●3rdアルバム『TURBO TOWN』はロック的なアプローチが多かったよね? それは今話してもらったような2ndからの流れと関係がある?
Ali&「絶対そうだと思う。昼帯じゃなくて夜帯でやってたら、三枚目はめっちゃ夜っぽい音になってたと思うし。昼が多かったっていうのがすごく大きいと思う」
JUN「バンドでやるのが楽しくなってきたから、もっとギターをガンガン弾きたいなって」
Ali&「ギターをめっちゃ買ってた時期だよね。これまで2本しか持ってなかったのが、いきなり6本くらいになってたり(笑)」
●この頃、ソニック・ユースとかキルズが好きとか言ってたもんね。
Ali&「言ってた、言ってた。今も好きだけどね」
JUN「ギターをガーッと弾きたいっていう、高校の時みたいな衝動があったかな」
Ali&「でも、あのアルバムの良くない部分は――いい部分もいっぱいあるんだけど――僕らが完全にオシャレと思うロックをやらなかったこと。そこはちょっと反省点かな、今思うと。もっと僕らが普段聴いてるようなロックをガンガン取り入れてやればよかったんだけど、今までの80KIDZのタッチにロックの要素を入れた曲が多かったから。で、逆に自分たちの聴いていたものをガッツリ反映していたのが、(『TURBO TOWN』をリリースする直前に出したデジタルEP)『HOTSTUFF』だと思う」
●あのEPはよかったよね。だって、今流行ってるR&Bとかアーバンな感じとかを、あそこでは既に取り入れてたじゃん。
JUN「入れてた、入れてた」
●で、それプラス、自分たちの中で流行しているソニック・ユース的なロックを強引に合体させて、メチャクチャなものを作ってたから。あれは今聴いても結構すごいよ。
JUN「あのEPの2曲目、“Sugar Daddy”とかね(笑)。だって、あれ、前半はインクの7インチみたいな感じで。まだインクが別の名前の時の(*ティーン・インク)」
Ali&「あ、その曲の前半は僕が作ったんだよね?」
JUN「そうそう。(中村)義響くんが『これ面白いよ』って教えてくれて、僕もインク好きだったから、これ取り入れたらオシャレだなって(笑)。でも、僕はロックもやりたいから、後半は僕がデモで作ってたロックを無理やりつなげて」
Ali&「ハハハッ!」
●あれは今聴いてもかっこいい。
JUN「いいよね? それをしれっとやってて」
●でもさ、ああいうのをEPで出してしまって、アルバムでは違ったことをやったのには、どういう意図があったの?
Ali&「たぶん客がわかってくれないだろうな、って思ってたんだよね。EP出した後のリアクションとか雰囲気を見て、ちょっと早過ぎるかなって。あと、アルバムは年間通してライヴをやっていくから、そういうのが出来るやつにしようぜ、っていうのはあった。ライヴのセットが見えやすいっていうか」
JUN「ワンマンとかの流れで、(スタジオ)コーストでこういう風に出来たらいいな、っていうのもあったもんね」
Ali&「だから、アレンジの作り方も変にしようとはしなかった。どうやってやるの? みたいな複雑で変なものにはしないように。本当はそうした方が楽曲的にはよくなったのかもしれないけど、スムーズに曲として終わらせようってのはあったね」
●アルバム前半の曲は特にそうだけど、やっぱり従来の80KIDZのファンを意識しているところがある。で、2nd以降のロック寄りのリスナーを意識しているところもある。その両方への意識が結構強く出ちゃったアルバムだったんじゃないかな。
Ali&「そうだね。まあ、一番普通なアルバムかもしれない。ただ、一個一個の曲のキャラは強いと思うな」
JUN「でも、小林くんはEPで期待していたものと較べると、ちょっと曲数も多くて、焦点が定まってなくて、期待よりはよくなかったかな、っていう感じだったよね?」
●うん。その前のEPでそれまでの80KIDZのスタイルを思い切って壊してるんだけど――。
JUN「結局戻ってるじゃんっていう?」
●戻ってるっていうか、壊したけど、その次に何をやるのか? っていうのがしっかりと見えていない、っていう感じ。ただ、それは当時のシーンの状況も大きいと思う。EPの時点で流行の芽みたいなものをキャッチして早々と取り入れていたけど、そこまで世間的に広まっていたわけでもなかったし、ちょっとどっちに振っていいか難しい時期だったんじゃないかな。
Ali&「あれは出し方を失敗したと思う。EPが出来た直後にあのアルバムに取り掛かってるから、もうEPの段階でああいう変わったことをやるのが一回終わってるのよ。で、そうじゃない部分の作り方になってるから。EPのタイミングでアルバムのデモも揃ってて、同時に作って、EPはこっち、アルバムはこっち、ってやってたら同じ感じになったと思うんだけど」
●なるほどね。
Ali&「でも、一応そこまでやった結果としてスタジオ・コーストでやれたのは大きかった。それをやるために頑張ったんだろうな、って感じだったよね。昼帯の頃から、ワンマンをコーストで、っていうのがずっとあったから」
JUN「3rdのワンマンもリキッドで、っていう話が最初あったんだけど、リキッドではもういつもそれなりに入るようになったから、もうちょっと大きい規模で、って」
Ali&「あそこでやるんだったら、こういうアルバムを作ってなかったっていうのはあるよね、絶対。好き勝手やったって大丈夫、って思ったはずだし」
JUN「そう。だから、今回の内容だったらコーストにお客さんを入れたいよね、っていうイメージはあったと思う」
●『TURBO TOWN』は、今のJ-ROCK的なものを聴くんだったら、こっちを聴けよ、くらいの気概で作ったアルバムでしょ? でも実際、このアルバムでシーンをひっくり返すとか、そこまでは行かなかったわけじゃん。そこに対しては、率直にどうなの?
Ali&「あのアルバムを出したからって世の中ひっくり返るとは全然思ってなかったし、それはわかってる。でも、そういうスタンスでやって作品を出した、っていうことが残る。それを後から振り返って、やったことに意味があったよね、って将来的に言われるようにはなってほしいって考えではあった。誰かが、それをきっかけにちょっと何かを意識してくれれば。僕たちなんてすごい小兵なんで、下から小さい石をエイッって投げてるようなもんですけど(笑)。でも、何かしらの違いを欲しいと思ってる人が聴いてくれたらいいなって」
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