ついにキップ・バーマンのソロ・プロジェクトになってしまったブルックリンのインディ・ポップ・バンド、ペインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハート。新作『デイズ・オブ・アバンダン』は日本のバンドSloppy Joeに影響を受けているそうで、リード・トラックとなるこの曲も、もともとは“Sure”というタイトルで、Twee Grrrls Clubの本『Indie Pop Lesson』に付いてきたmp3コンピ用に提供されたもの。ビデオのほうは今ネットで流行りのGIFアニメのパロディになっていて、ルイス・ブニュエル監督の『皆殺しの天使』のごとく、晩餐会に集うセレブたちを皮肉った内容になっております。
そんなペインズのツアーにも参加している女性、ジェシカ・ワイス率いるブライトンの3人組が、このフィアー・オブ・メン。ジェイムス・ブレイクを輩出したロンドンのゴールドスミス大学で美術史を専攻し、ドイツ人映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーを敬愛するという彼女の美意識は、古代の陶器や彫刻をあしらったアートワークからもビシビシ伝わってきますが、ニュー・ウェイヴ風のダークなギター・サウンドに乗せられた、元ヴィヴィアン・ガールズのフランキー・ローズのように優しい歌声が印象的。ヴェロニカ・フォールズのロクサーヌ嬢に続く、新たな鬱病ヒロインの誕生なるか?
そのフランキー・ローズが、同じくペインズのツアーに参加しているドリュー・シトロンと新たに結成したデュオがビヴァリー。フィアー・オブ・メンと同じブルックリンの〈カナイン〉からリリース予定の1stアルバム『キャリアズ』からの先行シングルは、真夜中のドライヴのようだったフランキー・ローズのソロ作品とは対照的に、昼間からファミレスにたむろするヤンキーの彼女感が漂う、ヤサグレ金髪ポップ。街で偶然出くわしても、絶対に目を合わせたくないところです。
ペインズの新作の“ケリー”や“ライフ・アフター・ライフ”といった曲でリードを取っている謎の女性の正体が、ニューヨークのパフォーミング・アート集団、ピープル・ゲット・レディのジェン・ゴーマ。メンバーのスティーヴン・レーカーはなんとデヴィッド・バーンのバック・ダンサーで、ミランダ・ジュライの映画『ザ・フューチャー』でも振付を担当しているのだとか。そんな彼らがディアフーフのグレッグ・ソーニアをプロデューサーに迎えてレコーディングした2ndアルバム『フィジックス』のタイトル曲がこちら。リリースはザ・ナショナルのメンバーが主宰するレーベル、〈ブラスランド〉から。
最後にご紹介するのがグラスゴー、ではなくてフィラデルフィアのシューゲイザー・バンド、ア・サニーデイ・イン・グラスゴー。もともとはベン・ダニエルズと彼の双子の妹によるバンドだったのですが、ベーシストが事故で大怪我を負い、彼のガールフレンドだったベンの妹と共に脱退……という紆余曲折を経てバンドに加入した新ヴォーカリストが、なんとピープル・ゲット・レディのジェン・ゴーマだったというのだから驚き。そんな彼らの4年ぶりの新作は、ピープル・ゲット・レディの新作と同じ6月24日にリリース。まさにダブル・ブッキング!