>>>2016年のベスト・アルバム5枚
>>>2016年のベスト・ソング5曲
とにかく、ビヨンセ、カニエ・ウェストそしてドレイクに翻弄された一年間だった。ビヨンセの“ソーリー”は個人的にも非常に救われた一曲。『レモネード』の歌詞対訳を担当出来たことは非常に光栄に思うし、母親のティナも含めたノウルズ家の女性たちが放つ輝きの強さといったら! 同時代に生きる女性としても非常に嬉しく、逞しく感じた一年であったし、ビヨンセやソランジュに背中を押されるように自分の将来についてもボンヤリと考えさせられることが増えた……気がする。
カニエの『TLOP』やリアーナの『アンタイ』、レディ・ガガの『ジョアン』もそうだけど、今年はスーパー・スターたちが鎧を脱ぐように、より「個人」や「家族」といった視点にフォーカスしているような気がした。偶然なのか、それとも不安定な情勢ゆえだろうか。
他、ヒップホップ的にはカマイヤが繋ぐ西海岸の系譜、そしてヤング・ドルフやヨー・ゴッティらによってさらに活気付いたメンフィスのシーンもエキサイティングだった。
個人的な思い出としては、アトランタにビヨンセを、そしてシカゴにカニエを観にわざわざ渡米したことも大きい。特にアトランタでは現地のレコーディング・スタジオや新鋭ラッパーを訪れることもでき、何よりストリップ・クラブでメイク・イット・レイン(ジョージア州のストリップ・クラブは全米でも珍しく、全裸でのサーヴィスが許可されている)出来たことは一生の思い出となった。アトランタのヒップホップは、今後20年くらいシーンを牽引していくのではないかしら。
そして、ラップもしくはヒップホップが「流行っている」こともひしひしと体感した次第。こうして〈サイン・マガジン〉に拙文を掲載していただけることもまた然り。ただ、国内における専門のメディアがないことは非常に寂しく思う。2017年も、より自由に、かつ革新的に広がっていくヒップホップの時流にしっかりと掴まりながら、ハードでダーティな楽曲にたくさん触れていきたい。
〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、
2016年の私的ベスト・アルバム5枚
&ベスト・ソング5曲 by 渡辺裕也
2016年
年間ベスト・アルバム 75