ビッグ・リリースの発表が相次いだ2017年3月半ば。かなり濃密な体験を過ごした読者の皆さんも少なくないと思います。
2010年代のポップ音楽における事件の大半はオンライン上に発火点を持っていると言っても過言ではありません。ただ、そうした注目すべきトピックは新たなトピックにあっという間に押し流されてしまいます。見過ごしてしまっているトピックはありませんか?
今回〈サイン・マガジン〉が選んだトピックは5件。何と言っても注目は、ケンドリック・ラマーの新作が間もなく届きそうなこと。でも他も負けじと大ネタばかりです。それぞれのトピックに対する編集部内での興奮と期待の度合いは5段階の★印で表示、その理由も添えてあります。それでは早速チェックしていきましょう。
1)ケンドリック・ラマー新作は4月7日リリースか?!
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注目度:★★★★★
2015年のポップ・シーンにおいて、すべての中心だったのはケンドリック・ラマー『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』。彼が現在のNo.1 MCであることに誰もが認めるところ。そんなケンドリック待望の新作がリリースされれば、今年最大の話題になることは間違いありません。「間違いないですね(小林)」「ないね(田中)」
ケンドリック・ラマーが新曲“ザ・ハート・パート4”を3月24日に急遽リリース。
その前日には、Instagramに「IV」とだけ書かれた画像をアップしていたケンドリック(現在は削除済み)。次のアルバムが4作目なので、「新作リリースか?!」とネット上は騒然となっていましたが、実は連作シリーズの「パート4」の発売予告だった。ということで一旦は落ち着きました。
しかし、〈コンプレックス〉も指摘しているように、この“ザ・ハート”シリーズは、過去もアルバムのリリース前に発表されてきたもの。事実、“~パート1”は2010年のミックステープ『オーヴァーリー・デディケイテッド』のリリース数ヶ月前にドロップされ、“~パート2”は『オーヴァーリー・デディケイテッド』の一曲目に収録、そして“~パート3”は『グッド・キッド・マッド・シティ』のリリース数日前に発表されています。
それに加え、ケンドリックは〈ニューヨーク・タイムス〉のインタヴューで新作を制作中であることを明らかにしており、“ザ・ハート・パート4”の最後のラインでは「Y'all got 'til April the 7th to get y'all shit together」とラップしています。なので、“ザ・ハート・パート4”は4月7日にリリースされるニュー・アルバムの布石では? というのがもっぱらの噂。真相は果たして?
2)ヴァンパイア・ウィークエンド新作のタイトルは『ミツビシ・マキアート』?
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注目度:★★★★★
ヒップホップ/R&Bとポップが席巻する2010年代、The xx、ダーティ・プロジェクターズ、ヴァンパイア・ウィークエンドの3組による新作が勢揃いすることで、インディ・ロックの再生はあるのか?「ミツビシって三菱重工のことかな? それとも、MDMAのことかな?(田中)」「知りません(小林)」
ヴァンパイア・ウィークエンドの新作はどうなってるの? そんな質問がファンからたくさん寄せられているらしく、フロントマンのエズラ・クーニグがInstagramで新作についてのコメントをアップしました。
それによると、「2016年は新作の曲を書いていて、2017年に入ってからはレコーディングを行っている」とのこと。
アルバムの仮タイトルは『ミツビシ・マキアート』。収録曲には、今のところ“コンヴァセーション”、“フラワー・ムーン”と呼ばれている曲があるそう。まだ完成までは時間がかかりそうな雰囲気ですが、年内には新曲を聴きたいところです。
参考記事
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ダーティ・プロジェクターズとヴァンパイア
・ウィークエンド、2017年ポップ新潮流を
予見した二大巨頭こそがインディ新時代の鍵
3)遅れてきたトップランナー、ヨーギー・ニュー・ウェイヴスは日本を変えるか?
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注目度:★★★★★
2015年の東京インディ離散後、新世代としてもっとも期待されたヨーギー・ニュー・ウェイヴス新作は、ポップの地図を書き換えるか?「書き換えてくれないと困る(田中)」「困るって誰が?(小林)」
ヨーギー・ニュー・ウェイヴスが2年半振りのニュー・アルバム『WAVES』を5月17日にリリースすることを発表。これまで7インチやEPでリリースしてきた“Ride on Wave”、“Fantasic Show”のアルバム・ヴァージョン、そして前作『PARAISO』では弾き語りで収録されていた“C.A.M.P.”のバンド・アレンジなど、全11曲を収録。
5月25日からはアルバムのリリース・ツアーも開催。詳細は公式サイトへどうぞ。
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ヨーギー・ニュー・ウェイヴス 公式サイト
4)マイク・ウィル・メイドイットの新作で、サウス中心のUSヒップホップの現在が丸わかり?
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注目度:★★★★
メトロ・ブーミンと並ぶ2016年を代表する二大プロデューサー、マイク・ウィル・メイドイットの2ndアルバムはUSヒップホップの突端のひとつ。「このアルバムから一曲ずつストリーミング・サービスにアップされるごとに、大興奮しなかった?(田中)」「その反応をいちいちマイク・ウィル・メイドイットがツイッターでリツイートするのがちょっとうざかったですけどね(小林)」
チャンス・ザ・ラッパーやフランク・オーシャンやケンドリック・ラマーのことはチェックしても、マイク・ウィル・メイドイットはスルー。なんてことは、あってはなりません。彼はアトランタ産トラップの超売れっ子プロデューサー。ビヨンセの“フォーメーション”、レイ・シュリマーの“ブラック・ビートルズ”、フューチャーとドレイクが参加したリル・ウェインの“ラヴ・ミー”は、すべて彼の作品です。
そんな彼がニュー・アルバム『Ransom 2』をドロップ。ケンドリック・ラマー、レイ・シュリマー、リアーナ、ミーゴス、21サヴェージ、ファレル、ヤング・サグ、フューチャー、リル・ヨッティなど、超豪華ゲストが目白押し。今乗りに乗っているヒップホップ/R&Bアクトの見本市のような状態なので、間違いなく必聴。
5)パッション・ピット新作のリリース方法がかなり新しい!
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注目度:★★★★
鬱と同性愛のカミングアウト後、ファンとのコミューナルな繋がりをより重視するようになったパッション・ピットの新たなる試み。「アノーニもそうですけど、ファンと直接やりとりして、ダイレクトにフリーで作品を届ける手法って増えましたよね(小林)」「良くも悪くも、繋がりの時代ですな(田中)」
2017年に入ってからYouTubeで次々と新曲を発表してきたパッション・ピットが、遂にフル・アルバム『トレメンダス・シー・オブ・ラヴ』を発表。ただ、その入手方法は少し通常とは異なります。
フロントマンのマイケル・アンジェラコスによると、神経科学者のマイケル・F・ウェルズをサポートする彼のツイートをRTし、リプライで自分のメール・アドレスを送ると、アルバムのデジタル音源が送付してもらえるという仕組み。リプライで自分のメール・アドレスを公開するのが怖い人は、DMで連絡をしてもいいそうです。
また、アンジェラコスは新作についての長文コメントを画像でツイート。
それによると、「プロとして音楽を作り始めたことで、“商品”ではない音楽をシェアすることの楽しさや美しさを忘れていた」「(先だってYouTubeにアップし、このアルバムにも収録されている)曲はアップロードする前の夜に書かれたもの。自分の能力で可能な限りのミキシングをした」「完璧ではないけど、正直なものになっている」とのこと。
本作がストリーミングやフィジカルでリリースされるかは、今のところ不明です。2017年3月29日現在、YouTubeに残されている新作からの曲は以下の一曲のみ。
日本の春を騒がすのはフジロックの救世主
ゴリラズか? フォーメーション初来日か?
それとも!!!の新作? 売れ続けるドレイク?