SIGN OF THE DAY

1組もハズレなし! すべてのアクトが超一流。
2016年夏にフェスに行くなら、ホステス・
クラブ・オールナイターだけで十分という話
by YOSHIHARU KOBAYASHI July 26, 2016
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1組もハズレなし! すべてのアクトが超一流。<br />
2016年夏にフェスに行くなら、ホステス・<br />
クラブ・オールナイターだけで十分という話

今年の夏はどう過ごすのがベストなの? どのフェスに行って、どのアクトを観れば楽しめるの? ――と考えているのだったら、このページに辿り着いたあなたは運がいい。その答えを、ここだけで特別に教えてあげます。

我々〈サイン・マガジン〉が提案するプランはこうです。8月20日(土)深夜の〈ホステス・クラブ・オールナイター〉を最初から最後まで全部楽しんだら、迷わず帰宅。そして、十分に睡眠を取り、体力を100パーセント回復させたところで、〈サマーソニック〉東京2日目のヘッドライナー、レディオヘッドのライヴを目指してマリン・ステージへ。これです。まあ、〈サイン・マガジン〉得意の暴論ですが。

アンダーワールドがヘッドライナーの日の〈サマーソニック〉は? もう片方の日だって、レディオヘッド以外は? 勿論、体力に自信がある人は、〈サマーソニック〉2日間と〈ホステス・クラブ・オールナイター〉を全て楽しみ尽くすのが一番。でも、流石に丸二日間、寝ないでぶっ通しはキツい。大抵の人は、どこかの時間帯や日程を泣く泣く諦めなくてはなりません。では、現実的にどう楽しむのがベストか? と編集部で議論に議論を重ね、導き出された回答が、これだったのです。と自己弁護。

東京近郊にお住まいの方限定の楽しみ方になりますが、その点はご了承下さい。でも、ぶっちゃけ、2016年の夏、これ以上のプランはありませんから。

なぜ〈サマーソニック〉でのレディオヘッドが絶対に見逃せないのか、その理由はこちらの記事でも説明した通り。

この2016年の夏、〈サマーソニック〉で
レディオヘッドを観ておかないと絶対に
後悔する10の理由 part1-総論編


では、今年の〈ホステス・クラブ・オールナイター〉はどうなのか? はっきり言って、ヤバいです。

「インディの祭典」の名にふさわしい、他の夏フェスが足元にも及ばない完璧なラインナップ。昨年の〈オールナイター〉のトム・ヨークにあたるビッグ・サプライズこそ無いものの、どれを観てもハズレ無し。全体的なレヴェルの高さは、今年の方が確実に上。しかも、いわゆる邦楽系のフェスと違い、その音楽性も千差万別。一晩この場所にいるだけで、幾つものジャンルを横断し、色とりどりのグルーヴに身を委ね、たくさんの驚きと発見と喜びに出会うことが出来るのです。

いや、でも、それだったら、〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉と一緒でしょ? と思うかもしれない。全然違います。

というのも、〈サマーソニック〉東京一日券のどちらか、もしくは二日通し券を持っていれば、〈オールナイター〉には入場出来てしまうんです。結局お金の話かって? その通り。だって、これでチケットが1万円超えたら、正直悩むじゃないですか。幕張遠いし。

勿論、〈サマーソニック〉に来ない人のために、〈オールナイター〉だけのチケットというのも用意されています。8500円なり。でも、それだと値段はいつもの〈ウィークエンダー〉と大体同じ。

というか、そもそも、今夏にレディオヘッドを見逃すとかありえないわけですから、とりあえず〈サマーソニック〉東京の21日(日)一日券を買う。そして、さっきも書いた通り〈オールナイター〉で遊んだら家に戻り、ぐっすり寝て、万全の状態でレディオヘッドを観ればいいんです。これが最強のプラン。こんなに濃密でコスパのいい夏フェス体験は、他に絶対ありえません。

と、調子に乗って書いているものの、勿論どう楽しむかはあなた次第。しつこいようですが、我々〈サイン・マガジン〉がお勧めするプランは、〈オールナイター〉→一時帰宅→レディオヘッド。これ一択です。でも、そんなのは無視して自由に遊んでもらって結構。

とは言っても、本当に今年の〈オールナイター〉はそんなにすごいの? という疑問をお持ちの方のために、出演者を〈サイン・マガジン〉のお勧め順にカウント・ダウン形式で紹介していきたいと思います。信じるもよし、信じないもよし。いずれにしても、〈サマーソニック〉と〈ホステス・クラブ・オールナイター〉で、今年も最高の夏の思い出を作って下さい。




8. Ásgeir
アイスランドを代表するアーティストと言えば、90年代はビョーク、2000年代はシガー・ロス、そして2010年代はアウスゲイル。アイスランドの「今」に触れたいなら、彼のライヴは観ておくべき。

Ásgeir / Going Home (live)

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実際、どこか素朴な味わいを感じさせながらも、神秘的で、透き通った美しさを感じさせるサウンドは、アイスランドの伝統に連なるもの。これで悪いはずがありません。非の打ちどころなし。ただ、20代前半と若くてイケメンなのに、生え際の後退がかなり進んでいることだけが心配です。




7. Herbert
EDMがとにかく頭をからっぽにして騒げればいいという価値観のダンス・ミュージックだとしたら、ハーバートはその対極に位置する存在。彼の音楽には政治的主張とユーモア、そしてハウスの快楽性が見事なバランスで溶け合っています。思考を促すと同時に、体を踊らせる。そのアンヴィヴァレントな感覚は唯一無二。アウスゲイル以上に禿げ上がってますが、実はすごい人なんです。

〈オールナイター〉のレジデントDJということで今回もDJセットでの出演ですが、90年代後半にクリック・ハウスの青写真を描き、00年代初頭にはジャズやクラシックを取り込んだディープ・ハウスで新たな時代の潮流を作った男は、今、どんなDJを聴かせるのでしょうか?

Matthew Herbert / Essential Mix




6. Animal Collective
アニマル・コレクティヴは好きだけど、ライヴは次のアルバム用の曲ばかりやるから楽しめない、もう少し知っている曲もやってほしい――その不満はよくわかります。でも大丈夫。最近のセットリストは、ちゃんと最新作『ペインティング・ウィズ』の曲が中心です。

Animal Collective / FloriDada (studio live)

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しかも、そこに時折、『フィールズ』や『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』の曲を差し込んだりしている。いつの間に、こんなサービス精神旺盛になったんでしょうか。

以下の記事にもあるように、『ペインティング・ウィズ』は、『フィールズ』、『メリウェザー・ポスト・パヴィリオン』に続く、アニコレのポップ・サイドが遺憾なく発揮された傑作。

アバンギャルドかつ先鋭的なだけじゃない!
最強のポップ・アクトのひとつでもある
アニマル・コレクティヴ究極の10曲をご紹介


つまり今回は、今いちばん観たいアニコレが観られるライヴになるかもしれない。ということです。

おまけに最近は、ライヴでマーサー・リーヴス&ヴァンデラスの“ジミー・マック”のカヴァー(!)をやることも。一体どんな仕上がりになっているのか? 映像は敢えて貼りません。当日にその目で確かめてみて下さい。




5. Dinosaur Jr.
アニマル・コレクティヴが00年代USインディの象徴だとすれば、こちらは90年代のUSオルタナ以前から活動を続ける生きる伝説。アメリカのインディ・シーンの歴史の深みと層の厚さを一夜で体験出来てしまうのも、〈ホステス・クラブ・オールナイター〉ならでは。

2005年にオリジナル・メンバーで再結成したダイナソーですが、その後に送り出したアルバムは、どれもギターがギャンギャン鳴り響く、安心のダイナソー印。Jのかったるそうなヴォーカルも不変。もともとダイナソーのアルバムにハズレはありませんが、デビューから30年以上経った今も高度安定を続けたままとは、誰が予想したでしょうか。昔から飄々としてつかみどころのないバンドでしたが、いまだによくわかりません。永遠の謎。でも、なんだかよくわからないけど、いい。何なんでしょうか。そのライヴの激しさも変わりないのは、2012年の〈ホステス・クラブ・ウィークエンダー〉の映像を見てもわかる通りです。

Dinosaur Jr / Watch The Corners (live at Hostess Club Weekender 2012)

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4. John Grant
アーケイド・ファイア、ヴァンパイア・ウィークエンド、カニエ・ウェストの傑作アルバムが揃い踏みした2013年。〈サイン・マガジン〉のクリエイティヴ・ディレクター、田中宗一郎が「今年のベスト・アルバム!」と騒いでいたのが、ジョン・グラントの『ペイル・グリーン・ゴースト』でした。

実際、この眼光鋭い中年は、上記のビッグ・ネーム3組にも引けを取らない圧倒的な言葉と歌の力を持っている。エレ・ポップとフォークの間を行き来するサウンドに乗せて、皮肉とユーモアを交え、実存そのものの悲哀と喜びを語るリリックの世界。そこには、ゲイという彼自身のジェンダーを超え、生きる者すべてが抱える孤独のありかを真正面から射抜いてしまう鋭さがあります。

John Grant / GMF

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ニューウェイヴ/ポストパンク世代が誇る最良のドラマー、スージー・アンド・ザ・バンシーズのバッジーもバンド・メンバーとして参加。ライヴ・アクトとしても最強なのは、2016年4月の〈ホステス・クラブ・プレゼンツ・サンデイ・スペシャル〉でのライヴでも証明済みです。

John Grant / Voodoo Doll (live at Hostess Club Presents Sunday Special)

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ステージ上でのお茶目なMCと仕草が語り草になったのをご存知の方もいるかもしれません。ヘッドライナーの一組、ダイナソーJr.と丸かぶりではありますが、これは絶対に見逃せない。




3. Temples
もしかしたら忘れてはいませんか? 2014年にもっとも素晴らしいデビュー・アルバムをリリースしたのが、このテンプルズだったということを。そう、〈サイン・マガジン〉も彼らの1st『サン・ストラクチャーズ』を2014年の年間ベスト・アルバム第2位に選んでいました。これは待ちに待った凱旋なのです。

改めて言うまでもなく、テンプルズは単なる60年代懐古主義者ではありません。彼らはサイケデリック・ロック、フリー・ジャズ、クラウトロック、イタリアン・プログレなど様々な時代やジャンルの音楽から最良のエッセンスのみを抜き出し、小憎らしいほどスタイリッシュでクールにまとめ上げてしまうバンド。

Temples / Shelter Song (live at The Garage)

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基本的にはディープなリスナー気質で、ひたすらセンスが良く、徹底的にスタイルにこだわるという意味では、人脈的に繋がりのあるホラーズに近い。要するに、この上なく粋なバンドなのです。

今年はほとんど音沙汰がなかったテンプルズですが、2016年6月から9月にかけてフェスに出演し、10月にはアメリカ・ツアーを行うとアナウンス。最近のライヴでは新曲を披露しているという情報もあるので、新作リリース間近と見ていいでしょう。果たして、今、世界でもっともクールなバンドはどんな次の一手を打ってくるのか? ライヴが朝4時からと知って心が折れそうになったあなたも、これを観ずに〈ホステス・クラブ・オールナイター〉は終われません。




2. Savages
2010年代にデビューしたUKインディ・バンドの中で、サヴェージズはほぼ唯一、英国のみならず、ワールドワイドで極めて高い評価を獲得することが出来たバンド。UKインディ滅亡寸前の状況において、本当に特別な存在。ということは以下の記事でも書きました。

UKインディが死亡宣告間近って本当?
その救世主となり得るバンドはいるのか?
という疑問への答えを出す5組をご紹介


ポストパンクを軸にノイズ/ハードコア/インダストリアルも飲み込んだ演奏は、ライヴでは更にハードかつアグレッシヴ。とは言え、最新作『アドア・ライフ』で比較されることもあったスワンズのような重厚長大さとは無縁で、とにかくタイトでシャープにまとまっている。肝はエイス・ハッサンのベースだと思いますが、彼女に先導され、時に耳障りなノイズを四方八方にまき散らしながら、4人の出す音がタイトに固まって疾走していく様は圧巻です。

Savages / Evil (live on KCRW)

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サヴェージズが世界的に支持されるのは、やはりそのライヴ・パフォーマンスありき。なぜ彼女たちが瀕死のUKインディ・シーンを抜け出し、サヴァイヴし続けられているのか? その答えは、ライヴを観ればわかります。




1. Deerhunter
ディアハンターからは常に目が離せません。なぜなら、彼らはアルバムごとに全く新しいアイデアを提示し、別のバンドへと生まれ変わってしまうから。それはライヴでも同じ。その時々のブラッドフォード・コックスのモードに合わせて、ステージ衣装から曲のアレンジまでガラリと変えてしまうことがある。そういった彼らの特性については、こちらの記事でも詳しく書いています。

作品ごとにサウンドが豹変するのみならず、
ツアーごとにライヴも激変! それこそが
ディアハンターの真骨頂なことお教えします


本稿でも一例を挙げておきましょう。もっともわかりやすいのは、最新作『フェイディング・フロンティア』のリード・トラックでもあった“リヴィング・マイ・ライフ”。この原曲は、眩い光に優しく包まれていくような、どこまでもユーフォリックで美しいサイケデリック・ポップでした。

Deerhunter / Living My Life

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しかし、2016年5月にアメリカのTV番組で同じ曲を披露した際は、思わず目と耳を疑うようなパフォーマンスだったのです。そのファッションにしろ、アレンジにしろ、バンド編成にしろ、全く別物。これは80年代AOR/ブルー・アイド・ソウル? サックスをリード楽器に据えて刷新されたアレンジには、誰もが呆気にとられたはず。

Deerhunter / Living My Life (live on The Late Show with Stephen Colbert)

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そう、ディアハンターは以前に観たことがあるからといって、決してわかった気にはなれないバンド。アルバムにしろ、ライヴにしろ、そのサウンドや美意識は常に更新され続けています。今のディアハンターは、常に今この瞬間にしかいない。明日にはまた全く別のバンドになっているかもしれない。だからこそ、今年の〈ホステス・クラブ・オールナイター〉でしか観られないディアハンターの「今」を、しっかりとその目と耳に焼き付けて下さい。




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