まず、ベスト・アルバムを2019年のヒップホップ・アルバムという枠でサクッと5作品選んでみたところ、ストリーミング/チャートでは人気のないものばかりに。ただ、他人と違って当たり前、常に更新あるのみ、それがヒップホップという感覚で聴き続けていると、これくらいの言葉の強度あるいは音楽の独自性を備え、それでいてしっかりと地に足が着いているものに耳が惹かれてしまいます。
また、ヒップホップ以外の音楽作品では、新作以外についても、密やかに興奮できるものを求め、リイシューや配信が始まった旧作、初公開時から数十年を経て初CD/ヴァイナル化されたサントラ(スコア盤)などを日頃からチェックしているため、モート・ガーソンやモリコーネが。映画本編未見の後者は、聴けば聴くほどあり得ないマッシュアップというかアマルガムかと。一方、“レイン”は、ゴスペル・アレンジを施す過程で、原曲が内包していたジャコ・パストリアスのフレーズが、SWVの歌より前面に出てきた上に名曲感が増したようで面白い。なお、プリンス・バスターの曲は、この映像(ニコラス・ウィンディング・レフン監督の『トゥー・オールド・トゥ・ダイ・ヤング』(2019)の一場面)に殺られてしまった結果ということで。
そして、映画/TVシリーズについては、2019年は一ヶ月あたり、新作旧作観直し作全部あわせて、映画は10作、TVシリーズは15~20話程度観ていた中からパッと思いついたものを。2020年に日本でも公開予定の『Portrait…』は、物語の最初に設けられた制約のうまさ、そして、主役と観客の視線を無理なく同化させてしまうショットを入れてくるタイミングとその積み上げが鮮やかで、感涙に咽びました。最後に『ウォッチメン』ですが、公式には「単なる続編ではなくオリジナルに対するリミックス」という位置付けなので、オリジナルの物語ではなく、キャラだけを簡単に把握しておくだけで、十分楽しめると思います。
〈サインマグ〉のライター陣が選ぶ、
2018年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 柴那典
「〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2019年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選」
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「2019年 年間ベスト・アルバム 50」
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