SIGN OF THE DAY

バンド音楽なんてもう死んだでしょ?!
と訳知り顔で語る輩を一発で黙らせる、
2016年期待の新人バンド6組をご紹介
by YOSHIHARU KOBAYASHI January 15, 2016
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バンド音楽なんてもう死んだでしょ?!<br />
と訳知り顔で語る輩を一発で黙らせる、<br />
2016年期待の新人バンド6組をご紹介

最近の音楽シーンの状況を見渡すと、バンド音楽は本当に難しい局面に立たされているよなあ、と改めて思わずにはいられません。2010年代のイギリスではバンドという形式がすっかり下火なのはご存知の通り。アメリカでは10年以上に渡ってUSインディ勢が気を吐き続けていますが、〈ピッチフォーク〉の2015年の年間ベスト・アルバムでトップ20に入っていたバンド作品がテーム・インパラ『カレンツ』の1枚だけ(!)という有様。これは厳しい。ラップトップでフリー・ソフトを使って音楽を作れる今の時代、コスパの悪いバンドは前時代的。と、したり顔で言われてもなかなか返す言葉がない。

イギリスの〈BBC〉が毎年発表している新人のブレイク予想ランキング、〈サウンド・オブ・2016〉のラインナップを見ても、バンド音楽が置かれた現状の厳しさが窺えます。ノミネートされた全15組のうち、バンドはたった1組。しかも、その1組=ブロッサムスは、良くも悪くも小奇麗なポップ・ロックですから。

Blossoms / At Most A Kiss

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いや、〈サウンド・オブ・2016〉には、クラッシュとブラーとリバティーンズとストリーツの血筋を引いたラット・ボーイもノミネートされているじゃないか。と思うかもしれません。

Rat Boy / Sign On

Rat Boy / Wasteman

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いかにも金がなさそうなジャンクでパンキッシュなサウンドに乗せ、コックニー訛りでロンドンの下町に暮らす若者の冴えない日常をユーモラスに歌うというスタイルは、正しく英国ロック的。ではあるんですが、そんなラット・ボーイことジョーダン・カーディが1人ですべての演奏とプログラミングをこなすソロ・プロデューサーであることには、やはり時代の変化を感じてしまいます(ライヴはバンド編成みたいですが)。

このようにバンド音楽が劣勢に立たされている現状に対して、良い悪いと言うつもりはありません。バンドではなくても、素晴らしい音楽なんて幾らでも作れる。ケンドリック・ラマー然り、ジェイミーxx然り。何よりも、かの偉大なデヴィッド・ボウイが、そのキャリアを通じてソロ・アーティストの可能性を証明し続けてきたのは周知の通りです。

ただ、バンドというスタイルでしか生み出せない、奇跡のような輝きが存在するのもまた事実。メンバー間の距離感や関係性――それが良好であれ険悪であれ――から否応なく滲み出る、その集団固有のヴァイブ。複数の人間がバンドというひとつの船に乗り、運命共同体として漕ぎ出すことで生まれるロマン。あるいは、演奏力もセンスもテイストも固定されているからこそ、その制約から生まれる予想外のケミストリー。それはやはりソロ・アクトからは決して感じ取れない魅力です。

このようなバンドの本来的な美しさをもう一度思い出させてくれるアクトは、実のところ、世界各地から着実に生まれつつあります。そこで、本稿ではその注目すべきニュー・カマーたちを一挙に紹介していきましょう。

やっぱりバンドって最高だな! と思わず声を上げたくなる新人。その筆頭は、間違いなく、スペインの女子4人組ハインズです。海外では1月8日にリリースされた1stアルバム『リーヴ・ミー・アローン』(日本盤は3月2日発売)のバズからしても、2016年初頭、世界でもっとも注目されている新人バンドだと断言出来ます。とにかく、まずは聴いてみて下さい。

Hinds / Chili Town


リズム・パターンからコード進行から、本当に何の変哲もない、シンプル極まりないガレージ・ロック。しかも、かなりユルユル。というか下手っぴ。なんですが、「気の合う仲間同士でワイワイとバンドやるのが最高に楽しい!」という彼女たちの思いが音から溢れ出していて、本当にチャーミング。

期間限定でもうすぐ終わると思いますが、アルバムの全曲試聴もやっているので是非どうぞ。

Hinds / Leave Me Alone (full stream)

こういったあまりに屈託のないサウンドは、バンド・シーンが冷え込んでいるイギリスや成熟し過ぎているアメリカからは、なかなか出てこないでしょう。彼女たちがスペイン出身というのも、その意味では必然だったのではないかと思います。

英米以外と言えば、ここ数年、アイスエイジを筆頭としたコペンハーゲンのシーンが注目されているのは、こちらの対談記事でも紹介した通り。今回の原稿のテーマに照らし合わせると、そのコペンハーゲン勢からはコミュニオンズをピックアップしないわけにはいきません。

Communions / Forget it's a Dream

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ストーン・ローゼズとオアシスのミッシング・リンク――なんて形容したくなる音を鳴らすバンドが、2016年の今、存在すること自体が奇跡です。皮肉でも何でもなく。その驚くほど瑞々しく、眩いサウンドは、あまりにも長い歴史(とそれに対する知識)を背負ってしまった英米のバンドが失ってしまった大事なもののひとつでしょう。

もう一組、コペンハーゲンからリスという4人組も紹介しておきます。彼らは正式なシングルを1枚リリースしたばかり。スタイル・カウンシルのようでもあり、今様のR&Bのようでもあるスウィートでソウルフルなサウンドをスカッスカのバンド・アレンジで再現したような音楽性はかなり新鮮。やっぱりコペンハーゲン、面白いですね。

Liss / Try

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2015年末に紹介したオーストラリアのDMA’sも、この枠組みで語られるべき存在。リズム隊があくまでライヴのサポート・メンバーであることには目をつむって下さい。笑ってしまうくらいに「ど」オアシスな音楽性は、もはや清々しささえ感じます。彼らに関しては、詳しくはこちらの記事をどうぞ。

DMA’s / Lay Down

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勿論、ここ日本にもバンド・マジックの素晴らしさを再発見させてくれるアクトはいます。2014年末にライヴ・デビューしたばかりの3人組ガールズ・バンド、SaToAは間違いなくそう。

SaToA / Tree


「えっと、日本のハインズですか?」と突っ込みたくなるような初々しさ。微笑ましいと言えば微笑ましい。でも、どこか湿り気を帯びていて、くぐもったサウンドは2010年代USインディ・ガレージと緩やかに共振しているようにも感じられるし、メロディは時に50年代ガールズ・グループを思い起こさせる。楽器を手にして間もないような演奏なのに、ここまで聴かせてしまうのは、ただヴァイブスがいいというだけではないのかもしれません。

そして、神戸発の4人組スースも注目です。彼らが2015年8月に〈セカンド・ロイヤル〉からリリースしたシングル“Dancing Stupid”は、ラヴィン・スプーンフルにも通じるような、60年代的な楽天性が何とも心地よいトラック(カップリングはゾンビーズのカヴァー)。淡々としたシンプルなミドルテンポのようでいて、4分半をしっかり聴かせきってしまう技量は見事。ミニマルだけどツボを押さえたベース・ライン、綿菓子のように甘いソフト・ロック調のコーラスも効いています。

Seuss / Dancing Stupid


今の時代状況の中でふと忘れてしまいがちになりますが、このように見ていくと、「やっぱりバンド音楽、最高だな!」と思いますよね。勿論、他にも素晴らしいバンドはたくさんいます。新人に限った話ではないですが、もっと注目されるべき日本のアクトたちはこちらの記事にもまとめているので、是非、併せてチェックしてみて下さい。


ポップ・ミュージックは世界が舞台。そんな
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このニッポンで生まれたアクト6組をご紹介





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