SIGN OF THE DAY

〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2021年のベスト・アルバム、ソング&
映画/TVシリーズ5選 by 辰巳JUNK
by TATSUMI JUNK December 25, 2021
〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、<br />
2021年のベスト・アルバム、ソング&<br />
映画/TVシリーズ5選 by 辰巳JUNK

>>>Best Movies / TV Series of 2021

5. フリー・ガイ

4. ボー・バーナムの明けても暮れても巣ごもり

3. 最後の決闘裁判

2. プロミシング・ヤング・ウーマン

1. ミナリ


ゲームエンジンが映画TV制作に組み込まれるなか「アメリカの若者が最も好む娯楽」がビデオ・ゲームになった2021年(デロイト調査)、そのゲーム文化を前提とした『フリー・ガイ』の成功は、他領域文化に食らいついてポップコーン・ムーヴィを創造するハリウッド・エコシステムの強さの証明でもありました。白人スター企画として「白人特権」ネタも要領よく挿し込む同作の裏にある気がしたのが『ボー・バーナムの明けても暮れても巣ごもり』。白人男性コメディアンが己の特権性やSNS文化をネタにしていく導入ですが、そうやって自分自身をもメタ分析していくあまり精神が分裂をきたす様がゲーム実況フォーマットで表される。デジタル文明の落とし子としての風俗作品と言えます。「人が殺される現実世界よりずっと現実的で安全なのがデジタル世界だ」。

一方、「安全ではない現実世界」を描いたのが『最後の決闘裁判』であり『プロミシング・ヤング・ウーマン』ですが、これら時代劇と現代寓話、さらには『イカゲーム』にも潜んでいたのが、シスジェンダー男女の体格差、そこから生まれる暴力性。尊厳を以て「現実」と向き合うドラマは、あまりに「現実」的な方向、一定数の人々にとっての日常の悪夢そのままに接近している感があります。

どうにもこうにも自分がいかに小さな存在か突きつけられるコロナ禍、意外にもフィットしたのは『ミナリ』でした。韓国系移民家族が米南部の土着文化に馴染んでいく変な宗教映画で、その「根づき」を示唆するようなラストを受け入れない人もきっと多いのですが、ああした秩序なき玉石混交こそ、小さな存在が寄り合う生活の「現実」ともとれる。合理性や一貫性など適用できない諸事情を背負いながら、なんとか根を張って生きていく。それこそ日々の営みだと身に染みたわけです。一歩進むとしたら、ほとんどの人がそうやってなんとか生きていこうとしていると気に留めることではないでしょうか。


>>>Best Songs of 2021

5. Trippie Redd / Miss The Rage Feat. Playboi Carti

4. Doja Cat /- Kiss Me More ft. SZA

3. Lil Nas X, Jack Harlow / INDUSTRY BABY

2. Olivia Rodrigo / good 4 u

1. Adele / Easy On Me


群衆の熱狂が封じられたベッドルームにて誕生した「レイジ」ジャンルは、児戯じみた歪みのなかに、当時の危険な兆候をも孕ませていたのかもしれません。エポックな“ミス・ザ・レイジ”を聴くたび、成長段階を阻まれた子どもたちがロックダウン明けの学校で問題を起こしていった件にまつわる言葉を思い出すのです。「正常でない状況に対する正常でない反応は、正常な行動である」。

今年の主役としては、ドージャ・キャットがドレイクの月間Spotifyリスナー数を超えてみせたことが示唆的。歌とラップを巧みに織り交ぜ「ラッパーか否か」議論を燃え上がらせる彼女こそ「ポピュラー・ミュージックになったラップ・ミュージック」の体現者に思えます。翻ってポップスター・シーズンを宣言したリル・ナズ・Xにしても、クィア・プライドをヒップホップな自画自賛に乗せるアンセムが鮮やかでした。

ロックダウンもその明けのパーティも攫ったのがオリヴィア・ロドリゴですが、影響源たるアラニスやテイラーと異なるのは「失恋/挫折=世界の終わり」とばかりのダイナミックなエモーショナル。その過剰さが自嘲気味のユーモアでコーティングされてるあたり、TikTok文化的と言い換えられるし、同界隈とポップ・パンクの好相性も腑に落ちるわけです。

血気盛んな若者が活躍するなか、アデルを最後に置いたのは『ミナリ』と似た感傷で、後悔や罪が尽きぬとも、せめて想いあっていたことは否定せず惜別しよう、と願いたいからです。別に失恋したとかじゃないんですが、そもそもこういう切実さは恋愛関係に限らないよね、と思い直すことが肝要。本当に「お手柔らかに」な年でした。

……これだけ書いといて「もうちっとだけ続くんじゃ(亀仙人)」なんですが、自分にとっての2021年とは、何よりもヴァージル・アブローの逝去でした。レディー・ガガと共に演劇/戯画的アート・ポップを広めたアレキサンダー・マックイーンの急逝によって2010年代が始まったのなら、その後10年の「ストリートの民主化」を牽引したのは、疑いようもなく彼とカニエ・ウェストだったはずです。ヴァージルの偉大さの一つには、軽視されてきたストリート側こそ「リアル」だといった優越性を唱えたりもせず「観光者と純粋主義者」両方が渡れる丈夫な橋を建築したことがあります。現実のコミュニティとデジタルのつながりを愛した彼が、つねに楽観と可能性を示したこと。それを忘れないように2022年を歩んでいきたい所存であります。

「いまの時代はルネッサンスだと思う。だから“全部クソだ、世界はもう終わり”みたいな考えには囚われないでほしい。それはチルしたいっていう身体のメカニズムにすぎない」(Virgil Abloh, “Insert Complicated Title Here”, 2017)


〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2020年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 小林雅明


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2021年
年間ベスト・アルバム 50

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