結局、自分が変わること以外に楽しみなんてない。音楽もサウナもセックスも、心地よさだけならすぐに飽きる。音楽を聴くのも、本を読むのも、文章を書くのも、仕事を続けるのも、全ては変化のため。時代に接するのも歴史に接するのも同様。変えたいんじゃなくて変わりたい。壊したいんじゃなくて壊れたい。粉々になるためだけに、今日も生きている。
ベスト・アルバムがひたすら内省に沈む作品に終止した一方、ベスト・ソングには躁状態の高まりが集まった。短い時間ならガツンと暴力を受けたい、長い時間なら泥沼に落ちていきたいという、今の自分の気分を反映した結果だと思う。どちらにせよ、自分が自分でいられなくなる感覚を知らしめるものばかりを選んでいる。そういえば『本気のしるし』(正確には昨年公開だけど、12月ギリギリだったから許してくれ)も、人生が壊れていくことの歓びを映す映画だった。
自分を守るために他人を壊す事例が多すぎる。そう思う一年だった。大事なものを守ることは一向に構わないが、自分などというくだらない存在を守るために人を裁くのはまじで勘弁してほしい。守るほどの価値のある自己などどこにもいない。壊れる価値しかそこにはない。ぼくもあんたも、粉々に壊れればいいと思う。健康には気をつけてほしい。
ランキングに入れるのはなんか違う気がしたけど、アルカの4枚同時リリースは大いなる事件だったし、何の期待もしてなかったエヴァンゲリオン・シリーズの結末に揺さぶられたのも素敵な驚きでした。あと、『スピッツ論 「分裂」するポップ・ミュージック』を読んでください(個人的には単著の刊行が一番の事件です)。来年もよろしくお願いします。
〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2021年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 池城美奈子
「〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2021年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選」
扉ページ
2021年
年間ベスト・アルバム 50