SIGN OF THE DAY

スーパーオーガニズム決定版インタヴュー:
世代も出自も違う、帰るべき場所を持たない
アウトサイダー8人がホームを手にするまで
by SOICHIRO TANAKA July 05, 2018
スーパーオーガニズム決定版インタヴュー:<br />
世代も出自も違う、帰るべき場所を持たない<br />
アウトサイダー8人がホームを手にするまで

〈サインマグ〉筆頭にあらゆるメディアは「今はラップとポップの時代だ」と書き立てる。どうやらインディやロックは瀕死状態らしい。しかも、あらゆるジャンルにおいて文化的な鎖国状態にある今の日本に暮らしている人々だけがそれに気付いていないらしい。君はまるで自分が間違っているような気分にさせられる。「聴きたい音楽を聴いているだけで非難されるのか?」。いやいや、誰もそんなことは言っちゃいない。今の世の中を厄介なことにしているのは、意見の相違をしかるべき対話の機会と捉えるのではなく、まるで自分自身が非難されているかのように受け取り、感情的なリアクションで応えるという態度にほかならない。おそらく既にあなたも気付いているだろう。それこそが分断の時代の正体ではなかったか。

では、そんな時代に彗星のごとく颯爽と現れたスーパーオーガニズムはインディ・ロックの救世主なのか? それとも、インディ・ロックの死を宣告するために遣わされた死の天使なのか? いやいや、その問題の立て方そのものが根本的に間違っている。世の中で起こっていることを「わかりやすい二項対立」に落とし込むことで安心しようとするのは、どんな時代も馬鹿のやること。どんな思想の持ち主にも馬鹿はいる。右にも左にも。そして、敵や味方を明確に区別するところから無益な争いは始まる。今も一部の感情に任せた馬鹿が我々から対話の機会を奪おうとしている。

スーパーオーガニズムのメンバー8人が作り上げた音楽はそうしたありがちな二項対立を越えた場所にいる。筆者が彼らのことを理想的なポップと呼ぶ時の「ポップ」は、ジャンルとしてのポップではない。インディやロックの対立項ではない。ここでのポップとはジャンルを超えた場所のことを指す。

詳しくは以下の対話に目を通して欲しいが、スーパーオーガニズムのオロノが書くリリックはあくまで「観察者の立場」から書かれている。ある特定の思想に加担するものではない。すると、またぞろこんなことを言い出す輩が現れるかもしれない。「当事者意識を持たない、傍観者的な態度は云々」とか何とか。いやいや、作家としての役割と市民としての役割をごっちゃにしちゃいけないよ。彼らは個人としては明確な政治的な立場を持っている。でも、それをアートを通して押し付けようとしないだけの話。

アートはある特定の思想や考えをプロパガンダするためのヴィークルではない。自分自身の考えを聴き手に押し付けるためには存在するのではない。何よりも状況を描き出すためにある。たとえ、自分が明確な正解を持っていなくとも、状況に対する疑問を提示するためにある。たとえ、(往々にして無意味な)対立項の両側から非難されようと、異なる思想や考えの持ち主の間に対話のプラットフォームを用意するためにある(もしかすると、黎明期のレディオヘッドのロールモデルでもあった最初のポストパンク・バンド、マガジンの“ショット・バイ・ボス・サイズ”という曲をあなたも知っているかもしれない。本当の意味で理想を追い求める人たちというのは必ず「両側から撃たれる」んですよ)。

Magazine / Shot By Both Sides


今さら言うまでもなく、2010年代後半はしかるべき進化の過程にあるがゆえに激動の時代でもある。ブラック・ライヴズ・マターや#me tooに象徴されるような長年続いてきた社会の膿を吸い出そうとする動きの過程で、二次的な衝突が日常的に巻き起こる。何故なら、誰もが不満を抱え、誰もが不安に駆られ、何とかそれを是正しようと必死だから。だが、時代は螺旋状に進化していくもの。だからこそ、決して焦ったり、感情的になってはならない。ファナティックになってしまい、無益な衝突に加担してしまえば、分割統治を望む連中の思う壷。実際、そうした時代の不満と不安につけ込むような強い言葉、明確な主張が今も大手を振って歩いている。

そして、その強い言葉、明確な主張の「わかりやすさ」を発端にして、さも真っ当そうな二項対立が生まれる。勿論、そこでは決断が迫られる。だが、「お前の立場は右なのか左なのか、白黒はっきりしろ」と迫ってくる圧力に屈してはならない。今もあなたが現実に目をつむることなく、現実をしっかりと見つめているという自負があるなら、「正直、私にはわからない」と口に出す勇気を手放してはならない。いくら卑怯者の烙印を押されても、時にはそこからさっさと逃げ出す勇気を持たなきゃならない。涼しい顔でこんな風に言えばいい。「そんな二項対立、どこにあんの? そんなのファンタジーでしょ。だって、私たちは全員ちがっているんだから」。

倫理や知性ではなく感情に訴えかける強い言葉、明確な主張は魅力的だーーそれがどんな思想から発せられていようと。何故なら誰もがそれに飛びついて安心することが出来るから。だが、そんなもの張り子の虎にすがっているだけ。誰にも正解などわからない。何度も何度も間違いを積み重ね続けた、その先にしか正解はない。また誰かを傷つけてしまったという後悔と罪悪感、それを償おうとするその先にしか正解はない。だが、我々人類は間違いなく少しずつ自らの愚かさを認め、ほんの少しだけ進化つつある。そうした変化の渦中にあって、時として人は性急な解決を望むあまり、当初の目的を見失ってしまう。そう、我々は家族や恋人に接するのと同じように、近くの隣人や地球の裏側の隣人のことを尊重しながら、ただ健やかに毎日を過ごしたいだけではなかったか。

アルバム『スーパーオーガニズム』収録曲“スーパーオーガニズム”のコーラスーー「誰もがスーパーオーガニズム(超固体)になりたがる/私はスーパーオーガニズムになりたい」という言葉が意味するものとは何か。分断の時代に疲れ果てた個人主義者から発せられた、いっそのことなら人類補完化計画よろしくひとつになってしまいたいという苦渋の言葉か。それとも、個人が個人として尊重されながら、ひとつの意志を持った有機体のように機能する理想的なコミュニティの存在を願う祈りの声か。

スーパーオーガニズムの音楽は、世代も出自もまったく違う8つの異なる価値観の「対話」が生み出したものだ。帰る場所を持たない8人のアウトサイダーたちが初めて見出した理想的なコミュニティの産物だ。誰もがラップだのインディだのポップだの既存のマーケットに居場所を探そうとする中、彼らはスーパーオーガニズムという名前のヘンテコリンで魅力的なジャンルを生み出した。コミュニティを作った。そして、そのコミュニティの扉は、すべての人々に開かれている。




●スーパーオーガニズムって、メンバーそれぞれの繋がりや役割という点からすると、伝統的な「バンド」というよりコレクティヴ的なところがありますよね。音楽性もインディためのインディというよりは、メインストリーム・ポップもしっかりと視野に入っている。だから、僕がスーパーオーガニズムのことを誰かに説明する時は、「マックス・マーティン以降の分業制ポップに対するDIYとパンク・アティチュードからの回答」っていう風に言うんですよ。

エミリー「そう言って貰えるのはすごく嬉しいよ」

オロノ「最高です」

エミリー「そもそも僕たち、メインストリームのポップ・ミュージックにすごく興味があるんだ。例えば、ビヨンセの『レモネード』にしても一人のアーティストの作品としてマーケティングされてるよね。でも、実際は大掛かりなバンドみたいなものだよね。大勢のヴィジュアル・アーティストやソングライター、ミュージシャン、プロデューサーが関わっているんだから。つまり、僕らはこの8人で同じようなアプローチを取ろうとしてるんだ。で、その裏側まできちんと見せることが大事だと思ってるんだよ」

ハリー「ただ、分業制のチーム・ライターっていうのは売れる商品を作ることが第一の動機だよね。勿論、それでもアートであることには違いないけど、僕たちの動機はそうじゃないんだ。僕たちの動機は、自分たちを楽しませること。その結果生まれたものを他の人にも楽しんでもらいたい。そういう考え方なんだよ」

●じゃあ、まず3人の出身地と年齢を教えてもらえますか? 普段だったら絶対に訊いたりはしないんだけど。

ハリー「僕は29才で、UK出身。イギリス北部にあるバーンリーという町の出身だよ」

オロノ「18歳で、埼玉出身です」

エミリー「僕は29歳で、オーストラリアのシドニー出身」

●敢えてそれぞれの年齢や出身地を訊ねたのは、そもそも人って自分以外の誰かを性別や年齢や出身でタイプキャストしがちじゃないですか。でも、あなたたちは「そういうタイプキャストから解き放たれたい、作品とアイデアだけを見てほしい」という感覚があるんじゃないかな?と思って。

ハリー「それはあると思う。アーティストを出自や社会的な属性からタイプキャストをしても意味がないと思うしね。だって、作品を通してこそ、その人たちの特性が伝わるわけだから。例えば、僕たち二人とオロノとでは10才の歳の差があるんだけど、なんの違和感もなく一緒に作品を作っていて、その結果としていいものが生まれている。だから、そういう分類とか、線引きをする理由が見当たらないんだよ。僕からするとね」

エミリー「実際、僕なんかは、隣の家に住んでいて同じ学校に通った人よりも、地球の裏側にいる、歳の離れた人との方がずっと共感出来たりするからね(笑)。同じような環境で育ったからって共有する価値観があるとは限らない。もし人を分類するなら、むしろ『何に興味があるか』で分類したほうがよほど理にかなっていると思うね。興味、関心、世界観、人生観、哲学とか」

●まさにその通り。

エミリー「でも、実際は、単純に『背が高い』『背が低い』といった分け方しかしないんだ。まあ、人は得てして、なんでもタイプキャストするよね。多分、そうすることで安心するんだろうな」

ハリー「でね、僕らメンバー全員の共通点がひとつあるんだけど、それは生まれた場所とは違う場所に住んだことがあるってことなんだ」

●なるほど。それは重要な話かも。

ハリー「僕は13歳の時にニュージーランドに引っ越した。当時の僕は外国人だったんだよ。でも、イギリスに帰った時も、外国に来たように感じたんだ。それもあって、ネットが拠り所になった。そこでエミリーや他の何人かのメンバーと出逢ったんだよ。オロノと出逢ったのもネットだし。だから、インターネットの存在も大きかったと思うな」

●じゃあ、そういった諸々も含めて、結果的にスーパーオーガニズムはバンドの在り方そのものを再定義しているところはあると思いますか?

エミリー「いや、それはない。『こんな風にやったら面白いんじゃないか』って、ある日、突然閃いたわけじゃないんだ。メンバー全員、このやり方しかやったことがないってだけなんだよ。まあ、みんなで共同生活をして創作活動を行うのは経済的にも必然だったと言えるけどね(笑)。誰かを雇うのではなくて、友達と音楽を作るっていうのもそう。自分たちの生き方がそのまま反映されているだけなんだよ。僕たちの生活の延長なんだ」

ハリー「そうだね。だから、たまたま結果として、バンドのあり方を再定義していたってことかな。だって20年前だったら、このバンドは存在していなかったんだから。でも、狙ってやったわけじゃないんだ。だって、このバンドの結成の経緯や創作方法が珍しいと言われた時は、むしろ驚いたくらいだからね。『えっ、ネットを介して知り合ったり、音楽作るのってみんなやってることじゃないの?』って」

●確かに(笑)。

ハリー「今時、結婚相手をネット上で見つけるくらいなんだから、バンド仲間が出会ったっておかしくないよね」

エミリー「子供もね」

ハリー「子供?」

オロノ「子供ってどうなの?」

ハリー「まあ、いいじゃん」

●(笑)もう少しローカルとの繋がりについて訊かせて下さい。例えば、USラッパーの大半は自分たちのフッド、出身地をリプリゼントする。最近だと、英国のサウス・ロンドンからギター・バンドがたくさん出てきていて、おそらく彼らはそこをホームだと感じているはず。そういった文脈で言うと、あなたたちの場合はインターネットがホームだっていう感覚はあるんですか?

ハリー「僕たちはアウトサイダーなんだ。いろんな意味でね。特定の音楽シーンには属してなくて、むしろ自分たちの周りに音楽コミュニティを作り上げたわけだから。ただ、君が言う通り、見方によってはインターネットがホームなのかもしれない」

エミリー「ただ、すごくとっちらかったホームだけどね。だって、ゴミだらけだから(笑)。デイヴ・シャペルのコントで、彼がインターネットの中を歩くっていうネタがあるの知ってる? ホント酷いんだよ、ショッピングモールみたいになってて(笑)」

●つまり、インターネットに対する過剰なロマンはないってことだね。

エミリー「さっきハリーも言った通り、僕たちはみんな生まれた土地とは違う場所で育ったから、どこに行ってもアウトサイダーだって感覚があるんだよ。だから、地理上の特定の場所をリプリゼントする代わりに、この8つの個性をリプリゼントしてるんだ。つまり、ばらばらの8つの個性が結束しあった場所がホーム。ドクター・ドレにとってのコンプトンだね」

●なるほど(笑)。

エミリー「でも、そういう人って、これからはもっと増えていくと思うよ。今は行こうと思えば、世界中どこにでも行けるし、いろんな人と出会えるようになったから」

●じゃあ、インターネット発の代表的な音楽文化と言うと、2010年代半ばのヴェイパーウェイヴがありますよね。そこからの影響や反響はあるんですか?

エミリー「いや、バンドを始めてからオロノから教えてもらったぐらいだから。でも、僕からすると、ヴェイパーウェイヴってメインストリーム・ポップとはまったく別物で、メタルみたいに独自の位置付けのジャンルに思えたかな。すごくホームメイドだし。2010年に出たネオン・インディアンのアルバムがすごく好きだったんだけど、オロノにヴェイパーウェイヴのものを教えてもらった時に思い出したのがあのアルバムだった。ピッチを変えてる感じとか、懐かしい感じとかね。(オロノに向かって)君の方がよく知ってるんじゃない?」

オロノ「12とか13の時に、すごいTwitterとかTumblrとかやってたんですよ。それで高校の授業でヴェイパーウェイヴとか、いろんなネットのサブカルチャーについて論文的なものを書いたりもしたんですけど。ただ、個人的にヴェイパーウェイヴは大好きってわけでもなくて。見てるのは面白いし、セイント・ペプシとかは聞いてますけど。ただ、ヴェイパーウェイヴって、いろんなものをごちゃ混ぜにしてコラージュした感じじゃないですか。多分、そういうところがちょっとした共通点になっていて、そう言われるのかなって思うんですけど」

●なるほど。ただもうひとつ。スーパーオーガニズムが使ってるクジラやイルカ、海といったモチーフは、ヴェイパーウェイヴのシグネチャーでもあった。そこはまったくの偶然ですか?

オロノ「超偶然です(笑)。普段からPV以外にもいろんな動画を作るために、みんなとチャット・アプリで話したりしながら、好きな動画とか、画像とか、GIFをシェアしてるんですけど。たまたまロバートが『クジラよくね?』って写真を送ってきて、『ああ、いいね』ってなったんですよ。そしたら急に彼が動画にたくさんクジラを入れ出したんです。で、インタヴューをやってると、『クジラって、すごいですよね』って言われるから、『ああ、そうですよね。クジラ、すごいですよね』みたいな感じで」

●(笑)ただ、クジラや海っていうモチーフからは、スピリチュアルな志向性との繋がりを読み取ることも出来ますよね。そういった解釈には抵抗はありますか?

ハリー「自然界に何かしらの繋がりを感じているという意味では、スピリチュアルと言えるんじゃないかな。このバンドの核にあるのは繋がり(コネクション)なんだよ。この8人の繋がりでもあり、僕たちが住んでいる社会との繋がりでもあり、その社会が存在する環境との繋がりでもある。海っていうのは、『繋がっていること』の究極の象徴だよね。世界が海で繋がっているわけだから」

●ええ、わかります。

ハリー「実際、クジラは素晴らしい生き物だと思うしね。人類がこの巨大な生物に打ち勝ってしまったという悲しい側面もあるけど。それでも、クジラは荘厳で美しい存在だし、クジラに寄生している生物も多い。だから、僕からすると、不思議なくらいこのバンドを表している存在だと思えるんだよ」

●じゃあ、同じくあなたたちの作品におけるリファレンスについての質問です。リリックの中に、ティモシー・リアリーやロバート・クラムの名前が出てきますよね。彼らは二人とも60年代後半のカウンター・カルチャーを代表する存在でもある。そことの距離感についてはどうですか?

オロノ「ティモシー・リアリーとロバート・クラムは、彼(エミリー)が教えてくれたんですよ」

エミリー「あの時代のコミックブック・アートが大好きなんだ。80年代の〈ウィアードウ〉誌とかも好き。あの辺りのカルチャーって、自分自身はメインストリーム・カルチャーの外側にいると感じてはいるけど、メインストリーム・カルチャーにはめちゃくちゃ興味があるって人たちの表現だと思うんだ。そこをすごく上手く抽出してると思う。まあ、ティモシー・リアリーとロバート・クラムを一括りにするのはおかしいかもしれないけど」

オロノ「でも、頷けるよね?」

エミリー「だよね。どちらもサイケデリックだし、二人ともアートの歴史に精通しているーーティモシー・リアリーの場合はむしろ哲学の歴史かもしれないけど。それに、どちらにも温故知新的な手法を感じるんだ。そういう点で、僕ら全員、彼らには共感を感じるところがあるんじゃないかな。ロバート・クラムの何が素晴らしいかって、彼自身は完全なアウトサイダーなのに、彼が作ったぶっ飛んだ作品がメインストリームに受け入れられたことだよね。あんなにも過激だったり、人を混乱させる作品でも受け入れられたんだから。それってすごいことだよ。アートの歴史を振り返っても、そういう人は限られてる。完全にアンダーグラウンドな存在なのに、銀幕を飾ったりもしたし。最高だね」

オロノ「ロバート・クラムにハマったのは彼の影響だったんですけど、多分、小学生の時に親がクラムを見せてくれてたんですよ」

●『フリッツ・ザ・キャット』とか?

Fritz the Cat Official Trailer


オロノ「そうそう。あと、彼のドキュメンタリーとかも見た記憶があるんですよ。実は、親はいろいろと見せてくれたんだなって」

●ご両親はおいくつなの?

オロノ「今、50歳です」

●じゃあ、俺と同世代だ(笑)。

オロノ「(笑)」

●俺も10代の頃、日本語に翻訳されたロバート・クラムの漫画を読んでて。当時は、同時代の日本のカルチャーにはほぼコネクト出来なかったんだけど、同じ時期のロック・ミュージックやその後のパンク~ポストパンクと同じように、彼の作品がいろんなドアを開いてくれたんですよ。

オロノ「(田中の顔を見ながら)なんか、すごい似てません? ロバート・クラムに」

●それ、喜んでいいの?(笑)

オロノ「(エミリーとハリーに向かって)似てない?」

エミリー&ハリー「(笑)」

オロノ「かっこいい!」

●なら良かった(笑)。じゃあ、基本的にスーパーオーガニズムの音楽というのは、シリアスになりすぎたポップ・ミュージックの世界の中で、むしろ楽しさをオファーしてるって風に理解してるんですね。ただ同時に、そのベースにはムーディな感覚やシニシズム、社会や人類の歴史全体に対する怒りがあるんじゃないか。そんな風にも感じる。ただ、それは穿った見方だと思いますか?

エミリー「いや、君の言う通りだと思う。あらゆるものには光と陰、表と裏があるってことだと思うな。人は何らかの既成概念を強調したいがために、とにかく一面しか見ない傾向があると思うんだけど、それは偏狭のお手本みたいなものだからさ」

ハリー「うん、物事の一面しか見ないっていうのは現代社会の特徴でもあると思う。誰もが即効性のあるサウンドバイトだったり、物事に対しての手短な説明しか求めていない。でも、『この世の中で白黒はっきりつけられるものって本当にあるの?』っていう。ないよね? どんなものもグレーなんだ。だって、本当に素晴らしいけど、同時に人を不快にさせるものだってあるよね。例えば、インターネットにしても、知識や見解を広げるのに役立つ一方で、既存の考え方を強固なものにすることだってある。自分と同じ考え方を持った人のツイッターをフォローしているだけだったら、見識が広がるどころか、自分の考えに固執するだけだよ」

●エコーチェンバー化ですよね。

ハリー「実際、あらゆる過激主義はネットのせいで広まっている側面もあると思う。でも、そもそもインターネット自体はいいものでも悪いものでもないんだよ。ただ存在しているだけで、それを利用する人間を反映しているだけなんだ。だから、社会に存在するすべてのものがその光と陰の両面を持っているんじゃないかな」

エミリー「実際、僕らはニヒリズム的な側面もあるけれど、楽観的でもあるんだ」

ハリー「そう、僕らは楽観的だよ。基本的にはあらゆる物事を前向きに取らえている。それってアーティストとしての責務でもあるしね。アーティストっていうのは、その時代のカルチャー、つまり、次の世代の世界との向き合い方を形成する役割を担ってもいるわけだから。だから、僕たちは作品に光と陰の両方を反映させながらも、自分たちの役割を果たしたいんだ。最終的には人々が前向きな考えを持てるような、きっかけを作りたい。『嫌なこともあるだろうけど、楽しく生きて欲しい』『お互いを支え合おうよ』ってね」

●わかりました。で、多分、パフォーマンスやリリックからの印象が強いからだと思うんだけど、スーパーオーガニズムの作品から感じられるムーディさやシニカルな側面というのは、オロノが代表してるところもあるんじゃないか。そう思ったりもするんだけど。

オロノ「だって、今、18歳っすよ。怒りに満ちてますよ(笑)」

エミリー&ハリー「(笑)」

オロノ「自分は18歳だけど、彼ら(エミリーとハリー)は20代後半で、ちょっと人生に飽き出している歳じゃないですか。『まあ、どうでもいいじゃん』っていう雰囲気を彼らは醸し出していて。だから、自分が書く歌詞を、楽しい音とかで包んでいくのが、みんなとのコラボレーションなんだと思います」

●そもそも日本って、過剰にコンプライアンス社会だし、無言の緩やかな同調圧力があるでしょ?

オロノ「ありますね」

●そんな日本の中で暮らしていた時に、オロノ自身がコネクト出来る日本のカルチャーってあったんですか?

オロノ「今はパフュームとか、すごく好きですよ。あと昨日、Chaiに会ったんですよ。Chaiもすっごい好きです」

●以前はどうだったの?

オロノ「小学生とか中学生の時は、日本のカルチャーでコネクト出来るものがまったくなくて。例えば、モー娘とかボーカロイドの話を学校でされても全然わからなくて。あまり面白くないと思ってたんですよ。だから、日本のアーティストで好きな人が見つかると、逆にすごい好きになっちゃうんです。小学校に行く前とかは、母親が岡村靖幸が大好きだったんで、すごく聴いてましたね。だから、ちょっとならあるんですけど」

●じゃあ、これまで自分が暮らしてきた日本、アメリカ、イギリス――それぞれの社会のいい面と悪い面をざっくりとレジメしてもらってもいいですか? 多分、どの国に対しても適度な距離感でドライに見ることが出来ると思うんですけど。

オロノ「難しい(笑)」

●まず日本はめちゃくちゃ治安がいいでしょ?

オロノ「ですよね。ただ、そうなると、ダラけちゃいますよね。大人になってから海外に移住した人からは、『日本にいると、あまり冒険的なことをしなくなっちゃう』って言われます。『だから、日本にいない方がいい』って」

●同意です。アメリカはどうですか?

オロノ「逆にアメリカはすごく自由。何をやってもいい。だけど、特に今は、両サイドの意見が強すぎて、互いにクラッシュしている部分があって。話し合わないじゃないですか。自由すぎて、一つの考えを強く持ちすぎちゃっているところがある」

●譲歩がないんだよね。

オロノ「そう。だから、そこがちょっと欠点。で、イギリスは少し日本と似ている気がします。ちょっとつまんない。でも、まあ、楽しい。まだ安全ですね。たまにテロがあるけど」

エミリー「いい答えだった」

ハリー「面白いのは、離れるとそこの良さがよりわかるってことなんだよね。13歳でニュージーランドに移住した時は、『もう最悪。こんな場所うんざりだ。何も刺激がない』と思ってた。カルチャーに精通している人もあまりいないし。でも、イギリスに戻った時にニュージーランドはとにかく美しい国だってことに気づいたんだよ。ものすごく安全だし、海で泳げるし、食べ物も新鮮で美味しい。水質も大気もすごく綺麗だって。つまり、そこにいた時には見えなかったものが、離れてみて初めてわかるようになったんだよ。冷静になって、感謝できるようになった。不思議なものだよね」

●でも、すごくシンプルなメカニズムだよね。自分が知ってるものとは違うものを見れば、一気に視界が広がるっていう。

ハリー「そうそう。違う観点からみることが出来るんだ」

●じゃあ、先ほどオロノから18歳だから怒りがあって当然だって話があったんだけど。ただ、例えば、“ナイトライフ”や“サムシング・フォー・ユア・マインド”みたいな曲を聴くと、怒りというよりはむしろ孤独とか自己嫌悪みたいなフィーリングを感じたりもする。実際、そういう部分はリリックに出てると思いますか?

オロノ「う~ん、怒りというか、何だろう……。怒りに満ちてるとは思うんですけど、歳を取るにつれてーーこの前、18歳になったところなんですけどーーそれよりは、意見を持つのがどんどん難しくなってきたんですよね。どう感じればいいのかも。ネットの存在もあるし」

●より具体的に教えてもらえますか?

オロノ「例えば、正直、『ヒラリーとトランプもどっちもどっちでしょ』って思うし。でも、いろいろと強い意見を持った人たちの中にいて、『もうどっちでもいいんだけど』みたいな感じになっちゃってきたんですよ。むしろ、それを観察するのが面白くて、とりあえず今は自分が意見を持つというより、観察をした方が楽しいかなって。その方が現実的だと思うんですよね。互いに怒鳴り合っているようなところに参加するんじゃなくて、その間を見て、『どっちもどっちだよね』って生きていくのがいいのかな、みたいな」

●なるほど。自分も5年前までは、明らかにレフトフィールドな考えの持ち主だったんだけど、右も左も言ってること、やってることが極端になってーーまあ、それも一部だったりはするんだけどーーでも、これだけ衝突が激しくなってくると、「いや、俺はもう外側でいいです。どこか自分を受け入れてくれる場所に行きます」って気分になってくる。

オロノ「アメリカに行く前もそんな感じで。で、行ってからも、『トランプ大好き』とか言ってる友達がいたりして。ちょうど学校の近くにトランプが来たから、ちょっと面白がって、みんなでラリーに行ったんですよ。それで『あは、面白いね』とか言ってたら、次の日に、(別の友達から)『なんでトランプのラリーなんかに行ったの?』って言われたりもして。そういうところも、なんか面白いですよね。でも、難しいですよ」

●難しいよね。でも、取りあえず笑うしかないし、その上でいろんなことをしっかりと見とくしかない。

オロノ「そうですよね」

●ちょっとした言動がすぐに白か黒かにタグ付けされちゃうし、そのことで不必要に非難されたり。

オロノ「わかります」

●じゃあ、「今起こっているいろんな事象に対して、どこか距離を置かざるを得ない」という感覚は、スーパーオーガニズムの作品にも通じるものだと思いますか?

エミリー「そうだね。外側にいる人間の視点だと思う。多くの人がこの上なく大事だと思っているような事柄に、どこか共感出来ずにいるっていうね」

ハリー「だって、自分の意見に固執してばかりで、説得力のある反対意見に耳を貸そうともしない人は信用出来ないよ。何があっても自分の考えを曲げない人たちの言いなりにはなりたくないしね。アートに関しても同じだと思うんだ。特定の思惑を押しつけてくるアーティストには共感出来ない。勿論、ボブ・ディランみたいな例外もいるにはいるけどね」


カニエ、ロバート・クラム、ビートルズーー
天空を舞うクジラ=スーパーオーガニズムに
彼らのアティチュードを育んだ背景を訊いた


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