このMVはてんかんを引き起こす恐れがあるため、くれぐれも視聴にはご注意を。夜が明け、廊下の先にある地下のクラブへと赴いたザ・ウィークエンドことメイベル・テスファイ。酸素マスクを装着しながら踊る人々を掻き分けていくと、一人の女性がメイベルを待っていた。ジョルジオ・モロダー風の脈打つディスコ・ビートが鳴り響くなか、互いの身を寄せ合う二人(恐らく曲名はモロダー作曲“テイク・マイ・ブレス・アウェイ”のオマージュだろう)。すると女性は手にした三つ編みをメイベルの首にかけようとしてくる。酸素欠乏から引き起こされるエクスタシー。そんなスリルを求める彼女に、エイベルは「人生を終えるには君はまだ若すぎる/ガール、俺はその代償を払いたくないんだ」と懇願するも、彼はあえなく窒息。フロアで辛うじて息を吹き返したところで、MVは幕を下ろす。危険なナイトライフとコロナ禍の世界を重ねた、きたるべき5thアルバムのリード・トラック。
2018年に公開されたHBO制作のドキュメンタリー映画『ユナイテッド・スケーツ』も伝えていたように、ローラースケートはアメリカのブラック・カルチャーと分かちがたい関係にある。そして近年、TikTokなどを通じて70年代風のブーツ型スケートに再び脚光があたるなか、ブルーノ・マーズとアンダーソン・パークによるスーパー・デュオ=シルク・ソニックがローラースケートをモチーフにした陽気なサマー・チューンをリリース。かつてのフィリー・ソウルを彷彿させる絢爛なストリングスと乾いたギター・カッティングを背景に、アンダーソンはドラム、ブルーノはコンガをそれぞれ叩きながら、新たな恋が始まる予感を高らかに歌い上げている。この曲とデビュー・シングル“リーヴ・ザ・ドア・オープン”が収録される1stアルバム『アン・イヴニング・ウィズ・シルク・ソニック』は、現時点で2022年1月にリリース予定。アンダーソン曰く「60's、70’s、オールドスクール」な同作には、このユニット名の名付け親でもあるブーツィー・コリンズもゲストとして参加しているとのこと。
よせばいいのに、どうしても他人と自分を比べずにはいられない。そんなかつての自分を省みることから、このメランコリックなスロウ・チューンは生まれたのだという。ジェイムスが嫉妬する男を演じているのは、ビリー・アイリッシュの兄フィニアス。レコードの評価、チケットの売り上げ、異性からの人気、社交性、ペニスの大きさ……。すべてにおいて、彼は自分よりも優れている。「自分は普通の人間で、ずっと除け者だった」。そんな悲観的な言葉を呟くブレイクは、やがて他者と自分を比較することの虚しさに気づき、「スーパーパワーがなくても自分の道は見つけられる」「少なくとも私にはファンの顔が見えている」と続けていく。そして最後にセオドア・ルーズベルトの「比較は喜びを奪う」という言葉をさりげなく映したところで、MVは終幕。この曲を先行トラックとする5thアルバム『フレンズ・ザット・ブレーク・ユア・ハート』は、10月8日にリリースが予定されている。
元カノの好きなバンドが、今から半年後にハリウッド・ボウルでプレイする。男はそのチケット2席分をすでに確保。そんな自分を「楽観的なのかもね」と笑う。さて、この「楽観的」とは自分がヨリを戻せると思っていることについて言ってるのだろうか? それとも、今から6ヶ月後にコンサートが開催できると信じていることを指しているのか? いずれにしても、「今から半年後のコンサート」というタイトルからはコロナ禍を連想せずにいられないが、フィニアス曰く、これは2017年に書いた曲だという。アコースティック・ギターが刻むワルツのリズム。そして突如やってくるコーラスの轟音に身を任せ、ハリウッド・ボウルのステージから客席へと歩いていくフィニアス。MVの最後で彼は客席に座って会場全体を見渡すが、やはりそこには誰もいない。恋に落ち、別れ、またその人に恋するまでの過程を綴った、エモーショナルなパワー・バラッド。
90~00年代アメリカのティーン・コメディやホラー映画にインスパイアされたMVが、相次いで公開されている。象徴的なのはオリヴィア・ロドリゴ“グッド・4・U”だが、現在このトレンドはK-POPでも加速しており、たとえば『ミーン・ガールズ』の台詞をタイトルに引用したソンミ(Sunmi)“ユー・キャント・シット・アス”のMVでは、レンタル・ビデオ屋でゾンビとの銃撃戦を展開。そして、ソミ(Somi)の一年ぶりとなる新曲“ダム・ダム”でも、Y2K前後のアメリカを想起させるノスタルジックな世界観が繰り広げられている。チェック柄のコスチュームを纏って、想いを寄せるアメフト部の男性にアプローチしていくソミ。そのベタな設定もさることながら、『ロミオ+ジュリエット』『キャリー』などのオマージュもふんだんに盛り込んだ今作は、どことなくブリトニー・スピアーズ“ベイビー・ワン・モア・タイム”やクリスティーナ・アギレラ“ワット・ア・ガール・ウォンツ”を彷彿させる。映像はもちろん、ディープ・ハウス調のヴォーカル・ドロップも鮮烈なインパクトを残す2021年版バブルガム・ポップ。