いやー、遂に来ましたね。飛ぶ鳥を落とす勢いの兄弟デュオが、2ndアルバム『カラカル』を9月25日にリリースすることをアナウンス。ライオン・べイブ、クワブス、ナオがフィーチャーされているというトラックも楽しみですが、何はともあれ、まずはこれですよ。新作からの1stシングル“ホールディング・オン”は、ポップ・アクトとしての期待に応えつつ、フロアでの機能性も考え抜かれたビッグ・チューン。ディスクロージャーここにあり、といった感じです。グレゴリー・ポーターの豪快なシャウトからいきなり入る構成もキャッチーだし(ループされて80秒も続く!)、ソウルフルでポップなメロディもばっちりですね。得意の90年代風ハウス・サウンドは安定感バリバリですが、空間系のエフェクターも噛ませながらコーラス直前にタメを作る派手めの展開は、大会場でプレイし続けてきたここ数年の経験が生かされているのかも。来たる新作は、その人気に見合うだけの貫録とスケールが出ているんじゃないかと予想。
〈ラフ・トレード〉がひさしぶりに本気を出してガール・バンドみたいなヤバい新人を発掘してきたから、〈ドミノ〉も奮起した。というわけではないでしょうが、これはいいですよ。注目です。昨年イギリスでブレイクした女流詩人/ラッパーのケイト・テンペストやクウェズのバンドに参加していたこともあるドラマー/プロデューサーのソロ・プロジェクト。この〈ドミノ〉からの第一弾シングルは、さながら全盛期のMIAとチューン・ヤーズがセッションしているような――つまりポップでカラフルでありながらも扇動的なエナジーを持った強烈なトラックです。とはいえ、彼女はMIAのようにエキセントリックなポップ・スター性はなく、ロンドンのストリートのリアルな感覚をレペゼンしているようなイメージ。グライムにインスパイアされたトラックも、ダルストンの街角で撮影されたMVも、つまりはそういうことでしょう。ぶっといベース・ラインとガムラン風のビートは勿論のこと、「システムを動かせ」というタイトルにも痺れます。
レイト・オブ・ザ・ピアのフロントマン、サム・ダストがラ・プリースト名義で復活! ですよ! アルバム一枚で空中分解してしまったのがあまりに惜しいバンドだっただけに、これは嬉しいニュースでしょう。しかも今のところ発表されている新曲群は、レイト・オブ・ザ・ピアのような派手さはないものの、彼らの魅力の根幹にあったエキセントリシティを純粋培養したような曲ばかり。最高にぶっ飛んでいて、最高に面白いんです。中でも、この8分強のトラックは絶品。音の要素的にはファンク……と言えばファンクなのかもしれませんが、完全にルールを無視した奇想天外、支離滅裂な展開がとにかくスリリング。7分辺りからピーク・タイム向けのダンス・トラックのようにアゲアゲのシンセが急に入ってくるところとか、あまりにメチャクチャで爆笑ですよ。もうバンド時代以上にキレキレになっていますね。ということで、〈ドミノ〉から7月にリリースされるアルバムには超期待!
メジャー1stの『キスランド』は難しいところにいったなー、やっぱりDIYのネット・シーンから出てきたアーティストがメジャーに行くには上手くやらないといけないなー。という感じでしたが、最近のウィーケンドは徐々に持ち直しつつあるようです。映画サントラに提供した“アーンド・イット”は、全米トップ10に長らく居座るロング・ヒットを記録中。インダストリアルな音像と図太いベース・ラインに彩られた“ザ・ヒル”もなかなかの出来だったし――と余裕の構えでいたら、このトラックですよ。ぶったまげました。アップルの新しい音楽サービス、アップル・ミュージック発表の場でサプライズ披露されたものですが、なんとプロデュースを手掛けているのはマックス・マーティン! テイラー・スウィフトやケイティ・ペリーやブリトニー・スピーアズの仕事でお馴染みの超売れっ子ですね。これは間違いなく、ウィーケンド史上もっともキャッチーな仕上がり。80年代ファンク・ポップ風の曲調に引っ張られてか、アベル・テスファイの歌唱もいつも以上にマイケル・ジャクソンしてます。これまでのトレードマークであった、ダークで沈み込むようなムードは大きく減退。いやあ、ほんと、びっくりです。次のアルバムの方向性はまだ読めませんが、『キスランド』パート2を作るより、これくらい思いきり突き抜けてもらいたいものです。
北米ツアー開催のアナウンスに合わせてか、『ティラニー』でも指折りの名曲のPVが公開。というか、これ、PVというよりショート・ムーヴィですね。ストーリー仕立てで、かなり作り込んだ内容。モーツァルトの“レクイエム”を引用していることもあり、これは他界したばかりのジュリアンの実父に捧げられたパーソナルな曲かと思っていたんですが、ロックンロール・ライフの空しさを描いたような前半のシーンや、6分過ぎ辺りから頻繁に差し込まれる戦争のシーンを見ると、それ以上の意味合いが込められているのが否応にも伝わってきます。しかも最後は、このように様々なレヴェルの“人間の悲しみ”を捉えた映像を、終末後の世界にいるジュリアンがスクリーン越しに眺めていた、とも取れる描写。同じく北米ツアーの開催に合わせてリニューアルされた公式サイトには、スティーヴィ・ワンダー、ルー・リード、ボブ・マーリーのお気に入り曲をYouTubeのプレイリストでまとめた「Master The Mixtapes」というコーナーのほか、「Politics」のコーナーも新たに追加されています。