客観的に見てロックが惨敗の年だったと思うし、R&B/ヒップホップの活躍が目立った年だったのは確か。ただ、〈ピッチフォーク〉の年間ベストや2018年の〈コーチェラ〉からロックがシャットアウトみたいな話になると、「そこまでひどかったか?」と首を傾げずにいられない。
少なくともアメリカのロック系のラジオでイマジン・ドラゴンズしか選択肢にできないほど何もない状態ではなかったし、〈BBC 1〉や〈BBC 6〉といったステーションで問題なく流れるロックだってたくさんあった。夏場には、内容に差こそあれ、全米、全英1位にロック系のアルバムが輝くラッシュだってあった。期待のビッグ・ネームのアルバムがことごとく今ひとつだったことは認めるが、例えばオーストラリアのギャング・オブ・ユースやキング・ギザード&リザード・ウィザード、パラモア以降に続くPVRIS、マーモゼッツといった「女子系ラウド・ロック」の枠を超える存在、アメリカに目を向けてもビッグ・シーフやフレー・フォー・ザ・リフ・ラフ、ワクサハッチーなどカリスマ的なフロント・ウーマンを擁する逸材が出てきている。ジャパニーズ・ブレックファーストやジェイ・ソム、スーパーオーガニズムのオロノなど、エイジアン・インディ女子だって気になるところだ。2018年初頭のUK勢を見てもシェイムやドリーム・ワイフといった新人が早速楽しみなアルバムを出している。
加えてヒップホップだっていいことばかりではない。黒人の古株のリスナーからは現状のラッパーのアイドル化、フロウのマンブル化やリリックの質の低下を憂う声が聞こえ、世代対立が起き始めているし、この業界の人気者使い回しの悪癖も相変わらず。展開によっては今の良い空気が保てるかどうかもわからないのが現実だ。
ただ、それもこれも、ちょっとした歯車の噛み合わせで、悪い印象に見えたり、よく見えたりするもの。今後それがどうなるか、気になるところではある。
〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、
2017年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 渡辺裕也
「サイン・マガジンのライター陣が選ぶ
2017年の年間ベスト・アルバム/
ソング/ムービー/TVドラマ5選」
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「2017年 年間ベスト・アルバム 50」
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