①「2014年ベスト・トラック5曲」(順不同)>>>
トラックは単純に回数を聴いたり印象に深く残ったものから選んだ。元ヴィヴィアン・ガールズのフランキー・ローズが始めたビヴァリーの“ハニー・ドゥ”はMVも含めて最高。シンバルズ・イート・ギターズの“ウォーニング”は、停滞気味なUSインディ・ギター・ロック勢の中で気を吐いた良作『ルーズ』の導火線=リード・トラック。そしてホリー・ハーンドンは新作が今一番楽しみなアーティストの一人。もう片方の新曲“ホーム”も素晴らしいけど、ここはビョークの『メダラ』とOPNの『アール・セヴン・プラス』の間をモーフィングするような“コーラス”を。
元埋火の見汐麻衣の新たなプロジェクト、マナーズはオーガ・ユー・アスホールとの対バンで見たライヴがとにかく鮮烈で忘れがたい。アーバンでメロウ。夜にひらくサイケデリックAOR、とでも呼びたい繊細な陰影が生み出す深い陶酔感。そして、ようやく音源化されたうつくしきひかりの“木漏れ日のうた”。2年程前に初めて聴いたときから耳を離れることがなかった曲だけど、いざあらためて聴いたらすっかり「クラシック」になっていた。7インチに付属したイラストレーターの惣田紗希によるブックレットも美しい。
②「年間ベスト・アルバムから外された、我が心のアルバム5枚」(順不同)>>>
アルバムは、2015年を迎えたたった今も聴いているものの中から。ビョークの最新作への参加でクローズアップされたハクサン・クローク――と言えば一昨年の『エクスカヴェーション』がデムダイク・ステアやレイム以降のインダストリアル/ドローンとして称賛を得たイギリスの気鋭だが、そんな彼がポートランドのスラッジ・メタル・デュオをプロデュースした『アイ・シャル・ダイ・ヒア』。スワンズやアースも射程に捉えた現代ヘヴィ・ミュージックの一塊としては勿論、デス・グリップスとのコラボにも顕著な近年ビョークが音楽的関心を寄せるところの“副聴盤”としても聴ける一枚かと。そんなハクサン・クロークと共にビョークと組むもう一翼、アルカの『ゼン』が問題作なら重要作に挙げたいのがD/P/Iの『エムエヌ・ロイ/リコ』。OPNやシーン・マッキャン然り、エレクトロニック・ミュージックの最前線で常套化し先鋭化されたグリッチやサンプリング~ミュージック・コンクレート的手法の最も刺激的な好例であり聴き逃しはNG。
そして、昨年末に滑り込みで聴いた、それぞれ日本とスペインの若者たちによるとびっきり新鮮な2枚。前者は飄々として不敵。それほど数を聴く方ではないのだけど、最近聴いた日本の若いバンドの中で久しぶりにザワついた。後者のアルバムは近々〈キャプチャード・トラックス〉からリイシューされる。ヒリつくような渇いたギター・ロック。
最後は――これこそ完全に個人的な思い入れ以外の何物でもないかもしれないが、サーストン・ムーアのアルバムを。いまやスワンズに大きく水をあけられた感じだが、これは近年の躁鬱期を抜けて本来の姿を取り戻した充実作。失地回復の兆しを予感させるし、期待したい。
「〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ
①『2014年ベスト・トラック5曲』+
②『年間ベスト・アルバムから外された
我が心のアルバム5枚』by 岡村詩野」
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