ジャック・ホワイトの新作『ラザレット』を聴いて思ったのは、ソングライティング自体は極めてオーセンティックでも、アレンジやプロダクション、さらには音の位相や配置を定型から絶妙にズラすことで、現代的なロックンロールを作るという試みはいまだ有効だし、スマートでクレヴァーなやり方だよな、ということ。彼はホワイト・ストライプス時代からそれを探求しているが、新作はソロ前作よりも断然その点に意識的で、やっぱりジャック・ホワイトいいわ~、と感慨にふけった次第。で、考えてみれば、ある意味、スプーンもまた、彼と並走するような形でモダンなロックンロールの在り方を追求しているバンドと言えるのかもしれない。特にここ最近は。
全米4位というスプーン最大のヒットを記録した2010年作の『トランスファレンス』は、ジョン・レノンへの憧憬が滲むブリット・ダニエルのソングライティングを軸に、ミニマルに削ぎ落とされたバンド・アンサンブルで、徹底的に音響実験を突き詰めたアルバムだった。極端に振り分けた各楽器の配置とトリッキーな音像、そして、そのうえで徹底的に磨き抜かれた一音一音の美しさ。一見、何の変哲もないロックンロールだが、耳に意識を集中すればするほど、その完成度の高さには唸らされるばかりだった。そして、それから4年ぶりの新作『ゼイ・ウォント・マイ・ソウル』でも、そんな彼らの過激な音響実験はさらに突き詰められている、のかもしれない。アルバムからいち早く公開された“レント・アイ・ペイ”の、激しく歪みながらも洗練されたサウンドを目の当たりにすると、そんな予感が広がる。
このアルバムには外部プロデューサーを起用していて(前作はセルフ)、まずはジョー・チッカレリと作業を進め、最終的にはデイヴ・フリッドマンと仕上げたという。デイヴ・フリッドマンと言えばサイケデリックという言葉が真っ先に思い浮かぶが、サイケを精神世界の拡張ではなく、常套句から食み出したサウンドの探求と捉えれば、これほどしっくり来る組み合わせもないだろう。
アルバムのリリースは8月6日。海外ではセイント・ヴィンセントやライが所属する〈ロマ・ヴィスタ〉から、日本では〈MAGNIPH〉から送り出される。今や完全にモダン・ロックンロールの探求者となったスプーン、その最新成果報告を心して待て!
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