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  • DUNE/デューン 砂の惑星(2021) directed by Denis Villeneuve by TSUYOSHI KIZU October 12, 2021 1
  • キャンディマン(2021) directed by Nia DaCosta by TSUYOSHI KIZU October 12, 2021 2
  • Our Friend/アワー・フレンド(2021) directed by Gabriela Cowperthwaite by TSUYOSHI KIZU October 12, 2021 3
  • ザ・チェア ~私は学科長~(2021-) created by Amanda Peet & Annie Julia Wyman by TSUYOSHI KIZU October 12, 2021 4
  • ONODA 一万夜を越えて(2021) directed by Arthur Harari by TSUYOSHI KIZU October 12, 2021 5
  • フランク・ハーバートの古典SF小説『デューン/砂の惑星』は、70年代にアレハンドロ・ホドロフスキーが映像化を計画するも頓挫し、デヴィッド・リンチによる映画化(1984)も失敗作に終わっている。彼ら巨匠が当時の映画産業のシステムに翻弄されたことももちろん原因だろうが、それ以上に、原作における緻密なディテールと巨大なスケールの両立を「映画」という限られた枠で実現することが難しかったのだろうと思われる(ある「想像力」を形にすることの困難を知るという意味で、リンチ版よりも、ホドロフスキーの映画化計画が失敗する過程を検証するドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』(2013)を見返しておくことをおすすめします)。『メッセージ』や『ブレードランナー2049』で大作SFをものにしてきたドゥニ・ヴィルヌーヴは、あらゆる「デザイン」を可能な限り洗練させることでこの難題を乗り切った。コスチューム・デザインからプロダクト・デザイン、サウンド・デザインまで、どれをとっても精緻を極めており、ほとんど色彩が少なく暗い画面で押し切るのも、映画館でしか味わえない快楽を追及しているからこそ。あるイマジネーションに具象性を与えるのは「デザイン」にほかならず、これが最新の映画産業が提示できる最高の回答ということだろう。ゆったりとしたテンポ感もエレガントで、パート1にあたる本作は壮大な序章に見えるほど(だからこそ、同じキャストとスタッフでパート2が実現してもらわないと困るのだが……)。ある意味では、古典の映画化というより、古典を使って現代映画の究極のハイファイを具現化した一作と言えるかもしれない。

  • ジョーダン・ピールが制作、『キャプテン・マーベル』の続編を監督することも決定している新鋭ニア・ダコスタが監督を務めた1992年のカルトホラー『キャンディマン』のリメイクも、なかなかスタイリッシュに洗練された作り。その洗練は画面もそうだが語りにも及んでおり、ホラーにおいて黒人の殺人鬼を登場させたという意味でレアだったオリジナル版を引き継ぐにあたって、本作は別の意味を持たせている。そう、ブラックライヴズマターだ。キャンディマンは「鏡に向かって5回その名を呼ぶと現れる」ため、様々な登場人物が何度も「彼の名を呼ぶな」と警告する。しかし、「彼の名を呼べ!(Say his name!)」がブラックライヴズマターにおけるスローガンであることを2021年を生きるわたしたちは知っていて、だから本作のなかではその意味が次第に反転していくのである。いまこそ、犯罪者扱いされた黒人男性としてのキャンディマン、ポップ・カルチャーの歴史に埋もれたブラック・アイコンの名を呼ぶときなのだと。

  • ジャーナリストのマシュー・ティーグが〈Esquire〉に寄せたエッセイが原作。末期がんで死にゆく妻を介護し、その過酷な状況のなか親友が支えてくれた経験を語った一本だ。近しい人間の死のリアルを描くことを追求した原作における介護の光景の凄惨さは映画において薄れているが、その分、本作では(中年)男性同士のケア――それは文字通りのケア労働にも及ぶものだ――を丁寧に追っていく。長らくケア(労働)が女性の役割とされてきたなかで、いま、男性同士の心のケアや家事育児労働も含めたケアはどのように発生しうるだろうか。本作はそのひとつのモデルケースでありつつ、「人生の暗い時期にいる友を支えたい」というシンプルかつ人間的な動機に支えられているのが染みる。ケイシー・アフレックとダコタ・ジョンソンはさすがの安定感だが、コメディ畑出身のジェイソン・シーゲルの優しい佇まいがとりわけ素晴らしく、ずっと彼を見ていたいと思わされる。

  • とある大学の文学部の英文学科で、初の女性学科長となった教授(サンドラ・オー)の奮闘……というか、中間管理職が舐める辛酸を描いたドラマ。そのなかでとりわけ熱心に描かれるのは、あらゆる側面でポリティカル・コレクトネス(政治的妥当性)を重視する学生たちと、過去の価値観や美学を教えようとする教授陣との間で発生する衝突だ。人気がなくなった老教授がハーマン・メルヴィル『白鯨』を取り上げると、学生たちは「でもハーマン・メルヴィルは家庭内暴力を働いていたんじゃ?」「『白鯨』は女性のほとんど登場しない男性中心主義の作品じゃ?」と指摘する。……が、それは本当に過去から学ぶ態度だと言えるのだろうか? そうしてクラシックが人気を落とし、人文学部門はますます予算を失っていく。これはわたしたちが現在直面する文化の問題そのもので、それでもわたしたちが「文学」なるものにいまでも惹かれるのだとしたら、学びの場としての大学はどのように成立しうるだろうか? そんな難問を、(人文的な)ペーソスをまぶして語る作品だ。

  • 終戦を知らずに約30年間フィリピン・ルバング島に留まった小野田寛郎の島での日々を、デビュー長編『汚れたダイヤモンド』(2016)で注目されたフランスの気鋭アルチュール・アラリが映画化。主要スタッフはフランス人が占め、キャストは全員日本人・全編日本語の異色作になった。小野田寛郎と言えば、日本人は帰国後の右派言論人としてのイメージが強く残っているかもしれない。が、アラリはここで彼を戦争の英雄とすることも被害者とすることもなく、島に留まりただ懸命にサヴァイヴする人間として描いた(アラリはこの映画の着想が冒険小説にあったと説明している)。よってわたしたちは、現在の政治的・倫理的価値観をいったん離れて彼の生存を見届けなければならない。社会的秩序を保つための道徳を解除するものとしての戦争があり、そのなかで人間はどのように・何のために生き延びるのか。観る者をその主題のただなかに放りこむような3時間だ。ホモエロティックなニュアンスすら感じる、兵士同士の生々しい交感を醸した役者陣にも目を見張る。

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