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  • ストレンジャー・シングス2(2017) created by The Duffer Brothers by TSUYOSHI KIZU December 04, 2017 1
  • gifted/ギフテッド(2017) directed by Marc Webb by TSUYOSHI KIZU December 04, 2017 2
  • パーティで女の子に話しかけるには(2017) directed by John Cameron Mitchel by TSUYOSHI KIZU December 04, 2017 3
  • ローガン・ラッキー(2017) directed by Steven Soderbergh by TSUYOSHI KIZU December 04, 2017 4
  • 希望のかなた(2017) directed by Aki Kaurismäki by TSUYOSHI KIZU December 04, 2017 5
  • すでに多くの人が完走し終えていることだろう。80年代ポップ・カルチャーをこれでもかと詰めこみ、空前のヒットとなったドラマ・シリーズの新シーズンは今回も旋風を巻き起こした。80年代リヴァイヴァルはやりつくされてきたし、どちらかと言えばもう旬は過ぎた頃だが、ダファー兄弟によるオマージュが熱く受け止められたのは、スノビズムをかなぐり捨てたストレートど真ん中の豪速球だったからだ。自分もダファー兄弟と同世代だから共感できるのだが、80年代生まれの彼らにとって、リアルタイムとはやや逸れる、しかし幼少期の記憶と結びついているその時代は純粋な喜びの宝庫だったのだろう。それがいま若い世代にとっての大いなる発見となっている。とはいえ、いつまでも80sネタに頼っているわけにもいかない。シーズン2ではデビュー作が売れまくったバンドの2ndアルバムのように、シリーズに期待される要素を押さえつつ慎重に領域を拡大している。今回はおもにキャラクターの関係性の変化でファンを楽しませてくれるが、とりわけホッパー署長が「父であること」を取り戻していく姿に心を掴まれる。彼は古いタイプの中年男性だが、だからこそ、世界から痛めつけられる子どもの父であろうとする。それは父権が失墜したいまのアメリカにも、何か響くものがあるはずだ。

  • オルタナティヴな父親像は、このささやかで愛らしい映画でも模索されている。すっかりキャプテン・アメリカの(文字通りの)「キャプテン」像が板についたクリス・エヴァンスだが、ここでは逞しい身体を縮こめるようにして、愛する姪の保護者としてどのように行動すべきか迷い続ける姿を見せる。彼が演じるフランクの姉は天才的な数学者だったが、それゆえに心を病み自ら命を断ってしまった。その娘のメアリーは7歳にしてすでに数学の非凡な才能を発揮するが、それを伸ばしてやるべきか抑えるべきなのか、フランクには決断することができない。自分の子どもでない娘を引き取り、シングルファーザーのようにして育て、そして彼女の幸せが権力に搾取されることを怯えて暮らす……「キャプテン」とは遠く離れた男を繊細に演じた彼にまず拍手を送りたい。つまりそれは、次世代の幸福を願えば願うほど何が正解かがわからなくなる現代の親のありのままの姿を体現しているからだ。実の子でなくても、世の基準や常識から外れていても、少なくとも良き親であろうと模索し続けることはできる……とてもシンプルだが、いまの時代に必要な物語だ。

  • 1977年のロンドン郊外クロイドン。音楽面でもファッション面でもパンクに夢中の少年エンは、ある日風変わりな女の子であるザンと出会う。ふたりはパンクを共有することで心を通わせ、青春の一瞬を駆け抜けていく……。と、ここまでならよくある音楽をモチーフにしたボーイ・ミーツ・ガール・ストーリーだが、ニール・ゲイマンの小説を映画化した本作はけっこう変だ。それは同時にSFファンタジーでもあり、宇宙人たちがイギリスの憂鬱な街に現れたという設定なのだ。『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のジョン・キャメロン・ミッチェル監督の好みが炸裂しているのだろう、レトロなモダン・アートをDIYで作った、みたいな衣装とセットはかなりキッチュ。それがオリジナル・パンクの美学とぶつかり合っている。この映画はつまり、パンクという「未知なるもの」が世界の文化を更新した時代の興奮をいま一度感覚として呼び覚ます作業なのだろう。パンクはポップ・ミュージック史の教科書に閉じこめられるものではなく、少年少女の手のなかにあるものだったとまっすぐに宣言する素朴さが魅力。そしてそれが、ラスト、次世代のためへの記憶として響いてくる。

  • スティーヴン・ソダーバーグはその多彩なフィルモグラフィのなかで、アメリカの近現代史や社会背景を意識的に織り込んできた。男性ストリップをモチーフにして大ヒットした『マジック・マイク』(2012)ですら、リーマン・ショック以降の高度資本主義に(それでも)乗る人と降りる人の分岐を描いていたぐらいだ。『ローガン・ラッキー』は基本的には、クセの強い登場人物を揃えた『オーシャンズ』シリーズ以来の犯罪エンターテインメントだとされているが、ポイントは舞台が保守的なノース・カロライナ州であり、チャニング・テイタム演じる主人公がアメリカ現代社会から見捨てられてしまった労働者だということだろう。アダム・ドライバー扮する弟もまたイラク戦争で片腕を失っている。つまり、アメリカの内陸の田舎で貧しく暮らしカントリー音楽をこよなく愛する、「リベラル」からは鼻で笑われてしまいそうな人間たちこそが、ここでは現金強奪エンタメ映画の主役を張るのだ。これは絶対に意識的なはず。全体的にはかなりゆるい内容ながら、その「なんとかなるだろ」くらいのノリが殺伐としたいまの時代に心地いい。

  • フィンランドで頑固に自分のスタイルを貫き通してきたアキ・カウリスマキだが、新作でも一切それを曲げることはない。直立不動で無表情の登場人物たち、少ない台詞、シンプルでセンスのいい構図と美術、そして、観客を笑わせようとしてるのかどうかよく分からない奇妙なユーモア。それは彼が古典映画からの影響で磨き上げてきたものだし、また彼の奥ゆかしさをよく表したものだが、ここで完全に唯一無二のものとして完成されている。だが何よりも彼のブレなさは、主人公をシリアのアレッポからの難民にしていることにこそよく表れている。このシュールな笑いの向こうには、過酷な現実と社会へのはっきりとした怒りと抵抗がある。だからこそカウリスマキは主人公の難民青年に友を与え、職を与え、そして共同体を発見させる……映画のなかで。そう、この社会は弱者を生み出し続けるが、映画は彼らを「主人公」にできる。国家や政治が見捨て、痛めつけても、けっして消えることのない尊厳。明日を生きるためのユーモアと愛。カウリスマキの変わらぬ信念に涙せずにはいられない、美しい映画だ。

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