SIGN OF THE DAY

〈サマソニ〉行くなら、これは聴いとけ!
ケミカル・ブラザーズを楽しみ尽くすべく
その四半世紀の歴史を総ざらい!:前編
by YOSHIHARU KOBAYASHI July 01, 2015
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〈サマソニ〉行くなら、これは聴いとけ!<br />
ケミカル・ブラザーズを楽しみ尽くすべく<br />
その四半世紀の歴史を総ざらい!:前編

ケミカル・ブラザーズ、それは今や夏の風物詩。サザンかよ、いやチューブか? なんて無粋な突っ込みはやめてください。一度でも彼らをフェスで観たことがある人はわかるでしょう。夏のお祭りの最後にドカンッ! と大きな花火を打ち上げるのは、やっぱりケミカル・ブラザーズなんですよ。大会場でこそ本領を発揮するバッキバキのビートに、異世界に迷い込んだかのようにサイケデリックで美しい映像。その2つを完全に調和させ、スタジアムの隅々まで自分たちの世界に引き込んでしまう彼らのライヴは超一級品のエンタテイメント。これを観てしまったら、間違いなく一番の夏の思い出。彼らこそフェスのヘッドライナーにふさわしい。日本の夏、ケムズの夏。とはよく言ったものです。あ、誰もそんなこと言っていませんか。そうですか。

でも冷静になると、「夏フェスと言えばケムズだよね!」と感じているのは、それなりのオトナだけかもしれません。ちょっと考えてみてください。ケムズが前回来たのは、2011年の〈フジ・ロック〉。もう4年も前のことです。ワールドワイドでリリースされた彼らの初ライヴ映像作品『ドント・シンク―ライヴ・アット・フジ・ロック・フェスティヴァル―』に収録されているあの名演を、10代のほとんどは体験していないんですよ。それどころか、その後のEDMの隆盛を身を持って経験してきた彼らは、アヴィーチーやマデオンは知っていても、「ケミカル・ブラザーズ? 誰それ?」といった感覚でもおかしくない。下手したら、ケムズ直前のアリアナちゃんが終わったら、明日のファレルとゼッドに備えて帰りまーす(東京の話ね)、となる可能性だって十分にあります。ひゃー。でもそれって、あまりに勿体なさ過ぎる話なんですよ。

そこで私たちは、初心者でも安心、ケミカル・ブラザーズのライヴを徹底的に楽しみ尽くすためのパーフェクト・ガイドを作りました。彼らの最新のライヴ・レパートリーを中心に、時代順に彼らの歩みを一気におさらい。これさえ読めば、「ケミカル・ブラザーズって何なの?」という疑問がスッキリ解消され、おまけにライヴも完璧に楽しめちゃうというわけです。いやー、便利ですね。

それでは、早速振り返っていきましょう。時計の針は1992年まで巻き戻されます。


Song To The Siren (1992)

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当時、まだマンチェスター大学の学生だった二人が、記念すべきデビュー曲“ソング・トゥ・ザ・サイレン”を300枚限定で自主リリースしたのが1992年(翌年に〈ジュニア・ボーイズ・オウン〉から再発)。この頃はまだダスト・ブラザーズという名前でした。1992年と言えば〈モ・ワックス〉が設立された年であり、〈ニンジャ・チューン〉はDJフードの『ジャズ・ブレイクス』シリーズを送り出すなど勢いに乗りまくっていた時期。つまり、ヒップホップ由来のブレイクビーツ音楽がガンガン出て来ていた時代ですね。これから間もなくして、トリップホップの隆盛も始まります。“ソング・トゥ・ザ・サイレン”は、そんな時代の空気が如実に反映されたトラック。BPM112。ハウスに近いスピード感で、サンプルをガシガシぶった切っては繋げる、荒々しいブレイクビーツ作品です。冒頭のけたたましいサイレン音は、レイヴ・ミュージックの名残でしょうか。

Chemical Beats (1994)

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これは今でもライヴの大定番。1994年にリリースされたEP『フォーティーンス・センチュリー・スカイ』の一曲目。セカンド・サマー・オブ・ラヴの洗礼を受けた二人だけあって、ビキビキのアシッド・ハウスですね。こりゃアガるでしょ。リリースはこちらが先ですが、ジョシュ・ウィンク“ハイヤー・ステイト・オブ・コンシャスネス”を思わせるところも。映像は1997年の〈グラストンベリー・フェスティヴァル〉。まだトムの髪もフサフサです。



初期シングルの段階では、「アンディ・ウェザオールが関わっているし、一応チェックしておいたほうがいいのかな?」くらいの認識をされていたケムズですが、本格的に注目を集め出したのは1stアルバム『さらばダスト惑星』がリリースされた1995年。トリップホップが完全に勢いづき、ブリットポップが花開いた頃です。この年の〈グラストンベリー〉は、メイン・ステージのヘッドライナーがオアシスとパルプ、セカンド・ステージのヘッドライナーがプロディジー、そしてアコースティック・テントのポーティスヘッドは超満員で客が入りきらなかった。と書けば、大体の時代の空気感は伝わるでしょうか。そのような状況の中で、ケムズはグイグイと勢いを伸ばしてきました。トリップホップの陰鬱な空気を振り払うような荒々しいビートを世の中は求めていたし、ケムズの陽気さはブリットポップとも調和していた――とは〈NME〉の評ですが、なるほど、それも一理ありそうです。

Leave Home (1995)

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1stからのリード・トラックでもあった“リーヴ・ホーム”は、そんな彼らの快進撃の始まりを象徴する一曲。ダウン・ピッキングで弾いているような、デデデデ、デデデデというベース・ライン然り、初期シングルと較べるとかなりロック色が強い。ヒップホップとアシッド・ハウスを合体させ、そこにロックのダイナミズムを注ぐという彼らのスタイルは、ほぼ完成形を見ています。この曲でケムズは初の全英トップ20入り。完全に勢いに乗り始めました。とは言え、同じ年に映画『トレインスポッティング』効果で大ブレイクしたアンダーワールド、既にキャリアのあったプロディジーはまだまだ上の存在で、ケムズはそれに続く3番手というポジションでしたが。



そう、プロディジーやアンダーワールドといった名前が出てきたところで思い出されるのが、“テクノ四天王”なんていう言葉。ありましたね~。90年代半ばの日本では、ビッグなダンス・アクトはざっくり“テクノ”と括られていたんです。でも勿論、ちゃんと聴けばそれぞれ別物。プロディジーはレゲエとレイヴ音楽だし、アンダーワールドはプログレッシヴ・ハウスとニューウェイヴ、そしてケミカル・ブラザーズはヒップホップとアシッド・ハウスとサイケデリア(ちなみに四天王のもう一組はオービタル!)。そして、この頃、〈ヘヴンリー・サンデイ・ソーシャル〉というパーティのレジデントDJを務めていたケムズは、同じくレジデントだったファットボーイ・スリムらと共に、ロック的なブレイクビーツをさらに追及していくことになります。

Setting Sun (1996)

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そして、その最初の成果が、言わずと知れた大ヒット“セッティング・サン”。当時、世界の頂点に立っていたオアシスのノエル・ギャラガーをフィーチャーしたこの曲は、まさにビッグ・ビート時代の“トゥモロー・ネヴァー・ノウズ”。爆撃弾のように降り注ぐブレイクビーツに、サイケデリックな上モノのシークエンス。ノエルのメロディは全盛期にしてはそこそこですが、歌声は存在感ありまくり。これは完全にクラブ・ミュージック世代のロックンロールでした。この曲でケムズは初の全英1位を奪取し、続く2ndアルバム『ディグ・ユア・オウン・ホール』で最初の絶頂期を迎えることになります。

Block Rockin' Beats (1997)

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ケミカル・ブラザーズと言われて、多くの人が真っ先に思い浮かべるトラックがこれ。そう言ってもいいくらいに、彼らの象徴的なサウンドが詰め込まれた大名曲でしょう。『ディグ・ユア・オウン・ホール』は1stよりもさらにロック色を強めたアルバムですが、それをもっとも端的に表現した曲でもあります。インストのダンス・トラックにもかかわらず、これもまた全英1位を獲得。つまり、後にビッグ・ビートと呼ばれることになる彼らのスタイルは、この時点でポップ・ミュージックのひとつの形として熱狂的に迎え入れられた、ということです。上の映像は、2007年にロンドンで開催されたフリー・ライヴですが、冴え渡るビートは健在。トムの髪はどこかに行っちゃったみたいですけど。

The Private Psychedelic Reel (1997)

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そして、2ndと言えば、これも忘れてはいけません。今でもライヴのラストを飾ることが多い感動的な名曲。最初期から彼らのサウンドには欠かせなかったサイケデリックの要素を思いきり押し広げ、10分超にわたってユーフォリックな空間を生み出すという試みは、当時のケムズにとってはかなり実験的だったと思います。こちらは2000年の〈グラストンベリー〉の映像。トムご自慢のブロンド・ヘアはまだ結構ありました。

Out of Control (1999)

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ファットボーイ・スリムがシーンの決定打『ユーヴ・カム・ア・ロングウェイ・ベイビー』をリリースした1998年を境に、ビッグ・ビートは徐々に失速。それとほぼ同時期に、ユーロ・トランスが勢力を伸ばしていきます。ダンス・ミュージックの楽園イビサでもトランスが大流行。ケムズの3rd『サレンダー』は、そんな時代の変節に呼応した作品だと言えるでしょう。ニュー・オーダーのバーナード・サムナーとプライマル・スクリームのボビー・ギレスピーが参加した“アウト・オブ・コントロール”は比較的ロック色の強いトラックですが、それでもサウンド面におけるトランス・ブームの影響は顕著。ゴツゴツとしたブレイクビーツは姿を消し、軽めの4つ打ちや暗くドラッギーなサウンドが使われているのが時代だなあ、という感じです。

Hey Boy Hey Girl (1999)

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正直、『サレンダー』は今聴き返すと小っ恥ずかしいところもありますが、この曲だけは別格。キャッチーな声ネタとヒプノティックなシンセのリフを繰り返しながら、アゲてアゲてアゲまくる最強のフロア・アンセム。やっぱりフェスだったら、「ヘイ・ガールズ、ヘイ・ボーイズ、スーパースターDJs、ヒア・ウィ・ゴー!」とみんなで叫んで盛り上がりたいじゃないですか。下のライヴ映像なんかが、まさにその理想形。最近はライヴのオープニングを飾ることも多い曲なので、〈サマーソニック〉でのライヴの幕開けでいきなり大合唱が起こったら、めちゃくちゃテンションが上がりそうです。

Hey Boy Hey Girl (live at Glastonbury 2007)

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というわけで、前半はこれにて終了。思いの外、長くなってしまいましたが、まだ90年代が終わったばかりです。まあ、この頃はリリース・ペースも早く、濃密なキャリアを歩んでいましたからね。後半は2000年代から今年2015年の最新トラックまで一挙に総括。軽快に飛ばしていきます。さあ、一呼吸置いて、準備ができた人は、以下のリンクから後編へどうぞ!




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