SIGN OF THE DAY

さらにガラパゴス化していくJ-POPを尻目に
国境を越えて、世界中のシーンと共振する、
ここ日本のインディ・アクトを8組ご紹介
by JIN SUGIYAMA November 27, 2014
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さらにガラパゴス化していくJ-POPを尻目に<br />
国境を越えて、世界中のシーンと共振する、<br />
ここ日本のインディ・アクトを8組ご紹介

00年代以降の音楽シーンとは、果たしてどんなものでしょう? イギリスの批評家サイモン・レイノルズはこう言っている。「アルバム200枚を挙げるなら、00年代以降はそれ以前の時代のインパクトに敵わないかもしれない。しかし2000枚ならどうだろう? そのクオリティは、おそらく他とは比べ物にならないほど高いはずだ」。そう、今はロングテールの時代です。加えて、インターネットの発達によって国境が音楽を分断することもなくなった。そうした状況を反映して、特に00年代後半以降、音楽シーンでは各地で多種多様な高水準のカルチャーが花開き、様々なシーンがボーダーを越えて混ざり合う接点において、刺激的な音楽が次々に生まれていった。

中でも欧米からのアジア圏へのハブのひとつとなる東京では、00年代後半を契機にして、世界のインディ・シーンとタイムラインをシェアするようなアーティストが続々登場。ここでは近年のそうした動きをまとめてみよう。

その中心となったのはやはり、〈コズ・ミー・ペイン〉周辺のアーティストたちだろう。米〈キャプチャード・トラックス〉からEPをリリースし、米〈レフス〉からデビュー・アルバムを発表したノブユキ・サクマのプロジェクト、ジェシー・ルインズ(現在はナーとのデュオ)。12年には〈フジ・ロック〉にも出演したユージ・オダによるザ・ビューティやアトラス・ヤング。彼らの中でもっともポップかつ都会的な音を鳴らすヨウスケ・ツチダらのファロン・スクエアや彼の新プロジェクト、ホワイト・ウェア。ケイスケ・ツカノメによるアープスやメランコリック・マスキュリニティ。先日『A_TRACKER 38』をカセットで限定リリースしたばかりのナリザ・ムー。

当時チルウェイヴとの共通点が語られることの多かった彼らの作風は、実はそれぞれにバラバラではある。だが、音色やアートワークに至るまでD.I.Y.な海外インディ勢とのリンクを感じさせる作品の数々は、間違いなくそれまでの日本のシーンでは異色と言えるものだった。

Jesse Ruins / Dream Analysis

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Cuz Me Pain Compilation #3 Trailer

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また、神戸出身の金子尚太率いる東京拠点のティーン・ランニングスの登場は、ウェイヴスやベスト・コーストといった00年代末~10年代初頭のUSローファイ・バンドたちの活躍とシンクロしていた。13年に始まったレーベル〈サウナ・クール〉は彼らを筆頭にした様々なアーティストのハブ的な役割も果たしつつある。

Teen Runnings / New Work Silly

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そしてサファイア・スロウズは、LAの〈ノット・ノット・ファン〉/〈100%シルク〉らが中心になったインディ・ダンス/ハウスとの共振を感じさせるだけでなく、実際に〈ノット・ノット・ファン〉から作品を発表。

Sapphire Slows / Allegoria


彼らの歩みを紐解いていけば、ここ数年の世界のインディ・シーンの流れをある程度俯瞰することが出来るはずだ。

こうしたアーティストの活躍は、京都のホテル・メキシコらとも共振しながら徐々に規模を拡大。そして11年には彼らの活動にも刺激を受けてバンドを始めたモスクワ・クラブが登場する。彼らは価値観を同じくするアーティストに声をかけ、コンピレーション『Ç86』をリリース。『C86』へのオマージュとも言えるこの作品には、スーパーVHSをはじめとして、同世代のフレッシュなインディ・アーティストが多数コンパイルされていた。ちなみに、パーソナリティを極力排したバンドの性質上ここでは名前は伏せておくものの、モスクワ・クラブのメンバーにはより邦楽的な魅力も備えた東京の人気バンドのギタリストも含まれている。

möscow club / Station M.C.Ç.B.

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一方では米〈トライ・アングル〉のバラム・アカブらと歩幅を合わせる形で注目を集めたタクワミのように、インディ、R&B、ベース・ミュージック、ハウスなどが融合する現在のエクスペリメンタルの最先端を行くようなアーティストも台頭。彼の“vvi+h You”を初めて聴いた時に感じた、おおよそ日本で作られた音楽を聴いているとは思えないような感覚は今でも忘れられない。

Taquwami / vvi+h You


では、よりクラブ・ミュージック寄りの視点から見てみるとどうだろう? 仏〈キツネ〉からリミックスをリリースし、渋谷ウームでパーティを開催する他、先日ブラックバード・ブラックバードの来日公演の前座も務めたボーイズ・ゲット・ハートは日本のプールサイド、もしくはディスクロージャー~ボンダックスといったところだろうか。

Boys Get Hurt / Can U Tell Me

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彼が所属するレーベル〈VLS〉が13年の新年にリリースしたコンピ『VLS NYGIFT2013』には、今後よりポップ方向でも活躍の舞台を広げてくれるだろうギヴ・ミー・ウォレッツの楽曲も収録されていた。彼らが仮谷せいらを迎えた14年の“ルッキング・フォー・ザ・スペシャル”に、ムーン・ブーツやオーウェン・パレットといったインディ勢の名前が登場していたことも記憶に新しい。

give me wallets / Looking For The Special feat. Seira Kariya

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また、メンバーが20代前半のワイキキ・ビートは、海外インディ的なものとメインストリームのポップ・ミュージックとを同時に愛する現代的な感覚を持ち合わせている。彼らはチルウェイヴもしくはトロピカルでローファイなトゥー・ドア・シネマ・クラブのようだった初期を経て、“フォーエヴァー”ではより王道の作風にアプローチ。そこに朋友バットマン・ウィンクスやグルーミーなども加えれば、音楽性はそれぞれ異なりつつも漠然と価値観をシェアする人々の広がりを感じることができるんじゃないだろうか。また、ここに挙げたアーティストはほんの一例で、他にも様々なアーティストが存在することも書き加えておきたい。

Ykiki Beat / Forever

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やや意識的に話を広げたこともあり、もはや彼らをまとめて「シーン」と呼んでいいのかは分からない。だが、ひとつ言えるのは、こうしたアーティストの登場にはおそらく、「世界有数のアナログ市場」「ブログ/ZINE文化」「海外インディ系のDJパーティ」といった海外でインディ盛隆を用意した磁場と共通するインフラが、東京にも整っていたことが大きく関係しているということ。特にそのピークとなった07年からの3~4年間、都内では毎週のように海外インディ系のクラブ・パーティが開かれ、多数のZINEが発行されていた。そして表参道のエスカレーター(現ビッグ・ラブ)などにレコードやカセットを買いに行くような人々の間では、海外のメディアと同じタイミングで情報をキャッチして、同じタイムラインを見つめるような感覚が生まれていた。誤解を恐れずに言えば、彼らは『ハイプ・マシーン』や『ピッチフォーク』に載るようなアーティストはそれ以前に知っていたし、何が『ピッチフォーク』の「ベスト・ニュー・ミュージック」になるかも1年~半年前になれば感覚的に理解していた。決してスノッブで早耳至上主義的な意味ではなく、ただ単純に、彼らは世界のインディ・シーンに流れる文脈自体を理解していたのだと思う。

またこの頃になると、欧米のインディ・シーンにおいてもかつては見過ごされがちだった地域までをも俯瞰するような傾向が生まれることに(勿論、インディ全体の中のほんの一部での出来事ではあったのだけれど)。日本の音楽シーンを英語圏に伝えるブログ・メディア『メイク・ビリーヴ・メロディーズ』の誕生はそれを象徴する出来事だったし、実際、当時音楽誌の編集者をしながら仲間とブログ・メディア/フリーペーパー/DJパーティを運営していた自分のもとにも、後に〈BBC サウンド・オブ~〉などに選出されていくインディ・バンド/アーティストのマネージメントから直接連絡が来る機会が増えた。こうして、日本と世界との距離は次第に縮まっていった。

そして、ここで挙げたバンドの多くは、まさにそうした時代の雰囲気をシェアしている人たちなのだ。彼らの中では、日本と海外は対立項にあるものではなく、英米を起点として広がる世界のインディ・シーンに共に参加する仲間である。彼らは世界の音楽シーンを俯瞰して、アジアからそこに参加するような感覚を持っている。それもそのはず、グローバルになりゆく時代において、NYやLA、ロンドン、パリ、ベルリンが同じ時代を共有しているのならば、そこに「東京」という選択肢が存在していても、もはや不思議なことではないのだから。

2014年はティーン・ランニングスが2nd『ナウ』を発表し、サファイア・スロウズが日本から〈RBMA〉のアカデミー生に選出されるなど、初期からシーンを牽引してきたアーティストたちが続々と次のステップへ。そして〈ダブルデニム〉や〈キャプチャード・トラックス〉、〈レフス〉といった海外の人気レーベルから作品を発表してきた最大のパイオニア、ジェシー・ルインズも、このタイミングで遂に最新作『ハートレス』をリリースした。そう、彼らの音楽に触れる絶好の機会は、間違いなく今なんです。次の記事ではジェシー・ルインズの歩みを振り返りながら、デビュー当時とは大きくスタイルを変えた傑作『ハートレス』の魅力をまとめてみましょう。

Jesse Ruins / L for App

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