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  • アメリカン・スリープオーバー(2010) directed by David Robert Mitchell by TSUYOSHI KIZU August 31, 2016 1
  • イット・フォローズ(2015) directed by David Robert Mitchell by TSUYOSHI KIZU August 31, 2016 2
  • 幸せをつかむ歌(2015) directed by Jonathan Demme by TSUYOSHI KIZU August 31, 2016 3
  • ソング・オブ・ザ・シー 海のうた(2014) directed by Tomm Moore by TSUYOSHI KIZU August 31, 2016 4
  • イレブン・ミニッツ(2015) directed by Jerzy Skolimowski by TSUYOSHI KIZU August 31, 2016 5
  • スリープオーバーとは、「お泊まり会」のこと。そして原題は、「アメリカのお泊まり会の神話」。4つのお泊まり会が同時に開催されるある田舎町の一夜を舞台に、本当に何も起こらないただの夏の夜を「10代の神話」だとこの映画は言ってしまう。子どもと大人の狭間の時間の、ちょっとアンニュイな恋心のすれ違いを神話だと呼んでしまう……。永遠に思えた10代の痛みがもう二度と戻らないことを、そんな当たり前のことをこの映画は映し出す。そしてその一瞬をどうにか封じ込めようとする――。イベント上映の限定公開のみだったデヴィッド・ロバート・ミッチェルの処女作が、この夏の終わりに下北沢で公開される。すべてのガールズ&ボーイズ、そしてかつての少年少女は、この映画を前に終わりゆく夏の感傷を開放してしまうだろう。

  • デヴィッド・ロバート・ミッチェルって誰よ? と思った方、そうです、この映画の大ヒットによって将来が確約されている気鋭監督のひとりです。その抜群の映像センスと音響。そして、「セックスをすると得体のしれない“それ”に追われる呪いが感染する」というキャッチーな設定の低予算ホラーにもかかわらず、愛を見つけることの不安と喜びという文学的なテーマがこの映画を特別な一本にしている。デトロイト・テクノよりもスフィアン・スティーヴンスよりも遥かあとの荒廃した廃墟のデトロイトを舞台に――大人たちが棄てた街で――それでも、思春期の終わりに立つ子どもたちは結束しながら共に生きていく誰かを見つけていく。これも夏の終わりに観るべき一本。DVDが出ているので、気の置けない友人たちと過ごす夜にオススメ。ちゃんと怖いので。

  • こちらもDVDレンタルがスタートしたところなので……というか、僕が上半期公開作品のなかでもっとも過小評価されていると思うのがこの映画です。いや、全然大した映画ではない。人生に失敗した人たちが何人か集まって、別れて、また集まるだけの映画。そこで人びとがとりあえず歌ったり踊ったりするだけの映画。だけど、ああ、ジョナサン・デミの映画だな……というか、アメリカ映画だなと思う。なぜならあの国は、そんな風にして失敗した人たちが奏でる歌がいつだって鳴っているところだから。そう、だから冒頭、メリル・ストリープ率いるバンドが寂れたダイナーで演奏するのはトム・ペティの“アメリカン・ガール”であり、ラストに演奏するのは……いや、これは書かないでおこう。そこではアメリカという国のなかで失敗した人びとの人生や感情を歌ってきたあるミュージシャンの曲が、ただ、集まった人びとを踊らせるのだ。

  • アイルランド発のアニメーション作品で、アイルランド神話をベースにしたファンタジー。一見、聖なる少女が救う世界の物語のように思えるが、もっともっと人間くさいドラマがここには描かれていて、すなわち、悲しみや苦しみとともに生きていくこと、そしてそのとき傍らには語り継がれていく「うた」と「おはなし」があることを本作は丹念に語っていく。何よりも、線と光と音の表現が圧倒的だ。細部まで描きこまれているにもかかわらず、時折ドキッとするほど大胆な躍動がある。ヨーロピアン・アニメーション的なアート性もありつつ、語りについてはどこまでもストレートというバランス感覚もいい。監督は長編2作目となるトム・ムーア。彼もまたこれからが期待される才能だ。公開中(2016年8月時点)。

  • ポーランドのイエジー・スコリモフスキ御大が78歳にして撮り上げてしまった怪物作にして、今年もっとも快楽的な映画。撮影、編集、カメラワーク、音響、そのどれもが圧倒的に洗練されていながら、それを内側から破壊しかねないスリリングさにゾクゾクしているうちにあっという間に映画は終わってしまう。ずっと鳴り続ける不穏なベース・ラインのように、わたしたちが生きる現代とはこんなにも危うく、もろく、あっという間に崩壊してしまう……ことを、ただ映画が持ち得る可能性だけで暴いてみせるという、恐るべき一本だ。物語など説明する必要もない、ただただ剥き出しの「映画」。一瞬たりとも画面から目が離せない。これこそ映画館で観なければ意味がない作品なので、ぜひとも劇場へ。公開中(2016年8月時点)。

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