●『FACE』って、メディアには常に顔を隠して登場する80KIDZにとっては象徴的なタイトルで、実質的にセルフ・タイトルだよね。それって、ある意味、この作品に対して自分たちが自信を持っているっていうことだし、これまでとは違う作品に仕上がった手応えがあるんだと思うんだけど、そこのところはどうですか?
Ali&「傑作って思ったんじゃない?(笑)わかんないけど。傑作っていうか、過去できた作品のなかで、これが一番しっくり来たのかも」
JUN「4枚目じゃないですか? いろいろやってきて、節目ではあったと思うんだよね。これまで6年やってきたけど、今後も5年、10年活動する基盤となる作品になったかなと。また新たなスタートじゃないけど、次の5年に向けての土台になれば、っていう感じだね」
Ali&「なんかね、マネージャーの家に集まってアルバムのデモを聴いた時に、JUNくんが、『これ行けるわ』って言ってたんだよ」
JUN「言ってたかも(笑)」
Ali&「その時は、『そうかな?』とか思ってたんだけど、家帰って聴いたら、確かにこれはちゃんと詰めて作ったら深くなるな、と思った」
●じゃあ、デモの時点から、『FACE』はこれまでのアルバムと違うっていう感触があったんだ?
JUN「うん」
Ali&「そうだね」
●どんなところがこれまでと違うと思ったのか、説明することはできる?
Ali&「なんか、今回のアルバムが80KIDZそもそもの趣旨に一番合ってる気がする。結局、僕らっていろんなものが好きなんだけど、バックボーンにはロックがあって。でも、ロックだけを見るんじゃなくて、ロックのかっこよさをいろんな音楽の中から見つけ出して、それをクラブ・ミュージックとして出すっていうのがスタートからあったんだよね。基本的に。インテリジェンスあるものとして出すっていうのも大きくて、だからアートワークもずっと凝ってたし、写真も顔を見せないとか、すごくかっこつけてて。そういうのが、たぶん一番スッと全部出た。っていうのが、どっかにあったんじゃないかな」
●このアルバムは、たぶん無駄な力が入っていないよね? いろんなことを考え過ぎていないっていうか。
Ali&「うん、全然。たぶん、これまでの中で一番……悪い言い方したら適当なんですわ。良い言い方したらすごくラフにやってる」
●今の音楽シーンとか、これまでのファンの目線とかを気にしたか気にしなかったかで言えば、気にしないで作れたわけだよね?
JUN「うん、そうだね」
●そこって今回デカいよね?
Ali&「デカいかもね。初めてかも」
JUN「僕らが言われてたエレクトロみたいのもよくわかんなくなって、シーンがあるのかないのかわからない状況だし。世の中的にも、今何をしなきゃいけない、っていう縛りがあんまりないような雰囲気で。(2013年にリリースしたデジタルEPシリーズの)『80』シリーズですっきりしている部分もあった。あと、レーベルが変わったのもあるかな。環境が変わって、世の中の状況も変わって」
Ali&「自分たちも変わって、みたいな」
JUN「そう。全部が整った状態になった。そういうのもあったと思うよ。で、結果的にこうなった。総合的にいい状況だったっていうのはあるかもしれない。とりあえず好きなことやってみて、どうなるか見てみようっていう感じでできたんだよね」
Ali&「前だったら、今回みたいなデモが並んだら、ここにもうちょっと派手なのを何曲か入れて、わかりやすく80KIDZ的な“Nautilus”みたいなのをバーンッとやろうぜ、みたいなのがあったけど、それを入れようとしてない時点で、何も考えてないっていうか。全然これでもいいっしょ、って」
JUN「でも、そういうのも多少はあったよ。最後に作ったのが“Face”って曲なんだけど」
Ali&「そう。けど、あれくらいしか今回80KIDZっぽいのがなかったから」
JUN「80KIDZっぽいのをやめようっていうのは、過去を否定するような意味があるよね? でも、僕たちは過去を否定しているわけじゃなくて。僕たちのキャラとして、ああいうメイン・リフをずっとリフレインするっていうスタイルもあるから。過去を否定するわけじゃなくて、僕たちのキャラとしてあるものとして認めてほしいっていうか。80KIDZが変わってよかった、じゃなくて、昔ながらの80KIDZもまだやるんだなっていうのも残したかった」
Ali&「でも、リードっぽいリフがあって、っていうあのスタイルにはもう捉われてないかもしれない。バキバキも忘れたし」
●“Face”は確かに従来の意味での80KIDZらしい曲だけど、それは昔からのファンに気を使って、っていうわけではないよね?
JUN「じゃないね。自分たちのなかでの問題が大きい」
●でも、これまでのアルバムだとどう? そこの部分って。1stとかのサウンドが好きな80KIDZのファンに対して、ちょっとサービスなり、何かしら期待に応えたいみたいな部分は何パーセントかあった?
JUN「あったと思う。これやったら喜んでもらえるからやってあげたらいいよね、っていう」
Ali&「1stがすごい枚数上げて、そこで僕たちの名前も広がったでしょ? だから、そこのお客さんを離さないように、っていう部分が変にあったと思うんだけど、もう完全にそれもないかな」
●それが今回デカいような気がする。いい意味で吹っ切れた。
Ali&「うん。既に『80』シリーズが、そういうお客さんを完全に突き放してるじゃない? 新しいお客さんっていうか、新しく興味を持ってくれる人を探す旅にもう出てるから。そのスタンスのアルバムだったりするかもしれないね」
●80KIDZって、ちゃんとエレクトロ以降の新しいサウンドも追いかけているし、それを作品の随所で出してきたよね。でも、そこが世間に伝わり切っていないっていう感覚ってあったでしょ?
JUN「あるある」
Ali&「超あったね」
●それって、従来のファンへのサービスが見えにくくしていた部分もあるんじゃない?
Ali&「そうだと思うよ。本当にそうだと思う」
●だから、俺からすると、『FACE』はようやく80KIDZがそういうところから解き放たれて、作るべきアルバムを作ってくれたな、っていう作品。余計なことを気にせずに、自分たちが今作りたいものをストレートに作るっていうのが、やっと出来たんじゃないかなって。
JUN「そうなんすか」
Ali&「この返事の場合、半分以上話聞いてないから(笑)」
JUN「ちゃうちゃう(笑)」
●ヒドいな(笑)。でも、俺みたいにデビュー前から知っていた人間からすると、「ようやく作ってくれた!」っていうアルバムなんだけど、途中から聴き始めた人や、これから聴き始める人には、その感覚ってなかなか伝わらないと思うんだよね。だから、これまでのことも改めて振り返ってもらっていいですか?
JUN「いいよ」
Ali&「オーケー」
80KIDZ interview
キャリア総括篇②:『THIS IS MY SHIT』
「エレクトロの覇者として世界へ」
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総力特集:80KIDZ
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