SIGN OF THE DAY

80KIDZ interview
キャリア総括篇⑥:『FACE』
「EDM? いや、俺たちは未来を作るから」
by YOSHIHARU KOBAYASHI November 20, 2014
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80KIDZ interview<br />
キャリア総括篇⑥:『FACE』<br />
「EDM? いや、俺たちは未来を作るから」

●『80:XX-01020304』はダンスフロア向けのトラック集だから、当然トレンドは意識しているわけだよね。クラブ・ミュージックってそういうものだし。で、『FACE』が結果的に最新のトレンドも取り込んだ内容になったのは、『80:XX-01020304』を作っていた影響も大きいんだと思う?

Ali&「超デカい。『80』シリーズの最初3曲が叩きで、そこからどんどん旬っぽいのや今っぽいのを作る、っていうのを後半ずっと意識してたんだよ。だから、『80:XX-01020304』がすごく重要で、そこでトレンドを意識した上で、今になってるから」

JUN「『80』シリーズはEPだし、ある程度ストレス発散じゃないけど、その時のやりたいことをバーッと出して。軽い気持ちでアウトプット出来たから、それでスッキリみたいな。だから、EPでやったことはEPで終わり、っていうところもある。トレンドのものをやっても後追いにしかならないから、トレンドっぽいんだけど、ネクスト感もあるものを目指した」

Ali&「『FACE』は、『80:XX-01020304』ほどトレンドは意識してないんだけど、トレンドと自分たちっていう立ち位置が自然と出来てるんだろうな。DJでトレンドを死ぬほど聴いてるから、何が流行ってるかもわかってるし。でも、トレンドがこれだからこれをやる、じゃなくて、自分のルーツのものを聴きながら何も考えないでやってて、パッと周りを見たら、それが今のトレンドと合うんだなって気づいた感じ」

●今のトレンドって要するに90年代だけど、80KIDZは世代的に90年代がルーツにあるからね。

Ali&「今はこういう流れだし、僕らもこれやりたいし、そしたらそこにトレンドだけじゃない深みも出るだろう、っていう」

●すごく簡単に言うと、今回のアルバムって、インディのリスナーでハウスとかR&Bがかっこいい、って言っている人が聴いても反応できるアルバムでしょ?

Ali&「どうかね? でもJUNくんは、サンクラ系のR&B感あるやつは聴いてた。僕よりたぶん聴いてたと思う」

●“Dusk”とかは、そういう感じだよね。

80KIDZ / Dusk (preview)

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JUN「カシミア・キャット以降の若手とか、結構いるじゃないですか。今の若い子みたいにめっちゃ掘ってはないけど、好きな範囲である程度の掘り下げはしていると思う」

Ali&「最近ピアノがまた多くなってるのは、そういうことなんじゃない?」

JUN「そういうことだね。もともと黒っぽい音楽を聴いて育ってないので、そういうのに触れると新鮮だったし」

●じゃあ、今回のアルバムはどこに向けて作ったアルバムだと思う? 3rdは日本のロック・シーンに向けたところがあったわけでしょ?

Ali&「自分たちのやりたいことをやっただけじゃないかな、今回は。どこにも向けてない気がする」

JUN「自分たちに向けたところもあるんじゃないかな、多少は。でも、それが結果的に幅広い世代に受け入れられるような、ジャンルの壁も超えてるような内容になってるんじゃないの? 僕たちがいろんな音楽聴くわけだし」

Ali&「ああ、僕たちみたいな人に向けて、ってことでしょ?」

JUN「そう。僕らみたいな人に向けて作った結果、幅広い層に聴いてもらえそうな内容になってるんじゃない?」

Ali&「2人ともそうだと思うんだけど、客観的に自分たちで聴いて、買いたい、って思えるようなアルバムを作るようにしたと思う」

JUN「これまでは80KIDZのイメージに対して、自分が頑張ってるところがあった。テンションとか。でも、僕、テンションそんな高い人間じゃないし(笑)」

Ali&「テンション合わせてたよね(笑)」

JUN「逆にユルめの人間なのに、80KIDZっていうキャラを演じなきゃいけないっていうのがあったりして。曲も80KIDZのイメージを大事にして、持ってない暴力性を出してみたり。若い感じっていうか。でも、もういい歳だから、今回のやつは聴いて歳相応の、自分で聴いて恥ずかしくないものになったかな」

Ali&「何年経ってから聴いても恥ずかしくなさそうだもんね」

●従来の80KIDZのイメージに捉われないようになったと。

JUN「結果的に言えば、そうだね」

●今回のアルバムって、いろんな意味で90年代っぽいでしょ? ただ90年代と一言で言っても10年間あるから、その中身は様々で。

JUN「(『FACE』は90年代の)頭からケツまで、って感じだよね」

●そうそう。だから、ハウスとかR&Bみたいな、わかりやすい今の90年代的なトレンドも入れつつ、そこだけではない感じ――JUNくんの言うネクスト感も出すことは、意識的だったってことだよね?

Ali&「僕、90年代前半はそんな意識してないもん。ドンズバなのはミッド~レイトな感じだから。で、90年代前半の音楽が去年からずっと来てるから、じゃあ90年代中盤から後半やろうっていう。意外とみんな知らないから、ミッド~レイトの感じを」

JUN「今、若手で20歳くらいの子は生まれたくらいの年だからね。掘ってる子は聴いてるかもしれないけど、生まれた頃の音楽なんて聴いてるわけない。それに、掘って知ったのと、普通に高校生で知ってたのとでは、感覚的に全然違うでしょ。その違いはあると思う」

●じゃあ、自分たちがリアルタイムで経験して知っている90年代と、今の90年代リヴァイヴァルの一番の違いってどこにあると思う?

Ali&「アート感じゃない? アート感、強かったでしょ。ブラーが(ジュリアン・)オピーのジャケット使ったりとか(*『ザ・ベスト・オブ・ブラー』)。スパイク・ジョーンズがPVで有名になったりとか」

●ビースティーズとかケミカル・ブラザーズのPV、かっこよかったもんね。

Beastie Boys / Sabotage

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The Chemical Brothers / Elektrobank

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Ali&「そういうアートだったりカルチャー的な要素。それとは真逆で、陰な部分の音楽もめっちゃあったり。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな政治的なメッセージもあったかと思えば、チンコ出してるレッチリとかいるし、日本では渋谷系があったり。自分のアイデンティティの主張が、それぞれにすごくあって。でも結局、渋谷系好きな人ってUKの音楽も好きだろうし、レッチリ好きな人ってレイジも好きだろうし、UK好きな人もレッチリ聴けるし、レイジも好きだし、っていう。それぞれがいろんな方向性を向いてるんだけど、大体みんな幅広く聴いてて。でも今は違うじゃん?」

●細かいクラスタごとに別れ過ぎているってこと?

Ali&「そういう印象なんだよね。でも僕らはそれを全部一個にして出してるから、アート感とかそういうものも。っていうか、元々ずっとそうだしさ。アートワークに凝ったりとか、いろんなジャンルを自分たちの中で混ぜてウワッて出してるから。だから、80KIDZっぽくしなきゃいけない、っていうのを取っ払って、何も考えないでやるとこうなるんだよ」

●なるほどね。あと今回いいなと思ったのは、久しぶりに攻めていると思うし、エッジーなことをやっているアルバムだと思うんだけど、ちゃんと80KIDZらしいキャッチーさも失われていない、っていうところ。

Ali&「ディープ過ぎにやらないで、いいバランスでやるのは得意だから。がっつりアングラ寄りにやろうと思えばできるけど、そうしないで、ちゃんとギリのラインでできてると思う。だから、うちって空気感なんだよね。すごくキャッチーなことをやっているわけじゃないし、すごくディープなことをやっているわけでもないし。下手したら、今までに較べてディープなことをやっているのかもしれないけど、それはそれで成り立つんだよね。不思議。なんでだろうね? 客から見れば変わっているアーティストだと思う」

●特に今はそういう人が少ないしね。

Ali&「そう。そういう人が多ければ違うんだろうけどね」

●それこそ90年代なら、もっといっぱいいたでしょ?

Ali&「いっぱいいたよね、うん。だから、(80KIDZは)90年代からタイムスリップしてきた子たちみたいな感じなんだろうね。そのまんま来ちゃったみたいな。20年間、何やってたんだろう(笑)」

●(笑)でも、そんなふうにタイムスリップしてきちゃったような80KIDZにとって、ライヴァルと呼べるようなアーティストは今いるの?

Ali&「誰かいる? いないよね」

JUN「国内でこういうことやってるアーティストが他にいないと思うから、僕らがこれをやる意義はあると思ってるけど」

●tofubeatsとかSeihoみたいなプロデューサーはどう思ってる?

JUN「海外のネット・レーベル系ともリンクして、コミットできている子たちが多いから、そこが今っぽい」

Ali&「行動力すごいよね」

JUN「〈TREKKIE TRAX〉だってフィンランドの〈トップ・ビリン〉から出してるし。Seihoくんだって〈ラッキー・ミー〉とかとやってるでしょ」

Ali&「やってる手法とか、レーベルのやり方とかも素晴らしいと思う。ただ、こっち側から見たら、Seihoとかtofubeatsとか、どこか感性が違うんだなって思うし、向こう側から見たら、『おっさん、今どき何やってるの?』みたいにも取れるんだろうし。まあ、それでいいよね」

JUN「それは僕らの上の世代にもあったんじゃない? 上の40歳くらいの世代の人は、今若い子でエレクトロが流行ってるけど、ちょっと自分とは違うんだな、っていうのが絶対あったんだよ。だから、そこは同じだよね。でも素直に、新しい世代はすごいなって思う。何て言うかさ、僕らは5、6年やってきて、4枚目っていうので、立ち位置が違うでしょ?」

Ali&「そうだね、全然違う」

JUN「僕らは、いつまでいけるのかわからないけど、ある程度もう頑張んなきゃいけない、長い目で活動するアーティストでいるべきだと思うし。彼らは若くて才能ある新人、っていう感じじゃん。僕らは僕ら、彼らは彼らでポジションが違うから、やるべきことが結構違うよね」

●確かに彼らとはいろんなものが違うと思う。でも、アーティストとして活動する上では、単純に音楽を作りたいっていうモチベーション以外にも、それを作ることで何かと並んだり、何かをひっくり返すっていうモチベーションが大事だったりするよね? その対象になるものって、今はないの?

Ali&「うーん……あ! EDMかもしれない、ライヴァルは」

●ああ、なるほどね。

Ali&「日本人って今、EDMしか聴かないじゃん? 昼間は感じないだろうけど、クラブに行くとそう感じるんだよ。でも、僕はEDMってこのまま行ったらなくなると思ってる。少なくとも、一回収まると思う。で、収まった時に何もなくなるのが嫌だっていう。焼野原になるのが嫌。僕たちってどっちにも行けるポジションじゃん? もしかしたらEDMやった方がお金になるかもしれないし」

●むしろ、EDMやった方がいいよ、って言われることもあるでしょ?

Ali&「それはよくある。でも、あれは全部テンプレートじゃん。みんな一個のテンプレートを聴いて、ワーワー言ってるだけだと思ってるの。実際そうだし。ちょっとしたメロディ・ラインとかコードのニュアンスの違いで、アーティストの違いが出るだけで」

●音楽的にクリエイティヴとは感じられない?

Ali&「あれは歴史を作らないよ。ユーロ・ビートとかと一緒。それはそれで時代を作ったのかもしれないけど、その後、ユーロ・ビートから音楽シーンは何を得たか? って言ったら、ほぼ皆無じゃん。めっちゃ金になると思うから、今はみんなEDMに向かっているんだろうけど。サム41とかブリンク182とかでメロコアを知った人たちにとって、それはずっと思い出だろうけど、パンクの人たちからすれば、あんなのテンプレでしょ、ってなるわけ。それと一緒だと思う」

JUN「クラブで流行ってた洋楽が、いつの間にか自分たちとは全然関係ないものになってるっていうね」

●しかも、80KIDZを好きだったリスナーがEDMに流れるケースだって、それなりにあるわけでしょ?

JUN「あるある。CDショップで80KIDZもEDMって紹介されちゃうわけだし」

●でも、実際は別物なわけじゃない?

Ali&「でも、僕たちは、そういう人たちでも聴いてくれたら嬉しいよ。僕ら自身はEDMと違うけど、全然いいよ。ありがたい」

●勿論。リスナーが何と何を一緒に聴くかは自由だから。じゃあ、今はEDMが全盛だとして、それをライヴァルと見なすなら、80KIDZは現状のシーンに対してどんなオプションを提示できると思う?

Ali&「踊りやすいのって何? って問題があるよね。メロディなのか、シンセなのか、ビートなのか、グルーヴなのか。僕はグルーヴが好きだから。だから、自分たちが差し出したオプションがあるとすればグルーヴじゃないかな?」

JUN「前は縦ノリが多かった気がするんだけど、横ノリっていうか、斜めノリ?(笑) くらいな。横でもないけど、ちょっと後ろにグルーヴがある曲が多いかなって。そこらへん、自分でも変えたかったっていうのは、Ali&くんにもあったんじゃないかな」

Ali&「そう。あと、音の抜き差し? 音を抜いてグルーヴを作ること。生で音が少なめ、っていう」

JUN「意識したわけじゃないけど、EDMに対してダフト・パンクが出したアルバムと大体似たような位置っていうか。EDM全盛期に、もしかしたらEDMをやっていてもおかしくないようなアーティストが――」

Ali&「“ワン・モア・タイム”なんて、EDMの元祖みたいなものだし」

JUN「だから、ダフト・パンクは世間的にはもっとエレクトロニックな音を求められてたと思うんだよね。でも、それを裏切ってきて、逆のものをやった。それに似たようなオプション感? 日本の音楽シーンに向けて投下する起爆剤――とはならないかもしれないけど、ちょっとでも変革が起きる要因になればいいかなって」

Ali&「それは喧嘩を売った、みたいな」

JUN「そうはならないかもしれないし、自分たちの実力次第だけど。その可能性があるものとして、このアルバムは投下する意味があるだろうって考えてたよ」




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