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  • マスター・オブ・ゼロ 愛のモーメント(2021) directed by Aziz Ansari by TSUYOSHI KIZU July 01, 2021 1
  • スーパーノヴァ(2020) directed by Harry Macqueen by TSUYOSHI KIZU July 01, 2021 2
  • ダンス・オブ・41(2020) directed by David Pablos by TSUYOSHI KIZU July 01, 2021 3
  • 1秒先の彼女(2020) directed by Chen Yu-Hsun by TSUYOSHI KIZU July 01, 2021 4
  • グリード ファストファッション帝国の真実(2019) directed by Michael Winterbottom by TSUYOSHI KIZU July 01, 2021 5
  • 現代NYに生きる様々なマイノリティたちを中心に置きつつ、その日常や人間関係、恋愛を洒脱に描いて人気を博してきたアジズ・アンサリの『マスター・オブ・ゼロ』。突然発表されたシーズン3にしてスピンオフ的な位置づけとなる〈Moments in Love〉では、これまでもシリーズに登場してきたレズビアンの黒人女性デニースとその妻アリシアを主人公として、ふたりの関係の変化をたんたんと描いていく。舞台は都市(NY)ではなく郊外、タッチはコメディではなく静謐なドラマ。この変化は、どこかパンデミック下における内省的なムードとシンクロするようだ。そして全5エピソードから成るこの短いシーズンでは、ブラックのレズビアン・カップルにまつわる固有のディテールを織りこみながら、多くのひとが身に覚えのあるようなリレーションシップおけるすれ違いや静かに降り積もる後悔を丹念に浮かび上がらせる。それは、2010年代なかばから現代のマイノリティたちの小さなライフを祝福してきたこのシリーズだからこそ達成できたことであり、ここではさらにもう一歩踏みこみ、彼女たちの壊れたように見えたパートナーシップの新しい形が示唆されている。その切なさと温かさは、パンデミック以降の隔絶感を経たわたしたちに、それでも大切な誰かと出会い直すことや関係を続けることの尊さをそっと手渡すようだ。

  • コリン・ファースとスタンリー・トゥッチの両名優が初老のゲイ・カップルとなり、老年期のリレーションシップのあり方を探求する作品。認知症であることが発覚した作家のタスカー(トゥッチ)とピアニストのサム(ファース)は、演奏会のために湖水地方へとキャンピングカーでプライヴェートな旅をし、そしてふたりの関係の「終わり」と向き合うこととなる……。ゲイ・カップルを中心に置いているもののセクシュアリティは前景化させず、あくまでパートナーシップの熟成を静かに綴る本作は、だからこそ「ゲイ映画」が現在普遍的に洗練されていることを示している(ヘテロ・カップルに置き換えても等しく成立する物語であることは、性的マイノリティが作劇において完全に包摂されているということである)。終末医療における倫理が見つめ直されているいま、では、そこに横たわる愛はどのように人間を傷つけ、そして救うのだろうか? ファースとトゥッチが見事に体現するパートナーシップの親密さが、そうした問いを観る者に優しくも厳しく投げかける。

  • 2009年から同性婚が首都から広がり2016年には全土で認められたメキシコからは、いっぽうで、まったくの固有性と具体性に基づいたヒストリカルな「ゲイ映画」が到着した。モチーフとなっているのは、同性愛者たちの秘密のパーティが警察に踏みこまれ、参加していた41人が逮捕された1901年の実際の事件。そこにいたと噂される「42人目」である当時の大統領の娘婿の議員イグナシオを主人公として、社会から異常なものとして完全に隔離されていた同性愛者たちに起きた悲劇を重厚に物語っていく。アンダーグラウンドのゲイ・パーティの模様はかなり赤裸々な乱交シーンなどもあるものの、だからこそ歴史の狭間に消えていったゲイたちの性愛を甘美に再訪するように見える。そこにあっただろう性の歓びを……。対して政治の世界で自分をひた隠しにして生きるしかなかったイグナシオは妻も自分も不幸にしていくばかりで、社会が抹殺した同性愛者たちの不遇の生をえぐり出す。ゲイ・ヒストリーを振り返るということは、そこに存在した多くの死者たちとともに生きることだと……いつだって僕は思わずにいられない。

  • 台湾のチェン・ユーシュン(陳玉勲)といえば、『熱帯魚』(1995)で90年代の台湾をとぼけた味わいでポートレイトし、世界に発見されたユニークな才能。そんな彼が16年ぶりに映画に復帰し手がけた本作は、何をやるにもワンテンポ早い「彼女」と何をやるにもワンテンポ遅い「彼」による、やっぱりとぼけた味わいのロマンティック・コメディだ。物語はバレンタインデーが消えた謎を提示するところから始まりファンタジックな展開へとなだれこむのだが、それは登場人物たちが抱える欠落感を探るための入口に過ぎない。世のなかとテンポがズレているキャラクターたちはそのまま世の標準とズレている人間たちということだけど、ふたりは悲惨な目に遭うというよりはヘンな体験を通して、欠落感を抱えたままで近づいていくこととなる。器用に生きられないひとたちが、そのままで楽しく仕事したり恋をしたりしているということがポップに描かれるチャーミングな一本。台湾の街の風景がたくさん見られるもの素敵です。

  • 多作な分マイケル・ウィンターボトムはどこか小器用なひとという印象が拭えないところがあるのだけれど、だからこそこうしたシニカルな風刺コメディでその力量がよく発揮されているように見える。〈TOP SHOP〉などを保有していたアルカディア・グループのオーナーであったフィリップ・グリーン卿をモデルにした人物にウィンターボトムの盟友スティーヴ・クーガンが扮し、英国を代表したアパレル・グループの失墜の内幕をフィクショナルに皮肉ってみせる本作。面白いのはギリシャのミコノス島で開かれる還暦パーティの模様をモキュメンタリー的に描くことで、現代における「セレブリティ」の虚飾を浮かび上がらせている点だ。や、マジでパーティがしょうもないのである。こんな空っぽな栄光を、なぜひとは目指してしまうのか? 資本主義が提示する夢の虚しさがそのパーティによく表れているのだが、その傍らには日々の暮らしに困窮する難民がいる。無意味に肥大化した欲望によって資本主義に支配された世界は周り、そして貧しき者たちはさらに貧しくなっていく……。こんなことはすぐにでも終わらせなければならない。だけど、いったいどこから、どうやって?

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