SIGN OF THE DAY

ミステリー・ジェッツ interview : 後編
赤い血の色をした月が水平線上に浮かぶ、
世界が終末を迎える瞬間を夢見ながら
by SOICHIRO TANAKA January 18, 2016
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ミステリー・ジェッツ interview : 後編<br />
赤い血の色をした月が水平線上に浮かぶ、<br />
世界が終末を迎える瞬間を夢見ながら

ミステリー・ジェッツ interview : 前編
地球という小さな球体の片隅に暮らす
とてもちっぽけな存在たちの唄



●あと、僕がすごく関心したのは、普通どんなアルバムもパッと聴いた時に、いくつかの音楽的な参照点が浮かんだりするものなんだけど、このアルバムは本当にそれがわかりにくい。いい意味でね。

ジャック「そう、その通り!」

●ただ、70年代のプログレッシヴ・ロックからの影響は確実にあるとは思うんだけど、それがあまり見えない。それが凄いな、と思って。

ジャック「君が言う通り、そこは確実に入ってきてる。それぞれが聴いて育ってきた音楽、インスパイアされてきた音楽と、70年代半ばのプログレッシヴ・ロックの間でバランスを取る感じだったかな。ただホント僕ら、テーブルの上にあるものを全部詰め込んでいくような感じだったんだ。このレコードって、サウンド的にいろんなポケットがあるんじゃないかな。あるところではこんな感じ、別のところではまた別の感じっていうね。そういうレコーディングの仕方も、僕ら独特のサウンドになっていった気がする。あと、今回のミキシングをやったのがリッチ・クーパーっていう人で。彼ってそもそも基本的にポップとか、エレクトロニックのプロデューサー/ミキサーなんだ。で、彼のおかげで、僕らの――ルーツっぽいって言うと、ちょっと違うかもしれないけど――真っ正直なサウンドとポップ・プロダクションを組み合わせることが出来た。それで、さらに何が影響だったのかがわかりにくくなったと思う」

ブレイン「ただひとつ言っておかなきゃならないのは、確かに君の言う通り、このレコードにはプログレッシヴ・ロックからの影響があるんだけど、例えば、僕らがジェネシスの『トリック・オブ・ザ・テイル』(76年作品)を持ってきて、ミキサーに『こんな音にしてよ!』って言ったら最低だよね? そんなの、過去に戻ることになっちゃう。僕らはこのレコードを、過去のどこかの時代に生きてるようなレコードには絶対したくなかった。まあ、タイムレスなんて言葉を使うと、わざとらしくなっちゃうけど――とにかく具体的な時代を思わせる作品にはしたくなかったんだ。だからこそ、ミキサーも、ポップ・ロック的なものをやる人とやりたかったんだ。僕らのサウンドにちょっとしたグロスをかけてくれる人っていうか。それって、あんまりないアプローチだと思うんだけど。つまり、いろんな分野から参照が出てきて、組み合わさってるんだ」

●それでも、もしこのレコードの中に取り込むレコードを5枚選ぶとしたら、どうですか? これのレコードは視界からは外せないな、と思うレコードを5枚くらい挙げることはできますか?

ジャック「挙げるべきかな?(笑)。まあ、僕、それに多分、ブレインもそうだと思うんだけど……」

ブレイン「『モーニング・フェイズ』(2014年作品)だね」

Beck / Waking Light (Live on The Tonight Show)

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ジャック「うん、まずはベックの『モーニング・フェイズ』は間違いなくある。あのレコードが出た時、ある意味、僕らの世界が揺るがされたんだ。いつもブレインの車の中で音楽を聴くんだけど、もうずうーっとあればっかり聴いてた(笑)。だから、まずあれが一枚。それから、これ、言っていいのかな……」

ブレイン「言えばいいじゃん(笑)」

ジャック「ワン・ダイレクション(笑)。勿論、僕らが作ってた音楽自体にはそんなに影響してないんだけど、僕ら毎週金曜日にはとにかくリラックスして、ワン・ダイレクションかけてたんだよね」

ブレイン「スタジオでね。スタジオがクラブになってた(笑)」

One Direction / Steal My Girl (Live at BBC Music Awards 2014)

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ジャック「(笑)ていうのも、僕らものあまりに集中しすぎてて、とにかく完璧なもの、同時に自分たちにとって親密なものを作ろうと頑張ってたから、とにかく気分を変える必要があったんだよ。それに僕らみんな、ポップ・ミュージックは大好きだしね。だから、1週間の最後にワン・ダイレクション聴くのが新鮮でさ」

ジャック「ワン・ダイレクションが『君は僕のガール~』なんて歌うのを聴いて、『イエーイ!』ってね(笑)。すごくよかった」

ブレイン「あと、変な話なんだけど、ワン・ダイレクションがツアーでミステリー・ジェッツのTシャツを着はじめたんだよ」

ジャック「嬉しかったよな(笑)」

ブレイン「だから、契約上、ワン・ダイレクションについて取材で話さなきゃいけないんだ(笑)」

ジャック「サイモン・コーウェルとの契約でね(笑)」

●(笑)。

ブレイン「他は何かな?」

ジャック「ビル・ライダー・ジョーンズだね! ザ・コーラルのギタリストだった人。レコード出したばっかりで。タイトルはーー」

ブレイン「『ウェスト・カービー・カウンティ・プライマリー』(2015年作品)」

Bill Ryder-Jones / Two To Birkenhead

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ジャック「僕、大好きなんだ。これで三枚?」

ブレイン「じゃあ、僕は、トバイアス・ジェッソ・Jr.のレコード(『グーン』、2015年作品)かな」

●うん、あのレコードは大好き。

Tobias Jesso Jr. / How Could You Babe

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ブレイン「いいよね。実際、あのレコードを最初に持ってたのがジャックなんだ。で、みんなで聴いて」

ジャック「僕らみんな、ソングライターのハリー・ニルソンの大ファンなんだけど。うん、僕ら、ハリー・ニルソンのおかげで仲良くなったようなものなんだよね。僕って、ずっと『またハリー・ニルソンみたいな曲を書く最初の男になりたい』って思ってたんだ。でも、先にトバイアス・ジェッソ・Jr.にやられちゃった(笑)。彼、すごいしね。僕がやったであろうものより、ずっと素晴らしい曲を書いてる(笑)。グレイトなピアノのバラッドをね」

●アデルの新しいアルバム(『25』、2015年作品)でも、トバイアスが書いた曲が一番よかったよね。

ジャック「あのアデルの曲、ホントすごいよね! 本当に才能のある、ファンタスティックなソングライターだと思う」

Adele / When We Were Young (Live on SNL)

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ブレイン「あと挙げたいのは、フレーミング・リップスの『ザ・ソフト・ブレティン』(99年作品)かな。僕らがずっと遠くから尊敬してきたバンドなんだよ。でも、夏にライヴを一緒にやったんだ。知ってると思うけど、紙吹雪やら、照明やらを使って、ものすごいスペクタクルなショーをやるんだけど、とにかく僕がびっくりしたのは、ウェインのステージングにはものすごくパーソナルな感触があるってこと。まるで彼と二人、同じ部屋で膝を突き合わせてるような気持ちになる。彼のパフォーマンスって、彼がこっちに手を伸ばしてきて、直接語りかけてるような感覚があるんだ。で、次の瞬間、彼が一歩下がると、ステージが爆発するんだ(笑)」

The Flaming Lips / Race for the Prize (live in 2011)

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ブレイン「あの『ザ・ソフト・ブレティン』っていうアルバムにもそういう感覚がいっぱい詰まってると思う。ドラムがダイナミックで、ものすごくカラフルなんだけど、曲にはものすごくフラジャイルなところもあって。『カーヴ・オブ・ジ・アース』にもそういうところがあると思う。全体に通奏低音はすごくパーソナルなんだけど、それでもパースペクティヴ自体はとても広大だったり、でも時にはものすごく濃密なサウンドだったり」

●なるほど。どれもアルバムの何かしらの特徴を指摘するには最適なサンプルだって気がします。でも、60年代後半から70年代半ばのレコードはそんなに浮かばない、ってこと?

ブレイン「うん(笑)。契約上、それについては話さないことになってるからね!(笑)」

ジャック「(笑)」

ブレイン「あ、ごめん、今一枚思いついた! キング・クリムゾン。キング・クリムゾンのレコードならなんでもいいけど。でも、選ばなきゃいけないなら、あれ。ジョン・ウェットンが書いたアルバム。いや、違う。やっぱり1stにしよう。『イン・ザ・コート・オブ・クリムゾン・キング』で」

ジャック「最初はどれを選ぼうとしたの?」

ブレイン「うーん……いや、もういい(笑)」

ジャック「僕ら、クリムゾン・キング観にいったんだよね」

ブレイン「そう、アルバム作ってる時にライヴ行ったんだ」

ジャック「いや、作ってる時じゃなかったんじゃない?」

ブレイン「ああ、ミキシングの時だな」

ジャック「あれは最高だった(笑)」

ブレイン「僕らと契約したレーベルの人たちと一緒に行ったんだよ。彼ら、アルバムの仕上がりにすごくエキサイトしてて。で、僕らのアルバムを最初に聴いた時に、彼らが感じたのが、ピーター・ゲイブリエルとか、ジェネシスとか、キング・クリムゾンだったらしくて。そこで話が合ったんだよね。だから、彼らと一緒にキング・クリムゾンを観に行くっていうのが、僕ら全員にとって、アルバムの最終段階における最高の瞬間になったんだよ。実は、僕、人生で一番最初に買ったのがキング・クリムゾンの『イン・ザ・コート・オブ・クリムゾン・キング』でさ。カセットテープでね(笑)」

●あなたが子供時代は当時のプログレッシヴ・ロックに夢中だったって話は聞いてたけど。

ブレイン「本当のことを言うと、キング・クリムゾンのベスト盤だったんだけど」

ジャック「(笑)」

ブレイン「でも、中身はほとんど『イン・ザ・コート・オブ・クリムゾン・キング』に入ってる曲だったからさ(笑)。僕にとっては、あのアルバムがロック・ミュージックへの入口だったんだ。で、子どもだった僕の頭を完全にブッ飛ばした。今に至るまで、僕が作る音楽に影響してると思う」

King Crimson / In The Court Of The Crimson King


●了解です。それにしても面白いと思うのは、今回のアルバムを作りに際して、『ホール・アース・カタログ』を作ったスチュワート・ブランドとあなた達は直接のやり取りまでしたわけでしょ? で、サウンドから感じられる時代も、彼がそういったことを考えた時代も同時期なわけですよね。カウンターカルチャーの全盛期。それって偶然なんですか? 当時の価値観が、今のあなたたちの価値観とフィットする、みたいなところもあったんじゃないのかな。

ジャック「そもそも最初にブレインが『ホール・アース・カタログ』について知ったのは、スティーヴ・ジョブズがその本の最終刊に使われてた言葉(「ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ」)を引用したスピーチだったんだ」

Steve Jobs Speech 2005


ジャック「で、その後に、ブレインのお父さんのヘンリーが『ホール・アース・カタログ』を持ってるのに気付いて。あれはホント偶然だった。まあ、でも、実際、本も音楽も同じ頃に出てきたのは確か」

ブレイン「『ホール・アース・カタログ』を読むと、ものすごく未来に対して楽観的なのがわかるんだ。あれが出版された時、宇宙はワイルド・ウェスト=未開の西部であり、新たなフロンティアだった。あの本にはオプティミズムと、新たな生き方への希望が詰まってるんだよ。カウンターカルチャーの全盛期だったし。でも、今は社会がもっとシニカルだし、宇宙がもうセクシーじゃなくなってる。マット・デイモンが宇宙で遭難するなんて、セクシーじゃないからね」

ジャック「謎めいたところがないんだよね。ある意味、宇宙に何があるかわかっちゃってるっていうか。『宇宙に行った!』なんて興奮もない」

ブレイン「米政府ももう宇宙計画に何十億ドルも投入しないし。石油や銃には金をかけるのにね。別にここで政治的なステートメントを発したいわけじゃないけど。ただやっぱり、当時の宇宙にはものすごいミステリーの感覚があったし。だから、今、僕があの雑誌に興味を持ったのは、やっぱりあのオプティミズムだと思う」

ジャック「子どもっぽさ、みたいな感じなんだよね」

ブレイン「イノセンスの感覚だね。それが『ステイ・ハングリー、ステイ・フーリッシュ』ってことだと思うし。実際、あの本のメッセージは宇宙そのものじゃなくて、宇宙に行って『うわ、クールだね!』って言って、それから地球を見下ろすと、『すごいじゃん! 僕らはあそこから来たんだ!』ってことだと思うんだ。僕らみんな、どんなに無防備な存在か。人類なんて、岩でできた小さな宇宙船で暮らす、小さな存在なんだ――ってことだと思う」

ジャック「だからこそ、今日、どのジーンズを履くかなんてくだらない問題だっていうね(笑)」

ブレイン「つまり、これはそういう旅についてのアルバムなんだよ。地球を離れて、ぐるっと回って、また地上へ戻ってくる。再び活気づいた希望と、未来に対するオプティミズムを持ってね」

●今、ハリウッド映画にしても、クリストファー・ノーランの『インターステラー』だとか、ディズニーの『トゥモローランド』だとか、もう誰も未来に対する楽観的なイメージが持てないってことがテーマになってるものが多いじゃない? そういった傾向というのは自分たちともシンクロしてると思いますか?

ブレイン「どうかな……」

ジャック「僕は自分をオプティミストと思いたいんだけど、そういう楽観的な考え方を素晴らしいとは思っても、同じようなオプティミズムの感覚を持ってるとは思わないんだよね」

ブレイン「だね」

ジャック「勿論、『インターステラー』はすごい映画だけど。うん……多分、僕らがこのアルバムで言おうとしてるのは、僕ら自身は何なのか、どこにいるのか、今、何が起きているのかを、遥か遠くの視点から語ろうとしてるっていうか。宇宙に出た時に、見下ろすと、自分たちはどんなふうに見えるんだろう?って。大きなスケールで見るとね」

ブレイン「うん、きっとスチュワート・ブランドもそれに同意すると思うな。彼が『ホール・アース・カタログ』をやめた理由は、大事なのは宇宙に目を向けることじゃなくて、身の回りで変化を起こすことなんだって気付いたからなんだ。もっとパーソナルなやり方でメッセージを伝えること。彼は今もそれをやってるんだよ。だから、ある意味、宇宙のイメージはキャンバスにすぎない。このアルバムは宇宙についてじゃなくて、人間的なレベルにおいてのオプティミズムについてだと思う」

●今、宇宙から見た地球、そこから戻ってきた時のパーソナルなレベルでのコミュニケーションって話が出たけど、そういう意味からしても、アルバム6曲目の“ブラッド・レッド・バルーン”はすごく重要な曲だと思うんだけど。

ジャック「だね!」

●あの曲には地上から見た「血の色をした月」が出てくるわけじゃない? この月は何かしらのアナロジーだったり、メタファーだったりするんでしょうか。

ブレイン「すごくいい質問だね」

ジャック「どれもいい質問だけど(笑)」

ブレイン「じゃあ、“ブラッド・レッド・バルーン”のコンテクストを説明するね。この曲はずっと前からあったんだけど、すごく長くて、僕はそれをどうしていいかわからなかった。曲に名前を付けるためにも何かしら具体的な内容を探してたんだ。で、僕はイギリス南部の海辺の小屋にいて。冬の間、何週間もそこで曲を書いてたんだけど、ある週末にヘンリーに電話して、『来てくれないかな、曲に歌詞を付けたいんだ」って言ったんだ。で、ヘンリーが来た週末に、イギリス南部で60年ぶりのひどい洪水が起きたんだよ。でも、テレビもラジオもなかったから、どんなにひどい洪水かわかってなくてさ。ところが、どんどん浸水してきて、海辺のキャビンのほとんどが壊れちゃったんだ」

●大事じゃない!

ブレイン「うん(笑)。で、ギリギリになって、車で逃げ出して、その夜はホテルに泊まる羽目になったんだよね。その夜、“ブラッド・レッド・バルーン”の歌詞はホテルで二人で書いたんだ。月がリプリンゼントするものって、人間にとっての時計であり、地球にとっての衛星だよね? 僕らの周りを永遠に回り続けて、昼と夜を作り出してる。と同時に、月は水を操作する。潮の干満をコントロールしてるし、実質的に人間の65%は水分だから、僕らの中の水をコントロールしてるんだ。まあ、そういうことって考えすぎると、科学者に『くだらない!』って言われちゃうんだけど(笑)」

●(笑)。

ブレイン「いずれにせよ、僕としてはそういう月のコスモロジーに興味を持ったんだ。だから、多分、あの曲の最初のヴァースの月はルナシー=狂気についてだね。人間というスケールにおける月。で、二番目のヴァースのブラッド・レッド・バルーンは、実際にロンドンのプリムローズ・ヒルから見た、昇ってくる太陽についてなんだ。英国の偉大な詩人でアーティストのウィリアム・ブレイクがそこに座ってこんな日記を書いたんだよ。『私は心の太陽と会話を交わした/私は彼をプリムローズ・ヒルで見た』ってね。それが歌詞になってる。で、三番目のヴァースでは、ブラッド・レッド・バルーンは核のアポカリプスをリプリゼントしてる。世界の終末を大勢の人が携帯のカメラで撮影してる光景を想像したんだ。だから、あの曲はある意味、月の神話についてなんだけど、ブラッド・レッド・バルーン自体が意味するものはヴァースごとに違うんだ。ただ、やっぱり意識の流れのままに書いたんだけど(笑)。だから、多分、歌詞としてはこのレコードで一番抽象的な曲なんじゃないかな」

●わかりました。じゃあ、最後に一つだけ。話を聞いてると、このアルバムにはいくつかテーマがあったのがわかる。新しいチャプターを受け入れ、取り込んでいくこととか、未来に対して楽観的であろうとすることとか。ただ、このアルバムを不特定多数のリスナーが実際に聴いた時に、聴く前と聴いた後ではどんな風に変わってほしいですか? そこに何か期待があれば、教えてください。

ジャック「難しいな(笑)」

ブレイン「うーん……。わかんないけど、ある意味、他の人たちがこれをどう思うか考えるのは、僕らの仕事じゃない。ただ思うのは、曲を書く時って、ものすごくパーソナルなものをそこに込めてるんだよね。僕を含め、多くの人がある曲を好きになる理由って、その曲の中で自分がなくなるっていうか、聴きながら自分の一部がその曲の中で息づくような感覚だと思うんだ」

ジャック「そう、曲の中に自分を見つけるような。実際、僕はよく曲を間違えて解釈して、それで大好きになっちゃうんだよね」

ブレイン「それがグレイトなんだよ! 曲を違って解釈するっていうアイデア自体を僕は愛してる。だって正しい解釈なんてないんだから。僕があることを思いながら曲を書いたとしても、その曲がそのことについてだとは限らない。“ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ”をLSDについてだと考える人もいる。でも、その曲が本当は何について歌ってるかなんてどうでもいいんだ。聴く人によって違うんだよ。僕らみんな、内側に幽霊がいると思うんだ。曲を書くのは、その幽霊が棲めるような箱を作ることだったりする。で、書き上げたら箱を閉じて、また自分の中の別の幽霊に向き合う。自分の中に棲むものにね。で、うまくいけば、その箱の中には他の人の幽霊も棲むことができる。だから、“バブルガム”なんかは、僕にとってそういう曲なんだ」

ジャック「ただ、もしこのアルバムを聴いてくれた人に、パースペクティヴが広がるような感覚を与えられるとしたらクールだと思うな」



通訳:染谷和美
翻訳:萩原麻理

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