SIGN OF THE DAY

アバンギャルドかつ先鋭的なだけじゃない!
最強のポップ・アクトのひとつでもある
アニマル・コレクティヴ究極の10曲をご紹介
by YUYA WATANABE July 26, 2016
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アバンギャルドかつ先鋭的なだけじゃない!<br />
最強のポップ・アクトのひとつでもある<br />
アニマル・コレクティヴ究極の10曲をご紹介

まさに百花繚乱。まだ折り返したばかりだというのに、この2016年は早くも昨年をしのぐ豊作の年となっているのは、おそらくあなたもご存知のとおり。というか、今年はサプライズ・リリースがあまりにも多すぎて、あのカニエ・ウェストの新作を取り巻く騒動が、もはやずいぶんと昔の出来事みたいだ。

さて、そんな大にぎわいの2016年上半期に、あの北米インディの雄がキャリア屈指の一枚をリリースしたことを、あなたは忘れていないだろうか。もちろんその一枚とは、アニマル・コレクティヴの最新作『ペインティング・ウィズ』のことだ。まだこのアルバムを聴いていないという方は、とりあえずこちらを読んでみて下さい。現行のポップ音楽に関心をもっているあなたが、いまだに『ペインティング・ウィズ』をスルーしているのだとしたら、そんなにもったいない話はないのだから。

00年代USインディの象徴? 難解なだけの
実験主義? 今こそ解きほぐしておきたい、
アニマル・コレクティヴの「5つの誤解」


さあ、そんなアニコレの来日公演がいよいよ迫ってきた。しかも今回は〈サマーソニック〉の深夜枠〈ホステス・クラブ・オールナイター〉のヘッドライナー役ということで、これが初見となる方もきっと少なくないはず。そこで今回は、『ペインティング・ウィズ』で久々にアニコレのポップ・サイドが前面に押し出された今だからこそ、彼らのディスコグラフィから屈指のポップ・トラック10曲を厳選。00年代アメリカのエクスペリメンタル・シーンを牽引した彼らが、じつは最強のポップ・アクトでもあるということを、ここに証明したいと思う。きたるべきヘッドライナー公演にむけて、おおいに気持ちを高めていただけると幸いだ。




10. Water Curses (from Water Curses, 2008)

アルバム『ストロベリー・ジャム』(2007年)の制作時にレコーディングされたこの曲は、結果としてアルバムには収録されず、4曲入りEPのリード・トラックとしてリリース。そこから聴こえてきたのは、まさに「ポップなアニコレ」の必勝パターンともいうべき、躁的なまでにせわしない三連符のリズムであった。当時のアニコレといえば、アンサンブルの主役が本格的にエレクトロニクスへと移行しつつあった時期。このアコギのストロークを通奏低音としながらも、アッパーなシークエンスが延々と繰り返される展開は、いわばそうした過度期ならではの産物でもあったのかもしれない。まるで壊れたメリーゴーランドに乗っているかのような、興奮と狂気の3分25秒。


9. Applesauce (from Centipede Hz, 2012)

端正なプロダクションの最新作『ペインティング・ウィズ』や、リヴァーブの膜に包まれるような『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』(2009年)あたりと比べると、メタリックで耳をつんざくような音質の『センティピード・ヘルツ』は、アルバム一枚を通して聴くのが若干しんどい作品ではある。しかし、一方で『センティピード・ヘルツ』(2012年)は楽曲単位で見ていくと、じつはなかなかに粒ぞろい。特にこの“アップルソース”は、なめらかな拍子の変化と、耳元でウネる電子音のコラージュが、ギャスパー・ノエ監督のミュージック・ヴィデオとあいまって、非常に刺激的だ。ちなみにこのMV、かなり激しいフラッシュ・ライトが焚かれているので、チカチカする映像が苦手な方はくれぐれもご注意を。


8. Prospect Hummer (from Prospect Hummer, 2005)

デヴェンドラ・バンハートやジョアンナ・ニューサムらと並んで、フリー・フォークの旗手とされていたアニマル・コレクティヴと、そのあたらしいフォーク・ムーヴメントの祖として再評価されつつあった、英国の伝説的な女性シンガー=バシュティ・バニアン。この両者がついに邂逅し、全4曲入りのEP『プロスペクト・ハマー』(2005年)を共作。なかでもそのタイトル・トラックは、左右のチャンネルに振り分けられた2本のアコギと、削ぎ落とされたリズム・パートの小気味良さもさることながら、バシュティのウィスパー・ヴォイスを主旋律とした混声のハーモニーが、とにかく息をのむほどに美しい。00年代前半を通してトラッド・フォークの再解釈と向き合ってきたアニコレの帰着点ともいえる、まるで聖歌のような1曲。


7. Brother Sport (from Merriweather Post Pavilion, 2009)

上記の“ウォーター・カーセズ”や、本稿に登場するいくつかの楽曲とおなじく、二拍子のなかでこまかいリズムが刻まれていく、まさにアニコレ王道のダンス・トラック。それでいて、この曲の全編で鳴りつづけるビーチ・ボーイズ風の多重コーラスと、野外録音も含むキラキラとしたサンプリング音は、ここで紹介するどの楽曲よりも、突き抜けたユーフォリアを演出している。まさに、『ペインティング・ウィズ』と並び、アニコレのポップ・サイドを代表する名作『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』を象徴するトラックのひとつだろう。ちなみにこのアンビエントな音づくりをバンド内で牽引しているのは、パンダ・ベアことノア・レノックス。しかもこのタイトルどおり、“ブラザー・スポート”は彼がじつの弟を励ますために書いた楽曲なのだという。浮世離れしたサウンドのようでいて、じつはそのリリックにパーソナルな視点が含まれているという、このバンドの興味深い特徴のひとつが、ここには端的に表れている。


6. Grass (from Feels, 2005)

ギターのフィードバック・ノイズと、少ないコード数のループ構造を巧みに用いたアルバム『フィールズ』(2005年)は、前衛志向が浸透していたニューヨーク周辺のアンダーグラウンドに、あらたな可能性を示すことになった。特にリード・シングルとなった“グラス”は、その非常に単純な歌メロにせよ、パンダ・ベアが叩くフロア・タムの躍動的なビートにせよ、それまでの諸作にあったインプロ的なイメージからは、あきらかに逸脱した1曲といえるだろう。脱構築的なソングライティングに臨んできたアニコレが、あえてポップ・ソングのマナーを積極的に取り入れたことによって生まれた、いわば「ポップなアニコレ」のはじまりともいえる1曲。


5. Golden Gal (from Painting With, 2016)

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まるでゴムボールが跳ね回っているかのような、この弾力あるシンセ・ベースの音こそ、2016年現在のアニコレ、ひいては最新作『ペインティング・ウィズ』のモードを端的に物語っている。つまりこの低音域のファットな質感は、所謂「インディ」という言葉から連想されるものとは程遠く、むしろ現行のメインストリームを引っ張るヒップホップ/R&Bのハイファイなプロダクションへと迫っているのだ。それでいて、この“ゴールデン・ギャル”は、抑揚の効いた陽気なメロディもさることながら、人気テレビ・ドラマ『ゴールデン・ガールズ』のセリフを歌詞に引用するなど、とにかく親しみやすい要素が満載。そう、これはポップ・ソングの公式を丁寧に踏まえた、アニコレ流のキュートなバブルガム・ポップなのだ。


4. Fireworks (from Strawberry Jam, 2007)

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はじめて全米チャートにランクインし、アニコレの知名度を一気に引き上げたアルバム『ストロベリー・ジャム』。なかでも屈指のポップ・トラックといえば、もちろんこの“ファイアーワークス”だ。生楽器の有機的なアンサンブルを主体としながらも、モジュレーションで揺らしたギターと、おなじくエフェクトによって音色を若干つまらせたドラム・ロールの質感は、エレクトロニクスのそれにかなり近く、とにかくダンサブルで、ヒプノティック。それは所謂フリー・フォーク的なイメージからこのバンドを一気に解き放つ、あまりにも劇的なメタモルフォーゼだった。北米インディのリーダーが手にした、最初のフロア・アンセム。


3. Summertime Clothes (from Merriweather Post Pavilion, 2009)

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左右のチャンネルに揺れまくる電子音と、BPM135程度のやわらかなイーヴン・キック。そして、ヴァースからフックにむかって少しずつビルド・アップしていく陽気なコーラス・ワークから浮かび上がってくるのは、肌を焦がす夏の到来に胸躍らせるかのような、歓喜のフィーリング。この外向きでひたすらにキャッチーなアプローチは、すくなくとも00年代初頭のアニコレからは、とても想像のつかないものであった。ほぼ全収録曲がダンサブルなリズムと太いベースラインを携えているアルバム『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』のなかでも、この曲のもつ晴れやかなメロディと底抜けの明るさはかなり際立っている。


2. FloriDada (from Painting With, 2016)

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2016年の現時点におけるアニコレ最強のアンセムといえば、勿論この曲で決まりだ。フロア・タムを中心に組んだ生ドラムの躍動と、エレクトロニクスによるふくよかなキック、そしてウネるシンセ・ベースが交錯する、トライバルなビート・プロダクション。パンダ・ベアとエイヴィ・テアーが交互にマイクを取り合っていく、とにかく楽しげなツイン・ヴォーカル。そしてなにより、いちど聴いたら脳内をループして止まなくなるであろう、「フロリ、ダ、ダ!」という、あまりにキャッチーなコーラス・パート。セットリストのビーク・ポイントを演出するダンス・トラックとしてはもちろん、思わず口ずさみたくなるようなフックを携えたポップ・ソングとしても、“フロリダダ”はまさに鉄壁の1曲なのだ。


1. My Girls (from Merriweather Post Pavilion, 2009)

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自然から採取したやわらかなサンプル音と、電子音のきらめきを無数にレイヤーした濃密なイントロから、バンダ・ベアのリヴァーブがかった勇壮な歌声が立ち上がってきた、その瞬間。もうそれだけで、“マイ・ガール”が特別な1曲であることは十分に伝わるはず。そして、1分25秒あたりから刻まれるハイハットをきっかけに、リズム・パートがゆっくりと膨らんでいくときの、あのフィーリング。それはもはや、開放感や高揚感すら飛び越えて、まるで全知全能の力を得たような気分を聴き手にもたらすであろう。そう、これこそが『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』をキャリア屈指の傑作たらしめた1曲。いや、それではまだ控え目すぎる。この“マイ・ガール”こそが、栄華を極めた00年代の北米インディを象徴する1曲だと断言することに、一切の躊躇はいらない。



1組もハズレなし!すべてのアクトが超一流。
2016年夏にフェスに行くなら、ホステス・
クラブ・オールナイターだけで十分という話


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