SIGN OF THE DAY

【短期集中連載①】英国インディ・ロックの
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を
その当事者に訊く:シェイム編
by YOSHIHARU KOBAYASHI April 19, 2018
【短期集中連載①】英国インディ・ロックの<br />
新たな震源地=サウス・ロンドンの実態を<br />
その当事者に訊く:シェイム編

サウス・ロンドンの活況は果たして本物か? 確かにシェイム、ゴート・ガール、HMLTD、ソーリーなど、サウス・ロンドンを中心に注目すべき新人バンドが次々と頭角を現している。だが、所詮それはアンダーグラウンドの胎動に過ぎないのではないか? そんな視点があっても仕方ないだろう。

実際、日本の大方のジャーナリズムはメインストリームで起こっていることをきちんと分析したり、伝えることはせず、さもアンダーグラウンドで起こっていることがすべてであるかのように伝える悪しき傾向がある。そのせいで、日本における海外のインディ音楽の受容は今ではすっかり好事家たちの慰みものへと堕してしまった。

だが、10年以上前のリバティーンズが牽引したイースト・ロンドン・シーンにしても、当初は半径数キロほどの地域で起こったことなのだ。61年のリバプールにおけるビートルズにしろ、80年代末のマンチェスターにおけるストーン・ローゼズにしろ、当初はまったく同じだった。そうしたアンダーグラウンド・シーンの活況が時間をかけて積み重なった時、初めてエクスプロージョンが起こる。では、我々〈サイン・マガジン〉がサウス・ロンドン・シーンに注目する理由とは何か。

まずひとつは、前述のバンドたちには実際に横の繋がりがあり、彼らがヘッドクォーターと呼ぶ〈ウィンドミル〉というヴェニュー/パブが存在すること。我々が最初にこのヴェニューのことを活字にしたのは、この記事だ。


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それだけではない。もうひとつは、シーンの動きを生々しく伝える新しいメディア〈ソー・ヤング〉の存在だ。それらが三位一体となって新しいコミュニティを現在進行形で育んでいる様は、エキサイティングと言うほかないだろう。今のサウス・ロンドンには、「ここから何かが始まりそうな予感」が渦巻いているのだ。

そんな現在のサウス・ロンドンのシーンを検証すべく、〈サイン・マガジン〉では4本立てのインタヴューをおこなうことにした。シェイムやドリーム・ワイフといったバンドに加え、〈ウィンドミル〉や〈ソー・ヤング〉の中心人物にも話を訊いている。誰もがシーンの真っ只中にいる当事者でありながら、それぞれが違う立場にある4組の話を訊くことで、サウス・ロンドンの今とその可能性を立体的に検証するのが狙いだ。

この企画の一番手は、現在のサウス・ロンドン・シーンの顔役であるシェイム。新人の発掘では新興メディアにすっかり後れを取るようになった〈NME〉も彼らのデビュー・アルバム『ソングス・オブ・プレイズ』には満点をつけるなど、2018年のイギリスでもっとも熱い期待が寄せられている新人バンドである。

そのサウンドは一言で言えば、パンク/ポストパンクの系譜にある。ワイヤーのように鋭利で無駄のないアンサンブルに、ダムドも青ざめる強烈なエナジー。そしてフロントマンのチャーリー・スティーンの歌声と言葉には、マーク・E・スミス譲りのニヒリズムと辛辣さ、リリシズムが宿っている。

Shame / Tasteless

Shame / Concrete


サウス・ロンドン・シーンの起点は、ブリットポップ/クール・ブルタリアから20年後の、すっかり荒廃した英国を描いた映画『T2』のエンディング・ロールで象徴的に使われたファット・ホワイト・ファミリーだと言われている。かつて「マックデマルコを聴くくらいなら、中東に飛んで、ISISに加入するね」といったインディ・ロックの中産階級的なプチブル受容に唾を吐きかけたバンドが指標になったということから、このシーンのひとつの特徴が伺えるだろう。

Fat White Family / Whitest Boy On The Beach


彼らの過激さと不穏なムードを受け継ぎつつ、よりポップでストレートな形に昇華したシェイムのデビュー・アルバム『ソングス・オブ・プレイズ』は、そんなサウス・ロンドンの看板に相応しい。シーンの今を知るには必携の作品だ。

それでは、この素晴らしいデビュー・アルバムとサウス・ロンドン・シーンについて話を訊くべく、チャーリー・スティーンと電話を繋ごう。




●ここ1~2年で、サウス・ロンドンを中心にロンドンのバンド・シーンが再び活気づき始めたように感じます。2010年代を通じてイギリスのバンド音楽は低調な時期が続いていましたが、5年前、10年前と比べて、イギリスやロンドンのシーンはどう変わったと感じていますか?

「今サウス・ロンドンにいる人たちは、例えば5年前に比べてもずっと政治的だと思う。たぶん、“コミュニティ”っていう言葉がパーフェクトなんじゃないかな。僕らはだいたいみんな同じ年頃、20歳とか21歳で、みんな友だちなんだ。サウス・ロンドンっていう地域はかなり近親的で、全員が全員を知ってる。でも、バンドだけでもなくて、フォトグラファーやアーティスト、詩人、プロモーターみたいな人たちもいるんだよね。その意味でもずっとコミュニティ的なんだ」

●あなたたちがバンドを始めた10代半ばの頃、イギリスのギター・ミュージックは厳しい状況に置かれていましたよね。そんな中で、自分たちにバンドをやろうと思わせたギター・ミュージック、あるいは自分たちを代弁していると感じられた音楽は何だったのでしょうか?

「僕らがこのバンドを始めた時は、〈クイーンズ・ヘッド〉っていうパブで始めたんだ。ブリクストンにあった違法パブで、そこには練習部屋が三つあって。で、僕らはファット・ホワイト・ファミリーっていうバンドと一緒に練習部屋を使ってたんだよ。彼らはめちゃくちゃにシャンボリックなロックをやってて、かなり論議を醸すバンドだったんだけど、ライヴ・パフォーマンスはすごかった」

Fat White Family / Wet Hot Beef (Queen's Head 2014)


「僕らは16、17くらいだったから、あんなにエキサイティングでスリリングなバンドを見ると、すごくインスパイアされて。しかも、小さくて親密なヴェニューで彼らを観れた。当時のバンドだと、キング・クルール、ファット・ホワイト・ファミリー、チャイルドフッドだな。僕らが始めた頃にすごく楽しめたバンドを挙げるなら」

Childhood / Californian Light


●今のサウス・ロンドンのバンド・シーンを考えるにあたって、ファット・ホワイト・ファミリーの存在は欠かせないと誰もが言っています。音楽的なものにしろ、アティテュードにしろ、彼らがシーンに与えた影響とは具体的にどのようなものだったのでしょうか?

「彼らは反抗的で、他人なんてお構いなしだった。うん、今の時代、イギー・ポップにしろジョニ・ミッチェルにしろ、パティ・スミスにしろ、なんだって聴けるよね。誰の音楽だって聴けるけど、それを実際に体験することはないんだ。でも、ファット・ホワイト・ファミリーは……2018年の今、自分たちがこんなバンドを実際に見ることはないだろうと思ってた、みたいなバンドで。彼らはリアルだったんだ。何も気にせず、喧嘩腰で、挑戦的で。リスペクトすべきアティテュードがあり、興味がかきたてられる音楽をやり、ライヴ・パフォーマンスが無敵だったんだよ」

●2010年代前半のイギリスではディスクロージャーに代表されるハウス・ミュージックが盛り上がりましたし、ここ数年はスケプタやストームジーやJ・ハスなどが牽引するUKラップが勢いを持っています。そういう音楽にも共感できる部分はありますか? それとも、自分たちがやりたいこととは全く別物だと感じていますか?

「いや、共感はできたんだけど、僕らがやってたのはやっぱりシャンボリックなロック・ミュージックだったからね。僕らがそれを始めたのは、自分たちが聴きたい音楽、プレイしたい音楽だったからで、自分たちのためだけに曲を書いてた。別に目的があったわけじゃないんだ。他のタイプの音楽にも全部インスパイアされるし、興味もあるんだけど――グライムだとか、テクノだとか――やっぱりこれが一番しっくりくる。僕ら一人ひとりにとってもね」

●デビュー・アルバム『ソング・オブ・プレイズ』では、ダン・フォートとネイサン・ボディというクラブ・ミュージック畑の人物をプロデューサーに迎えています。このアルバムにおいて、「ギター・ミュージックを如何にモダナイズするか?」というのは重要なポイントの一つだったと言えるでしょうか?

「ダンとネイサンに会うまでに、僕ら、8人のプロデューサーとやったんだよ。でも全員同じアプローチで、それが僕らをライヴ・バンドとしてレコーディングする、っていうアプローチだった。ダムドとかスティッフ・リトル・フィンガーズみたいなイギリスのパンク・バンドのレコーディングを参照して、スタジオに入ってそのままプレイすればいい、ってね」

●ええ。

「でも僕ら、そのアプローチだと全然うまくいかなくて。それに自分たちが完璧に満足するまではどんなレコーディングも、どんなものも出さないって決めてたからね。でもダン・フォートとネイサン・ボディと会った時に、彼らが出してきたアプローチがマーティン・ハネットを参照しよう、って。(マーティン・ハネットは)ジョイ・ディヴィジョンやハッピー・マンデーズを手がけた人で、むしろエレクトロニックなアプローチだった。僕らはそれが興味深いと思ったんだ」

Joy Division / Atmosphere


「だから彼らにアルバムをやってほしかったし、ライヴでやるときとレコードでのサウンドでの違いを作ってほしかった。その方が僕らにとっても、オーディエンスにとっても面白いと思って。ダンとネイサンはそこを捉えてくれると思ったし、僕らがアルバムで出したいものを理解してくれると思ったんだよ」

●ジョイ・ディヴィジョンの名前が出ましたが、メディアがあなたたちを紹介する時には必ずと言っていいほど、パンク、ポストパンクというレッテルが使われます。それには正直、うんざりしているところもあるのでしょうか?

「うーん……僕らとしては、自分たちがやってる音楽のカテゴリーは、単に“派生的”(*derivative、独創性がないコピー)にすればいいと思ってる(笑)。“アンオリジナル”とか。僕らがやってる音楽をタイプにすると……まあ、どんな音楽ジャーナリストにせよ、誰にせよ、物事を単純化したがるんだよ。理解する手段としてね。だから、僕らがパンクやポストパンクっていうカテゴリーに当てはめられる理由は完璧よくわかる。あと、その大きな理由が僕らのライヴ・パフォーマンスにあるってこともね。エネルギーがあって、かなり情熱的だから。それが以前のパンクやポストパンクのパフォーマンスと繋げられてるんだ」

●ええ、そうかもしれません。

「でも僕らが書く曲に関して言うと、書くたびに前の曲とはちょっと違うものにしたいと思ってる。だから“フリクション”はちょっとダンス・ソングっぽいし、“ワン・リズラ”はポップ・ソングっぽい。“アンジー”は7分の曲だしね」

Shame / One Rizla


「だから、僕らそんな考えすぎてはいないっていうか、当然パンク・ミュージックは好きなんだけど、一つのジャンルに閉じ込められたくはない。それに、一つのエモーションにも閉じ込められたくないんだ。大勢の人が僕らのことを“怒り”があって“攻撃的”だ、って言うんだけど……いくつかの主題に対してはそうだけど、僕らがやってることの多くはユーモアなんだよね。自分たちでも笑いたいし、みんなにも笑ってもらいたい。そこはすごく重要なんだ」

●“ザ・リック”や“フリクション”を始め、あなたのリリックは今の社会を観察し、皮肉を込めながらそこに問いを投げかけるというスタイルを持っています。そういったリリックの書き方という点において、あなたがインスパイアされたアーティストや作家は誰でしょうか?

「僕が書いた歌詞は全部、16歳から19歳の間に書いたものなんだ。で、当時は学生だったから、学校の英語の授業で勉強したものとリンクしてて。例えば、僕はヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』を読んでた。あれは意識の流れ(Stream of consciousness)を最初に使った小説の一つだよね。と同時に、僕は当時ザ・フォールとマーク・E・スミスを知りはじめてた。だからミュージシャンで言えば、ストリーツのマイク・スキナーやザ・フォールのマーク・E・スミスだね」

●なるほど。

「それに、いろんなタイプの作家……ブレット・イーストン・エリスやアーヴィン・ウェルシュ、ヒューバート・セルビー・ジュニアなんかを通じて、『いかに自分のアイデンティティを作り出すことができるか』を知ることができた。攻撃的だったり、ざっくばらんだったり、描写的だったり、いろんな文章のスタイルによってね。あと僕ら、ティーンエイジャーだったから、周りの環境にも影響されてた。スポンジみたいにいろんなものを吸収してたんだ」

●先日、〈ソー・ヤング〉のティム・ペリーに話を訊いた時、ここ1年くらいで面白いバンドがたくさん出てきているのは、もしかしたら今の政治的な不穏さも関係しているのかもしれない、と話していました。ただ、あなたは、現在のバンドの活況の理由をどのように考えていますか?

「それは、僕らが混乱した状況にいるからだと思う。みんな、誰でも政治的なんだよ。人として自分の政治性を語るかどうかを選択するだけで。そう、ロンドンについてなのかUKについてなのか、それによって違うんだけど、この数年間でいくつか重要な瞬間があったと思う。EU離脱が決まったあと、若い世代の投票権への関心がものすごく高まったんだ。僕らはとてもフラジャイルな時代に育っていて、実際、ジェントリフィケーション(*再開発などによって都市部が再編される現象。高級化、中産階級化)世代なんだよ。で、例えば僕らが将来的に家を買えるようになるとは思えないし、ロンドンのアパートなんて絶対無理だし。ほとんど、ロンドンを離れるしかチョイスがないんだよね。そうやって意図的に都市から押し出されていってるんだ」

●実際、ロンドンは訪れるたびに高級そうなアパートが次々と建っていて、街並みもだいぶ変わった印象です。

「同時に、イギリスではNHS(*National Health Service、国民保険サービス)もゆっくり衰退していってる。ドラマーのチャーリー・フォーブスのお母さんはセント・ジョージ病院の看護師なんだけど、それって僕が生まれた病院で。そこでも保守党政権になってからの予算削減が半端ないんだ。そこが一番大きいんじゃないかな。つまり、僕らの世代は答えを持ってない。でも問題を理解しようとしていて、だからこそ自然に模索してるんだよ」

●76年のパンクの時代を振り返ると、当時のノッティングヒルやブライトンが人種混合の街であったことが、シーン全体やその音楽性にも反映されていたと感じます。同じように、現在のサウス・ロンドンの街としての特性が、シーンを定義した部分があるとすれば、どのような部分だと思いますか?

「今のところ、実際にサウス・ロンドン出身のバンドはそんなにいないんだよね。僕らとゴート・ガールくらいで、あとはノース・ロンドン出身だったり、UKのいろんな地域の出身だったりする。ただ確実に影響はあると思う。僕らにはラッキーなことに、〈ウィンドミル〉っていう場所がブリクストンにあるんだ。どの世代にも、クリエイターが集まるヘッドクォーターみたいな場所が必要で……なんか安っぽい言い方になっちゃったけど(笑)。でも僕らには、〈ウィンドミル〉っていうあらゆる人々、あらゆるタイプの音楽、あらゆるタイプのクリエイターを受け入れるような場所があって、そこはほんとにラッキーなんだ。このバンド、シェイムを始めた時、僕らはギグを選べるような立場になくて、クソみたいな音楽を流してるロンドンのパブで、大嫌いなバンドと一緒に出演することも多くて。それが、ブリクストンの〈ウィンドミル〉で自分たちでライヴをやるようになって変わったんだ」

●自分たちのホームが出来たわけですね。

「あとサウス・ロンドンが刺激的な理由は、なんだろうな……多文化的だし、自分たちが生まれた街だし。やっぱりロンドンってかなり大きく分かれてるんだよ。ウェスト・ロンドンは富裕層って感じで、誰も行かない。で、イースト・ロンドンはトレンディでヒップスター、ノース・ロンドンは変なところで、サウス・ロンドンが最高。僕がこう言うのは、サウス・ロンドナーだったらみんな『サウス・ロンドンが最高』って言うからだけど(笑)。だから、うまく答えになってないけど……〈ウィンドミル〉は鍵になってる」

●ゴート・ガール、HMLTD、ソーリー、そしてあなたたちシェイムは、それぞれに音楽性は全く違います。では、今のサウス・ロンドンのバンドたちを繋ぐもの、互いにシェアしているものがあるとすれば、それは何だと思いますか?

「一番大きいのは年齢が近いことと、ギター・ミュージックとライヴ・パフォーマンスに興味があることかな。でも、音楽性が違うのは君が言う通り。今ロンドンから出てきてるバンドで特別なのは、それぞれみんなに独自のサウンドと、独自のアイデンティティがあるところなんだよね。ただ、僕らみんな友だちなんだよ」

●彼らとはどのように知り合ったのですか?

「僕、ゴート・ガールのリード・シンガーのロッティとは同じ学校に通ってたんだ。二人とも演劇部で。で、最初のライヴではゴート・ガールとやることにして、その頃ソーリーとも知り合った。僕はクロムウェルにあるファイン・アートの財団で1年勉強したんだけど、そこで会ったのがソーリーのリード・シンガーのアシャ(・ロレンズ)なんだ。そしたら彼女が同い年くらいの人たちを大勢紹介してくれた。僕らが好きなタイプの音楽に興味を持ってる人たちをね。それまで僕らの友だちは、僕らがやってるような音楽にあんまり興味がなくてさ。みんなエクスタシーやってテクノ聴いてるような連中だったから。だから、そんな人たちと知り合うこと自体がかなり新鮮だったんだよ」

●では、今名前が挙がったそれぞれのバンドについて、あなたの見解を教えてもらえますか? まずはゴート・ガールから。

「ゴート・ガールの音楽はグレイトなユーモアで裏打ちされてるんだ。風刺的で、エナジーがあって、強気なアティテュードがある。うん、“アティテュード”こそ、ゴート・ガールを説明するのにいい言葉だね。ほとんどニヒリズムみたいなアプローチで、人が自分たちの音楽を聴くかどうかも気にしてないんだ」

Goat Girl / The Man


●ソーリーはどうでしょうか? ディス・ヒートとグランジが接合したようなエレクトロニック・ビートを生み出していて、ギター・バンドの枠組みには収まりきらない面白さを感じます。

「ソーリーがすごく面白いのは、ライヴはレコードとは全然サウンドが違うってことなんだよ。レコードで聴くのとライヴでは完璧別物で。ソーリーはアレックス・Gっていうアーティストにすごく影響されてるから、ライヴでやる時はフル・バンドで、かなりメロウっていうかメランコリックなんだ。でもレコーディングするとエレクトロニック寄りで、かなりヘヴィだったりする。ソーリーはエクレクティックなバンドで、今興味深い曲をたくさん書いてるところだと思う」

Sorry / Home Demo/ns Vol II


●HMLTDは如何でしょうか? 今のシーンの中では、音楽性も佇まいも、かなりエキセントリックですよね。

「正直、今彼らが何に興味を持ってるのか知らないな(笑)。いや、仲はすごくいいんだけどね。HMLTDはファニーで、でも俺がそう言ったって知ったら怒るだろうな。シリアスなものとされてるから(笑)。いろんなジャンルから影響を引っ張ってきてるバンドなんだよ。ダブステップをギター・ミュージックに取り込んでるようなところもあって、ライヴ・パフォーマンスがすごい。なんか、アダム&ジ・アンツを思わせたりもする。HMLTDみたいなものって、必要だと思うんだ」

HMLTD / Satan, Luella and I


●ビッグ・ムーンもファット・ホワイト・ファミリーのライヴに触発されて出てきたバンドの一組ですが、彼女たちについてはどう思っていますか?

「ビッグ・ムーンは、特に僕が好きなタイプの音楽ってわけじゃないんだよね。人としては好きなんだけど。僕らよりほんのちょっと年上じゃないかな。うん、僕らみたいなバンド、HMLTDやソーリーとは違う視点から曲を書いてると思う。正直言って、ビッグ・ムーンにはあんまり言うことがないかも。バンドとして、自分のタイプじゃないんだよ」

●〈ピッチフォーク〉は、今のインディは白人の男性だけのものではなく、女性、LGBT、カラードもアーティストとオーディエンスの両方に増えていると主張しています。これは主に北米の話だと思いますが、ロンドンのシーンにいる実感としてはどうですか?

「ポピュラー・ミュージック、特にギター・ミュージックはこれまでずっとミドルクラスの白人男で構成されてきたと思う。でも今出てきてる人たちの多くはそこがクソ興味深いんだよね。このバンドを始めた時、僕らは16歳だった。で、ゴート・ガールやソーリーみたいな、ガール・バンドや女性がフロントのバンドと一緒にやってて、そういう不平等が存在することにも気づいてなかったんだ。全然頭になかった。でも今はプリンセス・ノキアみたいな人が語ってることをサポートしてるし」

●彼女は人種や性の問題についても積極的に発信していますよね。

Princess Nokia / Tom Boy



「今って、プレイする側が以前よりパフォーマンスそのものや観客と深く関わってるんだよ。全員が楽しんでいて、誰もハラスメントされたり下に見られたり、差別されたりすることがないよう注意を払ってる。ギグは安全なスペースであるべきだからね。だから、みんなが関わるようになってて……そういう不平等が注目されるのにこんなに長く時間がかかったこと自体、クソ恥ずべきことなんだけど。実際、ポップ・カルチャーが誕生した瞬間から存在してるものだから。まあ、今僕が話してるのは特にライヴ・ミュージックについてだけどね。うん、今は前よりずっとみんながそこに関わってると思う」

●おそらくあなたは彼の音楽に全く興味がないだろうという前提で訊くのですが、もしかしたら、昨年イギリスでもっとも売れたロックの作品はリアム・ギャラガーかもしれないですよね? あなたの周りで彼の音楽にエキサイトしている人はいるのでしょうか?

「人としてはすごく笑えるよね。ノエル・ギャラガーとリアム・ギャラガーは国宝だよ(笑)。ただ、彼らの音楽に関しては……新しいのは聴いてない。あんまりね。時間をかけて聴いたりはしてないんだ。僕らは今、コンスタントに音楽に囲まれてて、それほど商業的じゃないバンドやアーティストが周りに大勢いる。四六時中音楽を聞いてるんだけど、ほとんどの場合、どれもそんなに商業的じゃない。だから、ああいうのには注意を払ってないっていうか」

●じゃあ、メインストリームに関してあと一つだけ。エド・シーランやアデルが今のイギリスの音楽産業における最大の輸出品であることに対する、あなたの見解を教えてください。

「別に驚かないね。アデルはすごく面白い人だと思うし、リスペクトしてるんだ。努力家だし、人として面白い。だって……メインストリームにいるスターって、例えばアリアナ・グランデとか、ほとんどロボットみたいだろ? いつ何をすべきか、どんな服を着るべきか、教え込まれてて。ね、日本のあの子たち、なんて名前だっけ? 女の子三人がヘビメタやってるやつ」

●ベビーメタル?

「そうそう(笑)。あれはすごいよ! ほとんどあれと同じで、みんな何かの理由、目的のためにデザインされてるんだ。アデルはそういうのとは違うから。で、エド・シーランだけど……はぁ(ため息)」

●(笑)。

「彼はまあ、すごくノーマルな感じなんだよね。別にここで自分のヘイトを浪費したくないな。頑張って彼を悪く言ったりしたくない。でもアデルは好きだし、ボブ・ディランのカヴァーはよかったし。エド・シーランはなんて言えばいいのか、わからないな」

●例えばスーパーオーガニズムは、「マックス・マーティン以降の分業制ポップに対するインディ、パンク・アティテュードからの回答」であることに意識的です。あなたたちは、ポップとラップ・ミュージックが覇権を握る現在のメインストリームに対して、どのようなスタンスでありたいと考えていますか?

「僕はそんなにミュージシャンっていうんじゃないから、プロダクションに関してはバンドの他のメンバーがやったりしてるんだ。僕らの場合……ほんとにただ、自分たちのことだけ考えてるんだよ。2018年にギター・バンドをやってて、別に家も車も買えないだろうし、単に楽しいからやってるだけで。理由は情熱を持ってるから、っていうだけなんだ。誰かに受け入れられなくても、売れなくても、僕らにはどうでもいいし、それぞれが個人としてやりたいからやってるだけなんだよね。で、ハードワークして、とにかく四六時中、コンスタントにギグをやりつづけてる。だから……わかんないけど、僕らは自分たちがやってることをあんまり分析したりはしてない。ただ楽しいからやってる。で、他の人も楽しんでくれたらグレイトだけど、そうでなくてもクソ構わないっていうね」

●ニルヴァーナの時代のシアトルにしろ、ストーン・ローゼズの時代のマンチェスターにしろ、リバティーンズ時代のイースト・ロンドンにしろ、シーンから大きなスターが生まれると、それと同時にシーンから何かが失われてしまうという歴史があります。あなたは、今後5年間で、サウス・ロンドンのバンド・コミュニティとシェイムというバンドがどうなることを望んでいますか?

「そういう過去のバンドの集団はどれも……グランジとニルヴァーナにせよ、ブリットポップとオアシスにせよ、連中には金があった。そこがデカい違いだね。クソほど金が流れ込んで、連中にはドラッグを買う金もあったし、酔っ払って問題を起こすこともできた。ツアー・バスやホテルの部屋を壊したりね。僕らにはそんな余裕ないよ」

●とにかく以前と今とでは経済的な環境が大きく違うんだと。

「で、5年後だけど、その頃にバンドやこのコミュニティがどうなってるか、すごく興味があるところだね。その頃ロンドンやUKから新しい音楽が出てきてるかどうかにも興味がある。ただ僕らの個人的な野心としては、ずっと〈ブリクストン・アカデミー〉でプレイしたい、ソールドアウトさせたいと思ってんだ。〈ブリクストン・アカデミー〉は僕らが練習を始めたパブ、〈クイーンズ・ヘッド〉の真向かいにあって、子どもの頃からあそこでたくさんバンドやアーティストを観て、影響を受けてきたから。うん、あとはみんなが今やってることを続けてるといいね。で、バンドやコミュニティが認められたりリスペクトされてればいいなと思う。その価値があるから。みんな、クソハードワークしてるんだよ。ツアー・バスで馬鹿やったりする暇もないくらいに(笑)」


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通訳:萩原麻理



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