例年どおりの言い訳ですが、個人的なフェイヴァリット・アルバムは『ele-king vol. 30』で10作に限って挙げました。海外のインディ・ロックのベストと日本のポップ・ミュージックの歌詞についてのコラムも書いているので、そちらもぜひご覧ください。
それで、今回も「ポップ」というテーマで選んでみようと思ったのですが、Mikikiの連載「Pop Style Now」が諸事情で4月の中盤以降永久凍結されてしまったので、下半期は大量の新曲を追いかけまくるリスニングからかなりリタイアしていました。なので、「2022年のポップ」を追いきれていなかったかもしれません。
そういう事情があり、過去(『90年代ディスクガイド――USオルタナティヴ/インディ・ロック編』の執筆期間もあったので、特に90年代)をディグったり、見知った場所を再訪したり、より個人的な好みを優先させたりしたのが、一年の半分を占めています。ファブ・フォーの音楽を聴きまくったり、映画館にぜんぜん行けなかったので児玉和土の『闇動画』を見まくったり、最近は演劇や舞台作品を見に行ったり……。それでも、一応「ポップ」というお題を据えて、アルバムと曲を選んでみました。
ちなみに、アルバムのリストの次点はThe 1975の『ビーイング・ファニー・イン・ア・フォーリン・ランゲージ』、バッド・バニーの『Un Verano Sin Ti』、ロサリアの『モトマミ』、リトル・シムズの『ノー・サンキュー』、宇多田ヒカルの『BADモード』、ザ・ウィークエンドの『ドーン・FM』、テイラー・スウィフトの『ミッドナイツ』、ファイアボーイ・DMLの『プレイボーイ』、ファヴィオ・フォーリンの『B.I.B.L.E.』など。曲のリストの次点はLE SSERAFIMの“FEARLESS”、ファレルの一連のシングル、アーロ・パークスの“ソフトリー”、サッカー・マミーの“ショットガン”、ザ・ウィークエンドの“ガソリン”、ハリー・スタイルズの“アズ・イット・ワズ”、ロサリアの“サオコ”など。うーん、なんか普通。ベスト・ラインはtofubeatsの“VIBRATION”で小鉄が歌った「音楽ってもうダメなのかなー?/そんなことないって言ってくれよ!」(ECDオマージュ)です。
プエルトリコを中心にするレゲトン、ナイジェリアを中心にするアフロビーツは、グローバル化がかなり進んだと思います。ロサリアやC.・タンガナを生んだスペインのフラメンコ・ポップとラップ・シーンも気になっているのですが、次に注目しているのは中近東と北アフリカのアラビアン・ポップ。曲のリストの5位に置いたエリアナ&バルティの“Ghareeb Alay”は2021年にローンチした〈ユニバーサル・アラビック・ミュージック〉発のヒット・ソングで、エリアナはチリ系パレスチナ人、バルティはチュニジアのシンガーです。それと、バンドマリルの『クラブ・ゴッドファーザー』でジャージー・ドリル(去年話題になっていたことをすっかり忘れていました)に衝撃を受けて、最近のジャージー・ドリル/ジャージー・クラブの盛り上がりがかなり気になっています。
最後に。〈サイン・マガジン〉の更新が終了してしまうのはとても残念です。ポップ・ミュージックと批評や言葉との関係はどんどん変化していってますが、〈サインマグ〉にはいつも刺激的なテキストが載っていましたし、私が文章を書く時もそれにつられて、気合と緊張感をもって臨んでいました。それに私は駆け出しの頃にタナソウさんと祥晴さんに拾ってもらったので、今の自分があるのもそのおかげです(たくさんご迷惑もおかけしました)。この場を借りてお礼を言いたいと思います。本当にありがとうございました!
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