デビュー・アルバム『ザ・フール』から数えて、実に3年3ヵ月。ついに来週1月22日にリリースの時を迎えたウォーペイントの2作目『ウォーペイント』が、〈ホステス〉の公式サイトにて、期間限定で全曲公開されています。まずはこちらのリンクから、聴いてみてください。
前作に伴うツアーが終わってから、地元カリフォルニアにあるジョシュア・トゥリー国立公園の近くに家を借り、バンド・メンバー4人で1ヵ月滞在しながら曲を作り始めたという本作。バンドの熱烈な希望により、U2、PJハーヴェイ、スマッシング・パンプキンズ等々の名盤を多く手掛けてきた名匠フラッドをプロデュースに迎え、ナイジェル・ゴドリッチが2曲でミキシングを担当。前作からの飛躍的な前進を感じさせる1枚となっています。カルヴァン・クラインのCMにも使用された先行シングルの“ラヴ・イズ・トゥ・ダイ”は、ナイジェルによるミキシングが施された楽曲。
また、前作リリースの時点ですでにメンバーではあったけれど、本格的な曲作りには参加していなかったドラマーのステラが作曲段階から加わったことによるビート面の強化も顕著に。メンバーはヒップホップやR&Bからの影響も公言していますが、ドクター・ドレを髣髴させるような硬質ヒップホップ・ビートが叩き出される“ハイ”や“ディスコ//ヴェリー”などは、彼女達にとっての新機軸を開拓した楽曲と言えるんじゃないでしょうか。
そもそも、結成当初からのメンバーである他の3人=エミリー(Vo/Gu)、テレサ(Gu/Vo)、ジェニー(Ba)とは異なり、テレサがバンドに加わったのは09年冬のこと。結成当初にドラマーとしてバンドに在籍していたのは、ジェニーの姉であり現在は女優として活動するシャニン・ソサモンでした。当時の楽曲は、08年に自主リリースしたデビューEP『Exquisite Corpse』にまとめられています。
EPの製作時点ではシャニン・ソサモンは在籍しレコーディングにも参加していましたが、このヴィデオでドラムを叩いているのは、後にレッド・ホット・チリ・ペッパーズに加入するジョシュ・クリングホッファー。当時エミリーと恋仲にあったジョン・フルシアンテもミキシングで参加しており、LAシーンではすでに知る人ぞ知るバンドとして頭角を現しつつあったよう。しかし、このEPが09年に再リリースされたことがきっかけとなり、本格的にウォーペイントは世界的な注目を集めることになっていきます。
テレサが加入し現在の4人となった09年から開けて、2010年には『ピッチフォーク』の新人紹介シリーズである「Rising」に取り上げられ、『NME』では同年の〈SXSW〉で最も大きなバズを生んだバンドの1位に。〈ラフ・トレード〉と新たに契約を交わし、製作されたのがデビュー・アルバムの『ザ・フール』でした。エックス・エックスの1stアルバムにも通じる、抑制の効いたクールさとミニマリズム。5分前後の中で、有機的なうねりと共に展開していくバンドのアンサンブルとグルーヴ。こちらが『ザ・フール』からのリード・シングルとなった“アンダートウ”です。
新作を評して、メンバーはより「セクシー」で「実験的」なサウンドを作ろうとしたと述べていますが、1stと2ndを改めて聴き比べると、彼女たちが目指した地平、志した変化が明確に見えてきます。アトモスフェリックなプロダクションが全体を覆ったこの“ビギー”も、前作にはなかった新たな音楽的野心が垣間見える1曲。
ちなみに、『ザ・フール』のリリースから最新作までの3年3ヵ月の間に、ジェシーはクリス・カニンガムと結婚。最新作のアートワーク、映像などもクリス・カニンガムが手掛けています。また、テレサは現在ジェイムス・ブレイクと交際中だそうで、交友関係も華やかかつハイ・センスで驚くばかりですが、もちろんそれらも彼女たち1人1人の持つ音楽的なタレントがあればこそ、なはず。
この最新作『ウォーペイント』を引っ提げて、2月16日(日)の〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉で来日ライヴを行うことも決定しています。もちろん音源も素晴らしいですが、彼女たちの本領が発揮されるのはやはりライヴ。というわけで、最後におまけとして、〈ピッチフォーク・ミュージック・フェスティバル・パリ〉での“ラヴ・イズ・トゥ・ダイ”ライヴ映像を。数多の著名人を虜にしてきた、この素晴らしいパフォーマンスを是非とも生で体感して欲しいと思います。