SIGN OF THE DAY

30分で教えます。ストライプスを最高の
ロックンロール・バンドたらしめる10の条件
part.1
by SOICHIRO TANAKA October 24, 2013
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30分で教えます。ストライプスを最高の<br />
ロックンロール・バンドたらしめる10の条件<br />
part.1

あのね、一言言わせてもらうとね、誰もストライプスの本当の魅力について、きちんと語っとらんのですよ。だから、今回は、そこんとこ、懇切丁寧に教えてあげます。しかも、ただで。

まあ、僕自身、最初はこんな風に書きました。でもね、結局のところ、こんなこたあ、どーでもいいんです。そう、むしろ優れたロックンロールには決めごとが一杯。いくら演奏がうまくても、曲が良くても、メンバーにグッドルッキンが揃っててもだめ。ホント厳しい世界なんです。でも、ストライプスというバンドは、そうした厳しい決めごとをすべてきちんと満たしてる。完全に一流のロックンロール・バンドなんです。じゃあ、まずひとつずつそれを検証していきましょう。以下、凄まじく長いので、お暇な時にでもじっくり読んで下さい。しかも、かなり酷い原稿なので、下らない冗談を受け付けない人は読むべからず。では、行きましょう。


1)メンバー4人の立ち姿、バランスが絶妙

まずすべてはここから。これがないと始まらない。で、おそらくサウンド的にストライプスにもっとも近いバンドは、ヤードバーズか、ゼム。だって、“ブルー・カラー・ジェーン”の「B・L・U・E・C・O・L・L・A・R・J・A・N・E」てのは、明らかにヴァン・モリソンが「G・L・O・R・I・A」と連呼する“グロリア”に対するオマージュでしょ。でも、やはり形やスタイルがとても大事なロックンロールの世界では、クインテットよりもカルテットの勝ちなんです。5人より4人が偉い。これは絶対に越えられない壁なのです。よって、理想的なカルテット――ビートルズ、クラッシュ、ザ・フーを筆頭に、まずロックンロール・バンドたるもの、これを満たさねばならない。加えて、メンバー間にそこかはとないホモソーシャル感がうっすら漂っているのも大事。いや、別に女性蔑視云々の話じゃなくてね。この辺り、リバティーンズ・ファンには言わずもがなですよね。でもって、ストライプスの場合、ばっちりなんです。


2)基本的にガキ、もしくは、あんま頭良くない

これ大事。何よりも大事。ロックンロールにとって、どれだけ頭悪くなれるかはとても重要。マスト。日本語に訳すと、必須。でもって、ロックンロールの世界で一番偉いのは誰かと言えば、それはやはりリトル・リチャード。そもそも彼が登場した時点で、それは運命付けられ、確固たる公理となったわけです。「そんなん知らんわ」というキッズのために、彼の56年の映像を観ておきましょう。注目すべきは、演奏直前の0分5秒辺りの真っ白な歯を見せたリトル・リチャードの笑顔とまばたき。次は1分13秒からの素敵な微笑み。1分46秒のポージングも見逃せない。しっかり見て下さい。

Little Richard / Long Tall Sally

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楽しんでいただけましたか。これがロックンロールです。勿論、ピート・タウンゼンドみたく、頭良すぎて、考えすぎて、結局、どうしようもない馬鹿になる。こういうスタイルもあります。苦しんで苦しんで馬鹿になる。これはやはり比較的モダンなロックンロール・スタイルですね。なので、瓶ごとジャック・ダニエルズかっくらって、「イエーイ!」的な、安上がりなスタイルは、ただの馬鹿。コスプレ。パロディ。シュミラークル。本物のロックンロールではない。では、先日ストライプスと同じく、テレビ朝日の番組『ミュージック・ステーション』に出演していたキッスの場合は、どうか。姿形からして明らかに馬鹿。日本含め、世界中で大ヒットした曲だからと言えど、代表的なロック・ソングではなく、唯一のディスコ・ソングをやらされてる感じもさらに馬鹿。しかし、彼らのように馬鹿が目的化した馬鹿もまた、ロックンロールではない。馬鹿は馬鹿でも馬鹿じゃない。そうなんです。難しいんです、馬鹿は。

では、ストライプスの場合は、どうか。そもそも2013年になってロックンロールをやろうとしてる時点で、明らかに頭良くない。はっきり言うと馬鹿。だって、茨の道なのです。今なら取りあえずダブステップやったり、モダンなR&Bやったりしておきさえすれば、どんなに出来がひどくても、指をさされて笑われたり、頭から馬鹿にされることはない。あるいは、今の音楽についていけなくなった時代遅れのおっさん連中に勘違いされて、好かれるなんて災難にあうこともない。ですよね。そんなの自明の理なわけです。にもかかわらず、彼らはロックンロールを選び取った。これはやはり馬鹿と言わざるをえない。しかも、ストライプスの場合、16、7歳のガキだという時点でアドバンテージがある。だって、ガキはどこまで行ってもガキ。どれだけ背伸びしてもガキでしかない。でもって、ガキというのは基本的に馬鹿。つまり、もともと馬鹿。無理しなくても馬鹿。これは強い。しかも、ロックンロールの世界では、そもそもおっさんよりガキの方が偉いに決まってる。これもロックンロール世界での鉄壁の決まりごとです。決して譲れない公理です。つまり、馬鹿な上に、偉い。つまり、「すごいな、完璧だな、敵なしだな、ストライプス!」というわけなのです。

ところが、やはり上には上がいる。あろうことか、68、9歳になっても、「歳食う前に死んじまいたい」なんて歌ってる馬鹿がいる。おい、こら、70前になっても「歳食ってない」なんて、お前ら、数が数えられないくらい馬鹿なのか。遂にボケたのか。それとも、実はもう死んでいるのか。因みに、これはザ・フーという馬鹿ですが、これはさすがに越えられない。だが、ストライプスも馬鹿な上に偉いだけあって、実際、かなり健闘してるんです。特にギターのジョシュ・マクロリー、彼が得意げに両手を拡げて、MCする時のポーズ。正直、これはいかがなものか。しかも、ほんのり小指が立っている。正直、これはかなりキテると言わざるをえない。ただ、MC自体は、「イギリスの観客は曲間にべらべら喋ってるのに、君たちは僕らの言うことにきちんと耳を傾けてくれる」的な、少しばかりお人よしで、ありきたりな内容。なので、例えば、チバユウスケのようなトンデモMCの域にまで達するのはほど遠い。道は険しい。でも、ここも極めて欲しいものです。だって、ジョシュは出来る子。


3)ドラマーがひたすらクール

少し調子に乗りすぎましたね。なので、もう少し真面目に行きますか。では、1)で述べたことを今一度、復習しておきましょう。ロックンロールというのは何よりもバンドとしての佇まいが大事。スタイルにこそソウルは宿る。よって、見かけは何よりも大事なのです。演奏のバランスもさることながら、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムというそれぞれのパートの見かけのバランスも大事。ところが、世間一般では、どこかドラムというパートが軽んじられている節がある。ドラマーというのが一番ひょうきんで、かっちょ悪いという間違ったイメージが独り歩きしている。違います。演奏においても見かけにおいてもドラムが一番大事。これはリチャード・レスター映画によってデフォルメされたリンゴ・スターのイメージがいまだ勘違いされたまま、流布されているだけのこと。それがいまだ40年近く経っても幅を効かせているのは、かなり由々しき事態なのです。そもそもドラマーというのはバンド内でもっともクールな存在でなければならない。キース・ムーンしかり、トッパー・ヒードンしかり、ミッチ・ミッチェルしかり、ピート・デ・フレイタスしかり、ラリー・マレン・ジュニアしかり。最初の二人の場合は、少しばかり頭の捩子が不思議なことになっているのはさておき、そもそもロックンロール・バンドにとってドラマーこそがもっともクールな存在なのです。

しかも、最高のロックンロール・バンドには、徹頭徹尾無口なクワイエット・マンがいないとだめ。ポール・シムノンしかり、ジョン・エントウィッスルしかり。そうした意味からすれば、ストライプスのエヴァン・ウォルシュは完璧なのです。星の王子さまか、ミッチ・ミッチェルの再来か、というデッカイ巻き毛。しかし、そのドラミングはむしろリンゴ・スター的なタイト・スタイル。3連のフィルを決める姿なんて、あまりにクールで失禁もの。もっとも彼があまりにクワイエット・マンすぎるせいで、他に書くことがあまりにもないという難儀な部分もありつつ、彼の存在は間違いなくストライプスを一流のロックンロール・バンドたらしめていると言えます。


4)ベーシストがちょいデブなのに天才

ストライプス・サウンドの要は、誰か。それは間違いなく、ベーシスト、ピート・オハンロンその人です。ギタリスト、ジョシュ・マクロリーがバンドを無理やり牽引していく暴走機関車だとすれば、彼こそがすべてを支える屋台骨。勿論、彼のパートがリズムと和音の両方を司るベースだからということもあります。しかし、このピート・オハンロン、遠目から見ると、どこか『指輪物語』でお馴染み、サムこと、ふとっちょホビットのサムワイズ・ギャムジーにそっくりですが、とにかく上手い。しかも、曲のグルーヴに合わせて、指弾きとピック弾きを使い分け、指弾きの場合も右手のポジションを変えたりする。正直、彼の弾く音を耳で追いかけ、彼の運指を目で追いかけるだけで、ご飯三杯はいける。加えて、彼がたまに使うテレキャスター・スタイルのベースとか、死ぬほどかっちょいいんですね。間違いなく、彼がいてこそのストライプスなんです。


5)メンバーが曲によってパート楽器を入れ替える

いやあ、これも大事。やはり100%パートが固定されてるバンドというのは、バンドとしての魅力に乏しいんですね。バンドというのは、ある種の共同幻想だから、ちょっとした限界があったり、不安定さがあったりするのも魅力のひとつなわけです。でもって、ストライプスの場合、サムがすべての楽器が一番上手い。ベースもギターも勿論のこと、ハープを吹かせても、ヴォーカルのロス・ファレリーよりも遥かに上手い。出音が違う。フェイクのニュアンスが違う。では、確認も兼ねて、今より遥かにおぼこい彼らのルックスも楽しめる、スリム・ハーポのカヴァーのクリップを観て下さい。

The Strypes / Got Love If You Want It

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ね、最高でしょ。ヤバい。ヤバすぎる。で、この曲がショーの後半で演奏される際、サムはおもむろにジャケットを脱いで、ブルーズ・ハープ片手に、それまでのステージ下手から移動、やおらステージ中央に陣取るわけです。すると、タックインしたシャツもぱんぱん、ノータックのパンツもぱつぱつ。正直、これはいかがなものか。とても10代とは思えない貫録。しかも、彼がステージ中央から観客を煽った時よりも、明らかにジョシュが煽った時の方がオーディエンスの反応がいい。いや、確かにそれは致し方ない。どうしようもない。ルックスに差がある。そこには埋められない溝がある。勿論、そこはサムもわかってる。だからこそ、その瞬間、サムはすべてを悟ったような諦めの表情を浮かべるんです。静かに「ふっ」と笑うんです。切ない。子供の哀愁。これぞ、彼の見事な演奏と並ぶ、ストライプスのショー最大の見所でもあります。


6)ギタリストが自信のかたまりなのに意外や下手

いや、勿論、十二分に上手いんですよ、ジョシュ・マクロリー。開放弦の鳴らし方もワイルドだし、コードからシングル・ノートへの移動もスムース、音色やフレージングに合わせてハムバッカーとシングル・コイルのギターを使い分けるのも的確だし。まあ、シングル・ノートのフレージングにあまり個性がないという話もありますが、そこはそこ。しかも、彼はギタリストであると同時に、二番目のヴォーカリストであり、何よりもソングライティングの要でもあります。要するに、彼がいなければ、ストライプスは始まらない。でも、ちょっとカッコつけすぎなんです。自信過剰なんです。鉄壁のリズム隊がいるにもかかわらず、このバンド、必ずと言っていいほど展開が変わるところで、ジョシュのギターが走ったり、もたったりして、その瞬間、せっかくのグルーヴががたがたになってしまうんですね。あちゃちゃー。て感じ。でも、ほら、例えば、ホワイト・ストライプスのメグのドラムって、びっくりするくらいヨレヨレでしょ。でも、そのヨレヨレになったリズムを、ジャック・ホワイトが展開明けの一拍目で無理やり合わすわけですよ。「ドカーン!」つて。あの瞬間の凄まじいダイナミズム。あれもまたロックンロールの醍醐味のひとつ。だからこそ、ストライプスのライヴでのグルーヴがよれる瞬間、これもロックンロール・ショーの醍醐味のひとつと言えなくもない。我ながら、少しばかり苦しい気もしないではない。でも、そんなもんなんです、ロックンロールっていうのは。


7)曲によって、いちいちギターを取り換える

あ、また、ジョシュのこと、からかうと思ってるでしょ。ギターを取り換える時に、ギター・テックに向かって、放り投げたりするのがダサいとか、モノを大事にしなさい!と言われる幼稚園児のようだとか、何とか。いやいや、それもキュートじゃないですか。必要ですよ、ロックンロールには。勿論、彼が数曲ごとにステージでギターを取り換えるのを見て、イライラする人がいるのもわかってます。でもね、ロックンロールにとって必然なんです、ギターを取り換えるのは。「そんなクソ面倒くさいことしてんじゃねー、ロックンロールなら1本のギターでガツーンといったれや!」と思うのは、初心者。そういうのはパンクにまかせて下さい。ロックンロールはもっと粋なんです。ギター一本抱えた渡り鳥的なストイシズムとは無縁なんです。いくつものギターを取り換えてなんぼ、なんです。その理由は、勿論、曲ごとにいろんなサウンドが必要だから。でも、それだけじゃない。ロックンロールはチャラいの。洒落者なの。いろいろと着飾りたいの。だから、ギタリストがギターを取り換える瞬間に、わくわく出来ない輩がロックンロールなんて聴いてんじゃねー。っていう話なんです。


「30分で教えます。『ストライプスを最高のロックンロール・バンドたらしめる10の条件』part.2」はこちら

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