた人間たちがその後をどのように生きるのかを探求するのがこの映画だ。村上春樹の短編集『女のいない男たち』収録の数編を翻案しつつ、えんえんと続く舞台稽古の模様や次第に不穏さを増していく会話といった濱口竜介作品のモチーフを3時間の長尺のなかに配分していく。その緩やかな流れのなかで、人間たちは古典―—この映画ではアントン・チェーホフの『ワーニャ伯父さん』―—に実存を揺るがされ、しかし、やがて生かされもする。その古典には、気がつけば、様々なバックグラウンドや言語を持つ者たちが集まっているだろう。そこで交わった者たちはやがて離散し、しかしそれぞれの道をドライブする……過去に生み出された物語を「再演する」ことが生み出す可能性を、この映画は力強く立ち上げる。

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