『アントゥルー』を機に世間一般への認知度を高めたダブステップは、その後09年のスクリームによるラ・ルー“イン・フォー・ザ・キル”リミックスのヒットと、10年にマグネティック・マンの1stアルバムが全英チャート・トップ5入りによって一気にメインストリームのマーケットへと侵攻を果たすようになっていきます。しかし、その一方でブリアルは、その狂騒からあえて距離を取るように寡作化。07~10年に彼が発表した音源は、〈ハイパーダブ〉5周年を記念した『5:ファイヴ・イヤーズ・オブ・ハイパーダブ』をはじめとするコンピレーション・アルバムに提供した数曲と、リミックス数曲、そして09年にリリースしたフォー・テットとのコラボレーション・シングルラ・ルー“イン・フォー・ザ・キル”リミックスのヒットと、10年に「Moth / Wolf Cub」のみ。
ダブステップのメインストリーム化がさらに進む一方で、さらなる拡張・融合・実験もアンダーグラウンドで進行し、それが「ポスト・ダブステップ」との呼び名で浸透しつつあった2011年3月、ブリアルは実に3年半振りに、〈ハイパーダブ〉から3曲入りのEP『ストリート・ヘイロー』をリリースします。
ここでの彼は、タイトル・トラックでハウスへの接近を果たし、“NYC”では陰鬱なブリアル・サウンドに更なる磨きをかけています。この作品から、彼は2・3曲入りのEPを主たるフォーマットとして、ほぼ1年ごとにリリースを続けていくことに。
それと並行して、この年彼はフォー・テットとトム・ヨークと組んだ“Ego / Mirror”、マッシヴ・アタックとの“Four Walls / Paradise Circus”というコラボレーション・シングルを2作発表しています。
次のリリース作は12年2月発表の『キンドレッド』。上記の2作品は日本独自編集盤としてまとめられ、『ストリート・ヘイロー/キンドレッド』としてCD化されています。
12年12月には、さらに新しいEP『トゥルーアント/ラフ・スリーパー』をリリース。
この一連のEPを聴いていくと、ブリアルの音楽性の変遷が、すっかりメインストリーム化したダブステップを離れて新たなアンダーグラウンドの深淵へと向かいつつあることがよく分かります。リリースされたばかりの最新シングル『ライヴァル・ディーラー』もその延長線上で、これまでのEPともまた違う新たなブリアル・サウンドへと果敢に足を踏み入れた1枚と言えるでしょう。最後に、『ライヴァル・ディーラー』収録の3曲を。彼が今現在見ている景色がどんなものなのか、ぜひ自分の耳で確かめてみてください。
「ダブステップ界の最重要人物、 ブリアル新作『ライヴァル・ディーラー』を 100%堪能するための『12曲の歴史』part.1」はこちら。