2019年アメリカン・ポップ・カルチャーのトレンドを代表するヒット作を順不同で選出。
J・コール“ミドル・チャイルド”は、ヴァイラル主義やサイド・ビジネス活況などヒップホップ・コミュニティの景観を切り取りながら「一人の中堅の目線」を編み出す流石の手腕。ラップ界が栄光のかたわらで疲弊も見せるなか、ポップ復活の一手となった存在こそ、ヒップホップなアティチュードのアリアナ・グランデ“7・リングス”。そのままビリー・アイリッシュがトップを獲ったことで「10’sラップ・サウンド取り込みポップ」が完成? 2019年USチャート・ヒットはポップ・女性アクト・陽気サウンドの躍進が目立ちましたが、リゾは3つ全てを代表する「顔」ですね。
総合面で印象的だった要素は「ジ・アメリカーナ」。多様性・包括性ムーヴメントを経てからのクラシック再構築のようなリル・ナズ・エックス“オールド・タウン・ロード”がメガ・ヒット、そしてラナ・デル・レイ再評価が到来しました。同時に、2010年代、包括性議論を根づかせた『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』が有終の美を飾ったこともメモラブル。以下、映画およびTV作品の順不同5選。
2019年TVはハードな実話モノがトレンドでしたが、『ボクらを見る目』はエモーショナルな画、『アンビリーバブル』は性差別環境が伏線やノイズになるミステリが素晴らしい作劇。『ザ・ボーイズ』など皮肉コメディもバック。『サクセッション』に至っては、経済不平等に鬱憤がたまる世相あってのこじれた喜劇で面白い。
「2010年代総決算」ムードはMCUインフィニティ・サーガおよび『ゲーム・オブ・スローンズ』が終了した春に一段落。のこる夏秋冬は『ジョーカー』や『ジーザス・イズ・キング』など「新たな始まりの下準備」フェーズに感じたりもしました。2020年代を迎えるにあたって意識したい教訓としては、『スローンズ』賛否両論ラストを語ったミゲル・サポチニク監督の一言。「自分自身を問うこと、これこそが我々を人間足らしめるのです。そうして下される決断が正しかろうと、誤っていようとも」。
〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2019年のベスト・アルバム、ソング&
映画/TVシリーズ5選 by 木津毅
「〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2019年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選」
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「2019年 年間ベスト・アルバム 50」
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