DJやめたり、ここで書かせてもらったり、自ら変化の渦中へと身を置いた2014年でしたが、その初っ端の動機は貧困からの脱出であり、日夜フラッシュバックする鬱々とした不安から、音楽には安堵や落ち着きを求めていたように思います。空気公団の『音街巡旅Ⅰ』は、15年に及ぶ名曲の数々を、12年作『夜はそのまなざしの先に流れる』を到達点に、すさまじいまでにタイトに磨きあげられた現在のアンサンブルでリアレンジした、彼らへの入り口にも最適な一枚。心地の良いアンビエンスは『ファー・サイド・ヴァーチャル』以降の耳にこそ届いてほしい。今日の視点からは、これが最高傑作でしょう。また、コードブック付で、メンバーが「回し読みして思い思いに歌ってほしい」と語るという、音楽かくあるべきというメッセージにも、自分がこの数年感じてきた21世紀への不信感と、それを背景とした旧来築き上げられてきたはずの美徳や倫理への再評価というアングルとの合致を感じたのでした。『グランド・ブダペスト・ホテル』も同じポイントでやられた。パーティの場では、2回だけ見れたネイチャー・デンジャー・ギャングがダントツ。性急にがむしゃらに夜を駆け(上げ)抜ける姿から、そうするしかないほどに抱えた切迫感が痛いほどに突き刺さり「すごくわかる。わかるよー」と、涙が止まりませんでした。2015年は、この一年間をかけて各地から台頭していきた20歳前後のインディ・パンク・バンドたち、ノット・ウォンク、フル・ティーンズ、カー10、サトア……彼らの演奏をたくさん見たい。その一方で、ミニマムなものへのと回帰していく気運を感じるシンガー・ソングライターたちの次も非常に楽しみ。たくさん書いて、ゆっくり伝わって、そして自分や友達の生活が少しだけラクになればと願っております。
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②「年間ベスト・アルバムから外された、我が心のアルバム5枚」>>>
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我が心のアルバム5枚』by 小林雅明」
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