いまや海外メディアの年間ベストでは、アルバムとソングそれぞれの総合ランキングだけではなく、ロックやラテンや K-POPなどジャンルごとのランキングが発表されることも珍しくなくなった。それは単純に、ラテンやK-POPがいま欧米で勢いがあるというだけの話ではない。様々なジャンルの様々な地域の音楽が誰の目にも可視化され、簡単にアクセスできるようになったがゆえに、それらを無視してポップ・ミュージックの一年を振り返ることは出来ない、という意識がメディア側にもオーディエンス側にも浸透した結果だろう。
2010年代は北米メインストリームを舞台にした「ラップとポップの時代」だった。しかし、2020年代はわかりやすい中心を欠いたまま、ジャンルや地域や時代を超えてポップ・ミュージックはひたすら拡張していくのではないか――それが私たち〈サイン・マガジン〉が 2021年の年間ベスト・アルバムで記した見立てだったが、「ポップの拡張」は実際この一年でさらに加速したと言っていい。
「ポップの拡張」が進んだ世界では、必然的に私たち一人ひとりが何を聴いているのか、そこにどのような価値を見出だしているのか、ということもバラバラになっていく。だからこそ、〈サイン・マガジン〉の寄稿者たちに個々のパースペクティヴから一年を振り返ってもらう、この毎年恒例の個人ベスト企画は、より興味深く、意義のあるものになっていると思う。是非楽しんでもらいたい。
簡単に企画概要を説明しておく。この個人ベスト企画では、①ベスト・アルバム、②ベスト・ソング、③ベスト映画/TVシリーズの3項目のうち、2項目以上のベスト5を選出してもらっている。どの項目を選ぶかはライター各自の自由。また、それと併せて、作品の選出基準と何かしらの形でリンクするように、この一年に対する寸評も書いてもらっている。果たして、彼/彼女たちはどのように2022年を見ていたのだろうか?
最後にお伝えしなくてはならないことがある。〈サイン・マガジン〉は2022年の個人ベストと年間ベスト・アルバムの発表をもって更新を終了し、10年の歴史に幕を閉じる。これまで〈サイン・マガジン〉に何かしらの形で関わってくれた人たちには感謝しかない。ありがとうございました。では、〈サイン・マガジン〉最後の年間ベストをお届けしよう。
辰巳JUNKの2022年ベスト
照沼健太の2022年ベスト
木津毅の2022年ベスト
天野龍太郎の2022年ベスト
池城美菜子の2022年ベスト
磯部涼の2022年ベスト
宇野維正の2022年ベスト
小林雅明の2022年ベスト
伏見瞬の2022年ベスト
荏開津広の2022年ベスト
小林祥晴の2022年ベスト
田中宗一郎の2022年ベスト