SIGN OF THE DAY

「EDMとラップの時代」にロック新世紀は
来るのか? 大文字のロックとインディの
橋渡し、バンド・オブ・ホーセズ新作を肴に
by YOSHIHARU KOBAYASHI July 06, 2016
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「EDMとラップの時代」にロック新世紀は<br />
来るのか? 大文字のロックとインディの<br />
橋渡し、バンド・オブ・ホーセズ新作を肴に

ヒップホップと女性ポップ・アイコンとEDMが「世代の声」となった今、USインディのピークはとっくに過ぎ去っている、という見方もあるだろう。だが2016年に入ってからも、カー・シート・ヘッドレストやモダン・ベースボール、ホイットニー、ミツキのアルバムを始め、その磁場からは素晴らしい作品が生まれ続けている。このようなUSインディの底力は、少しばかりの逆風では揺るがない強固な音楽的土台と、それを築き上げてきたインディの歴史があってこそ。もしあなたがそんなインディの歴史とその変遷について知りたければ、このインタヴューの前編を読んでもらうのが手っ取り早い。

結局、「インディ」って何を意味する言葉?
その当事者、バンド・オブ・ホーセズとの
対話でそうした素朴な疑問にすべて答えます


そして、00年代のUSインディ全盛期を支えたバンド・オブ・ホーセズの新作『ワイ・アー・ユー・オーケー』も、やはりそうしたUSインディの豊かな土壌に実った作品だ。カントリーをモダンに変奏した“スロウ・マイ・メス”を聴いてもわかる通り、このアルバムは00年代USインディの重要なテーマであったフォークロア・ミュージックの再定義という側面を持っているし、“イン・ア・ドロウアー”でダイナソーJr.のJ・マスキスを召還したことからはインディの歴史に対する素直な敬意が窺える。

Band of Horses / In A Drawer

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だが、このアルバムは、ただの「USインディの良作」には留まらない。大御所グリン・ジョンズをプロデューサーに迎えた前作『ミラージュ・ロック』が、アメリカでEDMが猛威を振るい始めた2012年にもう一度古典的な「ロック」を見つめ直した作品だったとすれば、『ワイ・アー・ユー・オーケー』はそこから更に一歩進んでいる。王道のアメリカン・ロックをダイナミックに鳴らしているという意味では前作と地続きであるものの、ストリングスやエレクトロニクスのレイヤーを丁寧に重ねたサウンドは現代的な手触りが強まった。プロデューサーにグランダディのジェイソン・リトル、ミキシングにデイヴ・フリッドマン、エグゼクティヴ・プロデューサーにリック・ルービンを迎えた今回の布陣からも、それが偶然の産物ではないことが読み取れるだろう。

Band of Horses / Casual Party

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言ってみれば、この『ワイ・アー・ユー・オーケー』は、テーム・インパラやアラバマ・シェイクスなどによって大文字のロックが再定義されようとしている今こそ聴かれるべき作品。そして、そのような大文字のロックとUSインディの橋渡しとなるような作品だ。それについてはこちらの記事でも触れている通り。

21世紀の「ロック音楽」の今――
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もしかすると、日本から見た場合、彼らバンド・オブ・ホーセズが本国アメリカで根強い支持を受けている理由はわかりづらい部分があるかもしれない。だが、ここ40年間のインディという大きな流れで見れば、誰もが納得のいくところだろう。このインタヴュー記事がそうした理解の手助けになるのであることを願う。

では、時代の節目を象徴し、そのハブとなり得る本作『ワイ・アー・ユー・オーケー』についてもベン・ブリッドウェルに語ってもらおう。




●今年の〈コーチェラ〉は、ガンズ・アンド・ローゼズがヘッドライナーを務めたことも話題になりましたよね。彼らのように一度はグランジに駆逐された古典的なハード・ロック・バンドへの待望論が盛り上がったことは、ここ10年のインディの時代に対する反動――誠実ではあるが小難しいインディよりも、強烈なダイナミズムとカタルシスを持った大文字のロックが聴きたいという人々の潜在的な欲望の反映のようにも思えます。あなたとしては、そういった意見には頷けますか?

Guns N' Roses / Welcome to The Jungle (live at Coachella 2016)

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「勿論。だって、ガンズ・アンド・ローゼズみたいなバンドの曲って……曲自体がそれを語ってる、っていうか。あとみんな、自分のアイドルがそんなに健全じゃなかったような時代が懐かしいんじゃないかな。インタヴューで行儀がいいわけでもなく、少なくともガンズに関してはすごく危険な感じがしたよね(笑)。まるでアメリカの悪の部分っていうか、礼儀がなってないっていうよりはその反対だった。うん、君が言ったことは、みんながロック・スターの危険な感じをまた求めてることとつながってる気がする。でもやっぱり何より、とにかく曲がビッグだから! それは間違いない。もしかすると今は誰もああいう曲を作ってないからかもしれないし、作ってたとしても見つけにくいし。ガンズのアウトプットと競争できるような曲を見つけようとしたって、ほとんどないよね? もしかすると世代的なものなのかもしれない。もう人が出てくる背景が違ってしまってるっていうか。僕にははっきりした答えはないけどね」

●一方で、ここ数年は、明らかにインディ・ロックよりもヒップホップやR&Bが若いリスナーの間で求心力を持っています。あなたも最近はこういった音楽をよく聴いているそうですね?

「僕にとって何よりも大事なのは、あそこにあるアーティスティックな部分なんだ。まあ、僕自身最初のきっかけは、自分たちのアルバム制作にかける時間が長すぎて、とにかく違う音楽を聴きたくなった、っていう。少なくともギター・ベースの泣き言じゃない音楽、男が女々しく歌ってるんじゃない音楽をね(笑)」

●ハハッ(笑)。

「でもいったんヒップホップやラップに飛び込んでみたら、そのリリシズムやプロダクション、メロディのセンスにすっかり夢中になって。しかもあそこには少なくともまだものすごく先があるっていうか、みんなが絶えずプッシュしつづけてる感覚がある。『ヒップホップとは』『ラップ・ミュージックとは』っていうのが常に再定義されつづけてるんだ。そこがエキサイティングなんじゃないかな」

●まさにそうですね。

「これからもさらに革新されていく感覚があるっていうか……その意味ではギター・ミュージックには少し限界があるのかもしれない。そう言っちゃうのって馬鹿げてるんだけど(笑)。だって考えてみると、大規模なシフトがもう起きてるわけだからね。でも、わからない。もしかするともうすぐ、ギター・ベースの音楽の中から予想もつかないような新しいスタイルが出てくるかもしれないし。ただ今はヒップホップとエレクトロニック・ミュージックにおいてはまだ境界をプッシュしていける部分がすごくあるように思えるし、それがエキサイティングなんだ」

●ただ、アラバマ・シェイクスやテーム・インパラは、大文字のロック、あるいはスタジアム/アリーナ・ロックのサウンドを2010年代的に再定義しようとしているようにも思えます。

Alabama Shakes / Don't Wanna Fight (live at Lollapalooza 2016)

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Tame Impala / Let It Happen (live at Radio 1's Big Weekend 2016)

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「ワオ! 今君が言った二つはほんと、大好きなんだよね! 僕、さっきの質問の時にアラバマ・シェイクスとテーム・インパラの名前を出すべきだったな。彼らは彼ら自身の音楽において、やっぱり境界をプッシュしてる人たちだから。それを通じて作品をエキサイティングなものにするのと同時に、彼らはクラシックなものにも注意を払ってる。堂々と自分たちが受けてきた影響を押し出していて、そこを拍手したいんだ」

●彼らはクラシックな音楽に敬意を払いつつ、モダンなプロダクションを意識的に導入することによって現代性を打ち出していますよね。ではバンド・オブ・ホーセズの新作『ワイ・アー・ユー・オーケー』(2016年)の場合、その現代性はどこで担保されているのでしょうか?

Band of Horses / Whatever, Wherever (from Why Are You OK)

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「僕らとしては現代的であろうとか、自分たちのやってることをアップデートしようとか、そういう意図はまったくなかった。単にその時しっくりきた、っていうだけでね」

●じゃあ、“ダル・タイムス/ザ・ムーン”における強い緩急がつけられた二部構成だったり、“イン・ア・ドロワー”のリズム・マシーンと生のドラムがスウィッチするようなアレンジは、どんなところがしっくりきて採用したんですか?

「君が言ったようなところにはジェイソン・ライトルの指紋がついてるんだ。彼はシンセのテキスチャーなんかにかけては抜群だし、ずっとそうだから。つまり、『ジェイソンがまたマッド・サイエンティストみたいなことやってるな』っていうことで、僕らはただそれについていったんだ(笑)」

●では、ジェイソン以外に、『ワイ・アー・ユー・オーケー』に最も大きな影響を与えたアーティストや作品を挙げるとすれば、何でしょうか?

「そうだな……カリフォルニアにいたから、どうしたってペイヴメントを聴いてた。まあ、僕はどこに行こうと聴いてるんだけどね(笑)。でもなぜかしらカリフォルニアで車を運転してると、ペイヴメントを聴きたくなるんだ。僕にとって『ワーウィー・ゾーウィー』っていうアルバムは、あまり世間には認識されてない傑作で。少なくとも過小評価されてると思ってる。本当に大好きで、このアルバムを作ってる時に聴き込んでるのを自分でもわかってたしね。で、自分が聴くもの、やってることはその時作っているものに当然何かしら入ってくるんだ」

Pavement / Rattled By The Rush

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「あとは、ビッグ・K.R.I.T.の『キャディラクティカ』。あれはクレイジーなくらい聴きまくってた。それが具体的にどうアルバムに影響したか、って言われると答えにくいんだけど、とにかくインスパイアされたんだ。自分の作品を作っている間にインスパイアされて興奮した新しい音楽、ってことで言えばね」

Big K.R.I.T. / Cadillactica

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「僕は普段からいろんなレコードをたくさん聴くんだけど、その二枚かな。他になんかあったかな? まあジェイソンとは仕事の後にハングアウトして、よくあるようなやつ、『これまで作られた曲の中で最高の5曲は?』みたいなことを言い合ったりしてた。アルバムっていうより、お互いのジュークボックス的な曲のリストを作ってたんだ。それで彼が好きな曲をかけて、『こういうテイストなんだ』って知ったり。それってこれまで10年一緒にやってきたバンドのテイストとはやっぱり違うんだよ。その意味でも、他の人のインプットがあることがグレイトだった。まあ幸いなことに、今回僕らをインスパイアしたレコードはずっと繰り返し聴いてるようなレコードじゃなく、他のソースから出てきたんじゃないかな」

●では、デビュー当時のあなたたちのライヴァルがシンズやマイ・モーニング・ジャケットだったとすると、今のあなたたちのライヴァルは誰だと思いますか?

「なんか笑えるね。ていうのも、ライヴァルとか競争相手、みたいな言葉は自分では絶対使わないから。なんていうか、自分たちがやってることに自信があるから、そういうふうには見ないっていうか……僕ら、そんな嫌な野郎の集団でもないし(笑)。ただ、アヴェット・ブラザーズみたいなバンドとは共通点が多いかもしれない」

The Avett Brothers / Morning Song

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「どっちもノース・カロライナ州出身で、リック・ルービンと仕事してるし、歳も近いし、どっちのバンドも女性からの人気に感謝しなきゃいけない(笑)。少なくともオーディエンスにおいて女性の割合が高いんだ。だからプロフィールとしては似てるけど、彼らのほうが僕らよりちょっと上手いかも(笑)。人気もあるだろうし。でも、本当に僕はそんなふうに考えてないと思う。ただ自分たちができることをやって、一定のレヴェルをキープしつづけようと思ってるだけでね。自分たちに自然にやれることをやるしかないんだよ。その上で運が付いてきたらラッキー、っていうだけ」

●じゃあ最後に。バンド・オブ・ホーセズのデビューから現在までが「USインディの10年」だったとすると、これからの10年間は何の10年になると思うか、無責任に予想してみて下さい。

「面白い質問だな。まあ、今の感じからすると……ヨーロピアン・ディスコに向かってる(笑)。アメリカが『ディスコ・サックス』とか言ってる間も、ヨーロッパはダンス・ミュージックから離れた時期ってないし、正直ずっと人気なんだよね。でも今は特に、世代の振り子的なものかもしれないけど、みんな友達と遊びに出かけてて、ライヴで隣の人に『しーっ、静かにして! この歌詞が好きなんだから!』みたいな感じじゃなくなってる(笑)。ヴァイブとしては大勢の人たちの中で一体感を感じて、『ワオ!』っていう。ただ踊って、歌詞とかじゃなくそれでコネクトするフィーリングが主流なんだよね。だから、もし僕が腕を背中で捻られてどうしても言わなきゃいけない、ってことになったら、『次の10年はイビザ』って答えるかもしれないな(笑)」



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通訳:萩原麻理


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