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総力特集:80KIDZ
最高傑作『FACE』までの
全キャリアを合計3万字に及ぶ
インタヴューで徹底総括します
by YOSHIHARU KOBAYASHI November 20, 2014
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総力特集:80KIDZ<br />
最高傑作『FACE』までの<br />
全キャリアを合計3万字に及ぶ<br />
インタヴューで徹底総括します

断言しよう。『FACE』は、久しぶりに80KIDZの本領が発揮された作品。今の時代の空気を胸いっぱいに吸い、さらにその先まで見通そうとしている挑戦的なアルバム。なぜこの会心作は生まれたのか? それを紐解く10ページのロング・インタヴューをお届けしよう。

2000年代末に送り出した初EP作品『Life Begins at Eighty』と1st『THIS IS MY SHIT』で、80KIDZは新しい時代の扉を蹴破り、日本における本格的なエレクトロ・ブームの発火点となった。というのは、今や紛れもない史実。だが、どうしてそんなことが起こったのか? 彼らが日本ではいち早くシンセ・ベースにディストーションをかけたから、というのは表面的な話でしかないだろう。重要だったのは、彼らが誰よりも早く海外の新しい潮流に呼応し、それを自分たちのスタイルに落とし込んでアウトプットしたこと。もっと簡単に言えば、まだ誰もやっていないことをやったから。しかも、適度にエッジーで適度にポップという、絶妙なバランスで。彼らのトレードマークであった泣きメロのリフよりも何よりも、それこそがデビュー当時の80KIDZが強い求心力を持ち得た理由だった。

しかし、いつの頃からか、そういった80KIDZらしさは少しずつ薄れているように見えた。もっとも、2011年のデジタルEP『HOT STUFF』の時点で、ウィーケンドやインクをリファレンスとしたインディR&B路線も早々に打ち出している。が、なかなか「エレクトロ」のイメージから完全に脱却するには至らず、やや宙ぶらりんな状態で歩みを進めてきた感は否めない。以下の対話で語られている通り、いつまでも1stのようなバキバキのエレクトロを求め続ける「熱心」なファンへの気遣いや、いわゆるJ-ROCKフィールドへの野心を持ち始めたことが、足を引っ張っていたところもあるのだろう。言ってみれば、自ら嵌めた足枷に四苦八苦しながら奮闘してきたのが、3rd『TURBO TOWN』までの80KIDZだったのではないか。

ところが、2年ぶりの新作『FACE』では、まるで憑き物が落ちたかのようにすっきりとした表情を見せている。ファンへの余計な気遣いなし、J-ROCKへの目配せなし、ただ自分たちのやりたいことをやるだけ。という力みのない姿勢で臨んだ本作は、結果的に、彼らがナチュラルに持っている新しい音楽への鋭い嗅覚が発揮されたアルバムとなった。ここでは、インディR&Bやハウスのように、わかりやすく時流のど真ん中をいくトラックがあるのは当たり前。むしろ「その次」をリードすることを目論むかのように、初期〈R&S〉風のハード・テクノや90年代フレンチ・ハウス、さらにはベックやコーネリアスのサンプリング感を下敷きにしたトラックまである。ある意味、これは今をときめく90年代リヴァイヴァルへの80KIDZからの回答だ。90年代は90年代でも、僕たちはR&Bとハウスだけじゃなくて、もっと先まで行っちゃうよ、とでも言いたげな。

百聞は一見に如かず。『FACE』の収録曲を初披露した代官山UNITでのライヴ映像が公開されているので、それを見てほしい。リリース前から話題になっていたベンジャミン・ダイアモンド参加の“I Got a Feeling”は、80KIDZ流のフレンチ・ハウスへのオマージュだ。

80KIDZ / I Got a Feeling feat. Benajamin Diamond (live)

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上の映像を含む、この日のハイライト映像も公開されたので貼っておこう。ライヴのダイナミズムを伝えることにフォーカスしたような、アグレッシヴなトラック中心の選曲になっている。本日、ライヴ・ツアーのスケジュールも発表されたが、これを観ておくことで大体のライヴのイメージはつかめるはずだ。

80KIDZ live at CLUB PARK

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新作に話を戻そう。『FACE』は、余計なしがらみに捉われず、好き勝手にやりながらも、結果的に時代の空気を色濃く映し出すことになったアルバム。その意味では、『Life Begins At Eighty』以来の80KIDZらしい作品でもある。筆者のように彼らのデビューにワクワクさせられた人間は、「ようやくまた、こういった作品を作ってくれたか!」と感慨深くなるに違いない。だが、逆にこれまで熱心に彼らの歩みを追ってこなかった人には、なぜこういった姿勢でもう一度作品を作るのが難しかったのか、なかなか実感を持って理解できないというのも事実だろう。

そこで今回のインタヴューでは、改めて彼らのデビュー作まで遡り、順を追って話を訊いている。また、「80KIDZの歴史」という縦軸とは別に、音楽的な側面から『FACE』を読み解くための手助けとして、本作を何かしらの形でインスパイアした10枚のレコードを2人に挙げてもらうコーナーも最後に用意した。これを読んでもらうことで、新作への理解が一層と深まるはずである。

ということで、その文量は膨大。いくらインタヴューとは言え、これをウェブで一気に読むのは骨が折れるはず。なので今回は、ポストを10個に分割し、キャリア総括篇と『FACE』のレシピ篇の二回にわけてアップしていくことにした。まとまった時間を見つけて一気に読むもよし、移動中に1ポストごと読み進めるもよし。いずれにせよ、全てに目を通すことでようやく『FACE』の全体像が見渡せると思うので、ぜひ最後まで楽しんでもらいたい。




キャリア総括篇①:イントロダクション
「最新作『FACE』は80KIDZそのもの」


キャリア総括篇②:『THIS IS MY SHIT』
「エレクトロの覇者として世界へ」


キャリア総括篇③:『WEEKEND WARRIOR』
「何この手のひら返し?! からのリスタート」


キャリア総括篇④:『TURBO TOWN』
「夜のクラブから、昼のロック・フェスへ」


キャリア総括篇⑤:『80:XX-01020304』
「やっぱりクラブのフロアって最高だな」


キャリア総括篇⑥:『FACE』
「EDM? いや、俺たちは未来を作るから」


『FACE』のレシピ篇①
「渾沌/サイケデリア/アート/辺境」


『FACE』のレシピ篇②
「マッドチェスター/ベック/フレンチ・タッチ」


『FACE』のレシピ篇③
「シカゴ・ハウス/R&B/ムーディマン」



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