SIGN OF THE DAY

ニール・ヤングとブラー、ニルヴァーナを
繋ぐ、その中心にダイナソーJr.がいた時代、
「栄光の92年」再び。DMA'Sインタヴュー
by SOICHIRO TANAKA March 02, 2016
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ニール・ヤングとブラー、ニルヴァーナを<br />
繋ぐ、その中心にダイナソーJr.がいた時代、<br />
「栄光の92年」再び。DMA'Sインタヴュー

おそらくDMA'sほど馬鹿にしやすいバンドはいない。特に、この10年間もっとも豊饒な時期を迎え、大輪の花を咲かせたUSインディ音楽を熱心に聴いてきた向きからすれば。しかも、この10年間のUSインディ隆盛の時代にまったくついていけず、いまだにオアシスの幻影を追いかけてるようなファンが彼らに飛びついている姿を目撃したりすると、さらに興味が失せてしまう気持ちもわからなくはない。

だが、おそらくはDMA'Sと何かしら共通のバックグラウンドを持つだろうカート・ヴァイルにはカート・ヴァイルの良さがあり、弱点があり、DMA'Sもまた彼らにしか出来ないことをやっている。いくつかの点においては、遥かにDMA'Sが優れていたりもする。当たり前の話ですが。

もっとも実際のところ、彼らDMA'Sのサウンド・フォーミュラは極めてシンプル。①シンプルな和声、②歪んだノイジーなギターとアコースティック・ギターのストローク、③初期ザ・バーズのサウンドをアシッド・ハウス以降のエクスタティックなキラキラした音色に置き換えたストーン・ローゼス風ギター・アルペジオ、④90年代初頭のUKインディ・ダンスを思わせるダンス・フィールを持ったリズムーーそうしたレジュメで一応の説明がついてしまうものでもあります。

そこで〈NME〉初め、関係各所が彼らDMA'Sにつけた安易なレッテルは、「ノエル・ギャラガーの子供たち」、「オアシスの後継者」、「ブリットポップ・リヴァイバル」などなど。ま、それで彼らに注目が集まるなら、それでいいんですけど。俺達もたまにそういうことわざとやってるし。実際、〈サインマグ〉における以下の記事は、そうしたステレオタイプな視点を敢えて逆手に取ることを目的にして作られたもの。勿論、ゼロ年代の菊地成孔以降の楽理分析を中心とした音楽評論だけをありがたっていらっしゃるリスナーの皆さんに対する嫌みも含まれていることは否定しません。どっちにしろ、性格悪いスな。

ブレイク必至? 南半球から突然現れた、
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ただもし仮に、満を持してリリースされた彼らの1stアルバム『ヒルズ・エンド』からのこの曲を聴いても、前述の類いのコピーを鵜呑みにしてしまうとしたら、それはかなりキツい話なんじゃないでしょうか。

DMA'S / Too Soon

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というわけで、本稿は次のような目的意識で作られています。①いや、DMA'Sにはもっといろんな音楽的なリファレンスがあるでしょう、②彼らを評するのにオアシスよりももう少し的確なバンドがいるんじゃないですか?という二点を明らかにすること。で、勿論、そんなケツの穴の小さな目的以外の目的もあるにはある。

かつてアッシュのティム・ウィラーが2001年初頭に3ndアルバム『フリー・オール・エンジェルズ』を完成させた時に、「ただ僕らは真っ当なロックの興奮を取り戻したいんだ」と語ったことがあります。時代は欧州ではレディオヘッドが『OKコンピュータ』から『キッドA』~『アムニージアック』という金字塔を打ち立て、北米ではトータスが『TNT』という作品によって、ポストロックというタームを全世界に浸透させた時期に当たります。世界がストロークスやホワイト・ストライプスといったシンプルでダイレクトなサウンドを持った一連のバンドを発見する直前の話です。

アッシュというバンドも馬鹿にされ続けたバンドでした。白人の中の黒人と呼ばれ続けたアイリッシュの一員であり、しかも北アイルランドという非常に政治的に不安定な国の出身。ブリットポップの尻馬扱いされ、件の〈NME〉からは「ティーンネイジ・センセーション」という2年後には足かせにしかならないレッテルを貼られ、結果的には1stアルバムが大成功したものの、続く2ndアルバムのツアーでは破産しかけ、一度はバンドの解散まで考えたバンドです。でも、彼らは森は生きているや吉田ヨウヘイgroupのようなヤワなバンドではなかった。そして、3ndアルバム『フリー・オール・エンジェルズ』において、全世界で300万枚のセールスという大成功を収めた。

何故、彼らにそれが出来たのか。それは、「ただ真っ当なロックの興奮」を大衆の多くとシェアすることが何よりもポップ音楽にとって大切なことだということを知っていたからです。ソングライティングという面からしても大傑作と呼ぶしかない、ノエル・ギャラガーに「曲を書くというのは、こういうことなんだ」とまで言わしめた以下の曲を改めて聴く時、どうにも胸が空くような興奮を抑えきれなくなる方もたくさんいるに違いないと思います。

Ash / Burn Baby Burn

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ポップ音楽がもっとも意味を持つ瞬間というのは、同じ時代に生きる人々がそれを聴いて、音楽的にだけでなく、いろんな意味合いにおいて猛烈に触発される瞬間です。そういう意味からすれば、2016年におけるJ-ROCKバンドの90%はゴミだと感じている我々〈サインマグ〉にしても、彼らの音楽と彼らのファンダムの関係については頭から否定出来ないと感じています。だって、それ以上に大切なものはありませんからね。もっとも、その共依存的な関係はどうなの? とは思っていますよ、勿論。

もし仮に、経済的にも文化的にも恵まれた環境に育ち、楽理的に優れたポップ音楽を聞き分ける耳を持っていながら、ポップ音楽のそうした側面に目をつむってしまう者がいるなら、それこそが悪しきディレッタンティズム、悪しき好事家的な態度と呼ぶべきでしょう。

文化的にも経済的にも裕福なサブカル・リスナーには絶対に理解出来ない、でも、社会にとってまぎれもなく重要な意味を持つ音楽が世の中には存在する。そして、間違いなくこの南半球はシドニー出身のDMA'Sこそはそうした何よりも重要なパズルの1ピースを担うバンドなのは言うまでもありません。

と同時に彼らDMA'Sの音楽には、この2016年の音楽シーンで起こっているあらゆる動きに対する反動がある。確かにどれも悪くない、でもどれもつまらないんじゃないか? どこもかしこも党派性だらけで、そうした状況を横断しようとする野心を持った、本来の意味においての大文字のポップがどこにも存在しないんじゃないか? しかも、DIYで。そうした反動です。そして、そうした態度が間違いなく彼らの音楽性を培っている。その結果が、DMA'Sのバンド音楽としてのエッジであり、誰もがコネクト出来るメロディなのです。

彼ら自身が認めている音楽的なリファレンスについては、たっぷりいろんな動画を貼っておきました。2015年の〈ボナルー〉での40分ほどのパフォーマンスも含め、彼らの音楽の動画も用意しました。

以下の対話に目を通し、いくつかの動画を聴き通した上でも、彼らにとってはもうすでに足かせになっている「オアシスの後継者」というコピーをまだあなたが必要とするなら、それはそれであなたの選択です。決して間違ってはいない。では、是非、以下の記事をじっくり楽しみながら、あなたなりの正解をみつけて下さい。

DMA'S / Lay Down

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●まず教えて下さい。三人でDMA'Sを始めた時は、誰が曲を書いて、どういうバンドをやるっていうのは明確にあったんですか?

マット・メイソン(以下、メイソン)「このバンドが始まった時はジョニーとトミーでやってて。まだ俺は関わってなかったんだけど、二人が本当にやりたかったのは、『ポップなメロディにノイジーなギター、それにエレクトロニック・ドラム』っていう音楽だったと思う。だから、今と比べると、もっとエレクトロな側面があったんだよね」

●じゃあ、それほど明確な方向性はなかった?

メイソン「なかった。何ヶ月かして俺が加わって、生ドラムに変えたんだ。で、今はジョニーと俺でほとんどの曲を書いてる。とはいえ、いまだに方向性はあんまりないんだよね。あるとしたら、『ポップ・ソングを書いて、どうなるかみてみよう』って感じで(笑)」

ジョニー・トゥック(以下、ジョニー)「ホント何も考えてなかったんだ。頭にあったのは、いいメロディと、ラウドなギターだけでね」

●じゃあ、すごくシンプルなアイデアだったんだ?

ジョニー「ああ、どこまでも完璧にシンプルだった。俺は当時、ボブ・ディランやニール・ヤングにハマってたんだ。とにかく彼らの歌詞が好きでさ。メイソンはアメリカのダーティなギター・バンド、ダイナソーJr.やソニック・ユースが好きだったんだ」

Dinosaur Jr. / Freak Scene

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DMA'S / Feels Like 37

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●うん、ダイナソーJr.についてはすごく腑に落ちる。

ジョニー「で、トミーはストーン・ローゼズやオアシスのビッグなボーカルとメロディが好きなんだよね。あとジーザス&メリー・チェインだとか。影響としてはかなりバラバラだった。“デリート”とか“ソー・ウィ・ノウ”とか、フォーキーな曲もあるだろ? それはフォーク的な音楽を聴いてたから。それが理由」

DMA'S / Delete

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●ただ、ここ10年、北米のインディ・バンドがフォークを今の時代に即した形でアップデートしようとしてきたよね。でも、彼らはあなた達よりもっと複雑な音楽を作ってきた。例えば、アーケード・ファイアとか、スフィアン・スティーヴンスとか。

ジョニー「うん、わかるよ。で、アーケード・ファイアだったら、初期のブルース・スプリングスティーンからの影響がある、とかね。俺もスプリングスティーンは大好きなんだ。ただ、ここ10年の音楽にはあんまり影響されてない。大体は90年代の音楽を聴いてる。つまり、20年前の音楽だね」

メイソン「俺たちの親が聴いてた音楽の影響もある。でも、何よりも俺たちは、身の回りにあるものとは違う音楽を発見したかったんだと思う。でも、そういうバンドを生で見られるわけでもなかったし、自分たちのカルチャーの中になかった。だから、何か違うものとして発見したんだろうな」

●逆に、オーストラリアのドメスティックなバンドで影響を受けたものはあるんでしょうか?

メイソン「たくさんあるよ。俺が若かった頃好きだったバンドの一つに、ピーボディ(Peabody)っていうシドニーのバンドがいる。すごく影響を受けた。ブランク・レルム(Blank Realm)っていうバンドはすごく好き。仲がいいのはシドニーのグリーン・バザード(Green Buzzard)。まだ数曲リリースしたばっかりなんだけど」

Peabody / The Only Way I Know

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ジョニー「あと、ポール・ケリー(Paul Kelly)っていうソングライターは俺たちにとって大きな影響の一つなんだ。かなり上の世代なんだけど、今でも音楽をリリースしてる」

メイソン「(シャツをまくって、腕のタトゥーを見せて)ほら、ポール・ケリーの名前(笑)。すごい人なんだ。多分、オーストラリアのアーティストの影響としては一番大きいだろうな。彼はアイコンなんだ。オーストラリアではみんなに愛されてて」

Paul Kelly / To Her Door

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●なるほど、かなりいろんなことがクリアになりました。ただ、そういうバックグラウンドを持つあなたたちが、例えば〈NME〉では、「ギャラガー・ベイビー」と呼ばれてたりする。

ジョニー「ああ(笑)」

●かなり乱暴なプロファイリングだよね?

メイソン「理解はできるけど、賛同はできないって感じかな。オアシスのことは勿論、嫌いじゃない。でも、俺たちはそんなつもりは全然なかったから。まあ、ありがたいな、とは思う。でも、賛同はできない。まあ、俺たちの曲ってポップ・ソングとロックンロールの組み合わせだから、彼らの音楽みたいに聞こえるのかもしれないけど。ほら、俺たちの歌ってオーストラリア訛りだろ? アメリカ訛りじゃなくてイギリスに近い訛りだからっていうのがあるんじゃないかな。もしアメリカ訛りだったら、絶対言われないと思う」

ジョニー「だな。オーストラリア人が歌うと、イギリスっぽく聞こえるのは確かだし」

メイソン「俺たちにサウンドが似てるバンドでも、アメリカ訛りで歌ってたら絶対にノエル・ギャラガーだとか、オアシスだとか言われないはず。いっそのこと、アメリカ訛りで歌えばいいのかもね(笑)」

●あなたたちの曲を聴いて、まず最初に連想したのは、92~3年のサウンドなんだよね。92年に〈ローラーコースター・ツアー〉っていうのがあったの覚えてる? 4つのバンドが参加して、その4バンドが代わる代わるトリを務めるっていうツアーだったんだけど。

メイソン「いや、知らない」

●ジーザス&メリー・チェインのジム・リードが、自分達の〈ロラパルーザ〉をやろうとして、ダイナソーJr.、ブラー、マイ・ブラディ・ヴァレンタインを呼んだツアーなんだけど。

メイソン「最高じゃん!(笑)」

Rollercoaster Tour 1992


●当時は、アメリカ、イギリスそれぞれの国における音楽的なテイストやトレンドが今ほど離れてなくて、もっとクロスオーヴァーしてた。で、誰もがラウドでノイジーなことをやってたんだけど、と同時に、すごくポップな曲を書こうとしてた。あなた達の音楽を聴いて、そうした90年代初頭のムードを連想したんだけど。

ジョニー「嬉しいよ(笑)」

メイソン「100%賛成だな! 俺たちにとってジーザス&メリー・チェインとダイナソーJr.はものすごく大きい影響だからね」

必見ライブ観戦、その10分後
MAZ&SOの「屋外ピロートーク」
第2回:ジーザス&メリー・チェインの巻


●でも、バンドを始める時には何かしらの反動みたいなものはなかった? 例えば、ビートルズでさえ、ロックンロールが一旦廃れてしまって、安っぽいポップ・ソングがシーンを席巻した時に、いや、もう一回ロックンロールをやるんだと思って、実際にそうしたように、何かしら現状に対する反動って、どんな作家にもあると思うんだけど。

メイソン「それは確実にあった。オーストラリアに来たらわかると思うけど、俺たちみたいなサウンドのバンドってどこにもいなくて」

ジョニー「少なくとも当時は俺たちだけだった」

メイソン「だからこそ、俺たちが始めた時には『うわ、他と違うじゃん!』って思ったんだ。そう思えることがすごく楽しかったしね。別に新しいわけじゃないけど、確実に違ってた」

ジョニー「あと、これって、かなり真っ正直な音楽なんだよ。歌詞もすごく無防備だ。俺たちの1stアルバムの録音は俺のベッドルームでやった。残りはビーチの近くにある俺が働いてた小さいスタジオでやったんだ。大きなスタジオでやった滑らかなプロダクションに比べると、かなり無防備だろ? 俺達のファンはそういう無防備さにコネクトしてくれてるんじゃないかな」

●例えば、今のUSのメインストリームのポップというのは、良くも悪くも曲を書くっていうよりはプロダクション重視のサウンドだと思うんだけど。ただ、あなた達からすると、どう映るんですか?

メイソン「君の言ってることはよくわかる。ああいうのって本当に単にプロダクション・ベースだから。ソングライティングにはあんまり労力を払ってないんだよね。ただ認めなきゃいけないのは、俺たちポップ・ミュージックはすごく楽しんでるんだよね」

ジョニー「大好きだし(笑)」

メイソン「それにスーパースターに曲を書いてる連中には本当に優れたソングライターもいるってこと。ただ問題は、曲を書いて、それを商品として仕上げていくプロセスにおいて、元々の曲にあった正直さがほとんど失われてしまうんだ。だから、ソングライティング自体はいいものでも、プロセスにおいて曲が全部なくなっちゃう」

ジョニー「自分たちの音楽には、ああいうハイファイなポップ・プロダクションは欲しくない。でも、好きなものから好きな部分だけ取り出すことも出来るんじゃないかな。要するに、ポップ・ミュージックからはメロディ、歌詞はニール・ヤングやスプリングスティーンやボブ・ディランから、好きなバンドからはDIYなギター・サウンド、みたいにね。それで自分自身のものを作れるんだ。実際、今言ったのって、ダイナソーJr.にしろ、90年代のバンドが持ってた要素なんだけど」

●じゃあ、ざっくりとした質問。自分たちの音楽は何をリプリゼントしてると思いますか?

メイソン「DIYの美意識だね。音楽に限らず。最初に作ったTシャツだって、自分たちでペイントして作った。もうひとつは、もっとも純粋な形でのソングライティングをリプリゼントしてると思う。俺たちって何時間も座って、ただ曲を書いるから(笑)」

ジョニー「うん。あと俺が曲を書く時って、ノスタルジアみたいなフィーリングから書くことが多いんだよね。それって、世界のどんな人でもコネクトできるフィーリングだと思うしね」

●ノスタルジアにフォーカスして曲を書こうというアイデアには、誰もがそこにコネクト出来るからってこと以外に、どこか今の時代に自分がいることに対する違和感がその根源にあったりする部分はありますか? 例えば、俺は「ビートルズが活動してた時代に10代でいたかった」って、10代の頃に思ってた。

メイソン「俺なら、今が95年なら良かったのにって思うけど(笑)。でも、そこはわかる。特にシドニーだと、俺たち、周りにまったく溶け込めないしね。だから、20年前だったら違ってたかもしれないっていう風に思う。とはいえ、今いる場所には満足してるんだ。東京に来るなんて思いもしなかったからね。ただ、今よりもっと自分たちの音楽をみんなに聴いて欲しい。そういう意味では、売れたいね」

ジョニー「ただ、俺達にここ何年かで起きたことさえ、かなりラッキーだと思ってるんだ。だって、〈ロラパルーザ〉にも出れたし、〈ボナルー〉にだって出た」

DMA'S live at Bonnaroo 2015


メイソン「でも、俺たちがフェス出る時って小さいステージだったんだよな(笑)。だから、もっと大きいステージでやりたい。ただ同時に、オフの時間も取りたいんだ。もうちょっとビッグになれたら、もうちょっとじっくりレコーディングすることも出来るからね」

ジョニー「クソみたいな仕事もしなくてすむし(笑)」

●その「95年」っていうのは、単純に音楽的な状況だけ?

メイソン「いや、音楽だけじゃないな。俺は服もあの頃の方が好きだし。それに、どいつもこいつも携帯とか持って、チマチマやってなかったしね(笑)。映画だって、テレビだって、あの頃の方がよかったと思うし」

ジョニー「だよな。バンドとか音楽やるのも、今よりずっと楽だっただろうし(笑)」

メイソン「うん、CD売る方が楽だよな(笑)。その通り。誰も俺たちの音楽を勝手にダウンロードしないし」

●まあ、レッド・ツェッペリンの連中が「一発儲けようぜ」って風に言って、バンド始めたみたいなことなんて今はもうないもんね。

メイソン「ほとんど無理だからね。俺たちも頭の中のどこかでは『世界で一番ビッグなバンドになりたい』って思ってはいる。でも、実際にそうなるとは思わない。それに野心はあっても、それがソングライティングやレコードの作り方に影響するわけでもないしね」

ジョニー「ただ、これまでも俺たちはひたすらいい曲を書くことにフォーカスしてた。その外側については一度も考えなかった。だから、いい曲を書き続けてさえいれば、他のことはどんどんついてくると思う」

●じゃあ、あなた達の曲ってすごくパワフルで、基本的にすごくエクスタティックでアップリフティングなんだけど、同時にすごくメランコリックでメロウな部分もある。その両方が混在してるよね?

メイソン「だと思う。俺たちが曲を書くと、メロディはかなりアップリフティングなんだけど、ジョニーがかなり暗い歌詞を書く(笑)。トミーの歌い方もかなり暗い歌い方だしね。歌詞が乗って、歌われると急に悲しげになるんだ(笑)」

ジョニー「アップリフティングなメロディに憂鬱で悲しげな歌詞が乗ってるっていうのが好きなんだよ。だって、みんな共感できるだろ? 今って、みんな暗くて落ち込んでるから(笑)」

●あなた達のギターって、ノイジーで、歪ませたギターだけじゃなくて、キラキラしたアコースティック・ギターのストロークを使う。あれはどういうところから出てきたんですか?

ジョニー「だって、俺はディランやスプリングスティーンを聴いてたからね。で、メイソンは90年代のアメリカのバンドをたくさん聴いてた。だから、二人で曲を書いたら、ただそれが混ざったんだ」

メイソン「ただ、ロックンロールなアコギをやるバンドってそういないし、変だし。一般的じゃない。そこは気に入ってるんだよ」

ジョニー「オーストラリアにバッド・ドリームス(Bad//Dreems)っていうバンドがいるんだけど、俺たちとつるんでたら、その後、彼らもアコギを曲に使い出したんだよね(笑)」

メイソン「アデレードのバンドなんだ。いいバンドだからチェックしてみてよ」

●イギリスのジャーナリストがよく、初期ストーン・ローゼズとか、初期オアシスのノエル・ギャラガーのギターを指して、「レイヴ・カルチャーを通過した、エクスタシーを喰ったあとのギター・サウンドだ」って言い方をするんだけど。そのアナロジーで言うと、自分達のギター・サウンドってどういうカルチャーから出てきたものなんだと思いますか?

メイソン「トミーはプライマル・スクリームがすごく好きなんだよ。ビートが好きで、エレクトロニック・ミュージックが好きなんだ。だから、トミーが『それいいな!』とか、『それでいこう』って言う時には、やっぱりそういう音楽と関係があるんだと思う。ただ、俺たち自身のギター・サウンドって意味では……うーん、わからないな」

ジョニー「ただトミーは最初から、やりたいことが二つあるって言ってたんだ。一つは、ロックンロール・バンド。で、二つ目がそこにダンス・フィールがあること」

●なるほど。彼のそういうディレクションって、ソングライティングにはそんなに関係してないけど、バンドとしてはすごく影響を与えてるってこと?

メイソン「そう、まさに。プロデューサーでよく、自分では何も弾かないんだけど、座って音楽を聴いて、何かにピンときたら『それだ!』って言う人がいるだろ? トミーがやってるのはそれと同じなんだ。じっと待って、いいものを聴きつける、っていう」

ジョニー「しかも、ホントそれがうまいんだよな(笑)」

●じゃあ、歌詞について。例えば、ノエル・ギャラガーの書く歌詞って、ライムはすごく綺麗だけど、何を歌ってるのかよくわからない。でも、ストーン・ローゼズの歌詞とかは、社会的、政治的なアングルがきちんとある。あなたたちは、リリシストとしてはどういう歌詞を書きたいと思ってますか?

ジョニー「まず第一に、俺は自分の歌詞をあんまり政治的にはしたくない。政治的な音楽っていうのは俺の中にないんだ。第二には、これまでも人が『ノエル・ギャラガーの歌詞には意味がない』って言うのを何度も聞いてきたけど、歌詞にしても詩にしても別に直接的でなくてもいいと思うんだよね。さっきのノスタルジアの話とも繋がるんだけど、何か言う時に『全部答えを示す必要があるのか?』って思うんだよね。俺としては、もっと人に考えさせるような歌詞を書きたい」

●なるほど。

ジョニー「俺はソングライティングを始めた頃に、まずメタファーを1ライン書いて、それから事実を1ライン書いて、それをなんとか関係づけようとしてたことがしばらくあったんだけど、でも今はもうしてない。今はもっと何か共感させるような、もっと幅広い意味を持つ歌詞が書きたい。『これはこういうこと』みたいな明確な歌詞じゃなくてね。詩を読むと、人間の感情とか、自然との繋がりとか、世界についてとか、自分より大きい何かについて考えさせられたりするだろ? 俺たちの歌詞にしても、意味はないとか、言葉を当てはめてるだけだとか言われたことがあるんだけど、実はそうじゃないんだよね。俺にとっては言葉のどれを取っても全部に意味がある。ただアーティストとして、それを説明する必要はないと思ってるんだ」

●じゃあ、あなたからすると理想的だと思える歌詞を何かひとつ教えて下さい。

ジョニー「ボブ・ディランの“バケッツ・オブ・レイン”だろうな。だって、『Buckets of rain/Buckets of tears/Got all them buckets coming out of my ears』って、どういう意味だよ?(笑)。ディランっていっつもそうだよね。でも、そこがクールなんだ。あとはジョン・レノンの“#9ドリーム”とか。『オー、ボカワ・ポセ・ポセ』なんて、何の意味もないだろ? レノンが夢で聞いた言葉だし。でも、『あれこそが史上最高の歌詞だ』って言って、あれをタトゥーにしてる人を俺は知ってるしね(笑)」

●実際、歌詞に強烈な意味を見出したりするのは、むしろリスナーの役割だよね。実際、多くの人間が「これこそがこのバンドをリプリゼントするラインだ」って言い出したり。例えば、ローゼズの「I wanna be adored」とか、オアシスの「I need to be myself」だとか。そういう意味では、あなた達のEPと1stアルバムで決め手になるようなラインというと?

ジョニー「うーん……ちょっと考えていい? EPだったら、“ソー・ウィ・ノウ”。『And I can't be certain/That they're pulling the curtain on me/And if tomorrow's a burden/Then I'm still learning to be』っていう歌詞があるんだ。『自分に幕が下ろされるかどうかわからない』っていうのは誰でも感じることだろ? だからこそ、幅広い意味があると同時に、身近でもあるんじゃないかな」

●アルバムでは?

ジョニー「うん……ちょっと待って。あ、“ステップ・アップ・ザ・モーフィン”だな。『Losing expression/Facing autumn/Step up the morphine/Stand by my side』っていう歌詞。やっぱりこれも俺自身には個人的な意味があるんだけど、人が聞くとそれぞれに意味を見つけられると思う」

●わかりました。じゃあ、あと二つだけ質問させて下さい。アルバムのタイトルーーこの『ヒルズ・エンド』ってすごく象徴的なタイトルだと思うんだけど、この言葉をタイトルに選んだ理由を教えてください。

ジョニー「トミーと俺で書いた最初の曲のタイトルが“ヒルズ・エンド”だったんだ。だから、すごく大事な曲っていうか、俺にとってはソングライティングの最初であり、俺たち二人の関係性のスタートでもある。あと、子ども向けの本のタイトルでもあるんだ」

メイソン「オーストラリアの児童本のタイトルなんだ。でも、何よりもその名前が気に入ったんだよ。バンドの始まりを示す言葉でもあるしね。“ヒルズ・エンド”って、俺たちが書いた最初の曲のタイトルなんだけど、まだリリースしたことがないんだよね」

ジョニー「で、その曲の歌詞って、何かの変わり目っていうか、トランジショナルなものについての内容だったんだよ。で、このアルバムもある場所からある場所へ移ること、自分が本当に欲しいものを見つけ出すことについてだから。元々の曲にも本のストーリーにも、そういうことが書かれてたんだよね。だから、このタイトルにしたんだ」

●最後の質問はトミーにも訊きたいんだけど。これ、テンプレートの質問なんだけど、あなた達のアルバムをあなたたちのCD棚に並べるとしたら、何と何の間に入れたい?

メイソン「友達のレコードの間に入れたいな。オーストラリアでツアーする間に友達になったバンドのレコード。同世代のバンドのいろんなレコードがあるんだけど」

ジョニー「俺は家にレコード棚がないからな(笑)。でも、俺の父親はヴァイナルのコレクションをABC順にきちんと整理してるんだ。だから、俺が家に帰って、DMA'sを探す時には、Dのディランの隣にある。嬉しいことにね(笑)」

●(笑)じゃあ、あなたたちのアルバムがその両側の二枚のリンクになるものっていう意味では?

メイソン「多分、一枚はダイナソーJr.の『バグ』。あのアルバムって、すごくノイジーなのに、そこにエモーショナルな瞬間もある。ジェイ・マスシスの歌詞もかなり暗いっていうか、悲しげだったりするし。うん、ノイジーさとエモーションが一緒になってるって意味では片側に置いてもいいんじゃないかな。(トミーに)お前どう思う?」

トミー・オーデル(以下、トミー)「どうかな。じゃあ……『セカンド・カミング』。ストーン・ローゼズの2nd。俺なら、あれかな」

メイソン「よし、トミーがそう言うなら、『バグ』と『セカンド・カミング』で決まりだな」

トミー「いや、違った! やっぱりストーン・ローゼスの1st」

メイソン「じゃあ、決定だ(笑)。その間にDMA'sがあるっていうね」


通訳:萩原麻理


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