2020年はあまりにも短く、同時に気が遠くなるほど長かった。年末には「グライムスの新作、なかなか出ないね」だとか「『1917』っていつの作品でしたっけ?」なんて呆けたことを口走ってしまう始末だったが、おそらく同じような感覚を持っている人が大半ではないだろうか。
そんな混乱はもちろんポップ・カルチャーの世界にも大打撃を与えた。映画館やクラブの閉鎖はもちろんだが、フェスの中止はインドア派の自分にとっても想像以上の影響があったように思える。つまり、フェスのラインナップやスロット序列、パフォーマンスの評判は、思った以上にシーンや文脈を形成する“メディア”としての役割を担っていたのだ。
そんな世相を反映してか、この〈ザ・サイン・マガジン〉はじめ各メディアの年間ベスト、そしてこの個人ベストからも「本当はこうじゃなかったはず」という無念や“暫定感”が見て取れる気がしてならない。ラインナップされる作品それ自体も、すべてが過去あるいは過渡期のものであるように思えてしまう。
しかし、もはや線路の分岐は切り替えられた。唯一できるのは、目を逸らさずにこの道をしっかりと歩むことだけなのだ。だが、それと同時に、かつて向かっていたはずの未来を捨て去る必要はない。きっと、この道の先のどこかで、いつか合流できるはずだ。
〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2020年のベスト・アルバム、ソング
&映画/ドラマ5選 by 荏開津広
「〈サイン・マガジン〉のライター陣が選ぶ、
2020年の年間ベスト・アルバム、
ソング、ムーヴィ/TVシリーズ5選」
扉ページ
2020年
年間ベスト・アルバム 50