SIGN OF THE DAY

やっぱりガツーンと来るロックが聴きたい!
そんな気分にぴったりな7組をご紹介。
今、時代はラウド&エクスペリメンタル!
by YOSHIHARU KOBAYASHI September 09, 2015
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やっぱりガツーンと来るロックが聴きたい!<br />
そんな気分にぴったりな7組をご紹介。<br />
今、時代はラウド&エクスペリメンタル!

2015年の今、「優れたラウド音楽」と言われたら、どのようなものが思い浮かぶでしょうか? これが案外、難しい。なかなか良い例が出てきづらい。と思うんです。

少し状況を見渡してみましょう。例えば、最近のUSインディには極端にラウドな音楽はほぼ見当たらない。と言っていいですよね。スフィアン・スティーヴンスセイント・ヴィンセントの最新作然り。勿論、その磁場とは少し離れたところにいるフー・ファイターズなんかは、昨年、アメリカのポップ音楽史を辿った力作『ソニック・ハイウェイズ』を上梓するなど、かなり頑張ってはいます。

でも、他に思い浮かぶものといったら、オリジナル・メンバーが揃って、大規模なツアーを開始するブラック・サバスみたいな大御所とか? まあ、嬉しくはありますけど、それってやっぱりファン・サービスのための思い出と音楽のパッケージ商品じゃないですか。それ以外だと、ベビーメタルを含む、一定数以上の根強いファンが存在するメタル市場を狙った手堅いサブカル商品もあったりします。言うまでもなく、EDMなんかも、「様式化されたラウド&ヘヴィ商品」の一形態と捉えていいでしょう。

勿論、マストドンやコンヴァージといった、長年に渡って独自のラウドネス、ヘヴィネスを追求し続けているバンドもいるにはいる。でも、アイシスも解散しちゃいましたしね。

そのような感じで、2015年のラウド音楽を巡る状況は決して順風満帆ではありません。しかし、アグレッシヴなサウンドを思いきり全身で浴びてカタルシスに包まれるというのは、間違いなくロック音楽の醍醐味のひとつ。だからこそ、様式化されたファン・サービスとしてのラウド・ロックではなく、もっと粗野で、もっと混沌としていて、もっとエクスペリメンタルなサウンドを求める気持ちがじわじわと沸き上がってきてもおかしくはない。じゃないですか?

実際、こういった気分は少しずつ、でも確実に高まりつつあるように思うんです。そこで、この原稿では、そんな今の時代のムードを図らずも先取りしている7組のバンドを紹介していきましょう。今、もっともヘヴィかつエクストリームなサウンドでぶっ飛ばしてくれるのは彼らだ!




1) Girl Band
アイルランドはダブリンからやってきた2015年最大のダークホース。ストロークスとリバティーンズが2000年代の〈ラフ・トレード〉を更新したように、2010年代の〈ラフ・トレード〉を更新しうる存在。さらにぶち上げるなら、80年代前半のノーウェイヴ/ポストパンクと、最先端のUKクラブ音楽にヒントを得たダンス・ビートを正面衝突させた、21世紀のジョイ・ディヴィジョン。つまり、最高ってことです。このブレイクスルー・シングル“ロウマン”(2014年)は、さながらニュー・インダストリアル以降の空気でアップデートされたLCDサウンドシステム。

Girl Band / Lawman

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ただし、ガール・バンドにはジェイムス・マーフィーのような緻密な構築性はなく、もっとスポンティニアスで、それゆえにスリリング。とことん無愛想な反復ビートと地面を這いずるベース・リフに支えられ、ザック・デ・ラ・ロッチャよろしく無数のエフェクトを駆使したギターがノイズをまき散らし、シンガーのダラ・カイリーは行き場のない苛立ちが匂い立つ言葉を喉を引きちぎるようにして歌う。時にアンサンブルは暴風雨のように荒れ狂い、禍々しい音塊が視界一面を覆い尽くしますが、そこには最高のダンス・トラックが持ちうる恍惚さえも宿っているのがガール・バンドの特異点です。

9月30日リリースの1st『ホールディング・ハンズ・ウィズ・ジェイミー』は、そんな彼らの真骨頂が刻まれた最初のマスターピース。アルバムのハイライトである“ポール”は、「ノイズ+ダンス・ビート」というバンドのアイデンティティを明快に体現しています。

Girl Band / Paul

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2) Metz
ガール・バンドも絶大な信頼を寄せるカナダのスリー・ピース。勿論それは、このメッツが鼓膜を叩き破るヘヴィでアグレッシヴなサウンドを持っているからでしょう。パンク/ハードコアの血筋を引く硬質な演奏に乗せ、投げやりなヴォーカルがフラストレーションをまき散らす様は、さながらジーザス・リザードとニルヴァーナの共演、もしくはフガジと初期マッドハニーの結合か。大所帯バンドが持て囃された2000年代後半のカナダで誕生したこの突然変異は、ファックト・アップと遠い共犯関係にあるバンドとも言えそうです。つんのめりながら凄まじい勢いで転がりつつも、左右チャンネルのスイッチを巧みに使い、爆発的なダイナミズムを創出する“ウェット・ブランケット”が超絶キラー。この曲は、2013年リリースの1stアルバム『メッツ』収録。

Metz / Wet Blanket

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3) Viet Cong
こちらもカナダからの刺客。ディス・ヒートの呪術的なインダストリアル・ビート、バウハウスの退廃的なロマンティシズム、ソニック・ユースのホワイト・ノイズ、そしてイアン・カーティスの脳裏にこびりついていた死への欲望――2015年初頭にメディアを騒がせたヴェト・コンのデビュー・アルバム『ヴェト・コン』には、それらの要素が混然一体となって渦巻いている。つまり彼らは、80年代前半のポストパンク/ニューウェイヴにおける実験主義とアート志向、そしてそのダークサイドに魅せられた者たち。といったところでしょうか。ロネッツ“ビー・マイ・ベイビー”のビートを借用し、アルバムでも一際甘いムードを湛えた“コンチネンタル・シェルフ”では、轟音の中でニヒリズムと死への強迫観念が静かに蠢いています。

Viet Cong / Continental Shelf

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4) Klan Aileen
2015年において、もっともエクストリームで不機嫌で殺伐としているバンド。それ故に、今の日本のシーンでは完全に鬼っ子。かもしれませんが、ガール・バンドやメッツとの同時代性を確実に感じさせる存在でもあります。ドラムとギター&ヴォーカルの二人編成。その利点を突き詰めて辿り着いたであろうミニマリスティックな演奏は、その一音一音すべてがささくれ立っている。不穏なドローンのループ、目に映るあらゆるものに悪態をついているような叫び声。そして、執拗に同じフレーズを繰り返すアンサンブルとそれをぶった切るノイズの爆発は、その凶暴性を圧倒的なカタルシスへと昇華しています。彼らは2015年8月にライヴ音源集『Dazzlingly Rooms』を300本限定のカセットテープでリリース(レーベルの公式ウェブ・ショップとライヴ会場のみで発売)。今はまだ限られた人たちの目にしか留まっていないものの、きっと世界は彼らを待っているはず。

Klan Aileen / Stop My Life If You Want My Heaven




5) Titus Andronicus
米ニュー・ジャージーの10年選手。ポーグスを思わせる酔いどれ感と、ブルース・スプリングスティーンもかくやという男臭くてワイルドなサウンドは極めて痛快。そこには、ここ10年のUSインディが築き上げてきた洗練とは一線を画した、臆面の無いエモーショナルなエネルギーの放出がある。と同時に、シェイクスピアの血で血を洗う終わりなき復讐劇からバンド名を拝借したという事実は、誰もが加害者であり被害者でもあるこの世界の構図にどこまでも意識的であり、それを文学的な表現へと昇華しているバンドであることも示唆しているでしょう。彼らの評価を決定づけた2nd『ザ・モニター』(2010年)のテーマは南北戦争で、最新作『ザ・モースト・ラメンタブル・トラジェティ』(2015年)は全5幕からなる90分超のロック・オペラ。現実世界の複雑さが増していくのに呼応するかのように、その壮大な世界観は半ば広大妄想気味に拡大中。言葉の壁ゆえに日本では見過ごされ続けている彼らは、今こそ発見されるべき時を迎えているように思います。

Titus Andronicus / The Magic Morning

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6) Destruction Unit
バンド音楽においてノイズは暴力衝動の表出だけを意味するのではない。アリゾナ出身、故ジェイ・リータードもオリジナル・メンバーに名を連ねていたという5人組は、それを改めて実感させる。彼らがオファーするのは、破壊的な騒音の洪水がもたらす、どこまでもエクスタティックな陶酔。時間軸が歪み、体が空間に溶け出してしまうようなサイケデリック・トリップです。2015年リリースのEP『ライヴ・イン・サンフランシスコ』でも聴けるように、ライヴでは10分を優に超えるエクスペリメンタル・ノイズ・ジャム“ナイト・ローナー”は、MC5とソニック・ユースと2010年代インディ・ガレージの間にあるどこか。

Destruction Unit / Night Loner

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7) Drenge
美しい自然が広がる田舎町は、血気盛んな若者にとって「何も起きない」退屈の象徴でしかない。だからこそ、彼らはギターを手に取る――そんな古典的なロック・バンドの成り立ちを2010年代にもう一度なぞってみせたのが、オーエン&ロリー・ラヴレス兄弟によるドレンジです。2013年の1st『ドレンジ』は、イングランド北部の片田舎で暇を持て余していた彼らが、そのフラストレーションを残忍な攻撃性へと転化させて生まれた作品。ギター・ロックが枯渇気味だった当時のイギリスにおいて、衝動任せに楽器を掻き鳴らし怒号を上げる様は、それだけで好奇の目を引くのに十分でした。2015年の最新作『アンダートウ』では、良くも悪くも勢い一発の印象だった前作を乗り越えるべく、新機軸としてベーシストが加入。確実に音のスケールが増すことに。どっしりとした重さと幻惑的なサイケデリアを手にした幾つかの曲は、アークティック・モンキーズ『AM』やクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジの背中を見つめているかのよう。化けるか?

Drenge / Running Wild

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こうして見てみると、まさに今、世界各地からラウド&エクスペリメンタルなバンドが次々と現れ始めているのが感じ取れるでしょう。勿論、まだアンダーグラウンドでの胎動ではありますが、彼らが何かしらの時代の気分をつかみ取っているのは確か。なので、これが今の気分。2015年の最新モード。と軽々しく断言しておきたいと思います。くれぐれも乗り遅れないでくださいね。


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