Courtesy of Kick the Machine Films
振り返っても常に新しいサウンド/映像を求めてきたつもりですが、2019年のスペクタクルの形式の一つとしてトラヴィス・スコットから(へ)カニエ・ウェスト(から)へという流れがあるとするなら、『フィーバー・ルーム』をはじめとして今後より刺激的な洗礼が増える時代になるという予感を孕む作品が多かったと思います。青春の機知が東京とダンスする女性(たち)の美しさを導いていく『ガーデン・アパート』、退っ引きならない音楽の力を直接食らうように、それでも煌めいていく『TOURISM』、筋において重要な役割を担う音楽が自体に浸食するように響く『ナーバス・トランスレーション』、サウンドはもちろん空間の裡で起こることすべてが、私たちの自然=環境だと思っていた肉体のありようにまでまっすぐ繋がっていく『ソフィア・アンティポリス』、そして2018年日本初公開映画ですが再映されたら絶対に観てほしい、こうした映画ばかりが上映されている惑星に着陸したいと思わせる『KUICHISAN』など……。
シアター・ディレクター高山明さんのPort Bの『ワーグナー・プロジェクト』ために、2019年の12月、ドイツはフランクフルトへと東京から音楽監修として飛びヒップホップ関係者と濃密な時を過ごすことが出来たことは幸甚でしたが、その際、二つの場所の同じ/異なるヒップホップが私を「変わっていく同じもの(アミリ・バラカ)」としてのヒップホップ/ラップへとまた連れて行ってくれました。
SoundcloudとYouTubeを中心にミュージシャンもリスナーもすべからくネットワークさせられている時代、ローカルなビートだったトラップはグローバルな共通基盤として浮かび上がりました。フランクフルトのトラップ・パーティには人種は関係ないし、階級も関係ないようだった。アフロ・アメリカン中心の文化的優先事項を口承文化とテクノロジーの複合物として表現してきたラップが随分と長い時間を費やし、1990~2000年代初頭に確立されたレイヴのようにローカルからグローバルなビートになった……が、それが相対する言葉によって変容しつつあるというのが2019年に受けた印象の一つ。強調しておきたいゆえはっきり書きますが、もう一つ、この時ジェンダー/マイノリティの役割の布陣も変わりつつあるのではないか? それは「変わっていく同じもの」か、と。まだ始まったばかりのようにも思えるこの動きに傾注すべく、今後も耳を塞がないようにしたいと思っています。
〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、
2018年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 八木皓平
「〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2019年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選」
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「2019年 年間ベスト・アルバム 50」
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