ダフト・パンクがディスコ/AORを掘り起こした『ランダム・アクセス・メモリーズ』でグラミー賞を勝ち取り、さらにはトロ・イ・モアやクローメオなどのアーバンなファンク・ポップに再度光が当てられている今日この頃。そろそろカインドネスことアダム・ベンブリッジも正当な評価を受けていい頃ではないだろうか。と思っているのは僕だけではないはず。
改めて振り返ってみても、カインドネスが2012年に送り出した1st『ワールド、ユー・ニード・ア・チェンジ・オブ・マインド』は素晴らしかった。チルウェイヴを完全に先駆けていた2009年の名カヴァー“スウィンギン・パーティ”だけではない。ディスコ、ブラコン、ファンク、AORなどの多彩な引用を散りばめて創出された淡いファンク・グルーヴの数々は、チルウェイヴの文脈にも乗りながら、2014年の最新モードを半分先駆けていたようなところもある。
ただ、やはりタイミングが悪かったのか、『ワールド~』の評価は一部を除き、決して振るわなかった。“スウィンギン・パーティ”から時間が空き過ぎたし、2012年はチルウェイヴも曲がり角に差し掛かっていたというのも大きいだろう。だが、10月11日にリリースされる2ndアルバム『アザーネス』で、今度こそカインドネスはしっかりと見直されることになるはず。インディR&Bのディーヴァであるケレラとアデがフィーチャーされたリード・トラック、“ワールド・リスタート”を聴くと、その予感はさらに大きくなる。
すでに各所で言われているように、これは回転数を落としてフェラ・クティのトラックを再生したような、とろけるようにスロウなアフロ・ファンク。スタイリッシュでグルーヴィだが、心地よい微睡みのなかにいるような雰囲気は相変わらずだ。『ピッチフォーク』のインタヴューによると、アルバムにはほかにもブラッド・オレンジやロビンが参加。そして、あの名プロデューサー・チーム、ジャム&ルイスとのコラボも収録される可能性も……とアダムは語っているが、果たしてどうなっているのだろうか。
何にせよ、過小評価の憂き目にあっていたカインドネスが見直される日は近い。間もなく世に問われる『アザーネス』は、きっとその重要な契機となるはずだ。
カインドネス『アザーネス』
BRC-442 (Beat)
2014年10月11日発売
01. World Restart feat. Kelela & Ade
02. This Is Not About Us
03. I'll Be Back
04. Who Do You Love? feat. Robyn
05. 8th Wonder feat. M.anifest
06. With You feat. Kelela
07. Geneva
08. For The Young
09. Why Don't You Love Me feat. Devonté Hynes & Tawiah
10. It'll Be Ok
11. STNSTF (Bonus Tracks for Japan)