SIGN OF THE DAY

岡田拓郎ソロ始動にあわせ、不世出のバンド
「森は生きている」とは何だったのか?その
問いに答える秘蔵インタヴュー初公開:後編
by SOICHIRO TANAKA October 06, 2017
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岡田拓郎ソロ始動にあわせ、不世出のバンド<br />
「森は生きている」とは何だったのか?その<br />
問いに答える秘蔵インタヴュー初公開:後編

岡田拓郎ソロ始動にあわせ、不世出のバンド
「森は生きている」とは何だったのか?その
問いに答える秘蔵インタヴュー初公開:前編



●えっと、ここまでで音楽的にまったく見落としちゃってるところって、ないかな?

岡田「僕も二ヶ月くらい聴いてないから、よく覚えてないんですよね(笑)」

●(笑)でも、こうやって、全体を微分しながら見てきても改めて思うけど、やっぱりビックリしますよ――森の1stに慣れ親しんだ後に、これが2ndです、って言われたら。あまりに違う。

岡田「まあ、そうですよね(笑)。でも、同じことやっててもしょうがないのは、自分が一番よくわかってるし。同じことばっかり出来ない質だし」

増村「興味は尽きないからね、いろんな音楽への」

岡田「勿論」

●えっと、これまで話したのは、リズムの話、プロダクションの話、リヴァーブのこと、和声の話、構成の問題……。

岡田「あと、増村くんが歌ってるとかですか?」

増村「まあ、それはいいんじゃない?(笑)」

柴崎(レーベルA&R)「9曲目(“グッド・ナイト”)のプロダクションは語っても、かなり面白い気がします」

増村「9曲目、誰も突っ込んでくれないよね?」

岡田「確かに(笑)」

柴崎(レーベルA&R)「打ち込みをしてるっていう。わりとわかりやすい打ち込みが入っているのが面白くて」

●えっ? ごめんなさい、スルーしてるかも。聞き逃してる。

増村「ちょっと、減っちゃったんですけどね。打ち込み要素が」

●どこの部分が打ち込みなの? 全体じゃないでしょ?

岡田「元々は全部打ち込みにしようと思って。これもジム・オルークがやらないっていう話に戻るんですけど(笑)。で、(音楽的に)イギリスに行って、『今のイギリスって言ったら、ジェイムス・ブレイクだよな』的な感覚で(笑)。僕、ジェイムス・ブレイクみたいな曲を作ろうと思ったんですけど、これ、何っていわれたんだっけなあ?」

柴崎(レーベルA&R)「試しに聴いてみましょう」

森は生きている / グッド・ナイト


岡田「いや、全然大した曲じゃないんだけどなあ(笑)」

増村「俺、好きだけどね、この曲」

岡田「これのデモがヤバいですね」

●デモの方がエクストリームだったんだ?

岡田「デモはすごかったですね」

増村「デモ、すごいよね」

岡田「6歳児がダブステップ聴いて、やってるみたいな(笑)」

●(*曲を流す)え、これ、キックもスネアも全部、打ち込み?

増村「いや、これは生で」

岡田「生を貼りつけたみたいな感じですよね」

増村「ここの歌は僕ですね。ここだけ。2テイクだったね?」

岡田「2テイク」

増村「竹ちゃんだって何回も録るのに」

岡田「(笑)この虫声、マスタリングのPADOKさんに渡したら、『これ、CHARAみたいな女の子が歌ってるの?』って言われたんですけど、増村の声を早回ししただけなんですよね」

●(笑)じゃあ、ここだけなんだ、増村くんのは。

増村「そうです。あ、ここは岡田くん。三人ヴォーカルがいる、っていう謎の曲」

●そうか、それも全然気付いてなかった!

岡田「そうです、っていう(笑)」

●改めて聴くと、スネアの位置とかも――。

岡田「スネアの位置とかムチャクチャですね(笑)」

増村「これ、ハットは打ち込みですね」

●ああ、そっか。この細かいハイハットにもジェイムス・ブレイク的な名残があるわけだ?

岡田「そうですね。でも、出だしのキックが、僕はジェイムス・ブレイクだったんですよ」

●えっ?

岡田「ドンッ、ツッ! っていう」

●(*もう一度最初から聴き直す)なるほど、これね、一番最初のね、途中から入ってくるやつ。

岡田「そうです、それです」

増村「俺がやると、全然そんな風になんない(笑)。儀式的になっちゃう、俺がやると。ベーシックの時点では、太鼓は全部打ち込みにするっていう予定だったんですけど、いろいろミックスが進んでいくなかで、『生を試してみよう』ってなって。岡田くんが録ったからっていうのもあるし、リハスタのベードラが意外にも病気な音を醸し出していて、『これは面白い!』ってことになって録ってみた、っていう感じです」

岡田「そう」

増村「そうしたら、意外にハマったから、『打ち込み止めようか』みたいな。あっさり(笑)。そんな流れだった記憶がある」

岡田「これ、ミックス、一番始めに投げ出したやつだな(笑)」

増村「『もうわかんねえっ』って(笑)」

岡田「もう引くも足すもないところまでやっちゃったから」

●あ、そうか。かなり長い期間、岡田くんがひとりでミックスをやり続けてたんだよね。実際、増村くんなり、他のメンバーは、最後のポスト・プロダクションの部分、ミックス直しの部分っていうのは、段階的には聴いてはいたの?

増村「そうですね」

岡田「結局、四ヶ月くらいずっとミックスやってたんですけど、毎日作業してて、毎日終わりましたよ、ってmp3に落として、みんなに送ってたんですね。始めのうちは、『ああ、ここ変わったね』とか、『あー、ここ、エコーかけるといいね』とか、返事が来るんですけど、最後の方は、誰からも返事来なくなって(笑)」

増村「(笑)わりと僕は最後の方までメールを返してた方なんですけど、みんなはもう8月末くらいで脱落してて。正直、結構いい感じなんですよ。でも、岡田くんは気に食わない、気に食わない、って言ってて。もう最後はPADOKさんと二人でやってたんだよね」

岡田「メンバーに送ると嫌がられるし、嫌われそうだったから」

増村「(笑)そんなことないけど」

岡田「最後はマスタリングしながらミックスもしてたから、本当によくわかんないよな」

●長くやり続けてると、客観性なくなってくるもんね。

岡田「そうですね」

増村「壮絶な」

岡田「それを最後にマスタリングで入ってきたパドックさんが、第三者の視点で、『ここをもうちょっとこうした方がいいんじゃない?』っていうのを結構聞けたんで、最後は落ち着いては出来ましたね」

●実際のところ、ミキシングを何ヶ月も続ける上で、岡田くんが自分自身に課していたハードルというのは、どういう部分だったんでしょう? クリアすべき到達点っていうか。

岡田「本当はもうメチャクチャなミックスにしたかったんですよ。バランスとかも、普通のポップスではありえないような感じに。でも、三ヶ月、四ヶ月やっていくうちに、僕が最後に望んでたのが、『普通のミックスにしたいな』ってところで(笑)。ここまで定位をぶっ壊したのをいかにナチュラルに聴かせるか? ってところで。定位とか、音のバランスじゃなくて、耳馴染みがどう聴こえるか、っていうところで。僕の家のスピーカーが、古い60年代の、父が昔使ってたのをそのまま使ってるんですけど。とにかく音がモコモコで悪いんですけど、それでいろんなレコードとか、新しいCD聴いても、どれ聴いてもすごいよく聴こえるんですね。だから、そのモコモコのスピーカーで聴いて、ミックスとか、バランスとかどうにかなっちゃうようなスピーカーで聴いても、自分がいいって思えるところまで持っていきたかった、っていうのがありますね」

●最終的には、耳馴染の良さが一番の基準になった?

岡田「そうですね。それがなかなか難しかったっていう」

●でも、俺、この前、言ったじゃない? iPhoneのどうしようもない白いイヤホンでもすっごくちゃんと聴ける。普通はとてもじゃないけど聴けないの、高音がキンキンで。でも、この前の吉田くんとの対談の取材の前の移動中にiPhoneで聴いてて。で、はたと気がついたら、「あれ? これ、ちゃんと聴けるんだけど」っていう。

岡田「それは嬉しいですね。まあ、マスタリングとかも結構よかったのかもしれないですね」

●さっきはこのレコード聴いたら、びっくりするって言い方をしましたけど、特に意識せずに聴いたら、すごくすんなりと、あっさりと聴けるレコードでもあると思うんですね。しっかりと聴けば聴くほど、いろんなエクストリームさがある――リズムにしろ、プロダクションにしろ。でも、と同時に、とてもBGM的にさらっと聴けてしまうっていう、とても不思議なアルバムに仕上がってる気がするんですよ。でも、そういったポジションを、無意識にでもイメージしてたところはあったと思いますか?

岡田「どうだろうねえ」

増村「けど、それは、多分、常にあるんじゃないですかね」

●自分たちが作る音楽の考え方のベースにあるってこと?

増村「どうだろう……」

岡田「すごく細かい引っかかりはたくさんやってるんですけど、それはあからさまに絶対出しちゃいけないっていうのが、僕の音楽のなかでの決まりっていうか。奇をてらって、おかしく聴かせるなんて誰でも出来るし」

増村「多分、40分ないし、45分くらいのレコードを聴くのが好きなんで、その感覚だと思いますけどね。全体として聴けるのが好きっていうのがあるし」

●じゃあ、トリッキーな質問を二つ。リスナーを二人想定しました。まずひとり目、二人にそれぞれ5歳くらいの甥っ子なり、姪っ子がいたとします。それが『グッド・ナイト』を聴いた、と。で、彼/彼女が二人のところにやってきて、『拓郎おじさん、和彦おじさん、このレコードはどこをどんな風に聴くと一番楽しいの?』って訊いてきたら、どういう風に答えますか?

増村「何て言うかなあ」

●多分、妖怪ウォッチとかが大好きなわけだよね。おそらく普段はジャストなビートの音楽、フックがあって、さあ、コーラスに行くぞ! って感じの音楽を聴いてる。

岡田「そうか。となると、『聴こえるままに聴けばいいんだよ』っていうのは通用しない感じですよね」

●そう。ちょっと困った顔をして、でも、キラキラした目で、「おじさんたちが作ったものだから楽しみたいんだけど、どこをどう聴くと、楽しいの?」って訊いてきた。さあ、どう答える? っていう。子供相手だから、答え方によっては人格が問われるよ(笑)。

岡田「これ、難しいですね(笑)」

増村「僕は、多分、『どっか行きたくならないかな?』みたいなこと言う気がするな。これ聴いて、わりと子供が見てるような世界なところも一部あるんじゃないかな、みたいな感じがするから」

岡田「うん」

増村「多分、子供なんかが一番反応するんじゃないかな? しないかな? どうかな」

●多分、本当は絶対そう。自分の子供の成長を見てても、小っちゃい頃は音楽に対してすごくフレキシブルだったのが、幼稚園に行って、小学校に行って、世間に出れば出るほど、あるいは、テレビから出てくるものを聴けば聴くほど、許容範囲が狭くなってくから。

増村「そうそう。それでどんどんリズム感が(笑)」

岡田「なんかノイズのミュージシャンが言ってたんですけど、子供とかを連れてきてもいいライヴとかがあって。ホワイト・ノイズをガーッとかやるんですけど、0歳とか1歳とか2歳の子とか、そういうの気持ちよくて寝ちゃうらしいんですよ。でも、ちょっと意識が出てきたような、5、6歳の子供になると、『うるさい!』って怒り出したり泣いたりするらしくて。あの境目ってどこから出来るんですかね?」

増村「わからないけど、リズムも絶対、日本人が出来ないってことはないんだよね」

岡田「環境だよね」

●環境の産物だよね。

増村「だと思う。日本人だから、っていうのは、本当はないんだと思う。ビート感に関しては」

岡田「で、僕は何を言うか、って感じですよね(笑)。えー、でも、小っちゃい子こそ、素直に聴いてほしいですね」

増村「『ギター、めっちゃ上手いやろ』って(笑)」

岡田「『これな、めっちゃ高いアンプやねん』って(笑)」

●それこそ、人格が問われるな(笑)。

岡田「ヤバいヤバい(笑)。でも本当に、子供には難しいこと考えず素直に聴いてもらえたら嬉しいね。そうだ、神戸のライヴの時に、みんなわりとアコースティックな編成で出ていて。僕らが二番手で、ショピンの後だったんですよ。まずショピンがアコースティックで場をいい感じに暖めて、みんな、座ってワーッと聴いてて。それで、どっちに寄ろうか迷ったんですけど。ボッコーンッってすごい音出したら、前にいた30代くらいの女の人がびっくりして飛びあがるような感じになっちゃって(笑)。でも、ひたすらミニマルな演奏を10分、15分くらい続けてたら、前にいた小っちゃい子供たちが踊ってたんですよね」

増村「嬉しいよね」

岡田「嬉しいよね。なんか、そうありたい、と思いましたね」

●じゃあ、もう一人、別のキャラクター。友人の息子か何かで、16歳。ここ一、二年で急激にブルックリン系の音楽とか、USインディものをガンガン聴いた、と。で、「俺は、今一番新しい音楽を聴いてるんだ! 俺の耳はイケてるんだ!」って思ってる。そいつが「ねえ、二人のこのレコード、どこが新しいの?」って言ってきたら、どう答えます?

岡田「(笑)」

増村「どこか新しいか? うーん、『そんなわかったようなことを考えずに、もっと違うところにアイデンティティを持て!』って言いますね。『オリジナリティを新しさだけに持つな!』って言いますね」

岡田「それ、面白いね(笑)。それ以上の答えは浮かばないわ。本当にそうだよね」

増村「新しい/新しくないってあると思うけど、オリジナリティはそこだけじゃないと思うから。僕の育った環境では、新しいってことがオリジナリティなんだっていう意識が別に音楽に限らず、そういった感じがちょっと――」

●強過ぎる?

増村「強いって印象を受けながら育ってきたから。じゃあ、どこに置くか? って言われたら、それは言葉で説明するのは難しいですけど。まあ、音だと思いますけど。個性だと思うし。だから、どこが新しいの? って言われたら、そう言いますね(笑)。『何をわかっとんのか、村八分聴け』って言いますね」

岡田「アハハッ!」

●(笑)ただ、そう言いながらも、森としては、自分自身が新しいと感じることが出来るものを作りたいっていうモチベーションは絶対にあると思うんですね。すごく強いと思う。そこに関しては、今回のレコードはどの程度強かったと思います?

岡田「僕は、自分のなかで新しいことしかしないつもりでやりましたね。だから、何だろう……どうっすかね? 新しいっていうのが、世の中の新しいとかいうのは僕はどうでもよくて、とにかく自分の感覚のなかで、自分の意識のなかで新しいことをしたかったし、それは出来たと思うし。今後、自分のなかで新しさは常に求め続けるだろうけど、さっきの16歳のガキじゃないけど、知ったかしたような新しいものは作らないなと思いますね(笑)」

●(笑)まあ、でも、すごく乱暴に言うと、一般的にそういう意識って多いよね。なんとなくね。

増村「そうですね。まあ、どうでもいいんですけど。ただ自分も高校生の時とかはどうでもよくなかったから、周りのそういう感じは。大学一、二年で音楽サークル入ったら、大体、軽音的なサークルの女の子が、『新しい音楽を作る』って言ってるんすよね(笑)」

岡田「何だ、それ(笑)」

増村「『私、新しいことやるから』って。辟易しましたけど」

●(笑)ありがちだなあ。でも、ある意味、いい話だけど。

増村「爆笑でしたけどね。そうかあ、って言って。今回の新しいって意識はわからないけど、僕はいろんな音楽が好きだけど、日本語があって、シンガーソングライターじゃなくて、バンドで日本語でやるっていうなかで、自分の好きなものとセンスを信じて自分で聴けるものを作りたかった、っていうのはありますけどね。そういうものって、はっぴいえんどぐらいしか思いつかないっていうか。だから、ある意味、新しさを求めたところはそこかもしれないし。何故かというと、あんまりなかったから」

●新しさというのは相対的なものでもあるからね。

増村「ええ、そうですし。まあ、古くならないものが好き、っていうのがアルバム制作に限らずありますけど。音楽以外でも。そういうものが好きですし。今聴いても、はっぴいえんどは古くないですし。勿論、ちょっと要所要所は古いところはあるけど、そういうものは好きですけどね。泉鏡花は全然古くないし。まあ、古いところもあるけど(笑)」

●じゃあ、松本隆繋がりで。以前、松本隆さんがNHKの佐野元春先生の番組に出てた時に、自分の書く曲というのは全部、詞先なんだ、100%歌詞が先なんだ、とおっしゃってて。

増村「ふーん!」

●それ自体も、「へー、びっくり!」っと思ったんだけど、その次の一言がかなり強力で。そうじゃなきゃダメだ、って言ってたの。

増村「ほんとですか?」

●でも、森の場合、逆でしょ? 全曲、曲先でしょ?

増村「はい(笑)、そうですね」

●でも、俺的には、詞先じゃなきゃいけないっていう考え方自体は受け入れられない部分もあって。ただ確か、松本さんがそう考える意図の部分までは話してはいらっしゃらなかった。あまりにその言葉が強いので、思わず佐野さんでさえ突っ込めなかったってことだと思うんだけど。

増村「いや、突っ込めないですね(笑)」

●誰も突っ込めないよね?(笑)。

増村「言いそうだもん、けど」

●で、森の場合は、岡田くんなり、竹村くんが曲を先に作り、増村くんが後から歌詞を書く。詞先で曲を作ったりってことはないわけじゃない?

増村「今のところないですね」

●多分、松本隆さんが考えてたのは、あらかじめ言葉が醸し出すフィーリングという目標があって、言葉と音楽がその目標を目指すんだってことなのかな? と俺は憶測するんですけど。ただ、森の場合、曲先で、なおかつ、音楽の到達点というのが、ある程度、見えてると思うんですね。じゃあ、その上で増村くんが歌詞を作るとなった時に、いろんなパラメータがあると思うんだけど、どんなパラメータをもっとも大事にして書いているんでしょう?

増村「うーん、結構、それこそいろんなパラメータはあるし。なんだろう、今回は、そのいろんなパラメータを欲張りに詰め込むっていうところが目標だった気がします。勿論、音楽が先にあるんで、メロディに乗るような歌詞をつけたいし、乗った時に音楽を邪魔しない、もしくは、音楽をもっと膨らませるような響きも欲しかったし、言葉だけでも意味が欲しかったし、時にはメッセージが欲しかったし、物語が欲しい時もあったし。もしかしたら、詩にもなり得る、小説にもなり得る――ならなきゃいけない、とかじゃないですよ――なり得るかもしれないようなものも欲しかったし。(アルバムのブックレットを出して)文字だけを見た時にもゴチャゴチャしてない綺麗さも欲しかった。だから、全部欲しかったんですね(笑)。で、なおかつ、全曲が並んだ時にアルバムとして統一感があるというか、コンセプチュアルになるっていう」

岡田「欲張りだな(笑)」

増村「全部のパラメータが重要だったっていう。でも、松本隆さんが詞から作るって、どうなのかな? まあ、彼の詞には合ってるのかもしれないですけど、僕は音楽が好きだし、制限のなかでやる方が面白かったりして。だから、音楽を聴いて、デモを聴いて、いろんなイメージが浮かぶし。そのまま言葉に直結する時もあれば、すごい漠然としたものがあるだけで言葉にならない時もあれば、“グッド・ナイト”なんかはすごく特殊で、イメージが、情景とかが浮かぶんじゃなくて、なんか漢字のブロックみたいなやつが浮かんでバラバラ降ってくるみたいな(笑)。ここまで来ちゃったか、みたいに思ったけど。そういうことも一回だけあったし、情景の浮かび方はそれぞれなんですけど。いろんなイメージが出てきた中で、自分の実体験だったり、そういうものとリンクして言葉になっていくものもあれば、サッと情景が浮かんで、それを言葉に絞り出していくーー絵を言葉に変えていくっていうか。まあ、いろんな出来方があるんですけど、何にしろ、雲をつかむような作業なんですけど。ただ、最後に言葉を整える時には制限があった方がいい気がするんですよね。小説も好きだし、場合によっては書きたいことが多過ぎて、音から生まれたものなのに、書きたいことが多すぎて小説になる、そういう小説の作り方があるとしたら、それはそれで面白いのかもしれないけど。歌詞を書こうと思ってやってるから、制限があった方が収まるし。だけど、言いたいことは消したくないじゃないですか? だから、洗練されるってわけじゃないけど、無駄が省けてくるっていうか。小説は無駄が大事だったりすると思うんですけど。そういう意味も含めて、わりと音からの方が書きやすいっていうか。そもそも音っていう一個のヒントがあるから。ヒントが一個の方が絶対楽だし」

●そうだね。

増村「でも、松本隆さんが詞からじゃないといけないっていうのは、どうなんだろう……。彼は彼の世界観がすごいあるし。まあ、はっぴいえんど以外、あんまり知らないんですけど(笑)。でも、はっぴいえんどの歌詞は好きですよ、僕は」

●でも、確か、はっぴいえんど時代も100%詞先だったって言ってたはず。

増村「まあ、でも、大瀧さんと細野さんがいますからね」

岡田「アハハッ」

●でも、あれを詞先だったんだと思うと、びっくりするよね。そう考えると、大瀧さんと細野さんがさらにすごいっていう。

増村「けど、大瀧さんも相当、松本隆の影響受けたって書いてるし。はっぴいえんどの歌詞はすごい面白いなって思いますし。影響受けてますし、僕も。たまに『松本隆に影響受けたから、ドラムと作詞を両方やってるんですか?』って訊かれるんですけど、そんなわけないじゃないですか(笑)。そんな奴いないでしょ(笑)。僕は別個の興味としてやってきて、たまたま松本さんと同じようになってるだけで。松本隆だって絶対そうに決まってるから(笑)。本が好きで、ドラムも興味があっただけだっていう。絶対そう(笑)」

岡田「今度、はい、って答えてみてよ(笑)」

増村「はい、って答えたらヤバいね(笑)」

●ハハハッ!

増村「ヤバい人だよね(笑)。だから、僕は、歌詞書くには制限があった方がいいですね。ヒントもあるし。ヒントと制限があるから。辛いことでもあるけど、形としては面白いんじゃないかなっていう」

●じゃあ、歌詞のモチーフの話ね。1stとの比較で言うと、1stには夢っていうキーワードがあったわけですよね?

増村「うん」

●で、今回の『グッド・ナイト』に関しても、その夢というモチーフは受け継がれてる部分もなくはない?

増村「同じですよ」

●部分的には死生観みたいなものも匂わせるような、儚さ? っていうんですか。そういう感覚も、1stから2ndにかけて何かしら継続していると思うんですけど、そういう見立てに対してはどうですか?

増村「死生観?」

●要するに、何かがずっと続いていくことはないっていう実感というか。と同時に、未来永劫ずっとどこかに存在してるような淡い記憶みたいなものが存在してる感覚っていうのかな。

増村「結構いろんな人がテーマにしてきてるものだとは思うんですけど、何て言うんですかね……言葉で説明するのは難しくて。自分のなかに昔からあったのか、それともまだ見てない未来にあるものなのか、子供の頃に経験したものなのか、みたいな、不思議なポケットのような思考があって。それって、稲垣足穂なんかが“宇宙的郷愁”って言ったりとか、後期の、それこそ『美のはかなさ』(『一千一秒物語』収録)っていう、なんで『美のはかなさ』っていう題名なのかは全部を読むとすごいよくわかって、結構感動する文章があるんですけど。感動でもないけど(笑)。その中にそういうものを表した、“六月の夜の都会の空”っていう言葉があったりとか。しかも、そこで、そういうのって古典にもあったよとか、哲学者たちもそういうこと考えたんだよとかってことも体系化されてたり――体系化されてはいないか――紹介されてたりして。宮沢賢治なんかも、足穂みたいに分析的ではないですけど、そういうことが大きいテーマになってるんじゃないかなっていう。で、僕もそういうのを知らないうちから同じようなことを考えてて。それが1stなんですけど」

●なるほど。

増村「1stの時に、そういうものが浮かんできた自分を後から見たら、びっくりしたし。で、1stと2ndの間に足穂を読んで、『そういうものを意識的に説明している人がいるんだ!』と思って、1stと同じことやろうと思ったんですね。何回も言うように、それが何か? っていうのは説明しにくいんですけど。そんな、未来にあるかもしれないし、経験したかもわからないし、浮かぶ時と浮かばない時があるようなもの――それ自体が儚いですよね。だから、儚さっていうのが自然と見えるんじゃないですかね。誰しも経験してて、思い出せそうだけど思い出せないとか。あと、リスナーの方が森は生きているを聴いて、なんでか知らないけど、ずっと忘れてた昔の記憶を思い出したっていうのが多分、あると思うんですね。だから、儚さっていうのは、そういうところなんじゃないかなと思いますけどね。1stが出た後にも、そういう情景が浮かぶって言ってもらったこともあったし。だから、それが出来たら、成功なんじゃないかなって。歌詞を書く上で、ちょっとみんなの記憶を掻き乱す、じゃないけど(笑)、リスナーの方がどこか忘れてたことを一個か二個でも思い出せたりしたら、成功なんじゃないかなって意識ははあったし。それを思い出した時の感じというのは、各々わりと儚い感じがするんじゃないですかね」

●じゃあ、儚いっていう言葉に関しては、そんなにハズレではない?

増村「そうですね。ただ、儚いって言っても、死生観っていう、もろに死の儚さっていう意味ではないですけどね。まあ、1stの“光の蠱惑”は心中の歌だったりするんですけど(笑)」

●そうなんだ?

増村「それはどうでもいいことです(笑)」

森は生きている / 光の蠱惑


●じゃあ、今の、時間とか空間とかと別のところで存在するかもしれない記憶の話ね。その感覚っていうのは、増村くんが元々何かしら興味があった感覚なわけでしょ? それと、岡田くんが中心になって作っている森のサウンドっていうのは、何かしらクロスオーヴァーするっていう感覚はある?

増村「っていうよりは、森は生きているが始まって、僕が森は生きているに入って、そういうことを思うのが不思議と増えたっていう。それだけですね」

●じゃあ、もしかしたら音楽の影響もあったのかもしれない?

増村「多分、あったんだと思うんですけど。わりと僕の、僕のこれからも乏しいキャリアのなかですごく大きなものだし、森は生きているは。今までもこれからも乏しそうなキャリアですが(笑)、森は生きているは大きいと思うし、なぜか森は生きているが始まった時にそういうことを考えたっていう。けど、自分でもその時に思ったのが、『なんでこういうこと考えるのを忘れてたんだろうな? 中学校くらいまでこういうことばっかり考えてたのにな』っていう意識もあって。だから、森は生きているに限らず、自分がここ二年くらい過ごすなかで、わりと大きなテーマとしてあって。それと、森は生きているの進行が同時だったんで、歌詞も何かわかんないけど書くことになっちゃったから(笑)、自然とそういうものが1stで出てきて。で、そういうことに意識的になれたのが1stと2ndの間っていうか。そういう感じですね」

●じゃあ、岡田くんへの質問です。増村くんが感じるそういうフィーリングとか、実際に森は生きているで書いてる歌詞とかっていうのは、自分が中心になって作ってる音楽とクロスオーヴァーしていることを、どんな風に捉えていますか?

岡田「まあ、単純に面白いですけどね。何だろう、直接、その話とは関係ないけど、僕と増村なんて、歳も結構……」

増村「5個違う」

岡田「5くらい違うのか。で、一緒に制作していくってなると、どこか僕がフォーカスしすぎて何も見えなくなっている時に、彼は僕のもうちょっと上のカメラで見てるようなところがあって。それがすごい面白いんですよね。そこでの影響もすごいあったし。僕は言葉でうまく説明したりすることは出来ないけど、その代わり、増村のイメージとかを音でもっと膨らませられる瞬間もあったと思うし。そこらへんで上手く、すごい変なバランスのなかでも絶妙なバランスを保ってて、こういう曲が書けて、こういう詞が欠けて一個の曲になってるなっていうのはあるんですよね。だから、面白いですよね、単純に。こんなこと……」

増村「なかなか出来ないもんね。今回の制作過程もかなりキツかったですけど、面白かったですし。二人が別に呼応するって感じでもないし(笑)。でも、自動筆記とまでは言わないけど、わりと記憶のないまま自然発生的に出来上がってるところもあるし。それは曲もそうみたいだし。それは結構面白かったですね、そのリンクは」

●岡田くんからすると、1stで増村くんが書いた歌詞から、ソングライティングの部分で何かしら影響を受けた部分はあったと思いますか?

岡田「う~んと、楽曲に関しては、おそらく一切ないです。でも、今こういう風に語った彼の日々の暮らし方みたいなのが、単純にすごい興味あって。そういう話を聞くっていうのが、僕、これまでの人生であんまりなかったし、面白かったし。まあ、多分、こんな人って、なかなかいないと思うんですけど」

増村「残念ながらね(笑)」

岡田「それがすごい面白くって」

増村「僕だけ一人暮らしで、よくみんな俺の家にいるんですよね」

岡田「そう。『おかえり~』みたいな感じで、たまに庭から入ったりしてるんですけど(笑)。そういう影響っていうのは、すごい大きいし。それこそ、これ作ってる時は、ずっと家にいたし」

増村「そうだね」

岡田「家か、西荻に飲みに行ってるか、みたいな感じで。何しゃべったか、お互い酔ってたから、全然覚えてないですけど(笑)。二人で飲んでたりしゃべってたりしたら、もう雲がつかめるような瞬間がすごいあって、二人の中で」

増村「ああ、それはあるね、うん」

岡田「そんな中で『ああ、これやないか!』みたいなのもすごいあって。まあ、今は全然思い出せないから、正直、何をつかんだのかわかんないですけど(笑)。でも、多分、それが曲になってるっていう。そういう感じはしますね、今回」

増村「次の日の朝に形としてポッと出てきてた、みたいな。『ああ、ああすればいいじゃん』っていう」

岡田「その間が欠落してる(笑)。酔いが覚めるまでの時間が大切なんでしょうね、制作するにあたって。酔ってても駄目だし」

●でも、そういう、雲をつかんだのかつかんでないのか、わからない場所から出来たレコードでもあるってこと?

増村「そうですね。それ自体が、つかんだかつかんでないかわからないこと自体も、これ(『グッド・ナイト』)かもしれないし」

岡田「そうだねえ」

●俺の場合、二人に較べると、もっと客観的な聴き手じゃないですか? で、このレコードって、やっぱり、瞬間瞬間の――バッとアトモスフィアが変わる瞬間とか――ひとつひとつの音色とか、定位、展開の変化に耳が行くんですよ。で、アルバム一枚聴き終えた後に、曲単位でもアルバム単位でも、いろんなことが起こったっていう実感はあるんだけど、全体としてどうなんだとか、そういうのは自分の中ではっきりと残ってるわけじゃない。と同時に、その、いろんなことが起こっていることの気持ちの良さを要約しようとしたりすると、なんか勿体ない感じがするんですね。

岡田「ああー」

●だからこそ、まあ、それについては考えずに、「ただもう一回聴けばいいんじゃないの?」って思ったりするレコードっていうか。

岡田「うん(笑)」

増村「いいですねえ」

●ただ、それって、俺たちの仕事からすると、一番面倒なのよ(笑)。

増村「でしょうね(笑)」

●俺たちの仕事というのは、全体を要約するなり、翻訳するなりっていうのが求められる仕事だから。でも、今日も断片というか、主に形式について訊いたでしょ? まあ、かなり難儀なレコードですよ。「さて、全体を俯瞰して、要約していこうか!」っていう作業をやりたくなくさせるっていう。

岡田「難しいでしょうね(笑)」

●でも、いい映画、いい小説、いい音楽、みんなそうだっていう言い方もあるから。

増村「僕もわりとそういうものが好きっていうのがありましたね」

●では、敢えてファッキン・ジャーナリストとしての質問です。定義の話。ジャーナリストは定義が大好きだからね(笑)。このアルバムのフィーリング――さっき増村くんが言っていた時間、空間を超えた記憶みたいなこと、あるいは、時間とか空間を感じさせない体験っていう意味からすれば、サイケデリアっていう便利な言葉があるじゃないか、と。

増村「ああー」

●という非常に乱暴な押し付けっていうんですか?(笑)。それがゆえに、「森の2ndはやっぱりサイケだね!」って乱暴に定義付けされたとしたら、どう返答しますか?

増村「いや、そこまで考えてて、サイケっていうんだったら、『おおー』って思いますよね」

岡田「同じこと思った(笑)」

増村「そこまで考えて、それを表す言葉がないっていうんだったら、それはすごくよく聴いてくれてて、嬉しいなって思いますけど。サイケっていう言葉は置いといても」

●要するに、何となく「サイケだね!」って言われると、ぶん殴りたくなるっていう?

増村「そうですね」

全員「(笑)」

岡田「今、サイケにそういう定義があるのを初めて知って、それはすごいしっくり来る言葉だなと思ったけど、最後に来たのがサイケなのがびっくりしましたね(笑)。サイケってそういうことなんだ、って。っていうと、サイケでもいい気がしてきますもん」

増村「いい気がするけど、みんなが言うサイケとも違うし。何て言うんだろう、サイケほどそんな能動的じゃないっていうか。まあ、ドラッグとかはあんまり関係ないけど、サイケっていう言葉の中には、もうちょっと能動的なイメージがありますよね。一年に一回はこの日だから儀式をしようとか、それこそアフリカの音楽みたいな、そういう意味での能動的な感じがあるっていうか。じゃあ、何か? と言ったら、それでしっくり来るものがあったら、タイトルにしたんですけど、見つからなかった、そこは本当に」

●じゃあ、『グッド・ナイト』は消極策としてのタイトルなの?

増村「いや、言いたかったことをすごく言えてると思います。だけど、元々ある言葉だし、いろいろな捉え方があるだろうから、そういう意味ではつけたくなかったんですけど。おやすみって、ただそう思う人もいるだろうし。そういう意味では迷ったけど、僕の中では結構しっくり来てて。ただ、足穂の“六月の夜の都会の空”じゃないけど、そこまで言えたらいいなっていうのは思ってて。元々ないもので、比喩的ではあるけど、全部包括している感じ。雰囲気もすごい奇妙な雰囲気を持ってるし、かっこいいなって思って。僕にとっての“六月の夜の都会の空”に代わる言葉はないかなと思って、お盆とかずっと本読んでたんですけど。そこまでは行けなかったですね」

●今回は足穂に届かなかった、と。

増村「いやあ、一生届かないです! 恐れ多いです」

●(笑)じゃあ、そういった諸々の逡巡の結果、最終的にこのアルバムのタイトルを『グッド・ナイト』にした理由を教えて下さい、って訊くのは野暮な質問ですか? っていう質問。

岡田「(笑)」

増村「うーん、ちょっと長くなるかな、って感じですかね(笑)。どっちかって言ったら」

●まだ15分あるよ(笑)。

増村「『グッド・ナイト』は……言いたかったことのいろんなイメージ、それはほとんどイコールでコンセプト、今回の。それは感じて欲しいことではあるんですけど、これまで自らごまかして言ってきた夢っていう言葉に、さらにユーモアを加えて、っていうか。自分でごまかしてきた自分のユーモアに自分で突っ込んでるみたいなところはあるかもしれないです(笑)。だから、今まで言ってきた通り、夢というのが夜に寝た時に見る夢じゃないっていうことはわかってもらえると思うんですけど。夢っていう言葉を仮定して、それに自分自らつけたから、そういう世界を盛り込んで、最後にグッド・ナイトっていう意味も勿論ありますし。だけど、夢って言ってるけど、感じてくれる人は、何が言いたかったかは感じてくれると思うんですね。で、そういう人に対しても、ずっと一曲目からありました、僕はこう見えてます、あなたはどう感じましたか? ご自由にどうぞ、みたいな感じ。そういう意味も含めてるし。もっと乱暴な視点もあって、夢はいろんな風に捉われてて、どう捉われてても知らないけど、僕はこう見えてました、どうでもいいや、みたいな意味?ーーもグッド・ナイトに含まれてるっていうか。なんだろう……ちょっと難しいですね。いろんな意味があるんですよね。整理していきたいな、一個一個、自分でも」

岡田「アハハッ!」

増村「けど、タイトルについては、各々感じてください、みたいにしてもらえたら嬉しいです(笑)。何て言うんですかね、説明するのが恥ずかしいんですよね、どっちかって言ったら。だから、このタイトル自体に、好きなように感じて下さいっていう意味もこもってるから、グッド・ナイトにしたっていうか。ご自由にどうぞ、っていう意味も含めてるんで。その話をしても記事になるんなら、好きなように感じもらっていいと思います、っていう答えがいいんじゃないかと。って記事を操作してるっていう(笑)」

岡田「アハハハッ!(笑)」

増村「すみません、大御所に(笑)」

●いえいえ。そろそろ終わろうと思うんですけど、あと少し、アートワークのアイデアについて。今までの話と、もしリンクするところもあるんであれば、それについても教えてください。

岡田「でも、面白いのが、前のアルバムも僕が撮ったフィルム写真なんですけど、これ、それの隣側にあった写真なんですね」

●こっち(裏ジャケット)が? こっち(表ジャケット)が?

岡田「こっち(表ジャケット)です。こっち(裏ジャケット)はまた別の日なんですけど。だから、一枚目、二枚目で続いとんな、みたいな、そんな感じなのと、何かをイメージするようなものを入れたくなかったんですね、アートワークの中に。どっち見ても、なんかよくわかんないし。言葉には出来ないものだと思うし。そうしたかったっていうのもありますね。だから、無駄なヒントとか、そういうのも必要ないと思ったし」

増村「(ブックレットの)中がすごいことになってますね(笑)。ヒントなさ過ぎでしょ、これ(笑)」

岡田「そうだね(笑)」

増村「びっくりした、自分でも」

●(笑)でも、それってやっぱり、自分の音楽の聴かれ方に対して、基本的には、まあ、どんな形でも構わないとは思ってはいるんだけど、実のところはバイアスはかけたくないし、型にハマったイメージで聴かれたくないっていうことの反映でもあるんじゃないの?

増村「それは少なからずあるかもしれないけですけど、アートワークにヒントを与えないっていう意味はまたちょっと違って。多分だけど。それは多分、今回、散々言ったか言ってないかわからないけど、コンセプトのことを言ってきたけど、コンセプト自体の出発点がこういう感じな気がしてて、僕は」

●どういうこと?

増村「各曲には、コンセプトを基に物語を作ってみたりとかやってるけど、わりと今回言いたかったことが、(ジャケットを指して)こんな感じなんじゃないかと俺は思ったけど」

●明確な輪郭もそんなにはないかもしれない。

増村「ないかもしれないし」

●明確な色彩も持ってないかもしれないし。

増村「持ってるかもしれないし。あと、持ってる瞬間もあるだろうし、ない瞬間もあるだろうし。いろんなことが起こってるんですけど。けど、いろんなことが起こってるのはその時々で、それが何なのか? って思った時に、ヒントはいらないんじゃないかな、って思いましたけどね」

岡田「(ジャケットを見て)音もこんな感じだもんね」

増村「ハハハハッ! 音もこんな感じなの? すごいね」

岡田「いや、こんな感じ」

●じゃあ、最後にひとつふたつ。これまでのレコードを聴かせてもらって、ライヴを観させてもらって、話を訊かせてもらうと、森のみんなに対する非常に穿った印象がひとつ。やっぱり、どこかで「世の中の人はそんなに音楽を本気で聴いてないんでしょ?」って気持ちがちょっとはあるでしょ? 非常に穿った見方ですが。

岡田「(笑)いやあ、僕らは音楽が仕事ですからね。勉強しないと」

●そこにカチンと来る瞬間とかも、たまにはあるでしょ?

増村「もうあんまりなくなりましたけどね。でも、まあ、全然ありますね、その気持ちは」

全員「(笑)」

岡田「そういうのは別にどうでもいいけど、それをわざわざこっちに向けて、他人を蔑んでじゃないと、自分を持ち上げられないような言い方をする奴は腹が立ちますね」

増村「だし、『みんな、あんまり聴いてないでしょ』って確かに思ってるけど(笑)、『まあ、そんなもんだよね』とも思ってます。みんな、いろんな興味を持ってるわけだし」

●そりゃあ、誰しも大変だからね、精一杯だろうし。

増村「うん、みんな音楽だけが好きなわけじゃないし。僕はサッカーのことはよくわかんないし。世の中はサッカーやってる人の方が多いだろうし」

●じゃあ、今のに絡めて、最後にひとつ。自分が若い頃からずっと思ってたことなんですけど、「なんで俺は、こんなに音楽だとか、映画だとか、小説だとか、そういうものばかり好きなんだろう?」とか、ふっとでも思った瞬間はこれまでの人生でありましたか?

岡田「毎日思ってるかも……」

全員「ハハハッ!(笑)」

岡田「クレジットの明細とか見ながら(笑)」

●(笑)でも、その辺り、弱冠のコンプレックスを感じたことはある? 「馬鹿だなあ、俺」くらいのカジュアルな感じで。

岡田「いやあ、どうですかねえ。ただ、吉田ヨウヘイgroupっていう、あんまり仲良くないバンドがいるんですけど――」

増村「アハハハッ!」

岡田「そこのフルートの女の子が、僕の話をちょっとしゃべってたんですよ。『岡田とは音楽の趣味が合うし、發展とかやってて、面白いけど、多分、音楽がなかったら友達じゃなかったと思う』っていう、どうでもいいことを言ったんですよ、あいつ(笑)」

増村「で、記事で上がってるっていう」

●ハハハッ!

岡田「僕、それですごい傷ついて。で、Facebookで、中学校の友達から友達申請が来たりしても、あんまりFacebookは触ってないふりをしたかったんで、ずっと放っておいたんですけど、その日は全部、承認ボタンを押して」

全員「アハハハッ!(笑)」

増村「友達、友達! って(笑)」

●(笑)でも、今でもたまに思うのはね、要するに、自分が夢中になるものがどれも実用的じゃないんですよ。具体的に、こういうことに使えます、っていうものじゃないものばっかり好きなわけ。

岡田「ああー」

増村「そうかもな、俺も。でも、あんまり疑問を感じたことなかったな、俺。ヤバいな」

●いや、みんなは音楽が生業なわけだからあれだけど、僕らの場合はもっと茫漠としてるわけよ――誰かが作った音楽について書く。それだけでも十二分に茫漠としてるでしょ?

岡田「まあ(笑)」

増村「大変ですね」

●しかも、好きなものは別にためにならない。自分のやってることはさらに何のためにもならないわけですよ。でも、それに夢中になって、いつも興奮してる俺って、やっぱ馬鹿? っていう(笑)。

岡田「(笑)作ってる方も馬鹿ですしね」

増村「まあ、仕方なかったんでしょうね。やるしかなかったっていう。毎日健康に暮らすためにはやるしかなかったっていう」

岡田「毎日健康に暮らすための暇つぶしだからね」

●いや、でも本当にそう。暇つぶしだからね。

増村「僕は、音楽はほとんどそんな感じですね」

岡田「僕はもっと上手にしゃべれたら、就職して、幸せな家庭作りたかったなあ」

●嘘つけ!(笑)。

増村「俺も嘘だと思うな、それは(笑)」

岡田「安定した収入がほしい」

増村「音楽でいつかね」

岡田「バコンッってね」

●最後に、うっすらしみじみしちゃったじゃないか!(笑)

増村「どうしてもそうなる話題ですよね。渦中にいますから(笑)」


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