SIGN OF THE DAY

2021年 年間ベスト・アルバム
21位~30位
by all the staff and contributing writers December 31, 2021
2021年 年間ベスト・アルバム<br />
21位~30位

30. Lana Del Ray / Blue Banisters

2021年 年間ベスト・アルバム<br />
21位~30位

子どもの頃、ノーマン・ロックウェルの絵が好きだった。父の海外出張のおみやげに画集をねだったほどに。成長して、それらが偽もののアメリカ像だと気づいて愕然とした。だから、ロックウェル的なアメリカに中指を立てるふりをしながら固執し、「古き良きアメリカ」を演出するラナ・デル・レイの世界観も苦手だった。そこは、ほとんどのメインストリームのアメリカン・カルチャー同様、無邪気に有色人種を脇役か遠景に置く場所だから。彼女の8作目「青い手すり」は、私にとって長年のパクチー嫌いが料理法を変えたら突然、食べられるようになったような作品だ。カントリーの要素が少なめなのが作用しているが、作風が大きく変わっているわけではない。ただ、ここでの彼女は2021年の世界線にいて、そこが好ましい。“テキスト・ブック”でブラック・ライブズ・マターのシュプレヒコールを叫び、“ブラック・ベイシング・スーツ”ではZoomで挨拶しながら「(隔離期間が)この世の終わりなら、彼氏が欲しいかも」とやたら正直で、“アルカディア”ではLAでのヒルトン・ホテルでニューヨーカーとしての自分を確認する。個人的なハイライトは、「(大好きな)すみれを無理にバラと取り替えようとする」と元恋人の価値観の押しつけを怒る“ヴァイオレッツ・フォー・ローゼス”から、マイルズ・ケインと「マジでほっといて」と叫ぶ“ディーラー”の流れ。この「ディーラー」は法的代理人とも、ドラッグ・ディーラーとも取れるのがラナさんの作詞能力の空恐ろしい点で、あちら側にいるエイミー・ワインハウスと交信しているかのよう。“ジャスト・ドゥ・イット”のサビがメランコリックなナイキのCMに聴こえるなど、目の前で星条旗を振られている感じはあいかわらずなのだけれど、私はその旗をさっと取り上げて彼女の素顔を覗く方法を見つけた。それが、うれしい。(池城美菜子)

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29. Serpentwithfeet / Deacon

2021年 年間ベスト・アルバム<br />
21位~30位

“セイム・サイズ・シュー”のミュージック・ヴィデオに、このアルバムの素敵なところがすべて映されている。ジョサイア・ワイズ本人がボーイフレンドと仲睦まじく平和な休日を過ごしているだけのそのヴィデオは、「マイノリティ」を縛りつける抑圧のカギカッコを軽やかに取り払い、クィアのささやかな愛をナチュラルに祝福する。靴のサイズ同じだから共有できるね、男同士だし。そのことがどうしようもなく幸せなら、ファンファーレだって鳴り響く……楽器がなかったら、自分たちの口で歌っちゃえばいいね。その、笑ってしまうほどあっけらかんとしたパーソナルな感覚。孤独や苦悩を絢爛な管弦とともに歌い上げていたデビュー作が嘘のように、ここにはウォームで心地いいアコースティック・ソウル・ナンバーが収められている。ゴスペル・コーラスは神聖さよりも人間の声の親しみやすさを強調し、打音がまろやかになったビートはゆっくり身体を揺らすのに打ってつけだ。そして綴られる恋人や友人たちへの感謝、日々の小さな喜びが柔らかい光となって降り注ぐ。アイデンティティの闘いの時代はまだ終わっていないけれど、だけど同時に、大切なひとたちと過ごす毎日を存分に味わうことで、僕たちは世界のあり様を変えられるかもしれない。そんな風にして、ブラック・クィアの表現の風向きの変化を鮮やかに感じさせた一作。(木津毅)

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28. くるり / 天才の愛

2021年 年間ベスト・アルバム<br />
21位~30位

我々が日常的にごく当たり前のものとして享受しているポップ音楽全般に支配的な「1オクターヴを12等分した平均律というアイデア」は産業革命以降の西洋社会的な価値観を反映したものでもある。つまり、効率と汎用性。効率的な生産と分配にとっては邪魔以外の何者でもない、必然的にそこからはこぼれ落ちてしまう「麗しき陰影」を切り捨てることで、ひたすら効率的に前に進んでいこうというアイデア。80年代初頭から40年、それをより突き詰めた新自由主義的な価値観が世界的に浸透したことで我々はすっかり調和と美を失った。ははは。このアルバムは結果的に誰もがごく当たり前のものとして受け入れているそんな価値観に真っ向から楯突いたドン・キホーテだと言っていいだろう。何はともあれアルバム冒頭の“I Love You”に耳をそばだてよう。この、心が洗われるような透明感。澄みきった響き。だが、ここで選ばれた言葉は明らかにパンデミック以降さらに抑圧されることで否応なく膨れ上がった爆発寸前の邪気を孕んでいる。だが、あろうことかそんな禍々しい邪気をくるりは澄み切った美の世界に変換した。無意味(あるいは不気味)で非生産的だと社会から打ち捨てられた、あるいは、政治的に間違った悪として社会から排除され、黒と認定された魂を拾い集め、しっかりと抱きしめ、白ではなく透明に鳴らすことで空に返した。まさにアンガー・マネジメントの極北。ソーシャル・メディアを中心に自らの正しさを盲信した怒りが吹き荒れる今に対する一つのリアクションとしては絶望的なまでに理にかなっている。パンデミックが覆った世界から自分たちを切り離そうして日本中のどんな作品よりもパンデミック下の空気を反映してしまったという皮肉。おそらくバンドにとっては解放の場以外の何者でもなかっただろう“野球”や“大阪万博”の壮絶な演奏からはむしろ、気の置けない仲間たちとの創作の現場にしか逃げ場所がなかったことを図らずも証明している。無理矢理とってつけたように社会との繋がりを意識したアルバム最終曲“ぷしゅ”が一抹の安心をもたらすものの、このアルバムはパンデミック下におけるもっとも正直かつ高品質な断末魔の叫びだ。この2021年、その真価と志の高さと比べると、世界中のどんな作品よりも見過ごされるべくして見過ごされたアルバム。当然といえば当然だろう。この作品の真価が広く共有される準備はまだ我々の社会にはどこにも存在しない。泣いてもいいのに。大人のふりすんなよ。(田中宗一郎)

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27. Mike / Disco!

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21位~30位

ストリーミングで多くの作品が横並びで検索でき、すぐに聴ける世の中で、果たして「アンダーグラウンド・ヒップホップ」という呼称は有効なのだろうか。レコード会社と契約してあちこちでかかるメインストリームのヒップホップに対して、「地下」とざっくりまとめられたこの呼び方は、全盛期の90年代~00年代前半でさえ、当該のラッパーからの評判は良くなかった。それを踏まえてあえて書くと、私はアンダーグラウンド、それと被っても完全には重ならないオルタナティブ・ヒップホップを熱心に聴き続けている。そして、その伝統が根強くあるニューヨークを拠点にしているマイクは、アバンギャルド、エクスペリメンタルとも呼ばれる括りの輝ける新星としてここ数年ずっと話題になり、評判が高い人だ。ニューヨークと書いたが、よく調べるとブルックリンとブロンクスを行き来するだけでなく、ナイジェリア移民の子どもとしてニュー・ジャージー、ロンドン、フィラデルフィアまで引っ越しをくり返していて、その折り重なった音楽体験が彼のサウンドには色濃く出ている。DJブラックパワーとのアルター・エゴで、自ら作るトラックはどれも独特で混沌としながら聴きやすい。一方、独り言のような内省的なラップは丁寧に韻を踏み、ワード・プレイ含めてむしろオーソドックスだ。この組み合わせがマイクの魅力であり、ディスコ・ミュージックの片鱗もない7作目の『ディスコ!』はその魅力が炸裂している。近年は母の早世による喪失感をよくテーマにしていたが、本人曰く落ちついたそうで、その少しだけ明るい気分をリリックとアートワークに写るクリスタル・ボールに反映させたそう。マイク未体験の人は、とりあえず16曲目“エアドロップ”を聴いてぶっ飛ばされてほしい。(池城美菜子)

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26. Kanye West / Donda

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『ドンダ』がトップにランクしていない年間ベストなんて何も信じるに値しない。つまり、この〈ザ・サイン・マガジン〉を含む、世界中のあらゆるメディアの年間ベストは何も信じるに値しない。その一方で、本作は『Yandhi』や『ゴッズ・カントリー』と名付けられていた当初のアルバムのコンセプトや膨大な素材の破棄や再利用を経て、3度目のリリース・パーティの後も延々とアトランタのスタジアムに籠城してたまたま「アルバム」という多くの人にとって馴染みのあるフォーマットに落とし込まれているだけで(案の定、その約2ヶ月後にはデラックス・エディションで大幅に書き換えられた)、この2時間11分余り(デラックス・エディション)の「アルバム」の真価と正面から向き合うと、これまで後生大事にしてきた価値観や評価軸が瓦解してしまうということもわからないではない。まあ、それこそがカニエが本作で意図していたことなわけだが。カニエは『ドンダ』リリース後も、何事もなかったかのようにこれまで同様に毎週日曜日にはサンデー・サーヴィス・セッションを繰り広げている。オートチューンがほぼ剥ぎ取られたカニエ自身のヴォーカルとオルガンが奏でる旋律、そして要所要所に差し込まれたプリーチによって導かれていく『ドンダ』全体を覆うトーンは、言うまでもなくサンデー・サーヴィスのセッションからのフィードバックであり、『ドンダ』はそのようなカニエ・ウェストという音楽的&宗教的運動体を一つのフレームから切り取ったテンポラリーな作品なわけだが、そんな基本的事実さえもほとんど顧みられることなく、多くの人々は(宗教的には)瑣末な揚げ足を取りづけている。救いがあるとしたら、本作に参加した数えきれないほどのクリエイターたちはもちろんのこと(トッド・ラングレンのような例外もいるようだが)、現在のカニエが立っている場所に少なからずエンパシーを抱くことができる多くのクリエイターたちはその真価に気づいていることだろう。(宇野維正)

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25. Adele / 30

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21位~30位

「30歳は大人?」。もしあなたが20代以下なら何の疑問も挟まないかもしれないが、首を傾げてしまう30代以上は少なくないだろう。アデルが30歳の頃に制作を始めた『30』はそんな問いに一つの視点を与えてくれるレコードとなるはずだ。アデルは本作について自らの離婚をテーマとした作品だと語っているが、必ずしもすべての曲が離婚について歌っているわけではない。そこには別れの嘆きもあるが、息子への愛、新たな恋の始まりに対する高揚、元夫へのディスと自己批判など、30~33歳にかけての等身大のアデルがあらゆる角度から切り取られ詰め込まれている。そして彼女は『30』について、息子に当てた手紙でもあると語る。つまりアデルは自らが大文字の”母親”ではなく、一人の人間であり女性であることを、いつか息子に伝えるための手紙として本作を作ったのだという。そうした点で、このレコードは、母が母となる前に送っていた人生についての思索し、その社会的役割にある種の疑問を投げかけたクレイロの『スリング』と、テーマ、そしてサウンド面でも、相似かつ対称的な作品だと捉えることもできる。『30』が内包する、グレッグ・カースティンやマックス・マーティンのような既知のコラボレーター、そしてルドヴィグ・ゴランソンやインフローといった初顔合わせとなるプロデューサーらとセラピーのようなスタイルで行われたというソングライティング、オーセンティックかつモダンな世界最高峰クラスのサウンド・プロダクション、そしてアデルをアデルたらしめる豊かなヴォーカル表現。これらは非凡な出来ではあるが、目の覚めるような新しさはない。しかし、世の中がフォーク的あるいはベッドルーム的な表現に向かった2020年を経由した2021年においては、フランク・シナトラらを思わせるクラシカルさと、さも当然のようにウーファーを震わすモダネス、その融合は、鮮烈だ。世界が止まったとしても、歩みは止めない。そして、当事者として、母親、そして離婚した女性というレッテルがレッテルでしかないことを表現し、それを息子に伝えるという構造も、やはり極めて2021年的だ。大人の定義はきっと時代とともに変わる。かつての大人たちも精一杯にその役割と果たそうとしてきたはずだ。きっと我々はそれに助けられてきた。だが、今、大人が子どもたちに見せるべきは、隠蔽や犠牲によって成り立つ強さではなく、開かれた姿勢と絶えなき更新なのではないか。(照沼健太)

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24. Drake / Certified Lover Boy

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21位~30位

異常事態が通常モードになってしまった2020年代の頭に、ドレイクがドレイクらしく居てくれることのありがたさ。スタジオ・アルバムとして6作目の本作は、その「変わらなさ」が仇となって海外の音楽メディアからは評価されていないが、おそらく本人は気にしていないだろう。だって、ものすごい数のファンが聴き続けているのだから。ビートルズをサンプリングして金持ちぶりを見せつけ(“シャンペイン・ポエトリー”)」、サザン・ラップ(“ナイフ・トーク”)と90年代R&Bをうまく引用し(“パピズ・ホーム”)、00年代メインストリーム・ラップを恩師リル・ウェインとリック・ロスとともに謳歌する(“ユー・オンリー・リヴ・トゥワイス”)など句読点的な曲もあるが、基本、全編が安定のドレイク節だ。個人的にはダンスホール・レゲエへからアフロ・ポップへいい感じに浮気したテムズとの“ファウンテンズ”と、得意の心ここに在らずなフローが吉と出た“ノー・フレンズ・イン・ザ・インダストリー”が好きで、よく聴いた。21曲といつも通り長尺だが、そのうち9曲がノア”40”シェビブが手がけているのでとっ散らかっていない。サンプリングやライムの引用を細かく分析するタイプも、「なんとなく音楽を聴いている」層も満足させるドレイクの特異な才能がよく出た作品だろう。実は、この10年ずっと「いつになったらドレイクに飽きるんだろう」と自問し続けているのだが、先日の〈ラリー・フーヴァー・コンサート〉での貫禄のステージを見ながら、聴かない時期があっても飽きないかも、と思い至った。カニエのカヴァー“24”と“ゴッズ・プラン”以外をすべて去年と今年の曲で構成し、多くがライヴ初披露だったのにもかかわらず、観客はよく詞を知っていたし、本人も何度もパフォームしたように落ち着いていた。孤独と憂鬱を売りにしているこのスーパースターは、鉄の心臓の持ち主なのだと気づいた瞬間。だからこそ、こちらも安心して憂鬱ごっこにつき合い続けられるのだ。(池城美菜子)

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23. Madlib / Sound Ancestors

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ヒップホップ/ジャズからのマッドリブ(本作ではプロデュース)と電子音楽/テクノからのフォー・テット(同じくアレンジ、エディット、マスタリング)の双方には、このアルバムにも最初から最後までに一貫している或る種の端正さの魅力がある。単純な快楽主義からも遠く離れ、同時に独りよがりも避ける。つまり、おそらくここでテーマの過去に探る未来のアフロセントリシズム(「Gotta be righteous, gotta be conscious!」) を中心とした探究の試みは人々と共有されることで意味を帯びる。理想主義を忘れない、MAGA議事堂侵入とBLM運動が現実には起こっている世界で困難を感じる、想像上の、サウンドによる、時間/空間/経験の構築。(荏開津広)

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22. Tems / If Orange Was a Place

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21位~30位

ローリン・ヒル“アイ・ゴッタ・ファインド・ピース・オブ・マインド”(『MTVアンプラグド No 2.0』収録)が、自分にとって、とてもスピリチュアルな曲だというのが、シンガーソングライター/プロデューサーのテムズ。ローリンは、この曲で(信仰を通じ)真の自分へと目覚めるまでの本心を切々と歌っているが、テムズのアルトの歌声もまた自身の内面をフレキシブルに表現する。“リプレイ”は「わたしの声は謎めいている、周りはいつもディスろうとしている」と始まり、“ファウンド”では、客演のブレント・ファイアーズに、自分の中のもうひとりの自分を歌わせている。彼女は自分の演りたい音楽をかたちにしてくれるプロデューサーがいなかったことから、独学で音楽制作を身につけ、2019年の“トライ・ミー”や翌年のデビュー・アルバムでその成果を表した。それ以前に彼女の“ミスター・レベル”がナイジェリアで注目されていた頃、同国のメインストリームの象徴であるウィズキッドが牽引するかたちで世界中に拡散されたアフロ・ポップよりもナイジェリアに根差した独自の音楽を、つまり「オルタナティヴ」な表現を、形式を問わずに自由に、そして、自由を表現する動き「オルテ」が起きていた。そこでは海外の様々な音楽からの影響を自由に表しつつ、ナイジェリアの豊穣な大衆音楽史や文化を尊重したDIY精神が息づいている。本作の制作のメインは、ガーナのギルティビーツに移ったが、アフロビーツと90年代末から2000年代初頭頃のR&B感覚との融合にとどまらず、オルタナティヴ・ポップとの親近性も聴かせる。(小林雅明)

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21. Vince Staples / Vince Staples

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21位~30位

ヴィンス・ステイプルズはロサンゼルスのコンプトンで生まれ、ロング・ビーチに越してからも貧困と犯罪の中で育った人だ。10代の頃はギャングに片足を突っ込んだ過去があり、彼のライムには銃の話はよく出てくる。だが、彼は決してギャングスタ・ラッパーではない。カリフォルニアの犯罪率の高い区域で生きるメンタリティと現実を文学的にラップしたのがケンドリック・ラマーであり、エクスペリメンタルなビートに乗せてユーモアを交えて語るのがヴィンスなのだ。共感できる点が多いようで、彼は2作目『ビッグ・フィッシュ・セオリー』の“イエー・ライト”にラマーを招いている。この名曲のプロデューサーが、今年の頭に事故死したソフィーと、フルームだ。4枚目にしてセルフタイトルの本作は、前作でも組んだEDM出身ケニー・ビーツを全面的に起用。1曲目“アー・ユー・ウィズ・ザット?”は夏の夕方みたいなノスタルジックなトラックなのに、死が身近すぎる日常を淡々とラップする。トラックの柔らかさとメランコリックな口調に騙されてはいけない。ヴィンスの絶望はかなり深い。どの曲も2分強と短く、10曲聴いても22分と2秒。だが、アートワークの瞳に満ちている彼の諦観を伝染させるには十分な長さだ。“ロウ・オブ・アヴェレージズ”で「Louis bag, Gucci bag, you got baggage(ヴィトンを持っていようが グッチを持っていようが 君が問題を抱えていることには変わりない)」とつむぎ、煌びやかな西海岸ライフの影をさらりと強調する。金持ち自慢系のラッパーと同じブランドの名前を出しても、ヴィンスは伝えたいポイントがひと味違うのだ。煽るわけでも力むわけでもなく、現実と折り合いをつけるヒップホップ。デビュー以来ずっと好評価を得ている人だが、2021年はとくに時代の気分にはまった。ちなみに、彼自身はドラッグも酒もやらないそう。(池城美菜子)

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